2017_07
09
(Sun)12:00

ブルーベリーは眼に良い? 

お向かいの糖尿病の奥さんに、生のブルーベリーかシロップ漬けを買ってくるように頼まれた。どうやらブルーベリーは眼に良いらしい。
そういえば、昔上司がブルーベリー(かサプリメント?)を食べたら良く見えるようになったと言っていたのを思い出した。
私も試しに生のブルーベリーかブルーベリーサプリメントを買ってみようかと思い立って、まず情報収集。
調べてみると、正確には”眼に良い”と言われているのはブルーベリーではなく、ビルベリー。それもビルベリーなら何でも良いわけではない。


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ブルーベリーとビルベリーの違い
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「健康食品」の安全性・有効性情報「ブルーベリー」[国立健康・栄養研究所]
- 「眼によい」等といわれ、サプリメント等に使用されるのは、このブルーベリーではなく、野生種のビルベリー (Vaccinium myrtillus) 。
- 「脳・神経・感覚器」に対する有効性;調べた文献の中で見当らない。
- ブルーベリー果実抽出物として摂取したときのアントシアニン類の吸収は、極めてわるい (摂取量の0.004~0.11%のレベル)

「ブルーベリーの眼機能改善効果」
(若菜他、東京農業大学応用生物科学部栄養科学科他、日本健康医学会雑誌 16(2), 44-48, 2007-07-31)
- 7人の健康成人に10gの乾燥ブルーベリーを摂取させ,4時間後に眼機能を評価。
- 暗順応時間,視野,流涙量(シルマー試験で評価),まばたき回数,自覚所見には改善なし。
- 10人の健康成人に毎朝7gの乾燥ブルーベリーを21日間摂取させたところ,やはり暗順応時間,視野,流涙量,まはたき回数,自覚所見には改善なし。
- 今回の17人の被検者で調べた限りでは,一般的摂取量のブルーベリーでは明らかな眼機能改善効果はなし。


「健康食品」の安全性・有効性情報「ビルベリー」[国立健康・栄養研究所]
- 原産地:ヨーロッパと北アメリカ
- 果実中のアントシアニンが豊富。ビルベリーエキスと称する原材料中のアントシアニンは複数の配糖体の総称であり、個別の化合物の組成はビルベリーの産地、収穫時期、エキスの調製法に異なっている可能性がある。
- 俗に、「眼精疲労や近視によい」などと言われている。ヒトの夜間視力には効果がないことが示唆されている。
- 糖尿病や高血圧性網膜症などによる網膜の病変に対し有効性が示唆されている。臨床研究では、ビルベリーのフラボノイドであるアントシアニジン複合体25%を含む組成のものが使用されている 。
- ビルベリーを含む製品 (40品目) 中のアントシアニン量およびアントシアニジン量を分析したところ、4品目でアントシアニンが含まれておらず、また、同じ原産地でも含有量に大きな差があった。

ビルベリーのアントシアンがどれだけ濃いのか試してみました。[ブルーベリーサプリ No.1 目利きナビ]

ワイルドブルーベリーについて
ブルーベリーにも野生種(ローブッシュブルーベリー)というのがあり、産地は北米。栽培種よりも小粒でアントシアンが40%多く、他にポリフェノール等も多い。[北米ワイルドブルーベリー協会]


「ベリー類のアントシアニン含量の比較」
(関澤春仁・野上紀恵、河野圭助、;福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センター・福島県会津農林事務所会津坂下農業普及所)
- ナツハゼのアントシアニン含量は非常に高く、機能性食品に多く使用されているビルベリーよりも高い。
- ブルーベリーに関しては、品種による差はもちろん、採取時期や栽培状況によっても大きな差があり、果実の大きさが強く影響している。
- アントシアニンの組成についてはその割合が栽培条件で変化することは無く、品種特有のものである可能性。


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ビルベリーの効用
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「ビルベリー由来アントシアニンが目に与える機能性―ヒト臨床試験と機能性表示食品―」
(小川健二郎, 原 英;岐阜薬科大学紀要、65、20-27、2016)
- in vitroおよびin vivo 試験:網膜神経節細胞保護作用や光刺激に対する網膜視細胞保護作用、血管新生抑制作用、網膜炎症の軽減による視機能低下抑制作用などが報告されている。
- 健常人:物の遠近を見る近見視力や毛様体筋の緊張状態、眼精疲労の客観的指標であるフリッカー値、および目の疲労感の主観的指標であるvisual analogue scale(VAS)スコアや自覚症状アンケートにおいて、プラセボ接種群と比較して有意な改善。
- 機能性表示食品として、目のピント調節力を改善すること、目の疲労感を和らげることが表示。

ビルベリー由来アントシアニンの機能性に関する説明資料(研究レビュー)
- 日本人健常者を対象としたものは2報あり、目の調子を整える作用の指標として、VDT作業(パソコン等の作業)負荷前後の症状VASスコア、近点距離および調節力、アコモドグラムの測定等を用い、評価が実施された。ビルベリー抽出物の摂取量は1日あたりアントシアニンとして30~57.6 mgであり、プラセボ摂取時と比べて、負荷前後の調節力の変化値、投与前後のアコモドグラムの緊張・弛緩時間に有意な改善が認められ、目のピント調節機能をサポートすることが明らかとなった。
(対象論文)
「VDT作業負荷による眼精疲労自覚症状および調節機能障害に対するビルベリー果実由来アントシアニン含有食品の保護的効果」(瀬川潔ら;薬理と治療,41(2),155-165(2013))
「視機能に及ぼすホワートルベリーエキスの効果ランダム化並行比較試験」(小出良平, 植田俊彦;あたらしい眼科,11(1),117-121(1994))

アイケアサプリメントとしてのビルベリーエキス
(原 英彰, 松永 望:オレオサイエンス第9巻第7号、2009)
マウスでの実験:ビルベリーエキスは網膜障害および網膜血管新生と関連のある疾患の予防や治療に有用である可能性が示唆された。

ビルベリー製品:最新の市販エキスの特性評価
(ジョバンニ アペンディーノ, 川田 晋, 瀬川 潔;日本補完代替医療学会誌 第12巻第1号2015年3月:1–8)
- ビルベリーは産業規模で栽培されることはなく、その収穫は労働集約的.主にスカンジナビア諸国や東欧諸国で組織立ったビルベリーの収穫が行われている。
- ビルベリーの果実は、ブルーベリーのように商業規模での栽培ができないため、ビルベリーエキスと関連市販製品は,製造コストが比較的高くなる.
- ブルーベリーの果房には30個以上果実が付くため収量が多い。ビルベリーは1つまたは2つずつ実をつけるので収量が少ない。
- 北欧諸国で収穫される製品の約半量が、遺伝子検査で確認しその他の野生種による汚染を排除した上で、中国や日本に輸出。
- ビルベリーは収穫物の品質や収量に大きな差異が生じる一方、食品および製薬の両業界からはビルベリーの高い品質基準が求められるため、野生のベリー種の収穫者は期間が限定されたり、ベリー収穫期中の適切な時期に適切な場所で収穫する必要がある。

- ヒト試験で、眼の病状に関して、複数の臨床試験が網膜症の治療や予防にビルベリーエキスを使用し、種々の改善度が見られた。加齢に伴う神経や行動の変化や視力低下を回復を示した。
- ビルベリーエキスはその薬理学的特性から、欧州連合 (EU)においてファイトメディシン(植物薬)として承認されるなど、多くの国々ですでに医薬品有効成分(API)として承認を受けている。
- 市場では種々の品質や種々のアントシアニン含有量のビルベリーエキスが提供されている一方、その真の組成がラベルに正確に表示されていることは非常に少ない。
- ビルベリーエキスや製品中のアントシアニンおよびアントシアニジンの両方の同定と定量のために、Indena SpA 社は,紫外線を検出できる新たな液体クロマトグラフィー法を開発。同技術は再現性や特異性が高く、エキス組成と使用された原料を一義的に特性評価する上で適しており、製品の高い一貫性や品質を保証し、粗悪化やエキスの劣化を見分けることができる。
- 欧州薬局方は、軽微な修正を加えて、Indena SpA 社が確立した HPLC法をビルベリーの公式分析法として採用。

↑の論文は、ビルベリーの生産特性、市場動向、ビルベリーエキスの製品品質と分析法を概説。
ビルベリー自体の品質に加えて、流通・製品化過程での品質管理が最終的な製品の品質・有効性に大きく影響するということなので、ビルベリーサプリメントが比較的高いのも納得。
分析手法を確立したのは、「ミルトセレクト」を供給しているIndea社。同社の製品の品質の信頼性は高いので、サプリメントを使うなら、「ミル」を配合した製品が良さそうに思える。

面白いのは、ブルーベリーが目に良いとされるきっかけとなった英国空軍パイロットのエピソードが、実は作り話だったということ。
「夜間任務での視力を高めるためにビルベリージャムを食べたという有名な話」については、2000年に実施された研究では、そのような効果や英国空軍の逸話の起源が見つからなかったという。
このエピソードは、レーダー導入によって撃墜精度が上がったということをドイツ軍に知られてくないために、イギリス軍がカムフラージュ用に作った話だった。


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品質・有効性に関する疑義
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ブルーベリーエキス[擬似科学とされるももの科学的評定サイト(明治大学科学コミュニケーション研究所)]
機能性表示食品「えんきん」の根拠は、お粗末すぎる[FOOCOM.NET]
「エビデンスに裏付けられない機能性表示食品がある」 日本アントシアニン研究会が申し入れ[FOOCOM.NET]
機能性表示食品……科学的根拠に基づき、取り下げへ 「北の国から届いたブルーベリー」がついに…[FOOCOM.NET]


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ビルベリーエキス 「ミルトセレクト」
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欧州スタンダードの高品質独自ビルベリーエキス 「ミルトセレクト®」[健康美容EXPO]
現在、西欧諸国の大半の薬局方の標準基準となっており標準化エキス中のアントシアニン含量は、36%アントシアニン(グルコシル化合物)として定めている。(UV分析による旧25%規格に相当)
化学的処理を行わない厳選したエキスである同素材は、70年代はじめに同社が「ビルベリー25%乾燥エキス」と呼ばれる標準化エキスとして開発。この規格は世界的に認められ、ビルベリーエキスのスタンダードとなった。

ビルベリー果実エキス(ミルトセレクト®)がドライアイおよび酸化ストレスに及ぼす影響(第66回日本栄養・食糧学会での研究発表)(Youtube)

植物抽出物 同等性、多様な分析必要(2016.7.21、健康産業流通新聞)
(「ミルトセレクト」を供給するインデナジャパンの川田晋取締役へインタビュー)
- ビルベリーエキス全体をみると、アントシアニン以外の成分や、その含有量などについて、製造者ごとに違いがあり、薬理活性にも影響すると考えられる。
- 「原材料は北欧産ビルベリーであり、かつ、15種類のアントシアニンが36%含まれている」という条件だけでは、「ミルトセレクトと同等」とは言えない。
- ミルトセレクトと規格が同じ他社のビルベリーエキスと、ミルトセレクトの薬理活性の違いをインデナがヒトを対象に検証したところ、臨床効果は他社のエキスの方が低かった。
- ビルベリーエキスに限らず、植物エキスのように多成分を含む健康食品素材は、エキス全体を有効成分、機能性関与成分として評価する必要がある。ビルベリー由来のアントシアニンそのものに有効性が認められたなどという論文はいまのところ存在しないはず。



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私の結論としては、
1)食用の生ブルーベリーの果実自体を食しても、眼が良くなることはない。
2)”眼に良い”とされるのは、ブルーベリーの一種である北欧産の野生種ビルベリー。ブルーベリーサプリメントの原料は、ブルーベリーエキスではなく、ビルベリーエキス。
3)ビルベリーエキスの標準化エキスは、 Indena社製「ミルトセレクト」。70年代はじめに「ビルベリー25%乾燥エキス」を開発した。現在では西欧諸国の大半の薬局方(医薬品に関する品質規格書)の標準基準であり、化学的処理を行わない標準化エキス中のアントシアニン含量は、36%アントシアニン(グルコシル化合物)として定めている。(UV分析による旧25%規格に相当)
4)有効成分とされるアントシアンは、ブルーベリーとビルベリーでは同一ではなく、また、同じビルベリーであっても産地等によって品質に違いがある。
5)国内で販売されているブルーベリーサプリメントのうち、「ミルトセレクト」を配合していると明記している製品は少ない。「原材料は北欧産ビルベリーであり、かつ、15種類のアントシアニン含有量が36%」であっても、それがミルトセレクトと同等レベルの品質・有効性があるとは言えない。
6)欧州ではビルベリーの「標準化エキス」は医薬品として扱われているので、効果の程度や個人差による違いはあるとしても、プラセボ効果ではなく、何らかの医学的効用はある程度認められるのだとは思う。」(ただし、「標準化エキス」ではないビルベリーエキスの医学的効果は疑わしい)

ということで、生のブルーベリーを買うのはパス。
ブルーベリーサプリメントの方は、「ミルトセレクト」配合製品を買うのがベスト。ただし、日本で販売している製品が少ない。
オンラインショップで購入できる「Yerba Primaビルベリープラス」は、60カプセルで約9000円と異常な高価格。他にも30粒4400円のサプリメントもあって、「ミルトセレクト」配合の輸入サプリメントならこれくらいが相場なのかも。
継続的に使わないと意味はないので、これだけ高いと買う気にならない。

「ミルトセレクト」を配合していないと思われる(商品説明には記載ないので)ブルーベリーサプリメントは多数あり。安いものだと、20日分で800円くらいから。価格が手ごろなので購入者も多い。
カスタマーレビューを見ると、効いた人もいれば、効かなかった人の結構多い。効果の度合いも個人的な感想レベルのものが多くてあまりあてにならない。

一般的に健康食品に関してメーカーが公開している試験データは、手法やデータ処理などがよくわからないのでどの程度信頼できるかわからない。
服用すれば”見えやすさ”が改善されているかどうかはすぐに判断できるとしても、網膜異常の予防になるかという点は自分では検証不可能。発症して初めて予防効果がなかったことがわかるので、発症しないうちはサプリメントを服用した予防効果によるものかどうかは判断できない。(気休めみたいなもの)
もしサプリメントを服用するとしても、長くても1か月で、視力や見え方が良くなったという実感がなければ止めると思う。

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