”幽霊”という名のピアノ曲(追記あり)
2017-08-25(Fri)
子供の頃、夏になると母親に連れられて弟と一緒に遊びに行った「ひらかたパーク」のお化け屋敷。
真っ暗な通路のなかで、時々変な扮装をした”お化け”とか”妖怪”が出てきて、これが子供心にとっても怖かった...。今時の子供は、こういう仕掛けには驚かないのかもしれないけど。
お化け屋敷を思い出したので、「幽霊」と言う名前を持つピアノ曲(室内楽も含めて)を探してみた。
すぐに思い浮かぶのは、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番「幽霊」。
ベートーヴェンのピアノトリオの中では、第7番「大公」よりも好きな曲。伸び伸びと明るい第1楽章がとても爽やか。
一説では「幽霊」という副題の元になったと言われる第2楽章”Largo assai ed espressivo”も全然オドロオドロしくない。
Beethoven, Piano Trio in D Major, op.70 no.1 - Istomin-Stern-Rose
次がシューマン《天使の主題による変奏曲》。
原題は《Thema mit Variationen)/主題と変奏》で、俗称が"Geistervariationen"。”Geister”はドイツ語で「幽霊」。
ライン川へ身投げする直前のシューマンが書いた作品なので、その頃の精神状態を反映して音楽が平板..とか言われている。
たしかに平板な音楽だと思うけれど、シューマンはもう”向こう”の世界へ行ってしまったのか、黄昏のような穏やかさと静けさで不思議と明るい。
Sokolov plays Schumann Geistervariationen
スティーヴン・ハフのコンセプトアルバムで知った曲が2つ。
『FrenchAlbum』に収録されていたプーランクの《夜想曲第4番「幽霊たちの舞踏会(Bal fantôme)》。
密やかでちょっとゆらゆらして頼りなげなところが、舞踏会で踊っている幽霊みたい。
Francis Poulenc - Nocturne n°4 in C minor(Played by Alexandre Tharaud.)
もう一つは、『New York Variations』に収録されていたツォンタキス(Tsontakis)の《Ghost Variaions》(1991)。
ハフの解説によれば、<ゴースト>というタイトルが象徴しているのは、スピリチュアルなもの、記憶、夢といった世界。
和声的にはやや不協和的でファンタスティックな響きがとてもモダン。特に、(↓の音源だと)第1楽章(11:20~)でモーツァルトのピアノ協奏曲(第22番第3楽章)の主題と変奏に入ってからは、劇中劇みたいで面白い。
第3楽章(24:26~)は、主題旋律が流麗に変容し、和声の響きも幻想的でとても美しい。
Tsontakis Ghost Variations - Owen Zhou, piano
NMLで探して見つけたのは2曲。
ウィリアム・ボルコム(William Bolcom)の《3つのゴースト・ラグ》「第1番 優雅な幽霊」。
哀愁漂う素敵なラグ。(サントリーの洋酒CMを連想してしまった)
どこかで聴いたことがあると思ったら、ポール・ジェイコブズのCD『Paul Jacobs Plays Blues, Ballads & Rags』に入っていた。
William Bolcom 'Graceful Ghost' Rag - Paul Jacobs, piano
グラナドスの《幽霊:ロマンティックなワルツ/Apariciones: Valses Romanticos》。《Valses Poeticos》第7番。
これがどーして「幽霊」なのか?だけど、タイトル通りとてもロマンティック。
Enrique Granados: VI. «Sensible» de "Apariciones: Valses románticos" (1891-93)
以前に一度だけ聴いたことのあるジャン・フランチェスコ・マリピエロ(Gian Francesco Malipiero)の《Bizzarrie luminose dell'alba, del meriggio, della notte》の第3曲が「Fantasmi(幽霊)」。
《Bizzarrie luminose dell'alba, del meriggio, della notte》は、自動翻訳では”The bizarre light of dawn, the afternoon and the night”で、「夜明け、午後、そして夜の輝く光」とかいう意味。
第3曲が”夜”にあたるので、「幽霊」。ドロドロ怖い”お化け”ではなくて、いたずら好きな幽霊みたいなちょっとコミカルな曲。
Gian Francesco Malipiero: Bizzarrie luminose dell'Alba del Meriggio della Notte (1908)
Ⅰ Giuochi(?) / Ⅱ Sole(太陽) / Ⅲ Fantasmi(幽霊)
※Giuochiは、giocoの古語giuocoの複数形。giocoは、イタリア語で「ゲーム」、「賭け事」を意味する。
[2017.8.26 追記]
コメント欄で教えていただいたのは、カール・タウジヒの「幽霊船」。
タウジヒは編曲物が多いけれど、これは作品番号1のオリジナル曲で、原題は”Das Geisterschiff, Ballade/幽霊船,バラード”(Op.1c)。
タウジヒらしい技巧的な曲で、幽霊船のオドロオドロしい雰囲気がたっぷり。
Carl Tausig - The Ghost Ship (TAUSIG'S 174TH BIRTHDAY TRIBUTE)
<過去記事>
スティーヴン・ハフ 『French Album』
ジャン・フランチェスコ・マリピエロのピアノ作品
ポール・ジェイコブス ~ アメリカン・ピアノ・ミュージック・リサイタル
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
真っ暗な通路のなかで、時々変な扮装をした”お化け”とか”妖怪”が出てきて、これが子供心にとっても怖かった...。今時の子供は、こういう仕掛けには驚かないのかもしれないけど。
お化け屋敷を思い出したので、「幽霊」と言う名前を持つピアノ曲(室内楽も含めて)を探してみた。
すぐに思い浮かぶのは、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番「幽霊」。
ベートーヴェンのピアノトリオの中では、第7番「大公」よりも好きな曲。伸び伸びと明るい第1楽章がとても爽やか。
一説では「幽霊」という副題の元になったと言われる第2楽章”Largo assai ed espressivo”も全然オドロオドロしくない。
Beethoven, Piano Trio in D Major, op.70 no.1 - Istomin-Stern-Rose
次がシューマン《天使の主題による変奏曲》。
原題は《Thema mit Variationen)/主題と変奏》で、俗称が"Geistervariationen"。”Geister”はドイツ語で「幽霊」。
ライン川へ身投げする直前のシューマンが書いた作品なので、その頃の精神状態を反映して音楽が平板..とか言われている。
たしかに平板な音楽だと思うけれど、シューマンはもう”向こう”の世界へ行ってしまったのか、黄昏のような穏やかさと静けさで不思議と明るい。
Sokolov plays Schumann Geistervariationen
スティーヴン・ハフのコンセプトアルバムで知った曲が2つ。
『FrenchAlbum』に収録されていたプーランクの《夜想曲第4番「幽霊たちの舞踏会(Bal fantôme)》。
密やかでちょっとゆらゆらして頼りなげなところが、舞踏会で踊っている幽霊みたい。
Francis Poulenc - Nocturne n°4 in C minor(Played by Alexandre Tharaud.)
もう一つは、『New York Variations』に収録されていたツォンタキス(Tsontakis)の《Ghost Variaions》(1991)。
ハフの解説によれば、<ゴースト>というタイトルが象徴しているのは、スピリチュアルなもの、記憶、夢といった世界。
和声的にはやや不協和的でファンタスティックな響きがとてもモダン。特に、(↓の音源だと)第1楽章(11:20~)でモーツァルトのピアノ協奏曲(第22番第3楽章)の主題と変奏に入ってからは、劇中劇みたいで面白い。
第3楽章(24:26~)は、主題旋律が流麗に変容し、和声の響きも幻想的でとても美しい。
Tsontakis Ghost Variations - Owen Zhou, piano
NMLで探して見つけたのは2曲。
ウィリアム・ボルコム(William Bolcom)の《3つのゴースト・ラグ》「第1番 優雅な幽霊」。
哀愁漂う素敵なラグ。(サントリーの洋酒CMを連想してしまった)
どこかで聴いたことがあると思ったら、ポール・ジェイコブズのCD『Paul Jacobs Plays Blues, Ballads & Rags』に入っていた。
William Bolcom 'Graceful Ghost' Rag - Paul Jacobs, piano
グラナドスの《幽霊:ロマンティックなワルツ/Apariciones: Valses Romanticos》。《Valses Poeticos》第7番。
これがどーして「幽霊」なのか?だけど、タイトル通りとてもロマンティック。
Enrique Granados: VI. «Sensible» de "Apariciones: Valses románticos" (1891-93)
以前に一度だけ聴いたことのあるジャン・フランチェスコ・マリピエロ(Gian Francesco Malipiero)の《Bizzarrie luminose dell'alba, del meriggio, della notte》の第3曲が「Fantasmi(幽霊)」。
《Bizzarrie luminose dell'alba, del meriggio, della notte》は、自動翻訳では”The bizarre light of dawn, the afternoon and the night”で、「夜明け、午後、そして夜の輝く光」とかいう意味。
第3曲が”夜”にあたるので、「幽霊」。ドロドロ怖い”お化け”ではなくて、いたずら好きな幽霊みたいなちょっとコミカルな曲。
Gian Francesco Malipiero: Bizzarrie luminose dell'Alba del Meriggio della Notte (1908)
Ⅰ Giuochi(?) / Ⅱ Sole(太陽) / Ⅲ Fantasmi(幽霊)
※Giuochiは、giocoの古語giuocoの複数形。giocoは、イタリア語で「ゲーム」、「賭け事」を意味する。
[2017.8.26 追記]
コメント欄で教えていただいたのは、カール・タウジヒの「幽霊船」。
タウジヒは編曲物が多いけれど、これは作品番号1のオリジナル曲で、原題は”Das Geisterschiff, Ballade/幽霊船,バラード”(Op.1c)。
タウジヒらしい技巧的な曲で、幽霊船のオドロオドロしい雰囲気がたっぷり。
Carl Tausig - The Ghost Ship (TAUSIG'S 174TH BIRTHDAY TRIBUTE)
<過去記事>



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