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スティーブン・キング『デッドゾーン』(小説と映画)
ドナルド・トランプが米国大統領になりそうな勢いなので、思い出したのがスティーブン・キングの『デッドゾーン』。
キングの小説で読んだのは、『シャイニング』、『ペットセメタリー』、『ファイタスターター』、『デッドゾーン』。
観たDVD映画は『ペットセメタリー』、『デッドゾーン』、『ショーシャンクの空に』。どれも面白い。
『ペット・セマタリー』(原題は、わざとスペルミスして「セマタリー」にしている)は、ホラー映画でかなりコワイ。
亡くなった愛猫や家族を”ペットセマタリー”に埋めて生き返らせても、邪悪な精神が憑りついて、猫は凶暴化し、人間は殺人鬼になってしまう。
『ショーシャンクの空に』は、シリアスな脱獄ものだったので、原作がキングの作品だったとは今まで知らなかった。

そのなかでも、昔はSF大好きだったせいか、一番気に入ったのが『デッドゾーン』。
まず先に見たのが、クリストファー・ウォーケン主演&デヴィッド・クローネンバーグ監督による映画化作品。
前半は原作の大筋に沿った展開だったけれど、後半は結末に至る流れは同じでも、小説とは設定が違うところが多い。
それでも原作を読んだときに感じる侘しさや寂寥感、運命論は漂っていて、(『ザ・フライ』と『戦慄の絆』でかなり気持ちの悪いものがあった)クローネンバーグにしては、この映画は至極まっとう。
小説は上下2巻と結構ボリュームがあり、最初から最後まで一気に読んでしまったほどに面白かった。
映画は時間的な制約から詳しい背景・心理描写がかなり端折られているので、小説を読んだ方が深く味わえるものがある、
映画では登場していないシーンで、信仰にとりつかれた母親ヴェラがなくなる直前に、神が特別な力を授けてするべき事を用意しているのだから、神から逃げてはいけない、「務めと果たしなさい」と一人息子のジョニーに諭す。
これがラストのジョニーの行動へと結びつく重要な言葉になる。

『デッドゾーン』のあらすじ[Wikipedia]

『デッドゾーン』を思い出したのは、小説中の大統領候補スティルソンが、(本気かどうかはわからないとしても)「大統領に就任すれば核兵器の使用も排除しない」と繰り返し言っているドナルド・トランプを連想させるから。
大統領選の最終投票日間近になって、ヒラリー・クリントンのメール問題が再燃したために、トランプが支持率で逆転したりする状況では、この映画が現実味を帯びた予言に思えてきたりして。(11/9追記、どうしたことかトランプがまさかの大統領に。”地位が人をつくる”という言葉もあるけれど、この映画が未来を予言したビジョンだった....なんてことにならないように)

核兵器使用発言に懸念=「トランプ離れ」の一因に―米大統領[時事通信、8月14日]

The Dead Zone - Official Trailer
(Release Date: October 21, 1983)

Youtubeにある『デッド・ゾーン』の動画は複数ある。トランプを予言しているとか、トランプに言及したコメントを書いている人が何人かいたので、やっぱり同じ連想をする人がいた。

映画『デッドゾーン』では、事故の後遺症で予知能力を得た主人公ジョニーがその能力を使って、迷宮入りになりかけた殺人事件を解決したり、ホッケーで起こるはずの事故から教え子を救ったりというエピソードが続く。
偶然にも、タカ派の新進政治家グレッグ・スティルソン(マーティン・シーン)の演説会で彼と握手したジョニーは、スティルソンが将来米国の大統領になり、核ミサイルのボタンを押す未来を見てしまう。
事故で生き延びて予知能力を持ったのは、重要な使命を果たすための運命だと自覚したジョニーは、スティルソンをライフルで暗殺しようとしたが、子供を盾にしたスティルソンを撃つことができず、射殺される。
しかし、子供を弾除けにしたスティルソンの行動を撮影したカメラマンがその写真を公表したために、スティルソンは失脚する。
結局、ジョニーは「スティルソンが大統領になるのを阻止する」という目的を果たしたのだった。

原作とは大きく違う点がいくつか。
小説では、ジョニーが予知したビジョンは、スティルソンが核弾頭のボタンを押すという直截的なシーンはなく、戦争・破壊・死者といった混沌としたイメージ。
スティルソンがいかに危険な人物かを表す部分の出来事がたびたび登場しているし、ジョニーもスティルソンの経歴や彼にまつわる事件について大量の資料を収集して分析しているシーンもあるので、単にビジョンだけでスティルソン暗殺を決断したというわけではない。
映画だけではわからないスティルソンの危険性や、ジョニーの迷い、暗殺を決断・実行するプロセスなどが詳しく描写されている。

その伏線となっているのは、家庭教師をしていた教え子が参加する予定の卒業パーティ会場のレストランが落雷で大火災になると予言して、教え子(や友達)の命を救った事件。(映画では、氷上のホッケーで氷が陥没して溺死しそうになった事故になっている)
この落雷火災事故は、ジョニーが予知した出来事を防ぐべきかどうか深刻悩むことにつながるのに、映画では事故による犠牲者が少なく、事故を予知したジョニーのその後の迷いがあまり描かれていない。
原作では、100人近い学生が犠牲となった落雷火災を予知していたジョニーは、パーティを開催不能にする行動を実行すれば、死者がでることが防げたのではないかという自問自答する。
答えを模索するなかで、1932年にドイツにタイムトラベルしてヒトラーに偶然会ったら、どうするべきか?という問いを何人かに投げかけている。「殺す」という人もいれば、「入党して改革し、ヒトラーを追放する」という人もいる。
そのうちに脳腫瘍があり余命が限られていることがわかったジョニーに残された時間はほとんどなく、スティルソンが大統領になるのを阻止するために確実な方法は、「暗殺」しかないという結論に達する。

ラストシーンは、映画では、ジョニーが狙撃現場で亡くなったところで終わって、あまり余韻が残らない。
原作は元恋人のセーラがジョニーのお墓に訪れるシーン。このエピローグにははかない叙情感がある。

古い映画で色褪せてた映像が作品の持つ寂寥感にやけにマッチしているし、ストーリー自体も避けがたい使命を果たすことに抗えない運命論や透徹した諦観めいたものが流れているように感じる。
ジョニーを演じるクリストファー・ウォーケンの青白く乾いて生気を失った感じの容姿が、事故で生き延びて予知能力を持ったジョニーの悲哀感を醸し出していて、役柄にぴったりだった。


デッド・ゾーン〈上〉 (新潮文庫)
(1987/5)
スティーヴン キング



デッドゾーン(〇〇までにこれは観ろ! ) [DVD]
(2014/08/06)
クリストファー・ウォーケン



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こんにちは。

一時期映画鑑賞に熱を上げていて、クローネンバーグの映画もかなり観たんですが、「デッドゾーン」はすごく観やすかったですね。演出もプロットも至極オーソドックスで、「本当にクローネンバーグが撮ってるの?」という感じで。
キングの原作は読んでいないんですが、クローネンバーグにしては珍しく原作に準拠している話なのかと思っておりましたが、結構アレンジが加えられているのですね。ちょっと読んでみたくなりました。

それにしても「デッドゾーン」はマトモですが、全般的にクローネンバーグの映画は気持ち悪いですね。後になってフィリップ・K・ディックの小説を読んだ時に、クローネンバーグの世界と近いものを感じたのですが、やはりクローネンバーグはディックの大ファンだそうで。しかし、やはりクローネンバーグの作品の方が気持ち悪いですね。独特の生理的な嫌悪感があります。
 
かかど様、こんばんは。

私は20歳代前半に映画鑑賞にかなり凝って、よく映画館に行ってました。
クローネンバーグの映画を見たのもその頃です。2つしか見ていませんが、それだけで十分でした。

「デッドゾーン」は非常にマトモでしたね。
キングの原作もシリアスで、オドロオドロしいところは全く無いので、アウトラインは原作にほぼ忠実に展開しています。
いろいろ変更しているのは、主に上映時間と予算上の制約のためでしょう。
小説で特に重要な出来事のレストラン落雷火災シーンを実際に撮るとなると、かなり費用がかかりそうですし、上映時間も長くなるでしょうね。
核兵器ボタンを押すシーンの方が直截的でわかりやすいですし、説得力あります。

ディックは何冊か読みましたが、(麻薬中毒的?)白昼夢とか幻覚みたいな危うさを感じます。クローネンバーグの方は視覚的→生理的な気持ち悪さがあります。
「ザ・フライ」もかなり気持ち悪かったんですが(ストーリーは面白かったです)、「戦慄の絆」のラストは何とも形容しがたいグロテスクさと倒錯でもう何というか...。ほんとに生理的な嫌悪感を感じますね。まあ二度と見たいとは思いません。
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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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