コロリオフ ~ バッハ/インヴェンションとシンフォニア

コロリオフの《フランス組曲》を聴いた勢いで、久しぶりに《インヴェンションとシンフォニア》を聴いてみた。

《インヴェンションとシンフォニア》(Hanssler盤)は、《平均律クラヴィーア曲集第1巻》(Tacet盤)と同時期の2000年に録音。
初めて聴いたコロリオフの録音が《インヴェンションとシンフォニア》。
子供の頃に練習した《インヴェンション》のトラウマ(?)のせいで、その後長い間バッハを弾くのも聴くのも嫌になってしまった。
でも、コロリオフが弾く《インヴェンション》を聴くと、記憶の中の曲とは全く違って、滑らかなノンレガートと豊かな表現で、とっても魅力的。
(この曲に限らず)やはり自分の下手なピアノで聴くのではなく、コロリオフのような素晴らしい演奏で聴くものだとつくづく思ったのだった。

コロリオフの《インヴェンション》はノンレガートで弾くときでも、グールドのようにクリスピーではなく、滑らかにつながっていく。
色彩感豊かな音色で、音の輪郭も、旋律の流れもくっきりと明瞭に浮かび上がってくるので、二声のシンプルな対位法でも立体感があるし、さりげない歌い回しにさらりと柔らかい叙情感が籠っている。

INVENTIONS & SINFONIASINVENTIONS & SINFONIAS
(2000/8/13)
Evgeni Koroliov

試聴ファイル




BWV772-801 Inventions & Sinfonias Evgeni Koroliov 1999



《インヴェンション》は15曲全て練習したけれど、明らかに練習したのを覚えているのは、曲自体が好きな1番、2番、4番、13番。
ちょっと変わった単純な旋律で始まる6番も覚えている。
今聴いてもやっぱり好きではない曲は、練習した記憶が全くない。(いかに身を入れずに練習していたのか、我ながらよくわかった)
レッスンのお手本にするのにぴったり....とは思うけれど、これだけ素敵なインヴェンションを聴いたら、自分で弾く気がすっかり失せてしまった。

第1番の冒頭から、速いテンポで躍動感に溢れた力強く軽快なタッチが、はっと目が覚めるように鮮やかで輝いている。
芯のしっかりした硬質のタッチなので、ノンレガートでなくとも歯切れ良い音で、フレージングはとても流麗。
強弱・硬軟交えたタッチで表情も豊かに変わり、色彩感豊かくっきりと2声がそれぞれくっきりと浮き上がって掛け合いの妙もしっかり味わえる。

急速系の曲(第4番、第8番、第10番、第12番、第13番とか)はノンレガートを多用しているけれど、クリスピーではなく軽やかで柔らかいタッチで尖ったところはなく、リズミカルでコロコロと玉が転がるように滑らか。
クリスピーなノンレガートでネズミが走り回るように慌ただしく弾くようなところはなく、線のしっかりした堂々とした演奏のダイナミズムが爽快。
緩徐系の曲(第2番、第6番、第7番、第9番、第11番とか)でも、やや線の太めの芯がしっかりした音は豊かな響きと色彩感が美しく、さらに細やかな起伏やルバートがかかったレガートな旋律がメロディアスで優美。
これだけ豊かな音楽が流れる《インヴェンション》はめったに聴けない。《インヴェンション》のイメージがすっかり変わったくらいに、コロリオフの演奏は素晴らしい。

3声の《シンフォニア》になると、コロリオフの声部の弾き分けの見事さがさらによくわかる。(特に速いテンポの第1番、第6番、第12番)
第1番や第3番は軽やかで柔らかいタッチが可愛らしい曲想にぴったり。思わず口元が緩んでしまう。
第6番はまるで鳥たちの三重唱を聴いているみたい。
第8番、第10番、第12番、第14番は、歯切れ良くリズミカルなタッチでとても楽しそう。
コロリオフの演奏で聴くと、《インヴェンションとシンフォニア》で私の好きな曲はほとんどが速いテンポの長調。軽快な躍動感と明るい色彩感が開放的でとても気持ちいい。久しぶりに平均律曲集も聴きたくなってきた。

タグ:バッハ コロリオフ

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コメント

こんにちは。

リンク先の音源を聴いてみましたが、一瞬で心を奪われました。何という美音、流麗なフレージング、そして素晴らしい録音でしょう…。こういう風にインヴェンションを弾けるのは、世界広しといえどコロリオフだけではないでしょうか?

私の手持ちのインヴェンションのCDは(有名な)グールド盤と高橋悠治盤だけなんですが、どちらもすごくヘンテコ?な演奏なので、コロリオフのCDも購入したくなってきました。彼の平均律は長い間聴いてないんですが、今度聴き直してみようかな、と思っています。

 

かかど様、こんにちは。

コロリオフのインベンションは堂々とした輝きがあって、自然と耳が惹きつけられますね。今まで聴いた録音のなかで、これだけ表現力のある演奏はなかったです。
フェルツマンも色彩感豊かな音色が綺麗で品が良いですし、ノンレガートもいろいろ使いわけていて表情豊かだと思います。

高橋悠治のインベンション、試聴してみましたが私は好きですね。そのうちCD買うと思います。
デッドな音質ですが装飾音が多くて楽しく聴けますし、個性的な解釈(と思った)の演奏もありますが、音楽自体はグールドみたいに奇抜ではなく至極まっとうです。
楽譜は、音楽之友社版の別稿(装飾稿)を使っているようですね。
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yoshimi

Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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