デュシャーブル ~ リスト/超絶技巧練習曲集

また手に入れたデュシャーブルの録音は、リスト《超絶技巧練習曲集》。
この曲集は昔から好きではなかったので、断片的に曲の一部だけしか聴いたことがない。
そもそも持っているCDがアラウだけで、これを聴いてみても曲によってはスローモーション見ているみたいで(速く弾きさえすれば良いというものではないとはいえ)、やっぱり私にはよくわからない曲集だった。

デュシャーブルなら技巧的には全く問題ないだろうから、Youtubeで《マゼッパ》とか少し聴いてみたら、これが結構面白い。
キーシン、トリフォノフ、ルガンスキー、トリフォノフ、シフラ、ベルマン、横山幸雄など、技巧的に問題ないと思われるピアニストの演奏と何曲か聴き比べてみると、キーシンとデュシャーブルが私の好みに一番合っていた。
キーシンは残念なことに、5曲しか録音していない。全曲録音してくれたらCD買いたいけど、カップリングがショパンの《幻想曲》だったので買うまでには至らず。

Liszt: Etudes Transcendantes, 2 Legendes Liszt: Etudes Transcendantes, 2 Legendes
(2008/1/13)
Duchable
試聴ファイル(amazon.fr)


<曲名>(ピティナの作品解説)
第1番「プレリュード」 / "Preludio"
第2番 イ短調
第3番「風景」 / "Paysage"
第4番「マゼッパ」 / "Mazeppa"
第5番「鬼火」 / "Feux follets"
第6番「幻影」 / "Vision"
第7番「エロイカ」 / "Eroica"
第8番「荒野の狩」 / "Wilde Jagd"
第9番「回想」 / "Ricordanza"
第10番 ヘ短調
第11番「夕べの調べ」 / "Harmonies du soir"
第12番「雪かき」 / "Chasse-neige"


Liszt Trancendental etude #4 - Duchable


とにかくデュシャーブルの演奏は、速い速い。
ショパンのエチュードの録音は、それほど速くもなかったのに、どうしてリストの方はこんなに速いんだろう??
”渾身の力を込めて”みたいに余計な力の入ったところは全然ないし、表現力を強調するために表情たっぷりに弾くこともないので、曲名通り”練習曲”風。
これだけ速いテンポでも、打鍵は精密で音の粒も明瞭、和音の混濁がほんどないので、力業のいる曲でも全然暑苦しくない。
緩徐系の曲でもかなり速いテンポでサラサラと進んでいく。
緩徐系の曲は苦手なので、これくらい速いテンポであっさり弾いてくれた方がもたれることがないので、逆に聴きやすくて好きなくらい。

第2番は単調なリズムが逆に面白い。

「マゼッパ」のテンポもかなり速い。タッチは軽いけれど、音の芯はしっかり。時々和音が重なって濁るけど。テンポが上がった時のタッチがとても軽快。(デュシャーブルの演奏で聴いても、これは曲自体があまり好きではないのがわかった)

「鬼火」はショパンのエチュード(Op.10-7)にちょっと似ていて、可愛らしいところがある曲。
デュシャーブルの軽やかなタッチときらきら煌く音色だと、幽霊とか怪談を連想する正体不明の火の玉みたいなコワイイメージとは違って、リストの「鬼火」はチラチラと瞬きながら、ふわふわと変幻自在に浮遊するファンタジックな明かりみたい。
そういえば、『鬼火』というフランス映画があったのを思い出した。(観たことないけど)

西欧の怪火伝承~ウィル・オ・ウィスプ、ジャック・オ・ランタンなど
「「怪火」は大きく分けて「死の予兆」と「旅人を惑わす明かり」がある」ということなので、フランス映画の『鬼火』は前者、リスト(それにシューベルトの『冬の旅』)の「鬼火」は後者なのだろうと思う。


「回想」はとても優美で、過去の甘い記憶を回想しているような印象。

続く第10番はドラマティックで、これも過去の栄光や栄華の日々を回想しているみたいなイメージ。

最後の「雪かき」の原題は、フランス語の"Chasse neige"。
当時の「雪かき」がどういうものだったか知らないけれど、この曲を聴いていると、一般的に思い浮かべる「雪かき」の風景ではなく、雪が降る情景が浮かんでくる。
調べてみると、「雪あらし」という訳している解説やトラックリストもあるし、曲の内容からして、「雪あらし」の方が合っていると思う。

リスト超絶技巧練習曲雪あらし?論



さすがに力業の必要な曲を立て続けに聴くとちょっと飽きない気もしないではないけど、その間に挟まれた緩徐系の曲がさっぱりしていて、ようやく全曲最後まで面白く聴けた。
特に気に入ったのは、リズムが面白い第2番とドラマティックな第10番、「鬼火」、(意外にも)ゆったりテンポでロマンティックな「回想」、「雪あらし(雪かき)」。
この曲集が今までどうにもとっつき悪かったのは、いかにも”超絶技巧”らしく和音でガンガン弾く曲が好きではなかったからだと気が付いた。
逆に、単音やユニゾンで弾くスケールやトレモロのキラキラ煌く輝きと甘い音色がとても素敵だった。

カップリングされているのは《伝説》。第1曲の「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」のトレモロや高音部の主旋律が軽やかで甘い音色でとても可愛らしい。
第2曲「波の上を渡るパオラの聖フランシスコ」は、テンポがかなり速い。この曲はやはりケンプの荘重な演奏が一番感動的。

タグ:リスト デュシャーブル

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コメント

あけましておめでとうございます。
いつも有益な情報を発信されていて、こちらのブログにはお世話になっております。これからもよろしくお願いいたします。

僕もこの超絶練習曲集は通して聴くことはあまりありません。個々の曲はよいと思うのですが、カロリーが高すぎて全曲聴くとおなかいっぱいになってしまいます(笑)。デュシャーブルの演奏はなんというかカロリーオフな感じがして聴きやすいですね。

マゼッパはエゴン・ペトリの演奏が好きです。1936年の録音で、くわしく調べたわけではないので確信は持てませんが、おそらく史上初録音かと思われます。

他にはリヒテルの夕べの調べが好きです。1958年のソフィアライブは音質は悪いし、ミスタッチもたくさんあるのに一番感動します。

 

ミッチ様

新年おめでとうございます。
私の方こそ、リストの作品と録音についてはまだまだ知らないことが多いので、いろいろ勉強になります。どうもありがとうございます。

たしかにこの曲集は高カロリーですね。ようやく好きな曲がわかったので、これからは聴き方に緩急をつけて、聴けるようになれそうです。
ペトリのマゼッパとリヒテルのソフィアライブ、YoutubeかNMLにたぶん音源があると思いますので聴いてみます。

そういえば、すでに聴かれたかもしれませんが、トリフォノフも新譜で録音していますね。
試聴してみましたが、表現意欲充分というか、私には表情豊かすぎて、ちょっともたれる感じがしました。
その時の体調とか気分によっても印象がよく変わるので、しばらくしてからまた聴いてみようと思います。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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