2016.03/19 [Sat]
輸入小麦のポストハーベスト農薬に関する情報
輸入小麦のポストハーベスト農薬に関して、情報をまとめておきたく思ったので、ネットで情報収集。
一番知りたかったのは、残留農薬の客観的な検査結果データ。
農水省の残留農薬検査データは毎年公開されているが、これは輸出国で船積時の小麦(玄麦)の検査結果。
輸入後に製粉された小麦粉とパンなどの加工食品を対象にした検査データは、2000年以降の検査結果が大学・試験研究機関・民間消費者団体などから数件発表されている。
<農林水産省>
米麦の残留農薬等の調査結果[農林水産省]
輸入小麦は、産地国での船積時に「食品等輸入届出」を提出するロット毎に試料を採取して検査実施。
国産・輸入小麦とも、規制基準値以上の残留農薬は検出されていなかったとはいえ、国産小麦と輸入小麦ではあきらかに残留農薬の量が違う。
国産小麦は、規制基準値はもちろん、定量限界以上の残留農薬を検出した検体はない。
一方、輸入小麦は、定量限界以上の農薬が検出されている検体がかなり多い。
外国産小麦は、平成26年度後期~平成25年度前期の結果では、収穫・買入時期が異なるためか、年度前期と後期では、前期の方が定量限界以上の残留農薬を検出する検体が多い傾向がある。
春小麦と冬小麦では農薬の使用量がかなり違うためか、単に小麦の輸出時期によってポストハーベスト農薬の使用量が違うためか、理由はわからない。
輸入小麦だからといって、必ずしもポストハーベスト農薬が検出されるというわけではないとしても、基準値内に収まっているとはいえ、残留農薬が検出される場合が少なくない。
※ポストハーベスト処理は、主に輸送するのに長期間かかる船便の農作物が対象。船便でもオーガニック農作物専用コンテナ、空輸便などには、ポストハーベスト処理が行われていないらしい。
<大学・試験研究機関>
小麦の製粉及び調理加工後における有機リン系農薬の残留
(食品衛生学雑誌Vol. 33 (1992) No. 2 P 144-149、堀 義宏他、北海道立衛生研究所)
- 試料:外国産小麦(米国・カナダ)と北海道産小麦を配合した混合小麦7検体(産地特定不可)、同一ロッ トの混合小 麦を製粉した小麦粉11検体。
- 小麦に残留した農薬はふすまに約80%, 小麦粉に2~20%の残存。
- クロルピリホスメチル: ゆでた場合50%以下まで減少、焼く, 揚げるなどの調理法では50%以上の残存率。
- マラチオン:焼いた場合の製品には50%以上の残存率。揚げた場合には27%程度, ゆでた場合にはほとんど残存せず。
- 灰分はふすまに多く含まれている。.2等粉は1等粉よりふすまの混入する割合が高い.。
- 小麦に残留する農薬は製粉,調理加工することにより減少。1等粉を用いて製造された製品は小麦中の残留濃度の6%以下になるが、クッキーなど2等粉を用いて製造された製品は残存率が高くなる傾向。
GC-FPDによる食品中の残留農薬の分析 一小麦粉中の残留有機 リン系農薬の分析一(長坂尚子,近藤陽太郎、京都女子大学家政学部食物栄養学科食品学第二研究室,京都女子大学食物学会第57号(2002-12-10))
- 外国産小麦を用いた小麦粉からポストハーベスト農薬使用のためと思われる残留農薬が,16検体のうち11検体から検出。
- 国産小麦でも、5検体中2検体から残留農薬を検出。
- 小麦に散布された農薬は,小麦の表皮部分である「ふすま」に残留しやすい傾向。
- 小麦粉を使用した小麦粉加工製品中にも農薬が残留。
- 加熱温度が高いほど農薬は分解・揮散されるが,カステラやビスケット等では,製造上での水の添加により中心部まで十分に温度が上昇しにくいため、加工後にも残留しやすい。
- 麺類に含まれる極性の高い農薬は,ゆでる過程で減少するが,脂溶性の高い農薬はゆでた後にも残留。
- 小麦粉は,野菜や果実のような剥皮や洗浄による農薬の除去操作がなく,脂肪成分が多いことから極性の低い脂溶性の農薬が残留されやすい。
市販小麦粉・小麦製品(1997~2000年)の購入時並びに保存中の有機リン系農薬の残留(神戸大学発達科学部研究紀要 (水野裕士、村田芳博、水野圭、吉野正人、丸谷宣子、白杉(片岡)直子) 9/, 159-166 2001 (大学・研究所等紀要) [出所/食品安全情報:名古屋生活クラブ「給食会の調査で輸入小麦の残留農薬が検出できなかった理由」]
輸入小麦粉中の残留農薬値の検査結果が引用されている。(原典未確認)
外皮を取り除いた精製後の白い小麦粉でも、全粒粉よりは残留農薬がかなり減っているとはいえ、検出されている製品がほとんど。
加工および調理による小麦試料中残留農薬の濃度変化
(食品衛生学雑誌、Vol. 49 (2008) No. 3 P 150-159、坂 真智子他、(財)残留農薬研究所化学部残留第2研究室)
- 小麦の加工・調理による13種の農薬の残留濃度変化に伴う調理加工品への移行率・加工係数の調査
- 分析試料9種類:玄麦、一次加工4種類(60%粉(=小麦粉)、大ふすめ、小ふすま、末粉)、二次加工4種類(食パン2種類、うどん玉、中華麺玉)
- 製粉工程におけるプレハーベスト処理試料(Pre, 9薬剤)とポストハーベスト処理試料(Post, 6薬剤)を調製
- 移行率:玄麦に残留する農薬の絶対重量に対する生成試料中の残留農薬重量の比率(%)
- 加工係数:玄麦中に残留する農薬の濃度に対する生成試料中の残留農薬濃度の比
- 製粉工程での移行率:玄麦に残留していた農薬のうち、Preでは70%以上,Postでは80%以上がふすまとともに除去され,60%粉に残っていたのはPre 1.7~23%, Post 4.0~11%の範囲。
- Pre農薬の二次加工品への移行率:全粒粉100%食パン75%以上、60%粉(小麦粉)食パン1.4~22%、うどん玉1.8~25%、中華麺玉1.7~22%。
- Post農薬の二次加工品への移行率:農薬によって移行率がかなり違う。60%粉(小麦粉)食パンは多くても農薬の1割程度が残留。全粒粉100%食パンには、農薬の半分~ほぼ全量が残留しており、60%粉(小麦粉)食パンの数倍~20倍程度の高濃度の農薬が残留。
- 移行率は、PreよりもPost農薬の方が低い。
<消費者団体等>
市販パン20品目の残留農薬検査結果(北海道消費者協会の調査結果(“北の暮らし”2001年1月31日)
「1999年、市販のパン20品目の残留農薬の検査を行い北海道産小麦100%のもの6品からは農薬が不検出、北海道産小麦を使用しているもの(他の小麦も混じっている)1品、残りの13品のパンからは全て検出」[惠泉マナベーカリー]
※原データは未確認。
パン類の残留農薬分析結果[農民連食品分析センター]
- 2001年に農民連食品分析センターでおこなったパン類(40検体)の残留農薬分析結果。
- ハンバーガー、ケーキ、学校給食パンといったほとんどの製品から有機リン系農薬(基準値内)を検出。
- 検出されなかったのは地元産小麦を使用した埼玉県学校給食用パンと食パン一検体のみ。
「比較・消費者運動論」 安全基金の活動と考え方(12)
- 1993年から2000年にかけて200品目以上の学校給食パンを検査し、同時に、外国のパン、日本の白いパン、全粒粉・胚芽・ふすま・ライ麦などを入れた高級パン、有機小麦パン、国産小麦パンなどを検査した。(詳細な数値データ不明)
- ポストハーベスト農薬の残留量が最も多かったのは外国のパン。最悪はオーストラリア、続いてドイツ、アメリカの順。文献を調べると、最悪なのはイギリスのパン。
- 日本では、学校給食パンが最悪で、次が全粒粉などのパン、3番目が有機小麦パン(外国産の有機小麦が原因)、4番目が(外皮を除いている)安くて白い食パン。
- 残留農薬が最も少ないのは、国産小麦パン。食品倉庫の害虫対策で使われるフェニトロチオンという殺虫剤が検出されることもある。
↑の検査結果で、学校給食パンの残留農薬が最多だった理由は、3等~2等級の小麦粉を使っているため。
等級が低いほど小麦の外皮に近い部分が多くなり、農薬の残留量も増える。
全粒粉パンが残留農薬値が多いというのは、外皮ごと製粉するから。検査した全粒粉パンは、全粒粉100%ではなかったので、学校給食パンよりも残留農薬が少なかったのではないかと思う。
全粒粉パンよりも、栄養が少ないと言われる精白小麦粉パンの方が、残留農薬が少ないというのは、ヘルシーなイメージとは全く逆。
オーガニック輸入小麦粉を使ったパンからも残留農薬が検出された理由はわからない。
たまたま原料の有機輸入小麦に農薬が残留していたレアケースなのか、オーガニックといえども輸入小麦にはポストハーベスト処理が行われるものなのかが、不明。
(参考:オーガニック小麦粉)
むそう商事のオーガニック小麦粉
むそう商事のオーガニック小麦粉は、ポストハーベスト処理は一切行わず、虫やカビの発生を防ぐため、できるだけ寒い時期(1〜3月)に小麦を輸入している。
フランス産小麦は輸入時に船が赤道を2回通過するので、温度管理のため、冷蔵コンテナを使用。(「SoooooS.」の情報)
「ポストハーベスト処理をしないので、寒い時期に輸入している」ということは、たとえオーガニックでなくても、寒気に輸入すれば、ポストハーベスト農薬が使われていないか、使用量が少ないとも考えられる。
このことは、農水省の残留農薬検査データでも、年度後期輸入分の小麦の方が残留農薬の検出数も検出量も少ない、ということと一致している。
芦屋にあるオーガニック・ドイツパンベーカリー「ベッカライ・ビオブロート」が使っている小麦粉は、むそう商事が輸入しているカナダ産小麦。
<業界団体の見解>
Q. ポストハーベスト農薬の方が残留しやすいのですか。[農薬工業会]
-日本で、農薬のポストハーベスト使用は、保管のためのくん蒸剤以外認められてiいない。
-アメリカなど諸外国では、大量・長期貯蔵、長距離・長時間輸送の必要からポストハーベスト農薬の使用が、穀物、果実などに認められている。常に農薬が使われるのではなく、穀物の場合は夏を越すものに殺虫剤が使われ、野菜や果物も消費者に届くまで時間がかかるものに殺菌剤が使われている。
-日本向けに輸出される穀物は輸送ルートによっては夏を越すのと似た条件になるので、ポストハーベスト農薬が必要になるといわれる。
(参考)Q. 有機栽培でも農薬を使うことができるのですか。[農薬工業会]
有機JAS規格の有機農産物の生産方法:「堆肥などにより土づくりを行い、多年生作物の場合は収穫前3年以上、その他の作物の場合は、播種又は植え付け前2年以上の間、原則として化学的に合成された肥料や農薬は使用しないこと。遺伝子組換え種苗を使用していないこと。」
ただし、有機栽培でも一定の条件下で定められた農薬を用いることができる。
Q2 パンの残留農薬は?[パン食普及協議会]
- パンに使用されている小麦の産地であるカナダ、米国北部は、冬場はマイナス30度以下になることから、寒気によるエアレーションが行われていて、貯蔵時に農薬散布や燻蒸処理が行われることはほとんどない。
- 船での輸送時に赤道を通過することが無いことから、輸送中に昆虫等が発生することもほとんどない。
業界団体の説明を読むと、貯蔵時と輸送中に”ポストハーベスト”処理が使われることは極めて少ないかのような印象を受ける。
それにしては、農水省の検査結果では、アメリカ・カナダ産の小麦でも、残留農薬が検出される検体が多い。
ポストハーベスト農薬がほとんど使われていないのが事実だとすれば、農薬を使って栽培している国産小麦に農薬が残留していないということは、国産小麦よりも大量の農薬を使って輸入小麦が栽培されているということなのだろうか?
農薬が散布されるのがポストハーベストかプレハーベスト(収穫前)かどちらであっても、輸入小麦の多くに(規制基準値内の)農薬は残留している。
【検査データから考えてみると...】
輸入小麦は輸出国の船積時に農薬が残留していることが多く、その輸入小麦を製粉した小麦粉や小麦粉加工製品にまで、規制基準値とはいえ、農薬は残留する。
それに対して、国産小麦で残留農薬が検出されることはほとんどない。
残留農薬は小麦の外皮部分(ふすま)に多いので、外皮ごと製粉する全粒粉・小麦ふすまの残留量が非常に多い。
そのため、全粒粉・小麦ふすまを使った加工調理食品は、外皮を除去した精白小麦粉とその加工調理品に比べて、残留農薬がかなり多い。大まかにいえば、数倍~20倍くらい。
精製した精白小麦粉は外皮が除去されているので、残留農薬は大幅に減少する。概ね、ポストハーベスト農薬の残留量は製粉前の約1割以下、プレハーベスト農薬では約2割以下くらいまで減る。
国産小麦粉と輸入オーガニック小麦粉のどちらが良いのかは、オーガニック小麦の残留農薬値の検査結果(があれば)で確認しないと実際のところはよくわからない。
日本のJAS認定されたオーガニック農産物については、特定の条件下で、指定された農薬を使うことは認められているので、必ずしも「無農薬」ということではない。
しかし、普通の国産小麦でも農薬はほぼ残留しないので、オーガニックの国産小麦でもそれは同じだと思う。
海外のオーガニック製品でも、ポストハーベスト農薬が使われていないはずなのに、残留農薬が検出されたというデータがあるので、これが事実だとすると、レアケースなのかどうかがよくわからない。
検査データでは残留農薬は規制基準値内に収まっているので、たとえ残留農薬が検出されたとしても、それが(すぐに)健康被害につながるとは思わないけれど、残留農薬はゼロか出来る限り少ないに越したことはない。
輸入小麦を常用するなら、栄養値が高い全粒粉よりは、精製して栄養価が低くなった精白小麦粉の方が、小麦に振りかけられたポストハーベスト農薬(とプレハーベスト農薬)の摂取量が激減するので、かなりマシ。(栄養は他の食材から摂れば良いことなので)
少なくとも、自家製パンで全粒粉を使う場合は製品を選択できるので、輸入小麦粉ではなく、国産小麦粉か、オーガニック小麦粉を使った方が良い。
(オーガニック小麦粉については、輸入小麦よりも国産小麦の方が、ポストハーベスト農薬を使用する可能性がゼロという点ではベターかも?)
今まで米国産輸入小麦を使った国内メーカーの全粒粉を使っていたけれど、価格が2倍くらいの北海道小麦の石臼挽き全粒粉に切り替えることにした。
常用しているドイツ産のライ麦粉も全粒粉。ライ麦100%と思っていたら、今使っている製品にはなぜか小麦粉も入っていた。
フランス産小麦は赤道を2回通過して輸送されるそうなので、ドイツ産小麦・ライ麦も同じルートだと思われる。
赤道を通過すると船倉がかなり高温になるだろうから、冷蔵便でない限り、ポストハーベスト処理されているに違いない。(小麦は常温保存されるのが普通なので、冷蔵便で輸送されるとは思えない)
価格が数割高い北海道産の100%ライ麦粉(全粒粉のみ)が販売されているので、これも国産品に切り替え。
国産小麦であれば、オーガニックではなくても残留農薬はほとんどないし、価格も銘柄によっては輸入小麦より少し高い程度(ただし、銘柄によってかなり違う)。
オーガニックならさらに良いけど、常用するには500g500円くらい。慣行栽培の小麦粉の数倍と結構高い。
個人的な好みとして、もともと国産小麦の方が風味もよくてパンも美味しいと思うので、残留農薬の多寡に関わらず、できるだけ国産小麦を使いたい。
<参考情報>
小麦と小麦粉のはなし[木下製粉]
小麦の構造
小麦の構造は、胚乳(約83%)、表皮(約15%)、胚芽(約2%)。
表皮はふすまとして家畜飼料、胚芽は小麦粉に利用。
表皮部分の灰分値は中心部分の10倍以上。小麦全体での灰分値は1.1~1.8%程度。
灰分(ミネラル分)の少ない小麦粉は上級粉、多い小麦粉は下級粉。中心部分からは上級粉がとれ、表皮部分に近づくほど、下級粉になり、灰白色のくすんだ色になる。
たんぱく質の多い硬質小麦よりも、たんぱく質の少ない軟質小麦の方が、灰分は少ない。
全粒粉は、小麦をそのまま丸ごと製粉するため、溝状のクリーズ部分に溜まっている不純物が混入するため「雑味」となる。
「ブラウワー」は、小麦の胚乳部分と表皮部分(小麦ふすま)とを別々に処理して雑味を取り除いた商品。
一番知りたかったのは、残留農薬の客観的な検査結果データ。
農水省の残留農薬検査データは毎年公開されているが、これは輸出国で船積時の小麦(玄麦)の検査結果。
輸入後に製粉された小麦粉とパンなどの加工食品を対象にした検査データは、2000年以降の検査結果が大学・試験研究機関・民間消費者団体などから数件発表されている。
<農林水産省>

輸入小麦は、産地国での船積時に「食品等輸入届出」を提出するロット毎に試料を採取して検査実施。
国産・輸入小麦とも、規制基準値以上の残留農薬は検出されていなかったとはいえ、国産小麦と輸入小麦ではあきらかに残留農薬の量が違う。
国産小麦は、規制基準値はもちろん、定量限界以上の残留農薬を検出した検体はない。
一方、輸入小麦は、定量限界以上の農薬が検出されている検体がかなり多い。
外国産小麦は、平成26年度後期~平成25年度前期の結果では、収穫・買入時期が異なるためか、年度前期と後期では、前期の方が定量限界以上の残留農薬を検出する検体が多い傾向がある。
春小麦と冬小麦では農薬の使用量がかなり違うためか、単に小麦の輸出時期によってポストハーベスト農薬の使用量が違うためか、理由はわからない。
輸入小麦だからといって、必ずしもポストハーベスト農薬が検出されるというわけではないとしても、基準値内に収まっているとはいえ、残留農薬が検出される場合が少なくない。
※ポストハーベスト処理は、主に輸送するのに長期間かかる船便の農作物が対象。船便でもオーガニック農作物専用コンテナ、空輸便などには、ポストハーベスト処理が行われていないらしい。
<大学・試験研究機関>

(食品衛生学雑誌Vol. 33 (1992) No. 2 P 144-149、堀 義宏他、北海道立衛生研究所)
- 試料:外国産小麦(米国・カナダ)と北海道産小麦を配合した混合小麦7検体(産地特定不可)、同一ロッ トの混合小 麦を製粉した小麦粉11検体。
- 小麦に残留した農薬はふすまに約80%, 小麦粉に2~20%の残存。
- クロルピリホスメチル: ゆでた場合50%以下まで減少、焼く, 揚げるなどの調理法では50%以上の残存率。
- マラチオン:焼いた場合の製品には50%以上の残存率。揚げた場合には27%程度, ゆでた場合にはほとんど残存せず。
- 灰分はふすまに多く含まれている。.2等粉は1等粉よりふすまの混入する割合が高い.。
- 小麦に残留する農薬は製粉,調理加工することにより減少。1等粉を用いて製造された製品は小麦中の残留濃度の6%以下になるが、クッキーなど2等粉を用いて製造された製品は残存率が高くなる傾向。

- 外国産小麦を用いた小麦粉からポストハーベスト農薬使用のためと思われる残留農薬が,16検体のうち11検体から検出。
- 国産小麦でも、5検体中2検体から残留農薬を検出。
- 小麦に散布された農薬は,小麦の表皮部分である「ふすま」に残留しやすい傾向。
- 小麦粉を使用した小麦粉加工製品中にも農薬が残留。
- 加熱温度が高いほど農薬は分解・揮散されるが,カステラやビスケット等では,製造上での水の添加により中心部まで十分に温度が上昇しにくいため、加工後にも残留しやすい。
- 麺類に含まれる極性の高い農薬は,ゆでる過程で減少するが,脂溶性の高い農薬はゆでた後にも残留。
- 小麦粉は,野菜や果実のような剥皮や洗浄による農薬の除去操作がなく,脂肪成分が多いことから極性の低い脂溶性の農薬が残留されやすい。

輸入小麦粉中の残留農薬値の検査結果が引用されている。(原典未確認)
外皮を取り除いた精製後の白い小麦粉でも、全粒粉よりは残留農薬がかなり減っているとはいえ、検出されている製品がほとんど。

(食品衛生学雑誌、Vol. 49 (2008) No. 3 P 150-159、坂 真智子他、(財)残留農薬研究所化学部残留第2研究室)
- 小麦の加工・調理による13種の農薬の残留濃度変化に伴う調理加工品への移行率・加工係数の調査
- 分析試料9種類:玄麦、一次加工4種類(60%粉(=小麦粉)、大ふすめ、小ふすま、末粉)、二次加工4種類(食パン2種類、うどん玉、中華麺玉)
- 製粉工程におけるプレハーベスト処理試料(Pre, 9薬剤)とポストハーベスト処理試料(Post, 6薬剤)を調製
- 移行率:玄麦に残留する農薬の絶対重量に対する生成試料中の残留農薬重量の比率(%)
- 加工係数:玄麦中に残留する農薬の濃度に対する生成試料中の残留農薬濃度の比
- 製粉工程での移行率:玄麦に残留していた農薬のうち、Preでは70%以上,Postでは80%以上がふすまとともに除去され,60%粉に残っていたのはPre 1.7~23%, Post 4.0~11%の範囲。
- Pre農薬の二次加工品への移行率:全粒粉100%食パン75%以上、60%粉(小麦粉)食パン1.4~22%、うどん玉1.8~25%、中華麺玉1.7~22%。
- Post農薬の二次加工品への移行率:農薬によって移行率がかなり違う。60%粉(小麦粉)食パンは多くても農薬の1割程度が残留。全粒粉100%食パンには、農薬の半分~ほぼ全量が残留しており、60%粉(小麦粉)食パンの数倍~20倍程度の高濃度の農薬が残留。
- 移行率は、PreよりもPost農薬の方が低い。
<消費者団体等>

「1999年、市販のパン20品目の残留農薬の検査を行い北海道産小麦100%のもの6品からは農薬が不検出、北海道産小麦を使用しているもの(他の小麦も混じっている)1品、残りの13品のパンからは全て検出」[惠泉マナベーカリー]
※原データは未確認。

- 2001年に農民連食品分析センターでおこなったパン類(40検体)の残留農薬分析結果。
- ハンバーガー、ケーキ、学校給食パンといったほとんどの製品から有機リン系農薬(基準値内)を検出。
- 検出されなかったのは地元産小麦を使用した埼玉県学校給食用パンと食パン一検体のみ。

- 1993年から2000年にかけて200品目以上の学校給食パンを検査し、同時に、外国のパン、日本の白いパン、全粒粉・胚芽・ふすま・ライ麦などを入れた高級パン、有機小麦パン、国産小麦パンなどを検査した。(詳細な数値データ不明)
- ポストハーベスト農薬の残留量が最も多かったのは外国のパン。最悪はオーストラリア、続いてドイツ、アメリカの順。文献を調べると、最悪なのはイギリスのパン。
- 日本では、学校給食パンが最悪で、次が全粒粉などのパン、3番目が有機小麦パン(外国産の有機小麦が原因)、4番目が(外皮を除いている)安くて白い食パン。
- 残留農薬が最も少ないのは、国産小麦パン。食品倉庫の害虫対策で使われるフェニトロチオンという殺虫剤が検出されることもある。
↑の検査結果で、学校給食パンの残留農薬が最多だった理由は、3等~2等級の小麦粉を使っているため。
等級が低いほど小麦の外皮に近い部分が多くなり、農薬の残留量も増える。
全粒粉パンが残留農薬値が多いというのは、外皮ごと製粉するから。検査した全粒粉パンは、全粒粉100%ではなかったので、学校給食パンよりも残留農薬が少なかったのではないかと思う。
全粒粉パンよりも、栄養が少ないと言われる精白小麦粉パンの方が、残留農薬が少ないというのは、ヘルシーなイメージとは全く逆。
オーガニック輸入小麦粉を使ったパンからも残留農薬が検出された理由はわからない。
たまたま原料の有機輸入小麦に農薬が残留していたレアケースなのか、オーガニックといえども輸入小麦にはポストハーベスト処理が行われるものなのかが、不明。
(参考:オーガニック小麦粉)

むそう商事のオーガニック小麦粉は、ポストハーベスト処理は一切行わず、虫やカビの発生を防ぐため、できるだけ寒い時期(1〜3月)に小麦を輸入している。
フランス産小麦は輸入時に船が赤道を2回通過するので、温度管理のため、冷蔵コンテナを使用。(「SoooooS.」の情報)
「ポストハーベスト処理をしないので、寒い時期に輸入している」ということは、たとえオーガニックでなくても、寒気に輸入すれば、ポストハーベスト農薬が使われていないか、使用量が少ないとも考えられる。
このことは、農水省の残留農薬検査データでも、年度後期輸入分の小麦の方が残留農薬の検出数も検出量も少ない、ということと一致している。
芦屋にあるオーガニック・ドイツパンベーカリー「ベッカライ・ビオブロート」が使っている小麦粉は、むそう商事が輸入しているカナダ産小麦。
<業界団体の見解>

-日本で、農薬のポストハーベスト使用は、保管のためのくん蒸剤以外認められてiいない。
-アメリカなど諸外国では、大量・長期貯蔵、長距離・長時間輸送の必要からポストハーベスト農薬の使用が、穀物、果実などに認められている。常に農薬が使われるのではなく、穀物の場合は夏を越すものに殺虫剤が使われ、野菜や果物も消費者に届くまで時間がかかるものに殺菌剤が使われている。
-日本向けに輸出される穀物は輸送ルートによっては夏を越すのと似た条件になるので、ポストハーベスト農薬が必要になるといわれる。
(参考)Q. 有機栽培でも農薬を使うことができるのですか。[農薬工業会]
有機JAS規格の有機農産物の生産方法:「堆肥などにより土づくりを行い、多年生作物の場合は収穫前3年以上、その他の作物の場合は、播種又は植え付け前2年以上の間、原則として化学的に合成された肥料や農薬は使用しないこと。遺伝子組換え種苗を使用していないこと。」
ただし、有機栽培でも一定の条件下で定められた農薬を用いることができる。

- パンに使用されている小麦の産地であるカナダ、米国北部は、冬場はマイナス30度以下になることから、寒気によるエアレーションが行われていて、貯蔵時に農薬散布や燻蒸処理が行われることはほとんどない。
- 船での輸送時に赤道を通過することが無いことから、輸送中に昆虫等が発生することもほとんどない。
業界団体の説明を読むと、貯蔵時と輸送中に”ポストハーベスト”処理が使われることは極めて少ないかのような印象を受ける。
それにしては、農水省の検査結果では、アメリカ・カナダ産の小麦でも、残留農薬が検出される検体が多い。
ポストハーベスト農薬がほとんど使われていないのが事実だとすれば、農薬を使って栽培している国産小麦に農薬が残留していないということは、国産小麦よりも大量の農薬を使って輸入小麦が栽培されているということなのだろうか?
農薬が散布されるのがポストハーベストかプレハーベスト(収穫前)かどちらであっても、輸入小麦の多くに(規制基準値内の)農薬は残留している。
【検査データから考えてみると...】
輸入小麦は輸出国の船積時に農薬が残留していることが多く、その輸入小麦を製粉した小麦粉や小麦粉加工製品にまで、規制基準値とはいえ、農薬は残留する。
それに対して、国産小麦で残留農薬が検出されることはほとんどない。
残留農薬は小麦の外皮部分(ふすま)に多いので、外皮ごと製粉する全粒粉・小麦ふすまの残留量が非常に多い。
そのため、全粒粉・小麦ふすまを使った加工調理食品は、外皮を除去した精白小麦粉とその加工調理品に比べて、残留農薬がかなり多い。大まかにいえば、数倍~20倍くらい。
精製した精白小麦粉は外皮が除去されているので、残留農薬は大幅に減少する。概ね、ポストハーベスト農薬の残留量は製粉前の約1割以下、プレハーベスト農薬では約2割以下くらいまで減る。
国産小麦粉と輸入オーガニック小麦粉のどちらが良いのかは、オーガニック小麦の残留農薬値の検査結果(があれば)で確認しないと実際のところはよくわからない。
日本のJAS認定されたオーガニック農産物については、特定の条件下で、指定された農薬を使うことは認められているので、必ずしも「無農薬」ということではない。
しかし、普通の国産小麦でも農薬はほぼ残留しないので、オーガニックの国産小麦でもそれは同じだと思う。
海外のオーガニック製品でも、ポストハーベスト農薬が使われていないはずなのに、残留農薬が検出されたというデータがあるので、これが事実だとすると、レアケースなのかどうかがよくわからない。
検査データでは残留農薬は規制基準値内に収まっているので、たとえ残留農薬が検出されたとしても、それが(すぐに)健康被害につながるとは思わないけれど、残留農薬はゼロか出来る限り少ないに越したことはない。
輸入小麦を常用するなら、栄養値が高い全粒粉よりは、精製して栄養価が低くなった精白小麦粉の方が、小麦に振りかけられたポストハーベスト農薬(とプレハーベスト農薬)の摂取量が激減するので、かなりマシ。(栄養は他の食材から摂れば良いことなので)
少なくとも、自家製パンで全粒粉を使う場合は製品を選択できるので、輸入小麦粉ではなく、国産小麦粉か、オーガニック小麦粉を使った方が良い。
(オーガニック小麦粉については、輸入小麦よりも国産小麦の方が、ポストハーベスト農薬を使用する可能性がゼロという点ではベターかも?)
今まで米国産輸入小麦を使った国内メーカーの全粒粉を使っていたけれど、価格が2倍くらいの北海道小麦の石臼挽き全粒粉に切り替えることにした。
常用しているドイツ産のライ麦粉も全粒粉。ライ麦100%と思っていたら、今使っている製品にはなぜか小麦粉も入っていた。
フランス産小麦は赤道を2回通過して輸送されるそうなので、ドイツ産小麦・ライ麦も同じルートだと思われる。
赤道を通過すると船倉がかなり高温になるだろうから、冷蔵便でない限り、ポストハーベスト処理されているに違いない。(小麦は常温保存されるのが普通なので、冷蔵便で輸送されるとは思えない)
価格が数割高い北海道産の100%ライ麦粉(全粒粉のみ)が販売されているので、これも国産品に切り替え。
国産小麦であれば、オーガニックではなくても残留農薬はほとんどないし、価格も銘柄によっては輸入小麦より少し高い程度(ただし、銘柄によってかなり違う)。
オーガニックならさらに良いけど、常用するには500g500円くらい。慣行栽培の小麦粉の数倍と結構高い。
個人的な好みとして、もともと国産小麦の方が風味もよくてパンも美味しいと思うので、残留農薬の多寡に関わらず、できるだけ国産小麦を使いたい。
<参考情報>


小麦の構造は、胚乳(約83%)、表皮(約15%)、胚芽(約2%)。
表皮はふすまとして家畜飼料、胚芽は小麦粉に利用。
表皮部分の灰分値は中心部分の10倍以上。小麦全体での灰分値は1.1~1.8%程度。
灰分(ミネラル分)の少ない小麦粉は上級粉、多い小麦粉は下級粉。中心部分からは上級粉がとれ、表皮部分に近づくほど、下級粉になり、灰白色のくすんだ色になる。
たんぱく質の多い硬質小麦よりも、たんぱく質の少ない軟質小麦の方が、灰分は少ない。
全粒粉は、小麦をそのまま丸ごと製粉するため、溝状のクリーズ部分に溜まっている不純物が混入するため「雑味」となる。
「ブラウワー」は、小麦の胚乳部分と表皮部分(小麦ふすま)とを別々に処理して雑味を取り除いた商品。
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