2017_06
27
(Tue)18:00

スティーブン・ハフ/ピアノ・ソナタ第3番「Trinitas」  

スティーブン・ハフが作曲したピアノ・ソナタの3曲目は「Trinitas」という副題が付けられている。ラテン語で「三位一体」。
ハフは若い時にカトリックに改宗した人で、宗教に関する執筆も多く、宗教曲《ミサ曲》も作曲し、ウェストミンスター寺院とウェストミンスター大聖堂の聖歌隊が演奏したという。

これは、2013年7月23日、Tippet Rise Art CenterにあるOlivier Music Barnでのライブ映像。
「Trinitas」は、カトリック雑誌「The Tablet」が175周年を祝うために委嘱した。
自作曲とはいえ楽譜を見ながら弾いている。(一般的に現代曲の演奏では楽譜を置いて弾くことが多い)

Stephen Hough plays Piano Sonata III (Trinitas)


モダンでスタイリッシュで流麗な《ピアノ・ソナタ第2番》に比べると、この第3番の方が技法と構成を明確に書いているような印象。
最初は、音が散在する12音技法らしき旋律で始まって、どうなることかと思ったけれど、徐々に音に動きと協和的な響きが加わって、音と響きに関連性というか繋がりを感じられるようになったので、ほっと一安心。
こういう曲は意味とか象徴性とかを考えずに、単に音の動きと流れと響きを感じるままに聴く方が受け入れやすい。
だんだん調性感がないようであるような旋律と和声が出てきて、それほど聴きずらいという感じはなくなってきた。

4:18あたりで、次のセクションに入ったらしく、和音からリズミカルな単音の旋律に変わって、躍動的に飛び回って、これが結構面白い。
旋律や和声自体は響きが美しくて、前衛風の不協和的な歪みはなく、クラシックの前衛曲というよりは、フリージャズみたいに聴こえないこともない。

7分くらいで、ブリテンを連想するような和声の旋律がでてくるし(ハフはブリテンのピアノ作品集を録音している)、8:40くらいからちょっと雰囲気が変わる(調和的?というのか何というのか、形容しにくい)。
8:20くらいで和音で締めくくって、次のセクションに。
厚い和音の響きで、調性感のある旋律と和声がどことなく面白くて、安定感がある。終盤のアルペジオやトレモロの響きがキラキラ煌いてとっても綺麗。
さらに別のセクションに移行しているらしき10:00あたりでは、高音の重音で下行する旋律が(宗教曲を多数書いた)メシアンにちょっと似た感じ。
この旋律がオスティナート的に何度も出てくる。12:40あたりで突然激しいフォルテで、鍵盤を手のひらで叩きつけるように弾く和音で下行しながら終わる。

13:00あたりから最終セクション。嵐が去ったような落ち着きと調和感のある和声から、再び音が散在して凪のように静かになって、最後は少し不可思議な響きのアルペジオでエンディング。

宗教曲はほとんど聴かないので、この曲が象徴しているものが何かがわからないけれど、宗教曲に詳しければ、旋律から連想するものや、くみ取れるものがもっといろいろあるのだと思う。
そういうことを抜きにしても、旋律・リズム・和声を聴いているだけで、現代的な面白さに宗教的な神秘さと不可思議さが加わって、メロディアスな旋律で聴かせるような曲ではないわりに、最後まで飽きずに楽しく聴けた。
メシアンの曲が好きなこともあって、宗教的な神秘性を帯びた旋律や響きのするハフの曲にもすんなり入っていけたのかも。


<レビューと作品解説>
The new shining light on the old: Stephen Hough in recital at the Barbican
"Trinity”は数の神学的秩序のドグマ。
楽章が3つでサブタイトルが“Trinitas”(三位一体)とすることで、音楽的なドグマである12音技法の"serialism"をTablet誌とCatholicismに関連づけている。
3つの楽章は、順に"bold, stark", "punchy, jazzy"、"majestic, proud"と記されている。
第1楽章はシューベルトのソナタの主題を反映、中間楽章は(敬虔なカトリック信者である)メシアン風、終楽章がフランク風で、聖歌(Nicea、三位一体のテキスト“Holy, Holy, Holy”)を引用。

Stephen Hough to play Australian premiere of his Trinitas sonata in recital for Musica Viva

Stephen Hough, Barbican, review: 'otherworldly'

Stephen Hough review – high seriousness and imaginative intelligence

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