田部京子『シベリウス/ピアノ作品集』
2023.03.07 18:00| ♪ピアニスト(現代音楽以外)|
シベリウスのピアノ曲を聴いていると、寒く冷たく凍てつくような空気や水のイメージが湧き出てくるせいか、体中が引き締まるような感覚がする。
フィンランド人のシベリウスのピアノ曲は、同じ北欧でもノルウェーの作曲家グリーグの《叙情小曲集》とは印象がかなり違う。
シベリウスは、叙情美しくとも、湖のような透明感と冷んやりとした温度感があり、情緒や感傷過多になることがない。
感情や情緒に働きかけるというよりも、思索的・内省的。叙情的な曲であっても、感傷を寄せ付けないようなストイックな厳しさ、孤独感、寂寥感などが流れているようにも感じる。
同じ北欧の作曲家でも、グリーグの《叙情小曲集》よりも、シベリウスのピアノ曲に惹かれるのは、自分の心の内を見つめているような密やかで内省的な音楽だからだと思う。
田部京子の『シベリウス/ピアノ作品集』は、シベリウスのピアノ曲のなかでも、初期の作品ではなく、Op.75(1914年)以降の後期の作品のなかから、5つの曲集を録音。
5 Romantic Pieces/5つのロマンティックな小品, Op.101
No. 1. Romance/ ロマンス
No. 2. Chant du soir/夕べの歌
No. 3. Scene lyrique/抒情的情景
No. 4. Humoresque/ユモレスク
No. 5. Scene romantique/ロマンティックな情景
5 Pieces "The Trees"/5つの小品 「樹の組曲」, Op.75
No. 1. When the Rowan Blossoms/ピヒラヤの花咲くとき
No. 2. The Lonely Fir/孤独な松の木
No. 3. The Aspen/ はこやなぎ
No. 4. The Birch Tree/白樺
No. 5. The Spruce/樅の木
シベリウスのピアノ曲のなかで、たぶん一番有名な「樅の木」。
Five Pieces for Piano, Op. 75, "The Trees": V. The Spruce
5 Pieces "The Flowers"/5つの小品 「花の組曲」, Op.85
No. 1. Bellis/ひな菊
No. 2. Oeillet/カーネーション
No. 3. Iris/アイリス
No. 4. Aquileja/金魚草
No. 5. Campanula/つりがね草
このアルバムの曲集はどれも好きだけど、一番好きなのは「5 Esquisses/ 5つのスケッチ, Op.114」。イメージ喚起力が強いことと、和声がファンタスティックで美しい。特に第4番「森の歌」は不協和的な和声がミステリアス。
No. 1. Landscape/風景
No. 2. Winter Scene/冬の情景
No. 3. Forest Lake/森の湖
No. 4. Song in the Forest/森の歌
No. 5. Spring Vision/春の幻
Cinq Esquisses, Op. 114: I. Landscape
Cinq Esquisses, Op. 114: II. Winter Scene
Cinq Esquisses, Op. 114: III. Forest Lake
Cinq Esquisses, Op. 114: IV. Song in the Forest
Cinq Esquisses, Op. 114: V. Spring Vision
5 Characteristic Impressions/ 5つの特徴的な印象 Op.103
No. 1. The Village Church/村の教会
No. 2. The Fiddler/ヴァイオリン弾き
No. 3. The Oarsman/舟の漕ぎ手
No. 4. The Storm/嵐
No. 5. In Mournful Mood/悲しみに沈んで
「シベリウスのピアノ曲の演奏はそんなにやさしい事ではないのです。そのほとんどが小さな形式で書かれているとはいえ、どんなに短い曲であろうと背後には交響曲作曲家の持つ広い視野と深い呼吸が隠されています。ピアニストではなかったシベリウスのピアノ曲については度々批判されてきましたが、ウィルヘルム・ケンプをはじめ、グレン・グールド、ウラディーミル・アシュケナージなどがシベリウスに関心を持ちその価値を認めて演奏しています。1915年製のスタインウェイを演奏している写真や動画が撮影されていることからも推察される通り、実はシベリウスはピアノに向かう事が好きであり、時には即興演奏もしていました。彼は親友の一人でもあった伝説の大ピアニスト、フェルッチョ・ブゾーニの演奏に個人的にも接していたにも関わらず、大規模で名人芸的なピアノ曲を作曲したわけではなく、魔術的世界ともいえる不思議な魅力に満ちた繊細で表情豊かな創作をピアノ曲として残しました。」
[出典:渡邉規久雄 ピアノ・リサイタル ~シベリウスを弾く Vol.5~ シベリウス リサイタルに寄せて(エリック・T.タヴァッシェルナ (ピアニスト/ヘルシンキ芸術大学 シベリウスアカデミー名誉教授)]
このアルバムに収録されていない曲で有名なのは、「キュリッキ」と「3つのソナチネ(第1番~第3番)」(グールドが1976/77年に録音したことで有名になったらしい)、オーケストラ曲で有名な「悲しきワルツ」のピアノ版。
Jean Sibelius - KYLLIKKI - OP. 41
Sibelius - Sonatina in F-Sharp Minor, Op. 67 No. 1 (Gould)
Sibelius 'Valse Triste' PIANO SOLO - P. Barton
※オケ版は、たしかTVドラマシリーズ『ダーク・エンジェル』で命を狙われた主人公のマックス(女優はジェシカ・アルバ)が車で国外へ脱出する時のBGMに使われていた。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
フィンランド人のシベリウスのピアノ曲は、同じ北欧でもノルウェーの作曲家グリーグの《叙情小曲集》とは印象がかなり違う。
シベリウスは、叙情美しくとも、湖のような透明感と冷んやりとした温度感があり、情緒や感傷過多になることがない。
感情や情緒に働きかけるというよりも、思索的・内省的。叙情的な曲であっても、感傷を寄せ付けないようなストイックな厳しさ、孤独感、寂寥感などが流れているようにも感じる。
同じ北欧の作曲家でも、グリーグの《叙情小曲集》よりも、シベリウスのピアノ曲に惹かれるのは、自分の心の内を見つめているような密やかで内省的な音楽だからだと思う。
田部京子の『シベリウス/ピアノ作品集』は、シベリウスのピアノ曲のなかでも、初期の作品ではなく、Op.75(1914年)以降の後期の作品のなかから、5つの曲集を録音。
![]() | Piano Works (2000/8/22) kyoko Tabe 試聴ファイル(chandos.net) |
5 Romantic Pieces/5つのロマンティックな小品, Op.101
No. 1. Romance/ ロマンス
No. 2. Chant du soir/夕べの歌
No. 3. Scene lyrique/抒情的情景
No. 4. Humoresque/ユモレスク
No. 5. Scene romantique/ロマンティックな情景
5 Pieces "The Trees"/5つの小品 「樹の組曲」, Op.75
No. 1. When the Rowan Blossoms/ピヒラヤの花咲くとき
No. 2. The Lonely Fir/孤独な松の木
No. 3. The Aspen/ はこやなぎ
No. 4. The Birch Tree/白樺
No. 5. The Spruce/樅の木
シベリウスのピアノ曲のなかで、たぶん一番有名な「樅の木」。
Five Pieces for Piano, Op. 75, "The Trees": V. The Spruce
5 Pieces "The Flowers"/5つの小品 「花の組曲」, Op.85
No. 1. Bellis/ひな菊
No. 2. Oeillet/カーネーション
No. 3. Iris/アイリス
No. 4. Aquileja/金魚草
No. 5. Campanula/つりがね草
このアルバムの曲集はどれも好きだけど、一番好きなのは「5 Esquisses/ 5つのスケッチ, Op.114」。イメージ喚起力が強いことと、和声がファンタスティックで美しい。特に第4番「森の歌」は不協和的な和声がミステリアス。
No. 1. Landscape/風景
No. 2. Winter Scene/冬の情景
No. 3. Forest Lake/森の湖
No. 4. Song in the Forest/森の歌
No. 5. Spring Vision/春の幻
Cinq Esquisses, Op. 114: I. Landscape
Cinq Esquisses, Op. 114: II. Winter Scene
Cinq Esquisses, Op. 114: III. Forest Lake
Cinq Esquisses, Op. 114: IV. Song in the Forest
Cinq Esquisses, Op. 114: V. Spring Vision
5 Characteristic Impressions/ 5つの特徴的な印象 Op.103
No. 1. The Village Church/村の教会
No. 2. The Fiddler/ヴァイオリン弾き
No. 3. The Oarsman/舟の漕ぎ手
No. 4. The Storm/嵐
No. 5. In Mournful Mood/悲しみに沈んで
「シベリウスのピアノ曲の演奏はそんなにやさしい事ではないのです。そのほとんどが小さな形式で書かれているとはいえ、どんなに短い曲であろうと背後には交響曲作曲家の持つ広い視野と深い呼吸が隠されています。ピアニストではなかったシベリウスのピアノ曲については度々批判されてきましたが、ウィルヘルム・ケンプをはじめ、グレン・グールド、ウラディーミル・アシュケナージなどがシベリウスに関心を持ちその価値を認めて演奏しています。1915年製のスタインウェイを演奏している写真や動画が撮影されていることからも推察される通り、実はシベリウスはピアノに向かう事が好きであり、時には即興演奏もしていました。彼は親友の一人でもあった伝説の大ピアニスト、フェルッチョ・ブゾーニの演奏に個人的にも接していたにも関わらず、大規模で名人芸的なピアノ曲を作曲したわけではなく、魔術的世界ともいえる不思議な魅力に満ちた繊細で表情豊かな創作をピアノ曲として残しました。」
[出典:渡邉規久雄 ピアノ・リサイタル ~シベリウスを弾く Vol.5~ シベリウス リサイタルに寄せて(エリック・T.タヴァッシェルナ (ピアニスト/ヘルシンキ芸術大学 シベリウスアカデミー名誉教授)]
このアルバムに収録されていない曲で有名なのは、「キュリッキ」と「3つのソナチネ(第1番~第3番)」(グールドが1976/77年に録音したことで有名になったらしい)、オーケストラ曲で有名な「悲しきワルツ」のピアノ版。
Jean Sibelius - KYLLIKKI - OP. 41
Sibelius - Sonatina in F-Sharp Minor, Op. 67 No. 1 (Gould)
Sibelius 'Valse Triste' PIANO SOLO - P. Barton
※オケ版は、たしかTVドラマシリーズ『ダーク・エンジェル』で命を狙われた主人公のマックス(女優はジェシカ・アルバ)が車で国外へ脱出する時のBGMに使われていた。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。