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デュシャーブル ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第2番&第4番(DVD)
Beethoven - Piano Concertos Nos. 2 & 4 (Nelson, Duchable) [DVD]Beethoven - Piano Concertos Nos. 2 & 4 (Nelson, Duchable) [DVD]
2 Feb. 2004
Duchable, Ensemble Orc Paris, Nelson

試聴ファイルなし


Disc 1:
Historical, biographical and musical context of the concerti
Full performance of both concerti with optional audio commentary
Concerti explained and illustrated
Encore – Appassionata Sonata

Disc 2:
Listening with the score – Concerto No. 4
Concerto No. 4 in multi-angle vision – viewer’s choice of player cams
Interview with John Nelson
Portrait Gallery
Craftsmen in Sound - Making of the DVD Part 2

ピアノ協奏曲第2番はモーツァルト風ベートーヴェンなので、誰の演奏を聴いても、あまり好きにはなれない。
でも、第3楽章だけは、軽快・快活で楽しい。
第2番のカデンツァも、曲を聴いた印象では、ルシャーブルのオリジナルらしい。

ピアノ協奏曲第3番と並んで好きな第4番の第1楽章は、速いテンポに、硬質で弾力のあるノンレガート気味のクリスピーなタッチで、キビキビと快活。
コロコロと粒立ち良い音が歯切れよく、アクセントがよく効いていて、リズムも鋭くリズミカル。弱音部や緩徐部に入っても静寂な雰囲気は薄い。
今まで聴いていた演奏では、アラウはかなりスローテンポで全体的に静けさが漂い、カッチェンはテンポが速いのは同じでも少し丸みのある響きと静けさ漂う弱音で静動のコントラストが濃く、レーゼルはゆったりしたテンポと柔らかいタッチで優美。
デュシャーブルの演奏は、印象がかなり違うので、最初に聴いたときは、ちょっと賑やかすぎる気が....。
でも、演奏解釈を聴いていたら、こういう弾き方になるのは納得。(それでも、快活で賑やかすぎて、私が好きな弾き方ではないのは変わらないけど)
第2楽章は、もともと明るい音色の人なので、静寂でありつつも陰翳が濃くはなく深淵にもなり過ぎず、淡い叙情感。
第3楽章は、第1楽章よりも少し軽やかなタッチで軽快。第1楽章よりも優美な感じがする。


演奏解釈を語る映像は、一般的な作品解説を読むよりも、ピアノで具体的に例示されるのでわかりやすい。
それに、知らなかったこと、気づかなかったことが、いろいろ聴けて面白いし、演奏を聴くうえでも役に立つ。
特に、(あまり好きではない)第2楽章はピアノとオケの旋律が演劇的な役割としてデュシャーブルが解釈しているので、こういう聴き方をしたことがなかった。

- 第4番は、特に第1楽章の難しさのために、”軽視(neglect)”されている。第3番や第5番よりも、”evasive”(曖昧な、迂遠な、婉曲的)で、つかみどころがなく、より深く、異質(disparate)で、モザイクのような曲。
- スケール、アルペジオ、トリルなど技巧的なパッセージが多くて、ヴィルトオーソ的。
- デュシャーブル(と指揮者のネルソン)の解釈では、19世紀より18世紀に近い曲。第1楽章は”allegro moderato con brio” と指定されているが、”allegro”で演奏するべき。
- 同時期に作曲した「熱情ソナタ」といくつか共通点がある。(デュシャーブルが両曲で類似しているリズム・旋律・音型の旋律をピアノで弾いて例示)
- 第2楽章は、”theatrical”(劇のような)。2つの対立:宇宙・神・神の怒りvs.(ためらいつつも落ち着かせようとする)人間。ピアノパートは人間の声、コラール。オーケストラは怒り、ぎくしゃくとしたリズム。ピアノパートの旋律は、怒りに満ちたオケの旋律をなだめて”和解”を試みている。ラストは、かなりおそめのテンポをとって、オケの尖ったリズムが緩やかに静かになり、最後はピアノが舞台から消えるようにフェードアウト。
- 第3楽章へはアタッカでつながる。その利点は、1つの楽章の演奏が終わった時に、他の聴衆の邪魔になる”咳こみ”(あのゴホゴホというノイズ)を抑えること。第3楽章は静かにゆっくりと始まり、次にフォルテのトゥッティ。ここで安心して咳ができるので、みんなhappy。(もしかしてジョーク?)
- この曲は、葛藤と闘い、そして、和解への試みの曲。第3楽章の最後で全体が和解する。

beethoven concerto no4 2eme mvt duchable françois rené


第1楽章と第3楽章とも、ルシャーブルの自作カデンツァを弾いている。
第1楽章のカデンツァは、オケパートの主要なモチーフをいくつか織り込んで展開していく。
旋律の作りが似ているので、ベートーヴェンの自作カデンツァの方が、旋律のバリエーションが多く、明暗・静動が鮮やかに交錯してドラマティックに聴こえる。
それに、トゥッティへつなぐ最後の部分は、第1番・第3番のデュシャーブルの自作カデンツァの方がスムースな気がする。
でも、ケンプやブレンデルの自作カデンツァに比べると、本体の旋律をうまく織り込んでいし展開もわかりやすく、技巧的にもずっと華やか。

第3楽章は、曲想に合わせて快活でユーモアのあるカデンツァ。ベートーヴェンの自作カデンツァよりも長い。いくつかのモチーフを織り込んで途切れなく展開し、トゥッティへの移行部は16小節のアルペジオが華やか。このカデンツァは面白い。

「皇帝」や第3番に比べると、「女王様」のように優美な印象が強かった第4番が、デュシャーブルの演奏解釈を聴くと、「熱情ソナタ」のようなパッションを秘めている曲というイメージに変わる。
そういう性格の曲だとすれば、デュシャーブルの弾き方(タッチやテンポ)も当然のような気がしてきた。
アンコールは、演奏解説でも共通点を上げられていた「熱情ソナタ」の第1楽章。


<余談>
購入したディスクに不具合が2点あり。
まず、冒頭のピアノソロが弱音を通り越して、ミュートに近いくらい音が小さい。徐々に音が普通の弱音くらいに大きくなる。
もし弱音ペダルを踏んでいたとしても、ほとんど聴こえないほどの弱音で弾く意味があるとは思えないし、クレッシェンドが不自然なので、再生上の不具合の可能性が高い。(wavファイルで確認すると、冒頭のピアノソロも、普通の弱音の音量で弾いていた。)

さらに、第1楽章開始後、6:14のところで読み取りエラー発生。
映像と音声がフリーズして、しばらくしたら再生再開したけど、映像がかなり乱れている。(音楽の方は正常に再生されている)
そのうち、音楽に合わせて映像もまともに再生されるようになって、最後までどうにか聴けた。

明らかに不良品なので、購入したamazon.ukサイトのショップに交換リクエストしようと思ったけれど、在庫がないようなので交換できないに違いない。もし交換できたとしても、同じロットのDVDなら、同じ不具合が起こる可能性がある。
他のショップで買おうとして、試しに何件か購入手続きしてみると、日本には発送できないと表示されて購入不可能。
購入できるショップはあっても、価格が3倍くらいに高くなるので、結局、DVDを返品しないことにした。

せっかく購入した廃盤DVD(新品)なので、エラーを無視してスムーズに再生できる方法がないか調べてみた。
いろいろ試行錯誤した結果、ようやくエラー部分をカットして、フリーズすることなく(ほぼ)正常な映像と音声で再生できるようになったので、これでストレスなく聴ける。
デュシャーブルのErato盤CDよりも音がかなり良し、演奏中の手指の動きも見ることができるし、第1番&第3番に続いて満足度の高いDVDだった。

tag : ベートーヴェン ルシャーブル デュシャーブル

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(非公開コメント受付中)

yoshimi様

私もDVD全て見ました.語る語るデュシャーブル,楽しいですね.解釈の是非は分かりませんが(そもそも是非の決まらないものだと思いますが),演奏を聴いていると納得した気になるのは,映像ならではかもしれません.

ディスクの不具合,個体差でしょうか.私は直接DVDを見ておらず,一旦PCに取り込んでから見たのですが,特に不具合はありませんでした(全て中古です).

ラン・ラン(お好みではないですよね)とアーノンクールのMission Mozartと同じ頃に見たので,ピアニストと指揮者の関係の違いが如実に感じられました.ピアニストが若いと遠慮して上手くいかないのかな,と思います.
 
さだ様、こんばんは。

演奏を聴くときは、どういう演奏解釈をしているのか知っておくと、自分の好みとは違うとしても、納得できることが多いように思います。
特に、ピアノとオケの実演で例示しているので、デュシャーブルの解釈がよくわかりますね。
映像に気をとられると音楽が頭の中を通り過ぎてしまうので、音楽だけを聴きたいときには、映像を見ないか、wavファイルで聴いてます。

中古品だと、しっかりしたセラーなら不良品をチェックしているようなので、逆に不良品が少ないかもしれませんね。
私も最初PCに取り込もうとして、その段階で読み取りエラーでフリーズしました。
エラーをカットする設定にしてISOファイルを作り、仮想ドライブで見ると、ほぼ正常に見ることができましたので、返品しなくてよかったです。

ラン・ランでは、年齢差のせいもあるでしょうが、個性の強烈なアーノンクールに貫録負けするんじゃないでしょうか。
”我が道を行く”みたいなグルダとアーノンクールのモーツァルトのCD持ってましたが、お互いにそれぞれ思うところの音楽を演奏している様に思えました。
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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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