2016_09
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(Sun)09:00

マルクス・ベッカー『Kiev Chicago ~ Pictures At An Exhibition & Jazz Improvisations』 

偶然見つけたマルクス・ベッカーの新譜(といっても2014年のリリース)は、珍しくもクラシック&ジャズのソロアルバム。
ベッカーがジャズを弾くというのは予想外だったので、同姓同名のジャズピアニストのアルバムかと思ったけれど、スクリャービンとムソルグスキーは普通のクラシックの演奏なので、やっぱりあのベッカーのアルバムだった。

クラシック(DISC1)は、スクリャービン《6つの前奏曲 Op. 13》、ムソルグスキー《組曲「展覧会の絵」》。
それに、マックス・レーガーの《即興曲集 Op. 18 - 第1番 アレグレット・コン・グラツィア》がDISC2に入っている。
ジャズ(DISC2)は、ピアノ・ソロのインプロヴィゼーション。ベートーヴェンを主題にした曲と、モダン・ジャズ、スタンダード、ヴォーカル曲などをピアノソロで弾いている。
タイトルが地名だったので「キエフとシカゴ」でのライブ録音集...と思ったけれど、そういうことではなく、全てハノーヴァーでのスタジオ録音。

Kiev Chicago - piano solo ~Pictures at an Exhibition & Jazz Improvisations  Kiev Chicago - piano solo ~Pictures at an Exhibition & Jazz Improvisations
(2014/11/18)
Markus Becker

試聴ファイル
<収録曲>
スクリャービン/6つの前奏曲 Op. 13
ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」
マルクス・ベッカー/マグネティック MagnetiC
ヴィクター・ヤング/ビューティフル・ラヴ Beautiful Love
フリードリヒ・グルダ/フーガ Fugue
チック・コリア/子供の歌 - 第6番 イントロダクション Children's Song No. 6: Introduction
ラッセル・フェランテ/パス・イット・オン Pass It On
マリア・グレベール/エコー・オブ・ア・セレナード Echo of a Serenade
Tom Canning / Jay Graydon / アル・ジャロウ/イージー Easy
チック・コリア/スペイン Spain
マックス・レーガー/即興曲集 Op. 18 - 第1番 アレグレット・コン・グラツィア Improvisationen, Op. 18: I. Allegretto con grazia
ジュローム・カーン/5月にしては暖かい - 君は我がすべて Very Warm for May: All the Things You Are

ベッカーのホームページに試聴音源あり。
6曲(楽章)だけピックアップされていて、その曲だけ最初から最後まで聴ける。(”Beautiful Love”も載っている)
(アクセスするとすぐに5曲の音源が一斉に鳴りだすので要注意)


                      


ライナーノートはベッカー自身が書いている。
- アルバムタイトルの'Kiev'は19世紀終わりのロシア・ロマンティシズム、'Chicago' はジャズの世界を表している。
- ベッカーは、子供時代から鍵盤楽器で即興演奏したり、Knabenchor Hannover(合唱団)でアルトを歌ったりしていた。
- ジャズバンドを結成して、ダンスミュージックやジャズ・ロック、ディキシー、フリージャズ、ロックなどを劇場で演奏していた。
- 1982年にピアノの勉強を始めてから、バンド活動は止めたが、今までのレパートリーはずっと忘れずにいた。

amazonの試聴ファイルを聴いてもCDを買うかどうか迷ったので、NMLで全曲聴いてみた。(こういうときにNMLが使えるのはとっても便利)
スクリャービンの前奏曲集は、短調の曲のメロディが綺麗で印象的。
《展覧会の絵》は、タッチが軽くて柔らかく、テンポも力感も抑え気味。品は良いのだけど、額縁に飾った絵を観ているみたいな穏やかな感じがする。
私のベスト盤は、Berlin Classicsのレーゼルに、音質が良ければカッチェンのライブ録音もドラマティックで好きなので、その2つのと比べると、ちょっと緩く感じないでも...。
私の好みとしては、もっとタッチに力感・量感とシャープさがあって、かっちりとした構築感や重みのある方がいい。

このアルバムが面白いのは、DISC2のソロピアノによるジャズ・インプロヴィゼーション。(ただしチック・コリアの《子供の歌》のみサクソフォンとのデュオ)
特に気に入ったのが、《MagnetiC》、《Beautiful Love》、《Echo of a Serenade》の3曲。
《MagnetiC》は、ベートーヴェンの《自作主題による32の変奏曲》を主題にしたジャズ風変奏曲。原曲をジャズ風にアレンジしたのは、ベッカーが初めてかも。
《MagnetiC》(最後は大文字の”C”)は、強く引き付ける魅力的なハ短調(C minor)...という意味らしい。
冒頭のフレーズを聴いただけで、ベートーヴェンの変奏曲のモチーフだとすぐにわかる。
テンポと曲想が異なる幻想曲風とジャズ風が交錯して、本業のジャズピアニストがアレンジするよりは、ほんのりジャズテイストのある現代音楽的幻想曲みたいで面白い。

他のジャズ曲は、有名なコリアとグルダの曲はもともと好きではなく、それ以外は全然知らない曲ばかり。
美しいメロディの曲が多いし、クラシックのピアニストが弾いたジャズなので、スイング感があまりなく、クラシカルな品の良さがあるのが、私には良いところ。
ジャズを弾いても、タッチが軽くなることなく、しっとりとした潤いと深みがあるベッカーのピアノの音がとても綺麗。

有名なスタンダードナンバーらしい《Beautiful Love》はタイトルどおり旋律がとても綺麗。(知らない曲だったけれどメロディは聴いたことがある)
《Echo of a Serenade》は、 メキシコの作曲家マリア・グレベール(“Cuando vuelvaa tu lado”が有名)が作曲したルンバが原曲。
ベッカーが編曲したピアノソロは、五音音階によるシンプルな旋律と、バスのオスティナートがとても心地良い。
右手の旋律がさざ波のように流れて爽やか。伸びやかで開放感溢れるとても素敵な曲。

ベッカーの弾くジャズピアノは、思いがけなく私の好みにぴったり。
演奏時間が一番長い《展覧会の絵》が私にはもう一つピンとこなかったので、アルバムは買わずに、、《MagnetiC》、《Beautiful Love》、《Echo of a Serenade》の3曲だけitunestoreでダウンロード。


"Beautiful love" - Victor Young - Korg SV1- piano solo(ベッカーの演奏ではない)




ウクレレで多重録音した”Echo of a Serenade”。

The Echo Of A Serenade


タグ:ムソルグスキー スクリャービン ベッカー

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