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デュシャーブル ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番&第3番(DVD)
デュシャーブルが2002年に録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集(Lorcom盤)は、プレス数があまり多くはないようで、今はレーベルの在庫切れで廃盤状態。国内外のamazonサイトでは、高額なプレミアムがついているらしく、買う気にならない。
デュシャーブルのベートーヴェンは、ピアノ・ソナタ(Erato国内盤)が素晴らしく良かったので、この協奏曲集を聴けないのがとても残念。

Beethoven: Concertos Pour PianoBeethoven: Concertos Pour Piano
(2011/2/28)
Duchable, Ensemble Orc Paris, Nelson

試聴ファイルなし
※CD3枚とDVD1枚のセット。定価を調べたら6900円くらいだった。円高時代なら、もっと安かったのかも。

同じ演奏を収録したDVDがamazonの英国サイトで販売されているのを発見。日本のamazonではDVD情報が載っていなかったので、発売されているのがわからなかった。
RegionALLのPAL方式なので、パソコンのDVDドライブなら問題なく見れる。
DVDは3巻に分売されていて、全て2枚組。CD&DVDセットより、DVDシリーズの方が先にリリースされていた。
DVDの1枚目はコンチェルト演奏とピアノソロのアンコール演奏。さらに、プロデューサーとの対話方式でデュシャーブルがスタインウェイピアノとフォルテピアノを使って演奏解釈を語る映像が収録されている。
2枚目のDVDは特典映像集。楽譜付きの演奏映像とマルチカメラアングル映像(各々一部の楽章のみ)、リハーサル、インタビュー、メイキング映像などを収録。
DVDには、実際のコンチェルトとアンコール演奏に加えて、4時間前後の盛りだくさんな特定映像が収録されているので、廃盤で高額のプレミアムが載っている全集版CD(3枚)&DVD(1枚)セットを買うより良さそう。
「皇帝」はほとんど聴かないので、ピアノ協奏曲第1番~第4番が収録されているDVD2本を早速購入。(1週間くらいで到着。amazon.ukで買うと届くのがいつも早い。)

このCDとDVDのレーベルはeratoではなく、Lorcom(DVDにはhamoniamundiが参加している)で、2002年の録音。
かなり力を入れて制作された印象のDVDシリーズで、音のあまり良いとは思えないErato盤CDに比べて、このDVDは音がはるかに良い。(録音エンジニアは日本人Koichiro Hattori氏。メイキング映像にも映っている)
第1番~第4番の演奏もそれ以外の特典映像も両方ともとても楽しめたので、結局、「皇帝」のDVDも買ってしまった。

Beethoven - Piano Concertos Nos. 1 & 3 (Nelson, Duchable) [DVD]Beethoven - Piano Concertos Nos. 1 & 3 (Nelson, Duchable) [DVD]
2 Feb. 2004
Duchable, Ensemble Orc Paris, Nelson

試聴ファイルなし/a>

<収録内容>
Disc 1:
Historical, biographical and musical context of the concerti
Full performance of both concerti with optional audio commentary
Concerti explained and illustrated
Encore – last movement of the Tempest Sonata

Disc 2:
Listening with the score
Concerti in multi-angle vision – viewer’s choice of player cams
Pianist and conductor in rehearsal
Craftsmen in Sound - artists’ rehearsal/piano tuner at work/technical making of the DVD
Musical tour of the Royal Opera House Historical, biographical and musical context of the concerti
Full performance of both concerti with optional audio commentary
Concerti explained and illustrated
Encore – last movement of the Tempest Sonata

デュシャーブルは”レコーディングが嫌い”だと『音楽の友』のインタビューで言っていたけど、オケと協奏することは好きなんだそう。
ピアノ協奏曲を演奏する姿を見ていると、エネジー溢れるように機敏な動きで躍動感があり、オケの方をたびたび見たり、オケの演奏の流れに身体をシンクロさせたり、オケとの対話を楽しんでいるように見える。
この頃にはすでに”クラシック業界”でのコンサートピアニストの表舞台から去ることを決めていたようなので、オケとのレコーディングの機会もほとんどなくなるだろうと思っていたからだろか。

このデュシャーブルの演奏を見ていると、オケとピアノがどういう掛け合いをしているのか、視覚的によくわかる。
デュシャーブルの演奏は、いままでいくつかのCDで聴いた通り、急速楽章では速めのテンポ、硬質で粒立の良い音で、歯切れよく弾力のある精密な打鍵、濁りない品良く美しいソノリティ。
強めのアクセントやリズムを使った音型が明瞭なフレージングで、起伏に富んで引き締まった演奏は、見ても聴いても爽快。
演奏する姿には、深く感情移入するような表情とか大仰なところはなく、自然に身体が弾むようにリズミカルできびきびとしている。
演奏中の手指の形が整っていて、無駄な動きが少なくポジションも安定している運指がスムーズ。速く細かいパッセージでも、粒が揃って、乱れることがないし、速く細かいトリルでも一音一音が明瞭に聴こえる。
こういう細部まで明晰なピアノを聴くのはとても気持ち良い。

デュシャーブルのコンチェルトを聴く面白さの一つは、自作カデンツァを弾いているところ。
この曲(に限らないけど)で自作カデンツァを弾く人は少ない。私が聴いたことがあるのは、バックハウスとケンプ、他にも数人いたと思う。
デュシャーブルのカデンツァは、曲中で使われている旋律が次々に織り込まれているので、本編との連続性がよくわかる。
特にカデンツァからトゥッティへの移行部では、オケが弾き始めるフレーズと違和感なくつながるように、カデンツァの終盤部が工夫されている。

La cadence de François-René Duchâche dans le 1er mouvement du 3ème concerto de Beethoven




<ピアノ協奏曲第1番>
第1楽章はかなり速い。硬質でシャープなタッチでも、音質は重くないので、演奏も軽快。オケがピアノのテンポについていくのが精いっぱいでという感じなので、せかせかした弾き方に聴こえる。
第3楽章も速いけれど、これくらいのテンポで弾く人は多いし、慌ただしさはなく、曲想に合っている、
DVD2のリハーサル(というか、指揮者のネルソン、プロデュサー?たちとの打ち合わせ)映像では、自分がどういう風に弾きたいかピアノで実演しながら、ネルソンたちに説明している。
ネルソンが、「正直なところ、そのリズムは鋭すぎる」とか、いろいろ意見を言うのだけど、デュシャーブルはなぜこういう風に弾くのか理由を言っているので、結局彼の弾きたいように弾いたみたい。


<ピアノ協奏曲第3番>
テンポは速すぎることなく、ちょうどよい感じ。第1楽章を聴いていると、ペダルは比較的少なめで、ときどきノンレガートに近いタッチで弾いているので、全体的に響きの重なるが薄く短く、音響的にすっきり聴こえる。
タッチが軽快でキビキビとしてリズミカルなわりに、さらりとした情感が爽やかで、意外にリリカル。
第218小節でピアノがアルペジオで段階的に駆け上がっていくところでは(ここはとても好きな部分)、ペダルを何回か踏み直して、残響の重なり少なくしている。
楽譜の指定では、ペダル踏みっぱなしなので、ペダルで残響を重ねて華やかに弾く人が結構多い。
第2楽章の演奏解釈映像を見ていると、フォルテピアノよりも残響が長いモダンピアノでは、和声が変化するたびにペダルを踏み直さないといけないと言っているので、この第1楽章でもペダルの踏み直して響きの長さと重なる具合を調節しているように思う。
デュシャーブルの弾く5曲のコンチェルトのうち、一番好きなのがこの第3番。その次は、たぶん「皇帝」。デュシャーブルのタッチなら、力強さのあるこの2曲がよく似合っていると思う。


<特典映像>
第1番と第3番の演奏解釈をデュシャーブルが説明している映像(DVD1:第1番約8分、第3番約17分)では、スタインウェイとベートーベンの時代に使われていたフォルテピアノを使って例示し、該当部分の実演映像も挿入されているので、理解しやすい。
フォルテピアノとモダンピアノでは、奏法や響きの違いがある。フォルテピアノでは、ペダルを持続させても、もともと残響が短いために響きの重なりが薄くなる。それに対して、モダンピアノだと響きが重なりすぎるので、ペダルを踏み直さないといけないという。
オケとピアノがどういう風に対話しているのか、オケパートの重要なモチーフがピアノパートにどう使われているのか、デュシャーブルの自作カデンツァで曲中のモチーフをどう取り入れているのかとか、こういうことを知っておくと演奏をさらに楽しめる。
第3番第1楽章の自作カデンツァの終盤では、後に続くトゥッティの冒頭でドラムの弾く旋律をカデンツァ(左手の低音部)に織り込んでいるので、トゥッティへの移行がスムースで自然に聴こえる。(デュシャーブルは、ベートーヴェンやリストなどが書いたカデンツァの終結部に満足できなかったと言っていた。)

デュシャーブルによると、第1番の第3楽章には、ハイドンへのオマージュとなる旋律が入っているし、第3番はブラームスのピアノ協奏曲第1番と共通する部分が多い。実際にハイドン、ブラームスの曲中の旋律を弾いて、例示している。
それを聴くと確かに似たところがあるし、ブラームスのピアノ協奏曲第1番はまるでベートーヴェンの6番目の協奏曲のようだと言っている。

第3番の第2楽章の説明に入った時に、デュシャーブルが1998年に美しいコラールのようなトゥッティを聴いたとき、ピアニストという職業を辞めようと決心した。まだ弾き続けているのは、音楽的な遺言になるだろう、と突然話が脱線。

DVD2で気に入った特典映像は、リハーサル風景と、ピアニストに絞ったカメラアングルで見る演奏映像。
リハーサル風景では、デュシャーブルがどう弾きたいのか、オケにどう弾いて欲しいのかという考え方がわかる。(協奏曲を弾くときは、こういう打ち合わせをするのが普通なんだろうか。)
ピアニストに絞ったカメラアングルだと、ピアニストの手指の動きを全て見れるし、ピアノが休んでいるときのデュシャーブルの動きがわかって、面白い。
コンチェルトとアンコールの演奏映像だけでなく、特典映像も充実していて、予想以上に内容の濃いDVDだった。高価なCD&DVDセットを買うよりも、このDVDシリーズ3巻を購入して大正解。


<アンコール>
アンコールとして、私の好きな「テンペスト」の第3楽章を収録。
デュシャーブルのErato国内盤CD(1995年のスタジオ録音)にも収録されている曲なので、聴き比べるとCDの方が残響が多く、響きが流麗で綺麗。
DVDは、ややデッドで少し木質感のある音色で、音に生々しい力強さに凝縮感と臨場感もある。スタジオ録音よりも、タッチが軽やかで鋭い。
演奏解釈自体はほとんど変わらないけれど、実際に弾く姿を見るのはやっぱり面白い。
もともとクリアで綺麗な響きを持っている人なので、アルペジオが重なった時の響きが特に綺麗。
それに、左手の旋律が明瞭で力強く浮き上がってくるし、右手と左手の旋律の掛け合いがよくわかる。
クリアで色彩感のある音の美しさとしっかりした構成感のある明晰な演奏なので、今まで聴いたなかでは、レーゼルの再録音(国内盤)と同じくらい(かそれ以上に)に好きな弾き方。

Beethoven : Sonate n°17 "la Tempête" (The Tempest) - Allegretto, François-René Duchâble



<ディスコグラフィ>
Discography of François-René Duchâble

tag : ベートーヴェン デュシャーブル

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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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