2016_05
08
(Sun)12:00

マルクス・ベッカー ~ バッハ/ゴルトベルク変奏曲 

マルクス・ベッカーを聴くようになったきっかけは、とある「CD聴き比べ」ホームページで紹介されていたバッハの《ゴルトベルク変奏曲》。
今でもベッカーのゴルトベルクはほとんど知られていないと思うけれど、以前聴いた時以上に、柔らかさのある色彩感の美しく温もりのある音色と、細かな抑揚のある旋律の歌い回しが優美。
隅々まで丁寧なタッチと繊細な表現が情感豊かで、まるで優しく寄り添ってくれるような心地良さ。

音がやたらに込み入っているレーガーを弾きこなす人なので、ゴルトベルクでもカラフルな音色で声部を弾き分け、丸みのある立体感もある。
テンポが速く技巧的な変奏(第5・14・26変奏など)でも、技巧と力感を前面に押し出すこともないので、威圧感とか圧迫感を全く感じることなく、節度あるタッチが奥ゆかしくて、力みのない自然な趣きがとっても良い。
凝った装飾音を使っていないので、シンプルなトリルが時々入っているくらい。
リピートでも装飾音で変化をつけているわけではなく、音量が違うくらいなので、即興的な面白さはない。
こういう弾き方だと単調になりそうだけれど、AKGのヘッドフォンでじっくり聴いていると、タッチやアーティキュレーションがかなり凝っていて、全然飽きない。
軽めのルバートやとても細かな強弱の変化で短いフレーズのなかでも抑揚をつけたり、タッチによって音色と音の長短・硬軟がいろいろ変化していったり、とっても表情豊か。
ノンレガートも、少しテヌートがかった長いもの、スタっカートに近いもの、その2つの中間くらいの長さのものと、3種類ほど使い分けているように聴こえる。
スタッカート的なノンレガートでも、音に丸みがあるのでクリスピーさがなく、コロコロと玉が転がるようだったり、鳥がさえずるみたいな感じで、可愛い。
しっとりとした潤いのある響きと明るい音色でピアノの音がとても綺麗。特に響きが美しいのが、鐘が鳴るような第30変奏。
音が柔らくて軽やかなので、(第26変奏など)変奏やフレーズによっては、鳥が舞い上がっていくような開放感や自由さを感じる。

結構聴いてきたゴルトベルクの録音でも、コロリオフとカニーノと並んで、私のベスト盤。
それに聴けば聴くほど、他の誰よりもベッカーのゴルトベルクが自然に優しく寄り添ってくれるように思えてくる。
メンタル面で不安感があったりささくれている時に聴くと、不思議と心が落ち着いてくる。
ゴルトベルクにこんな癒し効果があったのは、ベッカーのゴルトベルクだけだった。

Goldberg Variations Bwv 988Goldberg Variations Bwv 988
(2002/1/15)
Markus Becker

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4 Comments

かかど  

こんにちは。

良いですよねえ、このCD。ゴルトベルクのCDはピアノ盤だけでかなりの数が出ていますが、ここまで自然体で力みがない演奏というのは珍しいと思います。テクニックもしっかりしてますし音色もしっとりしていて美しいですし。第30変奏…クオドリベットは賛美歌のようにも聞こえます。肉体も精神も浄化されるようです。

ただ、残念ながら現在は廃盤なんですよね。ベッカーや録音の知名度の低さを考えると再発される可能性は低いと思います。私は幸運にも吉祥寺のディスクユニオンで720円でゲット出来ましたが。

2016/05/08 (Sun) 13:57 | REPLY |   

yoshimi  

 

かかど様、こんにちは。

ベッカーは、最近はhyperionから次々と録音を出していますから、実力のある人ですね。
それにしては、レーガー全集はあまり知られていないと思いますし、ゴルトベルクとなるとなおさらです。
何度か聴き直しましたが、カニーノよりも自然な趣きが好きですし、私にはコロリオフと双璧というところです。
レーベルがcpoなので、別レーベルがライセンス盤を出さない限り、再発売されることはないでしょうね。
試聴した感触が良かったベートーヴェンのソナタ集もそのうち買おうかと思って
います。

2016/05/08 (Sun) 18:50 | EDIT | REPLY |   

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2016/05/11 (Wed) 10:46 | REPLY |   

yoshimi  

 

コメントへのお返事です。

突然起こる耳鳴りは、最初のうちはなかなか慣れることができずに、途方にくれてしまいますね。
ブログ記事がお役に立ったようでとても嬉しく思います。

どういう音が耳鳴りに効果があるのかは、個人差がかなりあります。
私も耳鳴りがあまり気にならなくなってから、自然音を試したことがありますが、フリーソフトでも自然のそのままの音でも、それなりにマスキングできました。
でも、一番マスキング効果があったのは、どこでも聴こえる日常生活騒音でした。

耳鳴りに”慣れる”という点では、ピアノ演奏とクラシック音楽が最も効果が高かったのですが、これは日常的に慣れ親しんでいることと、もともと好きな音楽だったので、メンタル面での鎮静・癒し効果も高かったからでしょう。

耳鳴り対策としてのクラシックなら、1/f ゆらぎ・倍音の多いモーツァルトを勧める人が多いのですが、バッハ音楽も同様の特性を持っていますし、何より好みに合う音楽を聴くのが一番です。
血流不良が要因になっている耳鳴りであれば、足の甲のカイロと鉄分サプリも効果があったのだと思います。

私も子供の頃はピアノのレッスンが嫌いでサボっていましたが、それでも高校卒業までの10年間ほどレッスンは続けました。
結局、それが数十年後に、耳鳴りという災難から思いがけず私を助けてくれたことで、音楽の持つ力の大きさがわかりました
これからもピアノやクラシックを聴き続けていかれると、得られるものがいろいろあると思います。
バッハに限らず、素晴らしい音楽が他にもたくさんありますので、いろいろ聴いてみてくださいね。

2016/05/11 (Wed) 22:58 | EDIT | REPLY |   

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