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黛 敏郎 『涅槃交響曲』
自宅で法事をしていて、久しぶりにお坊さんのお経を目の前で聴いていた。
お坊さんにもお経向きの声質や、お経の詠い方の上手さというものがあるように思う。
お経で思いだしたのが、黛敏郎の《涅槃交響曲》。
1958年に作曲されたもので、この時期の作品なら芥川也寸志や武満徹の曲をいくつか聴いた覚えがある。
《涅槃交響曲》は、この時代特有の騒然とした前衛的な雰囲気が濃厚。
こういう作風は結構好きなので、《涅槃交響曲》はとっても面白い。
特に、西洋音楽と仏教のお経とを融合させたところが摩訶不思議。

黛敏郎「涅槃交響曲


新交響楽団のホームページで見つけた曲目解説を読んで聴くと、構成やお経の意味がわかりやすい。
奇数楽章は楽器主体で、いかにも前衛的な現代音楽。
偶数楽章は合唱主体。禅宗と天台宗の異なるタイプのお経を題材にしているなので、かなり趣きが違う。
どの楽章も様々な鐘の響きがとても印象的。
奇数楽章と偶数楽章のオケ伴奏の部分は、旋律と和声と楽器の音色はかなりメシアン風。
第5楽章のピアノパートは、もうほとんどメシアン。

「第1楽章:カンパノロジー I」は、武満の《アスタリスク》のように、不協和的で騒然としていてゾクゾク~とする。
解説によれば、「カンパノロジー」とは「作曲者によれば、鐘を製造する際の合金の割合や鋳造の方法を研究する学問の名称」なのだそう。
そういえば、打楽器パートはお葬式で使われる「鳴り物」(法要で使われる打楽器のこと)の響きと節回しに良く似ている。
「第2楽章:首楞厳神咒」は、お経の一節を合唱とソロで歌っている。
お経風なんだけど、本物のお経にくらべて、歌い回しがかなり平板で間延びした感じがする。
私がいつも耳にする曹洞宗の「般若心経」(摩訶般若波羅蜜多心経)の方は、もっとリズミカルで抑揚もいろいろついているので。
最後の方は、何か畏怖するようなものが迫り来るような感じがして、メシアンの宗教音楽に映画の「エクソシスト」の音楽を連想してしまった。
緩徐楽章の「第3楽章:カンパノロジー II」 は、ドーンドーンという太鼓を家ならす響きと金管の金属的な響きが対照的。
特に、19:00頃に出てくるパーカッションかハープの響きがとても神秘的。
「第4楽章:摩訶梵」 は、ちょっと芝居がかった言い回しが、歌舞伎か能みたい?に聴こえる。
楽器に加えて合唱(=「梵鐘」を表現)まで入る「第5楽章:カンパノロジー III」は打って変わって賑やか。
最後は雅楽のような調べで静穏になり、自然に終楽章へとつながっていく。
「第6楽章:終曲(一心敬礼)」 は、「天台宗の声明」が使われているそうで、お経というよりヴォカリーズというか詩吟みたい?な合唱に聴こえる。



ついでに曹洞宗の法要で読むお経「摩訶般若波羅蜜多心経」。
自分では暗誦できないけれど、お盆・お彼岸や法事の時にはこのお経をいつも聴いている。(「大悲心陀羅尼」も入っていたかも)
菩提寺で聴くお経の方が、この音源よりもテンポが早いので、もっとリズミカルに聴こえる。
ミニマル音楽みたいなお経のトーンや節回しがなぜか私の波長に合っているらしく、ぼ~っと聴いているだけでも、全然退屈しない。
神様が出てくるせいかピンとこない西洋音楽のレクイエムと違って、意味はわからなくともお経はす~っと身体の中に入ってくる。
お経の意味自体は調べたことがないので、ちゃんと知っておきたくなってきた。

摩訶般若波羅蜜多心経 Prajna-paramita Hrdaya Sutram (The Heart Sutra)

tag : 黛敏郎

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こんにちは。

この曲は凄いですよね。タイトルからして異様ですが、内容はもっと・・・こんな音楽、他に聴いたことがありません。まさに、「怪曲」という言葉が相応しい曲だと思います。しかも、1958年の曲ですので、黛が29歳の時の作品ですね。20代の青年がこれほどのスケール、内容の曲を書くとは・・・恐るべき才能です。

宗教的という意味では、ブルックナーの交響曲を日本人(東洋人)が再解釈したもの、と個人的には捉えているんですが、ブルックナーの曲とは違い、仰る通りかなり前衛的で混沌とした作風ですね。プロコフィエフやショスタコーヴィチあたりの交響曲と近いものを感じます。ブルックナーも難しいですが、この曲も難しい。一度、実演に接してみたいものです。エクソシストの曲はマイク・オールドフィールドの「Tubular Bells」ですね。一応CDは持ってるんですが、プログレッシブ・ロックはあまり好きではないのでほとんど聴きません。

黛氏は武満氏と仲が良かったようですね。性格的にも政治的にも真逆のタイプに見えますが、意外ですね。ただ、黛氏は高橋悠治氏とは不仲だったようですが。高橋氏は気難しいというか、アーティスト気質の人なので、それもあるかな、と思いますが。

yoshimiさんの家も曹洞宗なのですね。うちもです。東京在住ですが、両親の実家が鳥取で、寺も鳥取にあるんです。
 
かかど様、こんばんは。

日本的な交響曲と言えば、私は土俗性や民謡を取り入れた伊福部昭をすぐに連想するのですが、仏教をモチーフにした黛のアプローチだと、伊福部とは全く違った音楽になっていますね。

黛自身に対しては、”時代錯誤?の保守派”というイメージがあるのですが、”日本的なるもの”をこういう音楽で表現するのは、とても斬新に感じました。
他に「曼荼羅交響曲」や交響詩「輪廻」、カンタータ「般若心経」などもありますので、そのうち聴いてみようと思っています。

ブルックナー・プロコフィエフ・ショスコターヴィチの交響曲はほとんど聴かないので、どの作曲家に近いものがあるのか私にはわからないのですが、この曲の持つ前衛性自体は、当時のトレンドに沿ったもので、同時代の武満にも芥川にも共通するものを感じました。

黛との関係は知りませんでしたが、武満徹と高橋悠治は友人であり音楽活動も一緒に行っていたこともありました。
でも、武満が政治的なものから遠ざかって行ったため、音楽と政治を結びつけて表現する高橋悠治と批判し合うようになり、2人は決別してしまったそうです。
ましてや政治的には水と油みたいな立場の黛と高橋が、仲が良かったとは思えません。

黛敏郎も曹洞宗だったそうです。
禅宗というのはマイナーな宗派だとばかり思い込んでましたが、宗教法人数でいうと、日本で一番多いのが曹洞宗でした。
お寺が鳥取にあると、お墓参りに行くのも一仕事ですね。
家の菩提寺は歩いて15分のところにあるので、お盆・お彼岸に限らずいつでも気軽に立ち寄れます。
yoshimiさん、こんばんは。

お経の音楽性について興味深く記事を拝読しました。
魂を仏の道に導く?お経の音楽効果は大切なものなのでしょうね。
私の実家の宗派は昔ながらの日蓮宗(総本山身延山)ですが、つい先日も法要に出席しました。
ご存知かもしれませんが、パーカッション入りでとても賑やかというかリズム感満点ですよ!
しかし、これはお経音読の抑揚リズムというよりお経の伴奏といった方が正確かもしれません。
法事のときは、出席者全員にお経の本が配られて、お坊さんの先導のもと、声を合わせて唱和するのです。
小学校時代に国語の時間に群読というのをよくやりましたが、よく似ていてそれに鉦や太鼓?の伴奏付です。
話は逸れますが、あの本能寺も日蓮宗(法華宗)の寺だそうです。
YouTubeで検索しましたら、聞き覚えのある木鉦、太鼓、カスタネット様の何て名前か知りませんが、ありましたので参考までにお知らせします。これは法要の時の映像でなく行事の時のものでしょうね。
お葬式の出棺の前にも、大きな身振りでカスタネット様の鳴り物で霊を清めているのかな?と思いました。
https://www.youtube.com/watch?v=jpOB6AzOB_U
https://www.youtube.com/watch?v=-6CvwqJOeJU
https://www.youtube.com/watch?v=ZlLRFviGsik

それにしてもyoshimiさんはご供養の務めを健気に努められ清々しく思いました。

 
すず子さん、こんにちは。

日蓮宗の鳴り物は初めて聴きました。太鼓など打楽器が多いようですね。
実家のお向かいが天理教の分教会だったので、毎日太鼓や鐘や笛の音がゆったりとしたテンポで鳴っているのが聞こえてました。まるで雅楽のような優雅な調べでした。
宗派によって、使う楽器もリズムも旋律も随分違うものですね。
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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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