ユーリ・エゴロフ 『Autumn Songs』

2016.07.15 18:00| ♪ ユーリ・エゴロフ
amazonで注文後、英国から9日ほどで届いたユーリ・エゴロフの新譜『Autumn Songs』。

Youri Egorov:Autumn Song Youri Egorov:Autumn Song
(2016/4/1))
Youri Egorov

試聴ファイル(amazon.fr)

<収録曲>
チャイコフスキー:主題と変奏ヘ長調 Op.19-6(録音:1974年11月3日)
チャイコフスキー:四季 Op.37bisより10月『秋の歌』(録音:1974年11月3日)
ショスタコーヴィチ:前奏曲とフーガト長調 Op.87(録音:1974年11月3日)
リスト:パガニーニの主題による大練習曲 S.141より『ラ・カンパネッラ』(録音:1974年11月3日)
バルトーク:ピアノのための組曲 Op.14(録音:1981年5月25日)
ブラームス:3つの間奏曲 Op.117(1983年4月22日)
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第3番イ短調 Op.28(1983年5月6日)
D.スカルラッティ:ソナタ集~ニ短調 K.9、ニ短調 K.32、ロ短調 K.87、ト長調 K.125、ト長調 K.159、イ長調 K.322、ロ長調 K.380、ヘ長調 K.518(録音:1985年10月25日)
ラヴェル:鏡(録音:1987年3月28日)
チャイコフスキー:四季 Op.37bisより10月『秋の歌』(録音:1987年4月24日)

CDのブックレットは、作品解説ではなく、エゴロフの亡命前後の演奏会、特にCDに収録されたリサイタルの様子とレビューを中心に書かれており、エゴロフの演奏スタイルやピアニストとしてのポリシーがよくわかる。

チャイコフスキーには情念過多なロシア的憂愁を感じるので、《舟歌》と《ピアノ協奏曲第1番》くらいしか聴くことがない。
エゴロフの弾く《主題と変奏》《秋の歌》には、そういうベタ~としたしつこさと重たさがないので、普通に聴ける。
特に《秋の歌》は、メロディアスな旋律に儚げな憂いと哀感が漂うとても叙情美しい曲。

Youri Egorov Tchaikovsky The Months Of The Year op 37b part 3 ( VARA radio-live-recording 、December 19,1976)
「10月(Autumn Song)」は、2:49~。(CDに収録されたライブ録音より2年後のもの)


曲自体が好きなショスタコーヴィチ・バルトーク・プロコフィエフの3曲は、線のしっかりした力強い打鍵が爽快。
ショスタコーヴィチ《前奏曲とフーガ第3番》は、厳粛で鐘を打ち鳴らすような力強い響きで始まり、中間部はまるでブリテンのピアノ曲を連想するような和声と現代性を感じさせる。

バルトーク《ピアノのための組曲》はアレグレット、スケルツォ、アレグロ・モルト、ソステヌートの4曲構成。
アレグレットはちょっと諧謔なドビュッシー風、スケルツォはプロコフィエフ風。
アレグロ・モルトはバーバリスティックでちょっとミニマル風?。何かに追い詰められてような焦燥感がある。
最後のソステヌートには、静けさの中に神秘性や不気味さが漂う。

バルトークに続いて、和音連打で始るプロコフィエフ《ピアノ・ソナタ第3番》を聴くと全然違和感がない。
8分余りの短いソナタでも、プロコフィエフらしい力感に妖艶で幻惑的な旋律と和声の響きが詰め込まれた濃密なソナタ。
プロコフィエフのソナタは第7番がやたらに有名だけど、この3番や6番、8番はかなり好きな曲。

エゴロフのアンコール曲の定番、リスト《ラ・カンパネッラ》
軽やかで粒立ちの良い打鍵と美しく繊細で密やかな高音の響きが美しい。ラストの力強い盛り上がりがドラマティック。

ちょっと篭った響きのブラームス《3つの間奏曲 Op.117》
カッチェンの演奏と比べると、ルバートはあまり強くなく、起伏もそれほど大きくつけていない。
最初の2曲は色調が明るめで、寂寥感や陰鬱さはやや薄いけれど、最後の曲はかなり重たく鬱々。


D.スカルラッティ《ソナタ集》。いつも聴くのはポゴレリチ(たまにミケランジェリ)。
スカルラッティのソナタ自体はそれほど好きではないけれど、エゴロフのスカルラッティは、バロック風とは少し違う(と思う)ところがとても魅力的。あまりに素敵なので何度でも聴いてしまう。
ハープシコード風の音色やタッチを模したものではなく、ピアノの(打楽器的な)弾力のある力強さと響きの美しさで表現されているのだと思う。
ピアノの音がかなり近くから聴こえて、ちょっとデッドな音質なので、ピアニストの存在がリアルに感じられるような生々しさがある。

収録されている曲はほとんど知っている曲で、初めて聴いたのは最後のK518くらい。
CDのブックレットにいくつか載っている批評家のレビューによると、エゴロフ独自の解釈で弾かれているという。
緩徐系のソナタでは、ハープシコード風のノンレガートは使わず、(ペダルも時々使っている?)ピアノの響きがとても美しい。
トゥルルルル.....と粒立ち良く高速なトリルの響きが印象的。
端正で繊細な情感が漂ったとても叙情麗しいスカルラッティ。特に好きな曲のK87やK.380の美しさは格別。

急速系のソナタ(K125、K159、K518)は、ポゴレリチの奏法とは随分違う。
ノンレガートというよりはスタッカート風の歯切れよい打鍵で、かなり速いテンポで一気に引き込んでいく。強奏部分は力感強くてちょっとマニッシュ。
端正で軽快なバロック音楽というよりも、古典期以降のソナタみたいに聴こえる。
最後のK518は、スカルラッティのソナタにしては、ダイナミックでスケールの大きさを感じるソナタ。(打鍵の強さはともかく、モーツァルトやハイドンのソナタを聴いているような気分)
6分くらいの短い曲なのに、中規模のソナタを聴いたような充実感がある。

CDよりも、Youtubeの(別の)ライブ音源(↓)の方が残響が多くて、憂い漂う和声の響きがとても美しい。
緩徐系の曲は、CDのライブ録音(1985年)よりもテンポが遅く、ロマン派みたいにかなりメロウ。特にK870はテンポもタッチも全然違う。
でも、メロウ過ぎないCDの演奏の方が、逆に情感深さを感じる。

Youri Egorov plays Domenico Scarlatti, Six Sonatas
(Sonate L 33(K87) - 23(K380) -478(K125) - 483(K322) - 116(K518) - 423(K32)) (1976年録音?)



ラヴェル《鏡》で好きな曲は、「悲しげな鳥たち(Oiseaux tristes)」と「道化師の朝の歌(Alborada del gracioso)」。
このライブ録音は、録り方のせいか、私にはちょっと音の響き方がしっくりとこない.。(特に「道化師の朝の歌」)
ドビュッシーのスタジオ録音はエゴロフの響きの美しさがよくわかるので、ラヴェルもスタジオ録音(または音質の良いライブ録音)で聴きたかった。

最後の曲はチャイコフスキーの《秋の歌》(
CD1に録音されていたのは1974年の演奏で、こちらは1987年。同じ曲なのに演奏から受ける印象はかなり違う。
ちょうどエゴロフの亡くなる1年前のリサイタルで、病状がかなり重かった頃。
同年11月のリサイタルで弾いていた《楽興の時》と同じように、静けさのなかに沈み込んでいくような重苦しさや抑制された哀感のようなもの感じる。

ラヴェルの音質があまり好みではなかったこと以外は、どの曲の演奏にも惹き込まれるような魅力があって、この選曲・演奏とも大満足。
特に素晴らしいと思ったのは、私の好みから言えば珍しくも、チャイコフスキーの《秋の歌》とスカルラッティのソナタ集だった。

タグ:エゴロフ チャイコフスキー ショスタコーヴィチ リスト バルトーク プロコフィエフ スカルラッティ ラヴェル

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

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