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ホームベーカリーで塩麹パン
とても美味しい全粒粉入りハードベーグルのレシピの最後に、「酒粕、塩麹を入れてます!栄養も旨味もUPして、おすすめです!」と書かれていた。
酒粕は冬しか買わないので、常備している自家製塩麹だけを加えた食パンを早速作ってみることに。
たぶん酒粕を入れるとチーズみたいな風味になって、さらに美味しくなりそう。冬になったら、酒粕も入れてみよう。

↓の研究論文を読むと、塩麹に含まれる酵素のアミラーゼは、デンプンを分解して糖を作り、プロテアーゼはタンパク質を分解してアミノ酸を作るという。
ということは、パンの原料である小麦粉のデンプンから糖が作られると、イーストの餌が増えるし(モルトと似た効果)、アミノ酸は旨味につながる。塩麹を入れると、パンが膨らみやすくなり、旨味も増すという仕組みらしい。

「塩麹の酵素活性と食味との関係」(大阪府立園芸高等学校バイオ研究部、徳重 潤、化学と生物Vol. 52, No. 4, 2014)

塩麹で旨味倍増食パン(HB) [cookpad]
このレシピだと、塩麹が粉量比5%。砂糖・乳製品もたくさん入れているので、かなりふわふわでボリュームあり。
リーンなパンしか焼かないので、このレシピは使わず、いつもの配合に塩麹を少量足すだけで良さそう。

試作したのは、5種類。
自家製塩麹の塩分濃度は約11%(60℃のお湯180g、ますや乾燥米こうじ100g、塩30g)。

(1)ロデブ風食パン
オーベルジュ(準強力粉) 160g
ライ麦粉(ママズキッチン) 20g
水 144g
塩(赤穂の天塩) 2cc分
塩麹 小さじ1(約8g)
モルトパウダー 約0.8cc分
あらなみの本にがり 2滴
ドライイースト(赤saf) 1cc分
※パナソニックSD-BH106、天然酵母コース(7時間)

室温が高かったことと、塩麹とモルトパウダーを両方入れたせいで、かなり膨らんだ。
天辺はクラストが薄くて、フニャフニャ。空洞が多い。
塩麹を入れない配合よりも、多少甘みと塩気が強い気がしないでもない。
もともとライ麦入りで味が良いレシピなので、塩麹を入れても美味しさはあまり違わない。


(2)フランスパン風食パン
オーベルジュ(準強力粉) 180g
水 130g
塩(赤穂の天塩) 2cc分
あらなみの本にがり 2滴
塩麹 小さじ1(約8g)
ドライイースト(赤saf) 約0.8g
※タイガーKBH-V100、フランスパンコース(3時間40分)

塩麹の効果を確認するため、モルトパウダーは入れず。
室温が高いので過発酵しないように、ドライイーストを付属レシピよりも2割以上減らしたので、あまり膨らまず。
ふっくらと形良く、焼色はいつもよりも濃く、天辺までこんがりしっかり焼けて、空洞はなし。塩麹を入れたせいか、側面はちょっと焦げ気味。
クラムはツヤツヤ光った糊状になったので、チャバタ風食パンみたい。
塩麹の甘みと塩気で、淡泊なオーベルジュがかなり美味しくなっている。
これなら、キタノカオリやタイプERでチャバタ風食パンを焼かなくても、それに近いくらい美味しい。
リスドォルで焼いても、かなり美味しくなりそう。
ドライイーストを使って、長時間発酵もさせていないのにこの美味さは、塩麹効果。


(3)フランスパン風食パン
タイプER(北海道産準強力粉) 175g
水 134g
塩(赤穂の天塩) 2cc分
あらなみの本にがり 2滴
塩麹 小さじ1(約8g)
ドライイースト(赤saf) 約0.8g
※タイガーKBH-V100、フランスパンコース(3時間40分)

フランスパンは捏ねすぎない方が良いそうなので、規定量の75%の配合でHBおまかせにすると、捏ねすぎになりそう。
ボウルにドライイースト以外を入れてざっと混ぜておき、HBが捏ね始めてから10分後に、材料をパンケースに全て投入。
タイプERはベタベタしやすい粉なのに、HBならベタついてもちゃんとまとまる。
タイプERには米麹が元々入っている。短時間ではあまり発酵しない気がしたので、塩麹も投入。
焼きあがりは、↑のオーベルジュを使ったフランスパン風食パンとほぼ同じ焼き色。
粉をタイプERに変えて、捏ね時間を少なくした効果か、オーベルジュよりも、クラムの気泡は大小いろいろ数も多く、ツヤツヤモチモチ。
タイガーHBの方がクラムに水分が残りやすいので、加水率80%弱でも、チャバタ風のクラム。
粉の味わいがオーベルジュよりも強いタイプERを使ったので、クラムがとても美味しい。
塩麹を入れたせいか、以前作ったタイプERのフランスパン風食パンよりも、さらに粉の味がしっかりしている。
パナソニックHBの食パンコースで作るチャバタ風食パンよりも美味しい気がする。


(4)ごはん食パン
イーグル 175g
水 95g
ごはん 120g
砂糖 5g
塩(赤穂の天塩) 1cc分
塩麹 小さじ1(約8g)
ドライイースト(赤saf) 約0.8cc
※タイガーKBH-V100、天然酵母コース(7時間)

ホシノ天然酵母は夏には(過発酵するので)使わないので、ドライイーストと塩麹を入れて、ごはん食パンを試作。
ドライイーストが粉量比1.25%と多い「ごはん食パンコース」ではなく、ドライイースト少量でできる「天然酵母コース」使用。
バターなしで砂糖は5gしか入れていないのに、他の試作パンと同じように、天辺までこんがりと濃い焼色がついて、よく膨らんだ。
ホシノ天然酵母のどっしりと重たいごはん食パンに比べて、軽くて、クラムがふわふわ~で、ホシノのような酒粕っぽい風味はない。やっぱりホシノのごはん食パンの方が風味がよくて、食べ応えあり。
でも、塩麹抜きでドライイーストで作るよりも、バターを入れなくてもふんわりしっとりして、ずっと美味しい。


(5)全粒粉ベーグル
オーベルジュ(準強力粉) 90g
パン用全粒粉 90g
水 90g
塩(赤穂の天塩) 2cc分
モルトパウダー 0.5cc分
塩麹 小さじ1(約8g)
ドライイースト(赤saf) 約0.8g
※タイガーKBH-V100、パン生地コース(一次発酵させない)
(参照レシピ)全粒粉50%長期冷蔵発酵ハードベーグル(酒粕と塩麹を加えるとさらに美味しいとのこと)

捏ね終了後、すぐに取り出して冷蔵庫で低温長時間発酵約20時間。
全粒粉が多い配合なので塩麹にモルトを入れたせいか、冷蔵庫内の温度が高かった(9℃くらい)せいか、倍くらいに膨らんでいた。
分割後ベンチタイム15分、成形後室温(28℃くらい)で30分発酵後、上面2分&底面1.5分のケトリング。
200℃で18分焼成後、しばらく放置。全体的にシワが全然なく、ツルツルピカピカにこんがり濃く焼けていた。
塩麹を入れないときよりも、多少甘みと塩気が強くなっている気はする。
発酵が進みすぎたようで、もっちり・ずっしり感が少なくなっている。
もともと全粒粉入りで長時間発酵させているので、プレーンよりも粉の味がしっかり美味しいベーグル。
強力粉か準強力粉を使ったシンプルなベーグルに塩麹を入れた方が、味の変化がわかりやすそうなので、次はプレーンベーグルで試作予定。


数種類試作した結果、塩麹を入れると、パンがよく膨らむ、天辺までこんがり濃い焼色がつく、クラムはしっとり・ふわふわ、甘みが強くなる。
ドライイーストを少し減らしても、塩麹を小さじ1だけ入れただけで、よく膨らむし、クラムはふわふわ。
塩麹はモルト代わりに使えるので、モルト不要。両方いれると膨らみすぎて、天辺が空洞になったり、大きな気泡が入ったりする。
ふわふわしたパンは好きではなく、塩麹をこれ以上減らすと旨味が減りそうな気がするので、ドライイーストをさらに減らしても良いかも。
試作したパンのなかで、一番美味しいと思ったのは、タイプERで作ったフランスパン風食パン。
もともと風味の良いタイプERの美味しさに、塩麹の旨味が加わって、シンプルな配合だから粉と塩麹の旨味がよくわかる。
ホームベーカリーでこれだけ美味しいパンが作れれば、申し分なし。



<レシピブック>

ホームベーカリーで「塩麹パン」 (マイライフシリーズ)ホームベーカリーで「塩麹パン」 (マイライフシリーズ)
(2013/1/26)
荻山和也


本書のレシピでは、粉量250gに対して、ドライイーストが3g(1.2%)、バター・砂糖もかなり入って、もともと膨らみやすい配合なのに、さらに塩麹を38g(レシピによって多少量が変わる)も入れている。
このレシピで焼いた食パンの写真をみると、普通の食パンなのに、クラムに大小の穴がたくさん入ってキメが粗いし、天辺はシワが多くてフニャとしていたり、キノコの笠みたいだったり。
ドライイーストを1.2%入れた上に、砂糖も塩麹(それにバター)も入っているから、少々過発酵気味?。

レシピで使っているのは、市販の塩麹(塩分濃度6~7%)。
本書で作り方を紹介している自家製塩麹(塩分濃度10%)を使う場合は、塩麹の量をレシピより3~4割減らし、さらに、完成後10日以内の塩麹を使うように指定している。
10日以降経過した塩麹を使うと、上手く膨らまないことがあるという。実例として、食パンの天辺が陥没している写真が載っている。
市販の塩麹の方は、製造後の経過日数に関係なく使える。

単純に考えると、自家製塩麹入りのパンが陥没したのは、加熱殺菌していないため熟成が進んだ(完成後10日以降の)塩麹を入れたため、過発酵したのでは?
元々塩麹の使用量が多いレシピなので、過発酵気味みたいだから、旨味は薄くなるとしても、塩麹の使用量を減らす(半分くらい?)とか、塩麹を減らさないならドライイーストを減らしたり、ドライイーストと塩麹は減らさずに早焼きコースで焼くとか、工夫する余地はある。

塩麹の酵素活性に関する情報を調べると、市販の塩麹と自家製塩麹では、材料の麹の種類や製造方法(製造時の温度、殺菌方法)などに違いがある。
塩麹は塩分濃度が低いほど酵素が活性化するのであれば、レシピで使った市販品よりも塩分濃度が高い自家製塩麹の方が発酵力は弱いはずだけど、市販品では低温殺菌している製品がある。
発酵力に影響すると思われる糖質分解系の酵素活性は、低温殺菌しない自家製塩麹(とアルコール添加した塩麹)で活性が高く、低温殺菌した塩麹では低活性になる。
(タンパク質分解系の酵素活性は、酵素の種類と低温殺菌条件によって、低下度がかなり異なる)

本書のレシピの塩麹は市販品なので、もともと自家製塩麹よりも酵素活性が低い低温殺菌した塩麹だった可能性がある。
自家製塩麹の方は、水を使っているので殺菌効果がなく、長期保存しても酵素の活動が低下せずに発酵が進むため、過発酵して天辺が陥没したと思う。
それを確認するには、本書のレシピと同じ塩分濃度の自家製塩麹と配合で実験してみないと、「10日以上経過した塩麹を使うと失敗する」ということが、どの程度起こるのかわからない。

市販品の塩麹を使う人は別として、自家製塩麹を使う場合、完成後10日以内の出来立ての塩麹しか使えないというのは、レシピとしてはあまり実用的ではない。
塩麹を作るには、気温の高い夏でも1週間くらいかかるので、まとめて300gくらい作って、3ヶ月くらいで使い切っている。たいていの人は数百グラムくらいまとめて作っているはず。
頻繁に塩麹を作るわけではないので、出来立ての塩麹を使える時期は限られる。
試作したときは、完成後1ヶ月くらい経った自家製塩麹を使用。塩麹を小さじ1だけ入れたら、普通に膨らむし、陥没もしなかった。
もともと膨らみすぎない配合にしているので、熟成した(少量の)塩麹を使っても、陥没するほど過発酵することはない。
市販品を使わない場合、完成後10日以上経った塩麹を使う場合の適正な量とか焼き方について、どういう工夫をすれば良いのかというアドバイスがレシピブックに書いてあれば良かった。


<塩麹の活性に関する参考情報>
塩麹について少し詳しい説明[日本味噌]
- 麹菌は、塩と混ぜられた時点で死滅する。麹菌の作った酵素は残っているので、物質の分解が進む。
- 酵素が活発に活動する温度帯は、30~50℃。ほとんどの酵素が80℃以上で壊れて、酵素の働きが止まる。
- 酵素は、塩分が低いほうが活性化する。塩分を低くすれば、熟成が早まる。

食塩が塩麹の加工プロセスと品質へ及ぼす影響の解明[長谷川・船越、あいち産業科学技術総合センター]
- 50℃で消化した場合、プロテアーゼ活性は食塩濃度が高いほど、α-アミラーゼ活性は食塩濃度が低いほど低下しにくかった。
- α-アミラーゼ活性は消化温度が高いと低下が著しく、プロテアーゼ活性はα-アミラーゼ活性ほど温度に影響されなかった。
- 塩麹を5℃、25℃、35℃で12週間保存した場合、35℃ではα-アミラーゼ活性の低下が認められた。

市販塩麹製品と自家製塩麹中の酵素活性比較[阿部・小針・秋田,実践女子大学生活科学部紀要第 50号,171~ 176,2013]
市販製品と自家製の塩麹の酵素活性を比較した面白いデータ。
低温殺菌(65℃ 30 分間)している市販製品は、自家製塩麹よりも酵素活性が低い。
特に、発酵力に影響すると思われる糖質分解系の酵素活性は、自家製塩麹とアルコール添加試料の活性が高く、市販品ではいずれも低活性。
低温殺菌処理した自家製塩麹では、非処理の1/3 程度まで活性が低下していたが、市販塩麹はそれよりもさらに活性が低い。

- 自家製試料の酵素活性を100 としたとき、低温殺菌試料では、α-アミラーゼが2% と最も低くなり、酸性カルボキシぺプチダーゼが93%と最も高かった。酸性プロテアーゼ、糖化力、グルコアミラーゼ、中性プロテアーゼは26%から49%と中間程度の活性を示した。一方アルコール添加は酵素活性にほとんど影響しなかった。
- 市販の塩麹の酵素活性を自家製塩麹の酵素活性と比較した場合、糖化系酵素活性に比べタンパク質分解系酵素の活性が相対的に高かった。この理由の一つとして、自家製塩麹に使用した米麹は漬物用や甘酒用の米麹であり糖化系酵素の生産性の高い白麹菌(分生子の色が薄い黄麹菌)が使用されているためと考えられる。
また、タンパク質分解系の酵素活性が高かった市販塩麹は、タンパク質分解系酵素の活性が高い(味噌製造用の)麹菌を塩麹製造用に使用している可能性が考えられる。
- 自家製の塩麹製造法には、米麹に塩と60℃のお湯を加え酵素の失活を抑えつつ発酵を促進し、同時に雑菌抑制効果を期待する方法もある。(→私の自家製塩麹はこの作り方)

tag : ホームベーカリー

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はじめまして。

私もパンを焼くのが好きで、最近塩麹が入ったものを好んで焼いています。
HB ですけれど。

塩麹の効果についてとても深く考察してくださって、勉強になりました。ありがとうございます。

今度ベーグル焼いてみたいです。
 
どり様、はじめました。
コメントどうもありがとうございます。

私もいつもはHBで食パンを焼いてます。ベーグルは、発酵させやすいので室温が高い季節に作ることが多いですね。
「全粒粉50%長期冷蔵発酵ハードベーグル」は、粉の味も歯ごたえも良くて、美味しかったです。

塩麹を入れると膨らみ・焼き色・味が良くなるので、モルトパウダーの代わりに入れることも多くなりました。淡泊な粉の方が塩麹効果がよくわかるように感じます。
いろいろ調べていると、塩麹効果の理屈がわかって、なるほどと思いました。ご参考になったようで良かったです。

酒粕を入れると、チーズ風味がするらしいので、これも入れて試作するつもりです。
ダブル麹なので、膨らみすぎるかもしれませんが、美味しさも増すかも...と期待してます。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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