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『Fiorentino Edition, Vol. 4: Early Recordings 1953-1966』
フィオレンティーノの若かりし頃の録音をまとめたBOXシリーズの最新盤が『Fiorentino Edition, Vol. 4: Early Recordings 1953-1966』(PIANO CLASSICS)。
フィオレンティーノの録音で持っているのは、1994年〜1997年のベルリン録音BOXと若い頃のリスト録音。
もっと他の録音も聴きたくなったのでディスコグラフィをチェックすると、”Fiorentino Edition”シリーズとしてラフマニノフ、リスト、この”Early Recordings”がリリースされていた。

収録曲リスト(HMV)を見ると、協奏曲はモーツァルトの第21番と、 ショパンの《ポーランド民謡による大幻想曲Op.13》のみ。
残りは全てソロ録音で、バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、シューマン、ラフマニノフ、メンデルスゾーンなど。ショパンが一番多くて、BOXセットの半分(CD5枚分)。

NMLでアルバムごと聴けるので、好きな曲を中心に聴いてみると、録音年の違いとは関係なく、玉石混交の音質。
マスターテープの状態の違いと、マスターテープがなくて板起こしした音源も混じっているためらしい。
1950年代の録音音質が悪いのはかまわないけれど、1960年代の録音でもそれほど良くない曲が多い。
バッハがかなり音が良く、ブラームスもそこそ良い。ベートーヴェンは1950年代の録音は悪く(特に「創作主題による32の変奏曲」は音が悪すぎて聴く気にならない)、1960年代の録音もそれほど良くはない。シューマン、ショパンは曲によって音質がまちまち。

「創作主題による32の変奏曲」については、amazonのデジタルミュージックで、1959年録音の音源がダウンロードできる。このBOXセットの録音は1953年なので、ダウンロード音源の方がかなりマシな音質だし、フィオレンティーノのベートーヴェン録音は少ないので貴重な録音。カップリングされているのは「皇帝」。
(曲名の間違いを修正中のため、一時的にサイトから削除されている。(3/17現在))


フィオレンティーノは、若い頃にリストやラフマニノフをよく弾いていたので、指回りはすこぶる良く、精密で力感のある切れ味の良い打鍵で技巧面は全然問題ないと思う。
フレージングは滑らかで、音の輪郭に丸みがあってまろやかさもあるので、聴き心地がいい。
緩急・強弱のコントラストが明瞭で、旋律最後の音をスパッと切ったり(これは90年代の録音でも同じ)、ペダルを使ったときの重層感のある響きの美しさ、緩徐部分でのゆったりとして情感深い歌い回しとか、さりげないけれど表情もニュアンスも豊かで面白く聴ける。
技巧優れていてもメカニックがギラギラすることはなく、端正さや品の良さがあるので、技巧と表現のバランスがとても良い感じ。

Fiorentino Edition, Vol. 4: Early Recordings 1953-1966Fiorentino Edition, Vol. 4: Early Recordings 1953-1966
(2016/2/26)
Sergio Fiorentino

試聴ファイル

※amazonの試聴ファイルは、単品ダウンロードできない曲は試聴できない。itunestoreなら冒頭から1分30秒間、全曲試聴できる。
※No.12~No.29は、曲名と音源が一致していない。登録している音源の順番が間違っている。(3/17現在)


バッハの(まともに聴いたことがない)《半音階的幻想曲とフーガ》と《イタリア協奏曲》は音質がとても良い。
《半音階的幻想曲とフーガ》の響きがとてもファンタスティックで、《イタリア協奏曲》速いテンポで切れ良くコロコロ転がっていく音と快活で明るい雰囲気が聴いていて楽しい。歯切れ良いタッチでも、音色とフレージングに少し柔らかさと優美さもあって、元気過ぎないのが良い。

フィオレンティーノ編曲のバッハ=ブゾーニ《前奏曲とフーガ ニ長調 BWV 532》も音が鮮明で聴きやすい。(響きにちょっと電気的なものを感じるけど)
1996年のセッション録音よりもずっと速いテンポで(演奏時間にして40秒くらい短い)、同じようにペダルを多用している。
重音のタッチが軽やかで切れも良く、速いテンポでも残響がいくら重なっても混濁感がなく、若い頃の技巧優れたところがよくわかる。響きの長さ・重なり方が多彩なので、巧みなペダリングだと思う。
ゆったりとしたテンポで弾く1996年(69歳)の録音は荘重で重厚感があるけれど、この1965年の録音は荘重華麗な響きに包まれつつもしなやかで爽やか。
どちらもそれぞれの味があって素晴らしい。両方とも何度聴いても深く感じるものがあって、この若い頃の演奏もCDで聴きたくなってきた。

同じくフィオレンティーノ編曲のバッハ=ブゾーニ《シャコンヌ》も、和音の音が増えたりして、いつも聴いているキーシンの録音とは違う音や響きが聴こえてきて面白い。
緩急のテンポの落差がかなり大きい。緩徐部分はかなり遅く、アッチェレランドで移行する急速部はかなり速い。緩急それぞれのテンポの中でもかなり幅があり、タッチも強弱も多彩に変化する。緩急・静動のコントラストが大きく、緊張と弛緩が何度も交代するのにこちらもシンクロしてしまった。
急速部分は一気に駆け抜けるような疾走感と緊張感があり、一音一音をゆったりと弾きこんでいく(長調の)緩徐部分は音色が暖かく緊張感もほぐれて、独特の密やかで安らかな雰囲気が漂う。
ドラマティックでロマンティシズム溢れる荘重華麗な演奏が素晴らしくて、とても気に入ってしまった。

↓このライブ演奏も、1965年の録音と同じようなテンポ。音質の違いで、こちらの方が響きが重層的で重厚に聴こえる。
71歳の時の演奏でも、指回りとタッチの切れの良さは若い頃と変わらないくらい。

Bach-Busoni Ciaccona - Sergio Fiorentino (Live 1988)



ベートーヴェンは、滅法速い「熱情ソナタ」の第3楽章以外は、普通に速いか少し遅いくらいのテンポ。同一楽章内の緩急(テンポ)の落差がかなり大きい。(バックハウスよりも大きいかも)
急速楽章では指回りが良く、粒立ち良い打鍵とほどよい力感でキビキビとした躍動感が爽快。
かなりゆったりしたテンポの緩徐楽章では一つ一つの音とさりげない語り口に繊細なニュアンスが籠っていて、急速楽章でもテンポが遅めの演奏の方が味がある。特に弱音とペダルを使ったときの響きがとても綺麗。
パチパチノイズが入っている「月光ソナタ」の第1楽章は、起伏の少ない平板な弾き方のなかに何とも形容しがたい雰囲気が漂う。
「ワルトシュタインソナタ」はノイズはないけれど音が遠いし、音自体もゴツゴツと骨っぽくてあまり綺麗とは言えない。それでも第3楽章の弱音の響きの美しさが印象的(音質が良ければずっと美しく聴こえるはず)。終盤ではグリッサンドは使わず、オクターブでスケールを弾いているのが珍しい。
「悲愴ソナタ」はパチパチとノイズが入っていても、「月光ソナタ」と同じくらいに音は鮮明。なぜか第1楽章のりピートしていない。トリルやフレージングとかアーティキュレーションに独特なものがあって(奇抜なところはない)、どの楽章も今まで聴いてきた演奏とは一味違う不思議な魅力がある。特に第2楽章は弱音で弾くときの語り口に何とも言えない優しさや密やかさが籠っていて、とても親密な感じがする。
ベートーヴェンではこの「悲愴ソナタ」が一番好き。ますますCDで聴きたくなってきた。

ブラームスの変奏曲2曲は、パガニーニが音が近くてかなりデッドな音質。音はクリアなのでわりと聴きやすい。
急速系の変奏でも力業で押すことなく、かなり軽やかなタッチで技巧優れているうえに、表情がしなやかで繊細な叙情感もあって、この曲にしてはわりと面白く聴ける。
ヘンデルの方は,パガニーニよりも音がやや後方に下がり、残響もそこそこある一方で、音がモコモコと籠り気味。速いテンポの重音移動でも力みなく滑らか。美しいソノリティと軽やかでしなやかなタッチなので、落ち着いた優美さがある。

苦手のシューマンでは、まともに最後まで聴いたことがなかった《ウィーンの謝肉祭の道化》は、ちょっとモコモコしてかなり前方から聴こえてくる。それほど音は悪くはないし、曲自体も面白い。少なくとも《謝肉祭》よりは好きな曲。
CD5枚分もあるショパンの方は、音質が良くない曲が多い。バラードが一番音が良く、ポロネーズもやや籠り気味だけどわりと良い。


音質の良いと思われる1997年Newport音楽祭のショパンリサイタルのライブ録音(In Memory of Sergio Fiorentino: Chopin Piano Works)は、在庫切れまたは廃盤なので入手困難。
youtubeにも音質のとても良いライブ音源がある(映像はないけど)。CDと曲目は同じ。
最後のアンコール曲《子犬のワルツ》が起伏が大きくて、中間部のワルツのリズムが優雅で、何だか妙に面白い。

Sergio Fiorentino in recital (1997 Newport) A Chopin recital



ショパンのエチュードをアンコールで弾いたライブ映像。力みがなく指の形や動きの滑らか。
若手ピアニストが弾いているライブ映像はいろいろあるけれど、さすがに(68歳の)フィオレンティーノくらいの年齢のピアニストがアンコールで弾くのは珍しいのではなかろうかと。(それに、指揮者がフィオレンティーノの指の動きをじ~っと覗き込んでいるのが面白い)

Chopin Etude op.10 n4 - Sergio Fiorentino - Live in Germany 1995



最初は好きな曲だけダウンロードしようかと思ったけれど、単品ダウンロードできない曲がいくつもある。
それに、バッハとブゾーニ、ベートーヴェンがとても気に入ったので、このBOXセットもすぐに注文してしまった。


tag : フィオレンティーノ バッハ ベートーヴェン ブラームス

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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