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恩田陸 『チョコレートコスモス』
普段は小説は読まないのだけど、『ガラスの仮面』みたいなストーリーに魅かれて読んだのが恩田陸『チョコレートコスモス』。
『蜜蜂と遠雷』と同じく、この人の文体はマンガ(やアニメ)を読んでいるみたいな感じ。短いセンテンスで小気味良いリズム感のある文章とスピーディな展開で、スイスイ読めてしまう。
演技シーンも盛りだくさんで面白く、500頁くらいの本でも一気に数時間で読み終えてしまった。

『ガラスの仮面』よりもさらに”それはありえないだろう”と思えるくらいに、演劇経験ほとんどゼロの飛鳥の演技は独創的で天才的。
実際の演劇の世界を私は全然知らないし、これは小説版『ガラスの仮面』みたいなものなので、リアリティがなくても全然かまわない。
それに演劇ドラマの面白さは、役柄をどう演じるかというアイデアや解釈の独創性。それを演技として表現する描写が楽しめるし、その場面を頭の中で具体的なイメージにして想像する面白さもある。

チョコレートコスモス (角川文庫)チョコレートコスモス (角川文庫)
(2011/6/23)
恩田 陸



『ガラスの仮面』と筋書、登場人物、演技で類似点が多くて、ついマンガとオーバーラップさせてしまう。
「東響子」は姫川亜弓、「佐々木飛鳥」は北島マヤ、「劇団ゼロ」は劇団一角獣(劇団つきかげよりも男っぽいので)、伝説的プロデューサー「芹澤泰治郎」は黒沼龍三とか。
『欲望の名という電車』での飛鳥が演じた「影」の着想は、『ふたりの王女』の最終オーディション(レストランのシーン)でマヤが演じた”影”とか、『ガラスの仮面』を連想させる部分は多い。

主人公は「佐々木飛鳥」と「東響子」。「佐々木飛鳥」の演技シーンは、まさに北島マヤみたいな独創性と天才を感じさせる。
劇団ゼロの初公演『目的地』では、1日で同じ脚本で全く違う演技に変えてしまえるし、オーディションの課題『開いた窓』と『欲望の名という電車』では、演出家たちが思いもつかない演じ方で演出までしてしまう。オーディションというよりも「芝居」そのもの。
それに、(マヤとは違って)幼少から空手で鍛錬した「型」のつかみ方と敏捷な運動神経・強靭な筋力が演技のバックボーンとなっている点は納得感がある。
一方で、地味で寡黙な性格で(それにしては空手での闘争心は強いけど)、演ずるということに関しては”怖いものしらず”というか超然としているところがあるし、難しい課題でも、じっ~と集中して考えてからスイスイと演じてしまうので、役作りに悩む場面や描写がほとんどない。
そのため演技自体の面白さとは別に、キャラクタの存在感や印象は(設定どおり)弱く感じる。

それに対して、マヤ以外はライバルと思っていない”天才”姫川亜弓と違って、東響子は親戚の女優の才能に嫉妬するくらいなので、自分に対して絶対的な自信を持っているというわけではない。
響子の内面描写が多く、他の女優たちとの葛藤もいろいろ描かれているせいか、人物造形が明確でリアリティもあり、存在感が強い。
特に、飛鳥の参加するオーディションで相手役を演じるに至るまでの感情の揺れと、「ブランチ」の演技場面が印象的。
オーディション場面を動かしているのは、響子。姫川亜弓のような自信に満ちた演技で、一度は二次選考を辞退した飛鳥を舞台へ引っ張り上げている。
姫川亜弓は完璧すぎてシンクロできないけれど、心の動きがよくわかる東響子には心情的にシンクロできる。特に、オーディションを巡る響子の感情や行動には共感できるし、キャラクタ的には飛鳥よりも生き生きしてリアリティがある。

伝説的プロデューサーの芹澤泰治郎も飄々とした味のある役回り。
鋭い慧眼で、飛鳥の才能だけでなく、(誰も気が付かなかった)弱点も見抜いて、物語をぴりっと引き締める重みがある。

『ガラスの仮面』が好きな人ならかなり楽しめる小説だと思う。それにしても、私が生きている間に『ガラスの仮面』は完結するのだろうか??

[追記]
『チョコレートコスモス』の続編は、『ダンデライオン』。
毎日新聞社『本の時間』に連載されていた作品で、『本の時間』が2013年9月に廃刊になってしまったため、『ダンデライオン』も連載25回で中断。こちらも未完のままで終わるのだろうか?

後で気が付いたけれど、「佐々木飛鳥」という名前は、和田慎二の『超少女明日香』シリーズの「砂姫(さき)明日香」と、ひらがな読みにすれば一字少ないだけで、響きがよく似ている。
『ガラスの仮面』と『超少女明日香』は、どちらも『花とゆめ』に連載されていた。
明日香は、普段の姿はモサっとした田舎娘スタイルだけど、変身すれば美少女の超能力者。
同じように、地味で存在感が薄い飛鳥も、演劇の舞台に上がれば天才に”変身”する。

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(非公開コメント受付中)

こんにちは。
「チョコレートコスモス」は役者さんの話なのですね。「蜜蜂と遠雷」はこの作品を下敷きに書かれたのかもしれませんね。
文庫だし入手しやすいので、読みます。
「ガラスの仮面」もいつかは挑戦したいです。
 
芳野様、こんばんは。

「チョコレートコスモス」は、今夏のカドフェスで紹介されていて知りました。
「蜜蜂と遠雷」の共通点は、天才的な主人公と、オーディションとコンクール、という点ですね。
恩田さんも『ガラスの仮面』の愛読者で、この本を書くために演劇についてかなり勉強してプロに話も聞いたりして、演出家の視点で演技を考えて書いたそうです。
そのせいか「蜜蜂と遠雷」よりも演技描写に説得力を感じました。
『ガラスの仮面』はこの本の数倍(というより数十倍)の面白さです。(最近のストーリーは、昼メロみたいにドロドロしてて、脱線してますが...)
ガラスの仮面は数十倍の面白さですか!!
それは、ホントに読まなきゃですね♪
 
芳野様、こんばんは。

『ガラスの仮面』は、今のところ、コミックスが49巻、文庫版なら27巻出てます。
マンガでは、オーディションが2つ、演じる劇はたくさん(20くらい?)ありますので、演技も役作りのプロセスも見せ場満載です。
悩ましいのは、常識を超えた作者の遅筆。それに最近の話については、コミックス版で大幅改稿するため、雑誌連載版と登場人物や展開が違うことも結構あります。
こんばんは。
「チョコレート・コスモス」を購入しました。
まずは、これから読みます♪
 
芳野様、こんばんは。

速攻でご購入ですね!500頁ほどありますが、飛鳥の演技シーンは面白く読めると思います。
またご感想をお聞かせくださいませ。
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

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好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

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