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シューマン/謝肉祭
フィオレンティーノの《謝肉祭》を聴いてから、ようやく普通に聴けるようになったので、いろんなピアニストの演奏で聴いてみた。
CDで持っているシューマンの《謝肉祭》というと、フィオレンティーノが2種類(1996年、1963年)、ミケランジェリ(1957年DG盤)、エゴロフのスタジオ録音、カッチェンのスタジオ録音(1958年)、アラウのスタジオ録音(1939年EMI盤)とモノクロライブ録画(DVD、1961年EMI盤)。(CDラックを探せば他にもあるかも)
そういえば、ハフも《謝肉祭》を録音しているのを思い出した。このCDは未購入。

カッチェンは急速部のタッチがちょっと粗く感じるし、(”Papillons”とか)テンポが速いとタッチが滑るようにも聴こえる(一音一音明瞭で粒立ち良い方が好きなので)。頻繁に伸縮するテンポやアーティキュレーションも私の波長とあまり合わない。
アラウの1939年録音は音質は悪いけれど、1961年の演奏よりタッチの切れ味もコントロールも良い。


エゴロフのスタジオ録音(EMI盤)は色彩感とソノリティが多彩で、和声に響きのバリエーションと美しさが際立っている。
残響が多めで和声の響きが美しく、”夢想”のような柔らかさと優美さがある。急速系の曲はテンポが速くて一気に弾きこんでいくので少し性急な感じがする曲もある。
”Pierrot”は、”E♭-C-B♭”の旋律を強く明瞭に弾いている。柔らかく弾くよりは、こういう弾き方の方が面白い。コラールやハフも強いタッチだけど、強弱とテンポがそれぞれ違うので、ニュアンスも変わる。
特に素晴らしいのは、最後の2曲、重厚な響きで盛り上がっていく”Pause”と、速いテンポで和声の響きが色とりどりに移り変わっていく華麗な”Marche des "Davidsbündler" contre les Philistin”。この2曲に関しては、一番好きなのがフィオレンティーノとエゴロフ。

The Master Pianist / Yuri EgorovThe Master Pianist / Yuri Egorov
(2008/03/04)
Youri Egorov

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これはEMIのスタジオ録音ではなく、”Egorov: a Life in Music”(Etcetera盤)に収録されているライブ映像。
このライブ録音は少しデッドな音響のせいか、スタジオ録音よりも少し力感が強く、響きが硬い感じがする。

Youri Egorov TV Recital, Part 1 - Schumann Carnaval




ソコロフのスタジオ録音(Melodiya盤)は、1967年の録音で当時17歳。
力感強くて切れ味鋭いタッチで、若々しい躍動感と生気みなぎる演奏。
”Papillons”は、スタッカートで弾く”E♭-C-B♭”の旋律が独特。

Sokolov Schumann Carnaval op 9


Various: Works for Piano SoloVarious: Works for Piano Solo
(2015/2/10)
Grigory Sokolov

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ミケランジェリのDG盤(1957年)は擬似ステレオなので、ヘッドフォンで聴くとかなり奇妙な人工的な響きがしてあまり好きではない。(スピーカーで聴くとあまり気にならない)
Youtubeにある1973年のルガーノライブは音質は良いけれど、テンポはDG盤と同じように全体的にちょっと遅め。
↓の1957年のライブ音源は、テンポが速めで勢いよく感じる。(1973年の東京ライブ(Altus盤)の演奏がかなり良いという人もいる)。
テンポの揺らし方や間合いの取り方が絶妙。急速部の鋭いタッチにはナイフのような怜悧な切れ味と凄みを感じる。
面白いのは、滅法速いテンポの”Papillons”。それに、終曲の”Marche”では、かなり遅めのテンポから徐々に加速していき、曲の途中でもテンポが変化して緩急のコントラストが強く、急速感と高揚感が増している。この”Marche”も素晴らしい。

Michelangeli Schumann Carnaval Live (1957)




シューマン国際コンクールで優勝したエリック・ルサージュの《謝肉祭》は、力感が強めで、急速部はかなりテンポが速くて打鍵のアタック感がちょっときつく、フレーズによっては”間”が少なくて窮屈な感じがする。スタッカート気味のタッチの響きがちょっと変わっていて、私の好みとは違っていた。
シューマンにしては、堂々としたタッチで、歌い回しや情感は少しすっきり。

Schumann Carnaval - Eric Le Sage


Schumann Project: Eric Le Saga Complete Piano Solo Music"Schumann Project: Eric Le Saga Complete Piano Solo Music
(2012/11/1)
Eric Le Saga

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カトリーヌ・コラールの《謝肉祭》は、緩急・静動の変化が細やかでコントラストが明瞭なので、曲間だけでなく曲中でもたびたび急変する気分の移り変わりが色鮮やか。
少し軽やかで歯切れの良いタッチで、響きや歌い回しに柔らかさと優美さがあり、細部のニュアンスも豊かで表情が生き生きとしている。他の(男性)ピアニストでは感じられないような、どこかしら品の良く洒落たところがある。
フレージングにクセがあって、時々末尾の音の響きが持続音的に長く聴こえるのも独特。
”Pierrot”のテンポと語り口が絶妙で、道化のちょっと間を外したような怪しさが漂う。”Papillons”の低音の弾き方もちょっと面白い。

Schumann - Catherine Collard (1991) Carnaval op 9


Schumann: Carnaval Op.9Schumann: Carnaval Op.9

Catherine Collard




《謝肉祭》は、曲間に限らず曲中でも、気分が変わったように曲想がコロッと転換していく。
曲想が変わるときも、安定した終止形からではなく、途中で中断したように変わることもたびたび。
テンポの取り方と揺らし方、旋律の間の取り方とか、強弱の変化のつけ方などアーティキュレーションの違いが、演奏(の印象)に影響する度合いが、他のロマン派作曲家よりもかなり大きい感じがする。(旋律自体はシンプルな”Pierrot”でも、演奏者の表現の違いが大きく感じられて、印象も随分変わる)
喩えていうなら、微妙なバランスで揺れるタイトロープみたいな危うさ。テンポや間合いが少し違っても、バランス悪く感じる。この不安定感が面白い。
いくつか聴いた《謝肉祭》のなかで特に好きなのは、ロマンティシズム豊かなフィオレンティーノ、アーティキュレーションが面白く軽やかで優美なコラール、和声の響きが美しいエゴロフ。テンポの揺れが絶妙で切れ味鋭いミケランジェリも素晴らしい。
でも、全ての曲でぴったりくる演奏というのはなくて、曲によって好きな演奏(ピアニスト)が違う。
それでも、誰か1人だけ選ぶなら、やっぱりフィオレンティーノ。



<参考情報>
シューマン 『謝肉祭』(花の絵)
コラールの演奏を聴いたのは、この記事で紹介されていて興味を惹かれたので。

休日は怒涛の鑑賞 脱線編[まさひろ瓦版]
シューマンの音源の紹介とコメント。エマール、ピリス、ハフ、キーシン、アシュケナージ、ポリーニなど現代の名だたる現役ピアニストの演奏は「つまらない」という。
お勧めされている演奏は、ホロヴィッツ、ミケランジェリ、シフラ、アンダ(Orfeo D'orのライブ録音)など。

tag : シューマン ミケランジェリ コラール ソコロフ ルサージュ エゴロフ

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(非公開コメント受付中)

こんにちは。
「謝肉祭」は好きな曲です。ミケランジェリの57年DGばかりを聴いています。他のピアニストのものもポツポツ聴いているのですが、これだっ、というものにはまだ出会えていません。比較的最近のものだと、ルイサダのはなかなかよかったです。
フィオレンティーノはぜひ聴きたいです♪
 
芳野様、こんにちは。

謝肉祭、こんなに面白い曲だったのかとようやくわかりました。
ミケランジェリの謝肉祭は、テンポ・間合いの取り方が絶妙でソノリティも多彩だと思いました。
フィオレンティーノは、古き良きロマンティシズムが漂うところがあるので、ひと昔前のヴィルトオーソピアニストに近い感じがします。
こんばんは。

yoshimiさんはシューマン苦手だと(勝手に)思っていましたが、「謝肉祭」のCDをそんなにお持ちなのですね。流石です…。好きなピアニストの録音を集めていたらいつの間にか「謝肉祭」のコレクションが増えていた、という感じでしょうか?私もミケランジェリの「謝肉祭」は是非聴いてみたいですね。あとガヴリーロフとか。

以前購入したルサージュの全集を聴いていたら、何となくシューマンのピアノ曲の聴き方が分かってきたような…気がしてきましたが自信はありません(笑)。「クライスレリアーナ」や「幻想曲」はもともと(シューマンのピアノ曲の中では)好きですが、「ダヴィッド同盟舞曲集」、「交響的練習曲」、「幻想小曲集」あたりもなかなか良いなあ、と思い始めてきたところです。ただ、ショパンと比べるとやはり曲の出来不出来が激しい印象ですね。
 
かかど様、こんにちは。

シューマン苦手(だった)なのは、ブログで何度も書いてますから本当です。
BOXセットを買うと、シューマンの曲集が何曲も入っていることが多くて、「謝肉祭」以外にも聴いていないCDが20枚くらいはあります。
ようやくシューマンが普通に聴けるようになったので、持っているCDが無駄にならなくなりそうなのが嬉しいです。

ミケランジェリはスタジオ録音が2種類、ライブ録音も何種類も出ているのですが、音質はともかくDG盤が定番のようですね。
ガヴリーロフの「謝肉祭」があるのは知りませんでした。NMLで聴いてみましたが、ちょっとネチネチした感じのフレージングが多く、急速部のタッチが速くて強すぎる(ちょっと粗っぽい)ように感じました。

ル・サージュの全集は評判いいですね。私はNMLで聴きましたが、情念過剰なところがなくて、聴きやすい演奏だと思いました。
アーティキュレーションにちょっと合わないところがありますが、こういうのは好みの問題なので。

ショパンとは違って、シューマンは精神的な浮き沈みが激しかったので、作曲するときにも影響していたのでしょうね。
「幻想小曲集」や「子供の情景」などの小品はピアノの練習曲の定番なので、子供の頃から馴染んでいた曲集です。
「クライスレリアーナ」もいいですね。この曲は若い頃のベロフの演奏を聴いて好きになりました。
珍しい曲では「ペダル・ピアノのための練習曲集」は、柔らかく綺麗な響きのアンデルシェフスキが好きなのですが、ルサージュはソロではなく、ドビュッシーが編曲した2台のピアノ版の方を弾いていますね。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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