風と光/有機穀物で作った天然酵母
2016.03.16 12:00| ・ パンづくりとホームベーカリー|
カルディで販売中のドイツ産有機天然酵母(ドライタイプ)がず~っと気になっていたので、ホシノ天然酵母のストックが少なくなったのを機に、試作するため、先日1袋だけ購入。
上手くパンが作れたら、夏場は過発酵するため使っていないホシノ天然酵母の代わりに使いたい。
市販されている国産の天然酵母のうち、生種おこしが不要なドライタイプは白神こだま酵母、とかち野酵母。オーガニックの国産天然酵母は見かけことがない。
この有機天然酵母は、スイス・バーゼルのアグラーノ社が開発し、子会社ドイツ・リーゲルにあるビオリアル社で製造している「Bioreal」のこと。
遺伝子組み換え原料、化学薬品不使用。厳格な品質管理の専用工場で製造。
原材料は、有機とうもろこし・小麦・馬鈴薯でん粉(ドイツ産)、酵母のみ。
サフのインスタントドライイーストに含まれているような乳化剤は不使用。
芦屋のオーガニックドイツパン・ベーカリー「ベッカライ・ビオブロート」でも使われている。
有機天然酵母の扱いやすいところは、ドライタイプで予備発酵が不要なこと。
ただし、水に触れてはいけないので、パンケースに水と一緒に投入してはいけない。
開封後、1ヶ月以内に使用(パッケージには、できるだけ早くとだけ書いている)。冷凍保存不可。
生地のこね上げ温度は28℃~30℃が最適。
レビューをチェックすると、クセのない風味で小麦の味が良く出るらしい。
<風と光/有機穀物で作った天然酵母(ドライイースト)>
一般に市販されているのは、分包タイプ30g(3g×10袋)、1袋9g入り。
9g入りは、近隣のカルディで168円(税込)で購入。
分包タイプは、amazonで購入可能。送料無料で600円ほど。
説明書きの使用量は1~1.5%。私は粉180gでいつも焼くので、1%使用なら5回分、1回当たり約34円。
HBの天然酵母コースで長時間発酵させる場合は、酵母は半分として、約17円。(⇒試作したら、酵母が少なすぎて、ほとんど膨らまなかった。酵母は少なくとも1%は入れないといけない。)
この商品以外に、日本の代理店数社から、異なるパッケージで販売されている。
【使用法】
説明書によれば、酵母使用量は粉量比1~1.5%。全粒粉・菓子パンは2倍。
タイガーのホームベーカリーサイトのQ&Aの回答は、「有機乾燥酵母は天然酵母に近いので、発酵時間を長めにとってください。熟成食パンコースを選び、イーストを3gもしくは購入された酵母の指定の量でお試しください。 発酵力が弱いため、上記の方法でも高さは低くなります。 」
ということは、粉250gの標準レシピに対して、3g(1.2%)。(⇒砂糖・油脂不使用で試作したら、ほとんど膨らまなかった)
【酵母投入のタイミング】
有機天然酵母を入れるタイミングの検証実験[アトリエリブラ]
手後ねで、次の2方法で比較すると、「生地入れ(後入れ)の方がよかった」とのこと。
①酵母を粉と一緒に入れて、水も一緒に混ぜて最初からこねる
②生地を先に作っておいてそこに酵母を入れ込む
パナソニックHBなら、普通のイースト投入口に入れておけば、自動的に後入れになる。
タイガーの場合も、イースト投入ケースに入れておくと、粉を捏ね始めてしばらくすると投入されるので、実質的に後入れになる。
私は投入ケースはいつも使っていないので、粉と水がよく混ざってから、手動でイーストを投入。
【レシピ】
天然酵母コース以外の発酵時間が短いコースでは、酵母1~1.2%程度なら普通に膨らんでいる。
ただし、砂糖・バターが5~10%くらい入ったレシピが多い。
砂糖もバターも入れない手捏ねレシピだと、長時間発酵させている。
有機穀物で作った天然酵母 ホームベーカリーのレシピ[風と光]
酵母2%。砂糖・バター6%程度。
有機穀物で作った天然酵母 ホームベーカリーのレシピ[HB(ホームベーカリー)レシピ]
酵母1%ちょっと。砂糖・バター入り。
ライスミルクブレッド[富澤商店]
酵母1.2%。砂糖20g。
有機JAS オーガニックパンミックス粉 全粒粉 風と光 250g 食パンミックス レシピ
有機全粒粉パンミックス(有機砂糖、有機小麦でんぷん、食塩)、有機ショートニング(または無塩バター)、有機穀物で作った天然酵母、水。酵母量は1.2%(全粒粉粉入りにしては、少ない)
有機穀物で作った天然酵母・レシピ[アトリエリブラ]
手捏ね成形パン用レシピが多数あり。菓子パン系は発酵時間が短いため、酵母量は2%が多い。ベーグルは1.5%。
有機天然酵母のパンレシピ[調理係日報 インズヤンズ梟城・調理係。]
「この酵母の場合、全粒粉が多いほど早く発酵しますし、バゲットなどは、なんと0.5%の酵母で出来る」と書かれている。
著書『にっぽんのパンと畑のスープ~なつかしくてあたらしい、白崎茶会のオーガニックレシピ』では、「Bioreal社の有機天然酵母」を使っている。
著書の丸パンレシピでは、粉250g(うち全粒粉50g)に対して有機天然酵母2g(0.8%)を使い、冷蔵庫でオーバーナイト発酵させている。
酵母0.8%で長時間発酵させているので、「0.5%使用でできる」というバゲットでもオーバーナイト発酵させるはず。
(cookpadのホームベーカリーレシピ)
全て砂糖、油脂を入れているので、膨らみは良い感じ。
天然酵母コースで長時間発酵させるとしても、砂糖は入れた方が膨らむ。
北海道産小麦食パン [cookpad]
はるゆたかブレンド400g、有機天然酵母5g。牛乳、オリーブオイル、甜菜糖、天然塩。天然酵母コースまたは全粒粉コース。
酵母1.25%。それでも、長時間発酵させるために天然酵母コース使用。
発酵時間が長い方が粉の旨味も多くなるので、この方法が一番美味しくなりそう。
有機天然酵母使用☆P機HBでフランスパン [cookpad]
リスドォル280g、有機天然酵母2.8g(専用スプーン小1)。塩、上白糖。フランスパンコース。
酵母1%。トータル所要時間は、最近のパナ機ならたぶん5時間。
※フランスパンにしては、酵母が多い。HB添付レシピでは、普通のドライイーストの場合は2.1g(0.75%)しか入れていない。砂糖も使っていないはず。
HB カフェオレ&くるみ パン[cookpad]
北海道産パン用小麦粉250g、有機天然酵母小さじ1。スキムミルク、砂糖、バター。食パンコース。
酵母1%くらい。
<試作>
タイガーHB/KBH-V100使用。
最初の捏ね開始後、ある程度生地がまとまってから、酵母を手動で投入。
1)熟成食パンコース(4時間20分+追加発酵160分)
イーグル145g、中力粉25g、水128g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母1g(付属スプーン小1gの目盛り)。
コース所定時間4時間20分プラス工程別コースで発酵時間を追加(発酵(1)(30℃)を80分、発酵(2)(32℃)を80分)。
2)熟成食パンコース(4時間20分)
イーグル170g、水128g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母2g。
3)天然酵母コース(7時間)
オーベルジュ175g、水122g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母約1g。
4)天然酵母コース(7時間)
キタノカオリ175g、水122g、塩2cc、砂糖8g、バター6g、有機天然酵母約2g。
(比較)天然酵母コース(7時間)
キタノカオリ175g、水122g、塩2cc、砂糖8g、バター6g、ドライイースト小さじ1/4(約0.8gくらい)
一番出来映えが良かったのは、4)の天然酵母コースで酵母2%に砂糖・バター入り。
天然酵母パンらしい、目の詰まったフカフカ~としたクラム。
ホシノ天然酵母ほどではないとしても、クラムはしっとり感があり、イースト臭はせず、ほんのりした甘みがあって、これは美味しい。(でも、これはキタノカオリ自体の甘みかも?)
比較するために、赤サフでも作ってみたら、高さは赤サフの方が少し高め。クラストは若干柔らかく、クラムはちょっとしっとり。甘みは少なめ。やはり、有機天然酵母の方が、とうもろこしのようなほんのりした甘みがあって、美味しく感じる。
膨らみの良いのは、4>1>2、3。
どらかというと、酵母の量よりも、発酵時間の方が影響するらしい。
発酵時間の長い4と1は、高さが低いとはいえ、まがいなりにも山形にはなっている。
2は、酵母を1%以上入れたのに、酵母0.5%で長時間発酵させた3とあまり変わらないフラットな台形。
amazonのカスタマーレビューを見ると、気温が低くなると膨らみにくくなるという感想が多数あり。倍量の6g使うとよく膨らむらしい。
クラストは砂糖・バター入りの4が多少柔らかめ。
クラムの内相と食感は、明らかな違いがある。モチモチ感は、2>1>3>4。
砂糖・バターゼロだと、モチモチ感が強くなり、強力粉を使った2は気泡が多く、チャバタみたいにクラムが糊化してツヤツヤ。
準強力粉レベルの1は、2よりも気泡が少なく、糊化度が低い(発酵時間よりも粉の違い)。
3はもちもちしたフランスパン風(大きな気泡はなく目が詰まっている)。
4は目が詰まってフカフカでちょっともちもち。いかにも天然酵母らしさのあるクラム。
クラムの甘みは、どれもほんのりとした味わいで、濃くはない。
フルーティな甘みではなく、穀物・野菜系統の噛み締めてよくわかるな素朴でクセのない甘さ。
酵母の原料が、とうもろこし・小麦・じゃがいもなので、その味とイーグルの小麦の味とが出ているのだろうか?
甘みが比較的よく出ているのは、粉の風味が一番薄そうな1と、キタノカオリを使った4。
5)天然酵母コース(7時間)(パナソニックSD-BH106)
イーグル140g、全粒粉30g、ライ麦粉15g、オートミール5g、ぬるま湯140gくらい(?)、にがり0.2cc、塩2.5cc、バター3g、モルトパウダー1cc、有機天然酵母約2.8g(1.5%)
残っていた酵母全部を使いたかったので、粉を適当にブレンドして、酵母量1.5%、モルト多め、バター少々。
うっかりパナソニックSD-BH106を使ってしまった。
でも、↑の4回の試作よりも、これが一番よく膨らんだ。
その理由は、酵母量が多い、全粒粉・ぬるま湯使用、モルトも多めなど、膨らみやすい配合にしたこと。
それに、もともとタイガーよりも膨らみやすいパナソニックを使ったので、機種の違いの影響もかなりあるような気がする。
出来上がった食パンは、香りも味も取り立てて良いというわけでもない。
トーストすると美味しいのは、全粒粉独特のカリカリ感のため。
同じ配合でドライイーストと比較すればわかるだろうけど、この有機天然酵母を常用するつもりはないので、当分比較することはできない。
※昨日、タイガーHBでドライイーストを使って作ってみたら、水分が多かったせいか、台形になって発酵不足気味。でも、食べてみると、パナよりもクラムがしっとりとして、粉の味わいが強くて、美味しい。やはり、膨らみやすいのはパナ、粉の味がしっかり出て美味しいのはタイガー。これはどのパンでも同じ。
<結果のまとめ>
(酵母使用量)
同量のドライイーストに比べて発酵力がかなり弱い。
ホームベーカリーの規定コースで作るなら、熟成食パン・天然酵母コースとも、酵母は粉量比1%は必要。1.5%で長時間発酵させると、全粒粉入りでもかなり膨らむ。
熟成食パンコースでも発酵時間が短すぎるので、天然酵母コースがベスト。
酵母量を1%以下に減らすなら、独立工程コースを使って発酵時間を長くセットするか、冷蔵庫でオーバーナイト発酵させた方が良い。(面倒なのでそういうことはしない)
(味)
天然酵母特有のクセのある風味ではなく、イースト臭はなし。
ほんのりとした甘み。フルーティではなく、(とうもろこしかじゃがいもみたいな)穀物系のマイルドな甘み。
しっかりかみ締めるとじんわり美味しい..みたいな地味な味わい。(ホシノ天然酵母のような独特の濃厚な味わいはなし)
風味の薄いイーグル100%でも、ドライイーストよりも美味しくなる。
砂糖・バターを入れないパンの食感は、チャバタ風でもちもち。ふわふわしたパンが嫌いな私には、好みの食感で○。
風味の弱い粉の方が酵母の味わいが強くでるようなので、イーグルには向いている。
(使い勝手)
予備発酵不要なので、いつでも気軽に使えるのは◎。
ただし、開封後1ヶ月以内に使用しなければならない。(乳化剤を加えていないので、酸化に弱いのだろうか?)
1袋で酵母1%使用の場合は、約5回分(粉180g)なので、1ヶ月で使いきれないことはない。
(コスト)
1回あたり粉量180gで焼くと、酵母のコストは約34円。
ホシノは小袋タイプ(50g×5袋入)で、約25円。(実際には購入時に送料がかかるけれど、粉と一緒に買っているので考慮せず)
ドライイーストの場合は、粉量比0.5%くらいしか使わないので、コストは1回あたり数円。
<結論>
発酵力は、ドライイースト、ホシノ天然酵母に比べてかなり弱いので、▲。砂糖・バター少量のリーンなパンを酵母量1%で焼く場合は、発酵時間の長い天然酵母コース必須。
風味は、ドライイーストよりも良いけれど、天然酵母独特の風味は薄くて、やや○。
コストは、ホシノ天然酵母の1.5倍くらい。▲
使い勝手は、予備発酵不要で、ドライイーストとほぼ同じ。◎
保存性は冷凍不可で、開封後1ヶ月以内に使い切る必要がある。やや▲
天然酵母としては、ほんのりとした甘みは美味しいとはいえ、凄く美味しいわけでもない。○
酵母量1%ではホシノ天然酵母よりはるかに発酵力が弱い。▲
ドライイーストの代わりにするには、発酵力が弱すぎるし、コストと保存性でかなり劣る。▲
砂糖・バターゼロのリーンなパンの膨らみがかなり悪い。▲
特に低温には弱い。冬場はぬるま湯を使えば多少マシになりそうだし、夏は発酵しやすいのかも。
砂糖・バターを少量入れると、若干膨らみがよくなる。(でも、砂糖・バター入りのパンはほとんど焼くことがないので、やはり使う必要性は低い)
結局、乳化剤を使ったドライイースト(赤サフ)を使いたくないのでなければ、この有機天然酵母を積極的に使う理由はほとんどない。
それに、オーガニック(添加物・農薬等不使用)という点に拘るなら、他の材料(特に最も使用量の多い粉は)もオーガニックでなければ、パン酵母にオーガニック製品を使う意味がほとんどない。
少なくとも粉については、オーガニックではなくても、残留農薬が(ほとんど)検出されない国産小麦くらいは使いたい。
有機天然酵母を使うことがあるとすれば、過発酵のためホシノ天然酵母を使わない夏場や、ホシノのストックが切れた時に天然酵母を使いたい時、(滅多に焼かない)砂糖・バター入りのドライイーストパンの代用、くらいだろうか。
<参考情報>
『ベッカライ・ビオブロートのパン』(松崎太著)に記載されているBiporealの情報
- ドイツで使っていた生イーストタイプは、香りも味も良い。
- 日本で使っているドライイーストタイプは、発酵力がかなり弱く、冷蔵庫などの低温環境では発酵しなかったり、捏ね上げ温度が低いと発酵が極端に遅くなる。
- 温度変化に弱い。30℃の室温保存で発酵しなくなったため、冷蔵庫保存している。(※市販品のパッケージには、20℃以下の保存と指示書きあり)
- 暑い夏に氷水で生地を仕込む時は、ある程度捏ねている生地の温度が上がってから、ビオレアルを投入。最初から混ぜて捏ねたら、全く発酵が進まなかった。反対に、冬場はミキシングしながらぬるま湯を混ぜていく。
- 焼きあがったパンは、イースト臭がしない。
天然酵母7種類の比較表[クオカ]
表中の有機天然酵母は、風と光社と同じ製品。販売元が違うだけ。
HBで焼き比べ実験第2弾 ~有機穀物の天然イースト~[シェフズフード]
白神こだま酵母との比較。有機天然酵母の使用量がかなり多い(2%近い)ので、全粒粉食パンのボリュームはほぼ同じ。
上手くパンが作れたら、夏場は過発酵するため使っていないホシノ天然酵母の代わりに使いたい。
市販されている国産の天然酵母のうち、生種おこしが不要なドライタイプは白神こだま酵母、とかち野酵母。オーガニックの国産天然酵母は見かけことがない。
この有機天然酵母は、スイス・バーゼルのアグラーノ社が開発し、子会社ドイツ・リーゲルにあるビオリアル社で製造している「Bioreal」のこと。
遺伝子組み換え原料、化学薬品不使用。厳格な品質管理の専用工場で製造。
原材料は、有機とうもろこし・小麦・馬鈴薯でん粉(ドイツ産)、酵母のみ。
サフのインスタントドライイーストに含まれているような乳化剤は不使用。
芦屋のオーガニックドイツパン・ベーカリー「ベッカライ・ビオブロート」でも使われている。
有機天然酵母の扱いやすいところは、ドライタイプで予備発酵が不要なこと。
ただし、水に触れてはいけないので、パンケースに水と一緒に投入してはいけない。
開封後、1ヶ月以内に使用(パッケージには、できるだけ早くとだけ書いている)。冷凍保存不可。
生地のこね上げ温度は28℃~30℃が最適。
レビューをチェックすると、クセのない風味で小麦の味が良く出るらしい。
<風と光/有機穀物で作った天然酵母(ドライイースト)>
一般に市販されているのは、分包タイプ30g(3g×10袋)、1袋9g入り。
9g入りは、近隣のカルディで168円(税込)で購入。
分包タイプは、amazonで購入可能。送料無料で600円ほど。
説明書きの使用量は1~1.5%。私は粉180gでいつも焼くので、1%使用なら5回分、1回当たり約34円。
HBの天然酵母コースで長時間発酵させる場合は、酵母は半分として、約17円。(⇒試作したら、酵母が少なすぎて、ほとんど膨らまなかった。酵母は少なくとも1%は入れないといけない。)
![]() | 風と光 有機穀物で作った天然酵母 30g(3gx10袋) (2015/12/75) 風と光 |
この商品以外に、日本の代理店数社から、異なるパッケージで販売されている。
【使用法】
説明書によれば、酵母使用量は粉量比1~1.5%。全粒粉・菓子パンは2倍。
タイガーのホームベーカリーサイトのQ&Aの回答は、「有機乾燥酵母は天然酵母に近いので、発酵時間を長めにとってください。熟成食パンコースを選び、イーストを3gもしくは購入された酵母の指定の量でお試しください。 発酵力が弱いため、上記の方法でも高さは低くなります。 」
ということは、粉250gの標準レシピに対して、3g(1.2%)。(⇒砂糖・油脂不使用で試作したら、ほとんど膨らまなかった)
【酵母投入のタイミング】

手後ねで、次の2方法で比較すると、「生地入れ(後入れ)の方がよかった」とのこと。
①酵母を粉と一緒に入れて、水も一緒に混ぜて最初からこねる
②生地を先に作っておいてそこに酵母を入れ込む
パナソニックHBなら、普通のイースト投入口に入れておけば、自動的に後入れになる。
タイガーの場合も、イースト投入ケースに入れておくと、粉を捏ね始めてしばらくすると投入されるので、実質的に後入れになる。
私は投入ケースはいつも使っていないので、粉と水がよく混ざってから、手動でイーストを投入。
【レシピ】
天然酵母コース以外の発酵時間が短いコースでは、酵母1~1.2%程度なら普通に膨らんでいる。
ただし、砂糖・バターが5~10%くらい入ったレシピが多い。
砂糖もバターも入れない手捏ねレシピだと、長時間発酵させている。

酵母2%。砂糖・バター6%程度。

酵母1%ちょっと。砂糖・バター入り。

酵母1.2%。砂糖20g。

有機全粒粉パンミックス(有機砂糖、有機小麦でんぷん、食塩)、有機ショートニング(または無塩バター)、有機穀物で作った天然酵母、水。酵母量は1.2%(全粒粉粉入りにしては、少ない)

手捏ね成形パン用レシピが多数あり。菓子パン系は発酵時間が短いため、酵母量は2%が多い。ベーグルは1.5%。

「この酵母の場合、全粒粉が多いほど早く発酵しますし、バゲットなどは、なんと0.5%の酵母で出来る」と書かれている。
著書『にっぽんのパンと畑のスープ~なつかしくてあたらしい、白崎茶会のオーガニックレシピ』では、「Bioreal社の有機天然酵母」を使っている。
著書の丸パンレシピでは、粉250g(うち全粒粉50g)に対して有機天然酵母2g(0.8%)を使い、冷蔵庫でオーバーナイト発酵させている。
酵母0.8%で長時間発酵させているので、「0.5%使用でできる」というバゲットでもオーバーナイト発酵させるはず。
![]() | にっぽんのパンと畑のスープ~なつかしくてあたらしい、白崎茶会のオーガニックレシピ (2010/2/25) 白崎裕子 |
(cookpadのホームベーカリーレシピ)
全て砂糖、油脂を入れているので、膨らみは良い感じ。
天然酵母コースで長時間発酵させるとしても、砂糖は入れた方が膨らむ。

はるゆたかブレンド400g、有機天然酵母5g。牛乳、オリーブオイル、甜菜糖、天然塩。天然酵母コースまたは全粒粉コース。
酵母1.25%。それでも、長時間発酵させるために天然酵母コース使用。
発酵時間が長い方が粉の旨味も多くなるので、この方法が一番美味しくなりそう。

リスドォル280g、有機天然酵母2.8g(専用スプーン小1)。塩、上白糖。フランスパンコース。
酵母1%。トータル所要時間は、最近のパナ機ならたぶん5時間。
※フランスパンにしては、酵母が多い。HB添付レシピでは、普通のドライイーストの場合は2.1g(0.75%)しか入れていない。砂糖も使っていないはず。

北海道産パン用小麦粉250g、有機天然酵母小さじ1。スキムミルク、砂糖、バター。食パンコース。
酵母1%くらい。



<試作>
タイガーHB/KBH-V100使用。
最初の捏ね開始後、ある程度生地がまとまってから、酵母を手動で投入。
1)熟成食パンコース(4時間20分+追加発酵160分)
イーグル145g、中力粉25g、水128g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母1g(付属スプーン小1gの目盛り)。
コース所定時間4時間20分プラス工程別コースで発酵時間を追加(発酵(1)(30℃)を80分、発酵(2)(32℃)を80分)。
2)熟成食パンコース(4時間20分)
イーグル170g、水128g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母2g。
3)天然酵母コース(7時間)
オーベルジュ175g、水122g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母約1g。
4)天然酵母コース(7時間)
キタノカオリ175g、水122g、塩2cc、砂糖8g、バター6g、有機天然酵母約2g。
(比較)天然酵母コース(7時間)
キタノカオリ175g、水122g、塩2cc、砂糖8g、バター6g、ドライイースト小さじ1/4(約0.8gくらい)
一番出来映えが良かったのは、4)の天然酵母コースで酵母2%に砂糖・バター入り。
天然酵母パンらしい、目の詰まったフカフカ~としたクラム。
ホシノ天然酵母ほどではないとしても、クラムはしっとり感があり、イースト臭はせず、ほんのりした甘みがあって、これは美味しい。(でも、これはキタノカオリ自体の甘みかも?)
比較するために、赤サフでも作ってみたら、高さは赤サフの方が少し高め。クラストは若干柔らかく、クラムはちょっとしっとり。甘みは少なめ。やはり、有機天然酵母の方が、とうもろこしのようなほんのりした甘みがあって、美味しく感じる。
膨らみの良いのは、4>1>2、3。
どらかというと、酵母の量よりも、発酵時間の方が影響するらしい。
発酵時間の長い4と1は、高さが低いとはいえ、まがいなりにも山形にはなっている。
2は、酵母を1%以上入れたのに、酵母0.5%で長時間発酵させた3とあまり変わらないフラットな台形。
amazonのカスタマーレビューを見ると、気温が低くなると膨らみにくくなるという感想が多数あり。倍量の6g使うとよく膨らむらしい。
クラストは砂糖・バター入りの4が多少柔らかめ。
クラムの内相と食感は、明らかな違いがある。モチモチ感は、2>1>3>4。
砂糖・バターゼロだと、モチモチ感が強くなり、強力粉を使った2は気泡が多く、チャバタみたいにクラムが糊化してツヤツヤ。
準強力粉レベルの1は、2よりも気泡が少なく、糊化度が低い(発酵時間よりも粉の違い)。
3はもちもちしたフランスパン風(大きな気泡はなく目が詰まっている)。
4は目が詰まってフカフカでちょっともちもち。いかにも天然酵母らしさのあるクラム。
クラムの甘みは、どれもほんのりとした味わいで、濃くはない。
フルーティな甘みではなく、穀物・野菜系統の噛み締めてよくわかるな素朴でクセのない甘さ。
酵母の原料が、とうもろこし・小麦・じゃがいもなので、その味とイーグルの小麦の味とが出ているのだろうか?
甘みが比較的よく出ているのは、粉の風味が一番薄そうな1と、キタノカオリを使った4。
5)天然酵母コース(7時間)(パナソニックSD-BH106)
イーグル140g、全粒粉30g、ライ麦粉15g、オートミール5g、ぬるま湯140gくらい(?)、にがり0.2cc、塩2.5cc、バター3g、モルトパウダー1cc、有機天然酵母約2.8g(1.5%)
残っていた酵母全部を使いたかったので、粉を適当にブレンドして、酵母量1.5%、モルト多め、バター少々。
うっかりパナソニックSD-BH106を使ってしまった。
でも、↑の4回の試作よりも、これが一番よく膨らんだ。
その理由は、酵母量が多い、全粒粉・ぬるま湯使用、モルトも多めなど、膨らみやすい配合にしたこと。
それに、もともとタイガーよりも膨らみやすいパナソニックを使ったので、機種の違いの影響もかなりあるような気がする。
出来上がった食パンは、香りも味も取り立てて良いというわけでもない。
トーストすると美味しいのは、全粒粉独特のカリカリ感のため。
同じ配合でドライイーストと比較すればわかるだろうけど、この有機天然酵母を常用するつもりはないので、当分比較することはできない。
※昨日、タイガーHBでドライイーストを使って作ってみたら、水分が多かったせいか、台形になって発酵不足気味。でも、食べてみると、パナよりもクラムがしっとりとして、粉の味わいが強くて、美味しい。やはり、膨らみやすいのはパナ、粉の味がしっかり出て美味しいのはタイガー。これはどのパンでも同じ。
<結果のまとめ>
(酵母使用量)
同量のドライイーストに比べて発酵力がかなり弱い。
ホームベーカリーの規定コースで作るなら、熟成食パン・天然酵母コースとも、酵母は粉量比1%は必要。1.5%で長時間発酵させると、全粒粉入りでもかなり膨らむ。
熟成食パンコースでも発酵時間が短すぎるので、天然酵母コースがベスト。
酵母量を1%以下に減らすなら、独立工程コースを使って発酵時間を長くセットするか、冷蔵庫でオーバーナイト発酵させた方が良い。(面倒なのでそういうことはしない)
(味)
天然酵母特有のクセのある風味ではなく、イースト臭はなし。
ほんのりとした甘み。フルーティではなく、(とうもろこしかじゃがいもみたいな)穀物系のマイルドな甘み。
しっかりかみ締めるとじんわり美味しい..みたいな地味な味わい。(ホシノ天然酵母のような独特の濃厚な味わいはなし)
風味の薄いイーグル100%でも、ドライイーストよりも美味しくなる。
砂糖・バターを入れないパンの食感は、チャバタ風でもちもち。ふわふわしたパンが嫌いな私には、好みの食感で○。
風味の弱い粉の方が酵母の味わいが強くでるようなので、イーグルには向いている。
(使い勝手)
予備発酵不要なので、いつでも気軽に使えるのは◎。
ただし、開封後1ヶ月以内に使用しなければならない。(乳化剤を加えていないので、酸化に弱いのだろうか?)
1袋で酵母1%使用の場合は、約5回分(粉180g)なので、1ヶ月で使いきれないことはない。
(コスト)
1回あたり粉量180gで焼くと、酵母のコストは約34円。
ホシノは小袋タイプ(50g×5袋入)で、約25円。(実際には購入時に送料がかかるけれど、粉と一緒に買っているので考慮せず)
ドライイーストの場合は、粉量比0.5%くらいしか使わないので、コストは1回あたり数円。
<結論>
発酵力は、ドライイースト、ホシノ天然酵母に比べてかなり弱いので、▲。砂糖・バター少量のリーンなパンを酵母量1%で焼く場合は、発酵時間の長い天然酵母コース必須。
風味は、ドライイーストよりも良いけれど、天然酵母独特の風味は薄くて、やや○。
コストは、ホシノ天然酵母の1.5倍くらい。▲
使い勝手は、予備発酵不要で、ドライイーストとほぼ同じ。◎
保存性は冷凍不可で、開封後1ヶ月以内に使い切る必要がある。やや▲
天然酵母としては、ほんのりとした甘みは美味しいとはいえ、凄く美味しいわけでもない。○
酵母量1%ではホシノ天然酵母よりはるかに発酵力が弱い。▲
ドライイーストの代わりにするには、発酵力が弱すぎるし、コストと保存性でかなり劣る。▲
砂糖・バターゼロのリーンなパンの膨らみがかなり悪い。▲
特に低温には弱い。冬場はぬるま湯を使えば多少マシになりそうだし、夏は発酵しやすいのかも。
砂糖・バターを少量入れると、若干膨らみがよくなる。(でも、砂糖・バター入りのパンはほとんど焼くことがないので、やはり使う必要性は低い)
結局、乳化剤を使ったドライイースト(赤サフ)を使いたくないのでなければ、この有機天然酵母を積極的に使う理由はほとんどない。
それに、オーガニック(添加物・農薬等不使用)という点に拘るなら、他の材料(特に最も使用量の多い粉は)もオーガニックでなければ、パン酵母にオーガニック製品を使う意味がほとんどない。
少なくとも粉については、オーガニックではなくても、残留農薬が(ほとんど)検出されない国産小麦くらいは使いたい。
有機天然酵母を使うことがあるとすれば、過発酵のためホシノ天然酵母を使わない夏場や、ホシノのストックが切れた時に天然酵母を使いたい時、(滅多に焼かない)砂糖・バター入りのドライイーストパンの代用、くらいだろうか。
<参考情報>

- ドイツで使っていた生イーストタイプは、香りも味も良い。
- 日本で使っているドライイーストタイプは、発酵力がかなり弱く、冷蔵庫などの低温環境では発酵しなかったり、捏ね上げ温度が低いと発酵が極端に遅くなる。
- 温度変化に弱い。30℃の室温保存で発酵しなくなったため、冷蔵庫保存している。(※市販品のパッケージには、20℃以下の保存と指示書きあり)
- 暑い夏に氷水で生地を仕込む時は、ある程度捏ねている生地の温度が上がってから、ビオレアルを投入。最初から混ぜて捏ねたら、全く発酵が進まなかった。反対に、冬場はミキシングしながらぬるま湯を混ぜていく。
- 焼きあがったパンは、イースト臭がしない。
![]() | ベッカライ・ビオブロートのパン (2014年9月1日) 松崎 太 目次(PDF) |

表中の有機天然酵母は、風と光社と同じ製品。販売元が違うだけ。

白神こだま酵母との比較。有機天然酵母の使用量がかなり多い(2%近い)ので、全粒粉食パンのボリュームはほぼ同じ。
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