諏訪内晶子&エンリコ・パーチェ ~ シュトラウス&フランク/ヴァイオリンソナタ,武満徹/悲歌

2016.04.06 18:00| ♪ エンリコ・パーチェ
諏訪内晶子&エンリコ・パーチェの初のデュオアルバム『シュトラウス&フランク/ヴァイオリンソナタ,武満徹/悲歌』が、発売日前日に到着。
凜として気品のあるヴァイオリンの音色と残響を多めに録ったピアノの響きが、うっとりするくらいに美しい。
優美なシュトラウスも良かったけれど、もともと好きなフランクのヴァイオリンソナタが特に素晴らしく思えたので、この新譜は期待以上に満足。

フランク&R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 他フランク&R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 他
2016/4/6
諏訪内晶子(Vn),エンリコ・パーチェ(Piano)

試聴ファイル
2016年1月26~29日、パリのノートルダム・デュ・リバンにて録音。

シュトラウスの作品で好きなのは、《4つの最後の歌》と歌曲集。
管弦楽曲を聴くことはなく、数回聴いたピアノ・ソナタ(グールドの録音)は、全然覚えていない。
ほとんど聴いたことがなかったヴァイオリンソナタは、華やかで優美な気品漂う素敵な曲。
ピアノの音色は(フランクと比べると)やや軽やかで明るく、高音は煌くような輝きが華やか。
ファンファーレのようなピアノで始まる第1楽章と、同じ音型の旋律をヴァイオリンとピアノで掛け合っていく第3楽章は、空間的な広がりのある雄大さと躍動感が感じられて、ピアノ・ソナタにしてはシンフォニック。
緩徐楽章苦手の私には珍しく、いちばん気に入ったのは第2楽章。ヴァイオリンの弾く主題旋律の美しいカンタービレと、蝶が舞うように軽やかできらきらと輝くようなピアノのアルペジオが、甘く優しい。

武満徹は特に好きな作曲家ではないけれど、作品自体は普通に聴ける。
ピアノ独奏曲やピアノ協奏曲《アステリズム》はわりと好きなので何度も聴いているから、どういう演奏を聴きたいのかイメージはあるのだけど、《悲歌》はほとんど聴いたことがないので(それにあまり好きなタイプの曲ではないので)、演奏については何とも言えない。

フランクのヴァイオリンソナタは昔から好きな曲なので、よく聴いていたのは、ダンチョフスカ&ツィメルマン。
2人とも音色に丸みがあり陰翳は若干薄めで、若い頃の演奏のせいか、感情がストレートに湧き出てくるような印象。
この新譜では、(シベリウスなどを聴いたときに感じた)音色と歌い回しにある硬さがなく、ヴァイオリンの音色が今まで以上に美しく聴こえる。
膨らみと柔らかさのある音色と抑揚のついた歌い回しが、シュトラウスとフランクの優美さによく似合って、ピアノの重厚な和声のなかから、ヴァイオリンの響きがくっきりと力強く浮き上がってくる。
ピアノの音色は、シュトラウスとは違って、短調ではほの暗さが漂い、低音の響きが特に重厚。色彩感も豊かで、弱音の響きがとても綺麗。
ダンチョフスカ&ツィメルマンの録音と比べると、音の輪郭が少し硬くて引き締まった感じ。静動・明暗のコントラストも強く、テンポの変化と起伏も細やか。濃淡のある彫りの深い表情で、重厚感と濃密な情感があり、演奏に奥行きと深みを感じる。
特にヴァイオリンの凛とした気品のある美しさは格別。
このアルバムのなかでは、フランクの演奏が特に気に入って、何度聴いても素晴らしい。

ヴァイオリンソナタといっても、私の耳はピアノに集中してしまうので、ピアノパートがかなりピアニスティックなシュトラウスとフランクは、ピアノソロを聴いているような感覚で聴ける。
パーチェは線のしっかりした多彩な響きを持つ人なので、低音には骨太さと重みがあり、音の密度が高い部分では重厚感がある。弱音時の高音になると響きが柔らかく、繊細さと色彩感豊かな音色が美しい。
今回の録音では、パーチェは自分のピアノを持ちこみ、特にフランクのソナタでは、ピアノの和音の中でどの音が聴こえるべきなのか、何度も試して演奏していたという。
そのせいか、いつにも増してピアノの音が美しく、演奏も今まで聴いたパーチェの伴奏録音のなかでもベストなものの一つだと思う。


<関連情報>
諏訪内晶子、クラシック・セールスチャート1位のアルバムの発売記念イベントを都内で開催![2016年04月19日,universal-music]


<インタビュー>
『音楽の友』最新号(2016.4月号)
NIPPON音楽祭でパーチェと演奏したシュトラウスのヴァイオリンソナタが素晴らしかったため、録音したいと思ったという。
パーチェは、自分のピアノを持ちこんで録音。伴奏ピアニストがピアノ持ち込みで録音するって、かなり珍しい。
新譜はパリで録音したので、彼の本拠地イタリアからなら、ピアノも輸送しやすいのだろう。
フランクのソナタは、ピアノをベースに、その重厚な響きの和音のなかで、ヴァイオリンの色彩感やニュアンスを出すようにしたという。
面白いのは、パーチェはピアニストに寄り添いすぎず、独自の世界観を持っていて、そのなかで音楽を作っていくという。
たぶん彼女よりもパーチェの方が個性も自己主張も強いと思う。その2人の間のメンタリティの違いとバランスが、デュオの演奏にどういう風に現れているのだろう?

バイオリニストがつくる国際音楽祭 諏訪内晶子さん [2016.2.27、日経電子版]

「国際音楽祭NIPPON」に関するインタビュー映像が掲載されている。
冒頭と途中で出てくるライブ映像は、第3回音楽祭(2014年11月30日)の横浜みなとみらいホールで演奏したモーツァルト「バイオリンソナタ第29番イ長調K.305」。
ピッタリ息の合った二人のモーツァルトを聴いていると、なんだかリサイタルで聴きたくなってきた。

映像の3:28~は、エンリコ・パーチェに関するお話。
諏訪内晶子が話しているレコーディング中の様子が結構笑える。
「(パーチェは)一つの音とか、一つのフレーズに対して何時間でもしゃべっている。それを続けて2週間とかやられると....」.とか、昔のインタビューを見ていると「ずっ~と空の星を見て考えごとをしているのが好きとか、そういう想像を超えるイマジネーションが彼(パーチェ)の頭の中では展開されている」とか。
そういうパーチェと長年ずっとデュオを組んできたフランク・ペーター・ツィンマーマンは、すごく忍耐づよい人なのか、とても聴き上手な人なのか、それともその両方なんだろうか。

厳しさの中にも希望を…諏訪内晶子が被災地支援の音楽祭(2016年3月1日、Yomiuri online)
パーチェとの相性は良さそう。「旋律の歌い回しなどが私の想像を超える」、「特にソナタでは、私に寄り添う演奏より個性をぶつけてくれる方が好き」だそうなので、これからデュオ録音を次々と出して欲しい。

2016.02.03 Wednesday 諏訪内晶子[伊熊よし子のブログ]

ヴァイオリニスト・諏訪内晶子、4年ぶりの新録音盤! ロマン派の名作に武満作品加えた、永遠の音楽の魅力伝える新作を語る[Mikiki]

諏訪内 晶子 インタビュー : エイベックス・リサイタル・シリーズ[英国ニュースダイジェスト]


<コンサート・レビュー>
第3回国際音楽祭NIPPON「諏訪内晶子&エンリコ・パーチェ デュオ・リサイタル」 日本で育ち、欧州で磨かれた技と“歌”[2014/12/5 日経電子版]

タグ:シュトラウス フランク 武満徹 諏訪内晶子 パーチェ

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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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