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「ベートーヴェン/ピアノ協奏曲」のカデンツァ (1)第3番
ベートヴェンのピアノ協奏曲のカデンツァについて、ちょっと調べてみた結果のメモ。(第2番は聴かないのでパス)
第5番は、ベートーヴェンがカデンツァを楽譜中に書き込んでおり、欄外に"“Non si fa una Cadenza, ma s’attacca subito il seguente”(カデンツァを弾かないように。すぐに続きに進みなさい)という注記があるので、自作カデンツァを書いた作曲家も弾いたピアニストもいないはず。


<第3番>
ベートーヴェンのカデンツァが第1楽章、第3楽章とも各1曲。
他のカデンツァは、バウアー、ブラームス、フォーレン、リスト、モシェレス、ライネッケ、アントン・ルービンシュタイン、クララ・シューマンなど。

バックハウスは、第1楽章でライネッケのカデンツァを弾いている(12:17~)。ベートーヴェンにも劣らないドラマティックなカデンツァ。

Beethoven, Piano Concerto No 3, 1,2mov, Backhaus, Piano



イグナーツ・モシェレス&ブラームス版カデンツァ
このカデンツァは和声の厚みが薄くて線が細いので、ベートーヴェン自作カデンツァのようなダイナミズムやドラマティックさがなくて、地味な感じ。

Beethoven Piano Concerto No. 3 Brahms Cadenza (Actually Moscheles)


このカデンツァは、”ブラームス作”という表記と、モシェレスとブラームスの合作か一部編曲みたいな表記と2通りあるので、調べてみると”ブラームス作”ではなく、本当の作曲者はモシェレスらしい。
ブラームスの作品リスト(IMSLP)には、”Anh. IV/7”として記載されているが、注記には” misattributed to Brahms (actually composed by Ignaz Moscheles)”と書かれている。

モシェレスと”ブラームス”のカデンツァの楽譜は、それぞれIMSLPでダウンロードできる。
モシェレス版(Muzgiz社、モスクワ)の脚注には、”Diese kadenz, die noch zu Lebzeiten von Moscheles im Verlag Bartolf Senff, Leipzig, erschienen ist, wurde im Jahre 1927 vom Verlag Breitkopf & Härtel irrtümlicherweise in einen Sammelband von J.brahms' klavierwerken aufgenommen. ”(このカデンツァは、モシェレスが存命中にライプツィヒのBartolf Senff出版社から出版されたが、1927年にBreitkopf & Härtel出版社が出版したブラームスのピアノ作品集に誤って収録された)と書かれている。
また、最初にモシェレスが出版したのは、1845~46年頃。(出典:Memories:Ignace Moscheles on Beethoven)。この出版年が正しければ、当時ブラームスは12~13歳だったので作曲者ではありえない。

ただし、ダウンロードした2つの楽譜を確認すると、終盤のアルペジオ部分が異なる。
モシェレス版は、ブラームス版よりも1オクターブ高くなっている。(↑のビレットはブラームス版通り弾いている。)
モシェレス版では音があまりに高すぎるので、モシェレス/ブラームス/編集者・校訂者の誰かが改訂した、または、モシェレス版の楽譜が間違っているのか、よくわからない。

(IMSLP等の情報が正しいという前提で)収集した情報から判断すると、このカデンツァはもともとモシェレスが書いたもので、(ブラームスが一部校訂したとしても)誤ってブラームスの遺作として出版されたということになる。



ケンプは自作カデンツァ(第1楽章&第3楽章とも)。
Berliner Philhamoniker, Ferdinand Leitner, Wilhelm Kempff - Concerto pour piano No. 3 - Remastered (12:44~)




デュシャーブルも自作カデンツァ(第1楽章のみ)。
ベートーヴェンやライネッケに比べて、作りはシンプル。本体の旋律をストレートに織り込んでいるのでわかりやすい。
ベートーヴェンやブラームスなどのカデンツァ最後の部分が満足できなかったというデュシャーブルは、カデンツァからトゥッティへの移行部分を工夫している。
ピアノの左手の旋律は、トゥッティ冒頭のドラムと同じ音型にしているので、旋律の受け渡しがとても自然に聴こえる。
このカデンツァがとても気に入ったので、他の部分も聴きたくて、デュシャーブルのDVDを買ったのだった。

La cadence de François-René Duchâche dans le 1er mouvement du 3ème concerto de Beethoven



面白いCDは、第3番第1楽章のカデンツァ集。ベートーヴェン、モシェレス/ブラームス、アルカン、シュールホフ、ウルマン、リシェ(ピアニスト自作)のカデンツァを収録。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(6種のカデンツァ付き) ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(6種のカデンツァ付き)
(2007/5/23)
リシェ(ミヒャエル), ベルリン・ドイツ交響楽団
試聴ファイル


tag : ベートーヴェン バックハウス ケンプ デュシャーブル モシェレス ライネッケ

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

愛聴するのはベートーヴェンとブラームス、それにバッハ。ロマン派ならリスト。​さらに現代(20​世紀)の音楽を探検中。特に好きなのはピアノ音楽(ソロ、コンチェルトに室内楽)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなピアノ曲:ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第30・31・32番,ピアノ協奏曲第3番&第4番。ブラームス/ピアノ協奏曲第1番&第2番、ヘンデル変奏曲、後期ピアノ作品集。バッハ:パルティータ、フランス組曲、イギリス組曲

好きなヴァイオリン曲:バッハ・ベートーヴェン・ブラームスのヴァイオリンソナタ(ピアノ&ヴァイオリン)、シベリウス/ヴァイオリン協奏曲

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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