2018_01
07
(Sun)15:00

スティーブン・ハフ ~ ドビュッシー/ピアノ曲集 

年末にタワーレコードから届いたハフのドビュッシーアルバムは、メモリアルイヤーに相応しい素晴らしいドビュッシー。

ハフのピアノの音は清流のように澄んでキラキラと品の良い煌きがある。
やや硬質で線が細く、輪郭が明瞭な音のわりに、タッチが軽やかなので響きが柔らかく、煌きのある色彩感と響きのバリエーションも豊か。録音音質が良いこともあって、多彩なソノリティがとても美しい。
ヤマハを弾いているせいか、スタインウェイの煌びやかな響きとは違って、煌きに落ち着きがあり響きも軽やかですっきりして澄んだ感じがする。

いつものハフと同じようにアーティキュレーションは細部まで緻密で明晰。複数の旋律がそれぞれくっきりと浮かび上がって立体的に聴き取れるところは、バッハを聴いているみたいな気がする。(特に、速いテンポで複数の旋律が絡み合っているところ)
今まで聴いたドビュッシーとは、響きやリズム・旋律が少し違って聴こえるところがいろいろ。楽譜を見ながら聴くと、演奏記号をどういう風に弾いているのかわかって、面白い。
それに、ハフのピアノで聴くと好きになった曲もあったりするので、聴く楽しみがいっぱい詰まっている。


Debussy: Piano MusicDebussy: Piano Music
2017/12/14
スティーヴン・ハフ

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《収録曲》
● 版画 L.108
● 映像 第1集 L.105
● 映像 第2集 L.120
● 子供の領分 L.119
● レントよりおそく L.128
● 喜びの島 L.109
ピアノ:Yamaha CFX concert grand
録音時期:2015年6月18,19日&2016年8月30,31日
録音場所:ブランドン・ヒル、セント・ジョージ教会&ワイアストン・エステイト、コンサート・ホール

とても好きな曲(「パゴダ」、「雨の庭」、「Movement」)は、響きもアーティキュレーションも私の好みにぴったり。
「パゴダ」は、”竜宮城”の物語みたいな古代の栄華に満ちた情景が思い浮かぶような視覚喚起力があり、アルカイックで高貴な雰囲気も漂っていて、何とも言えないくらい素敵。
「雨の庭」は、庭の情景を連想するのではなくて、ピアノの音が雨粒のような形に思えてきたり、雨が生きもののように姿形を変えながら動き回っているような感覚。

《映像第1集》の「水の反映」も、水の粒が生きもののように次々と形を変えていくかのように聴こえる。
リズミカルで躍動的な「Movement」は、スケール感とダイナミズム豊かに、シンプルでオスティナートする旋律に生き生きとした躍動感がある。規則的でメカニカルなリズムを通じて姿を変えていく「動き」が、音を通して目の前に現れてくるようなリアルさを体感しているような感じがする。

あまり聴かない《映像第2集》のなかでは、ファンタスティックな「葉ずえを渡る鐘」が、煌きのあるミステリアスな鐘のようなピアノの音と歌い回しに、妖精のような生命力が感じられて、とても面白く聴けた。

《子供の領分》は、《版画》と《映像》のような凄さはあまり感じなかったけれど、洗練された楽しいメルヘンみたい。
「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」はおとぎ話か童話みたいに可愛らしい。ペダルの使った響きのバリエーションとか、強弱の微妙な変化や滑らかなグラデーション、くっきり明瞭に浮き上がるリズム(第13小節の左手テヌートとか)など、楽譜を見ながら聴くとアーティキュレーションの緻密さがいろいろわかって面白い。
「象のこもり歌」は冒頭のテンポが結構速いし、表現もちょっとあっさりとした感じ。
「人形へのセレナード」は、歯切れ良くも柔らかさのある綺麗な音色としなやかなフレージングがしとやかで品が良い。ちっちゃな女の子が踊っているみたいにメルヘンチックで愛らしい。この曲はめったに聴かないけど、ハフの演奏がとても素敵なので好きな曲になってしまった。
とてもファンタスティックな「雪は踊っている」。雪の結晶みたいな煌きのある多彩な音色の美しさは言うに及ばず、各旋律が明瞭に浮かび上がって、舞い落ちてくる雪の動きの多彩さに加えて、生き物のような意志があるかのように感じる。どうやら無生物をテーマにした曲をハフが弾いたときに、そういう生命力を強く感じるということらしい。

滅多に聴かない《レントよりおそく》は、しなやかな優美さと品の良さがあって、古き良き時代のワルツみたいなレトロ感たっぷりで、この曲も素敵。《喜びの島》は多彩な音色と響きが豊穣で、音色の違う旋律が絡みあった立体感も鮮やか。

ハフのドビュッシーは、多彩な音色と立体感に加えて、ピアノの音が生き物のような生命力と意志をもって自在に動きまわっているように感じるところがあって、期待以上に素晴らしい。
アラウのドビュッシーにも同じような有機性を感じるけれど、それは原初的で野生的な生命力。ハフの場合は、無機的なモノや妖精たちがリアルな存在に感じられるような生気とファンタジーがある。
《版画》と《映像》に関しては、マイベストになるのは間違いないくらい。《子供の領分》も「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」・「人形へのセレナード」・「雪は踊っている」はとても好きな演奏。
過去に録音していた「月の光」もアラウと並んで一番好きな演奏だし、ドビュッシーなら真っ先にハフを聴きたくなる。
今年はドビュッシーイヤーなので、《前奏曲》の録音もリリースされるのではないかとちょっと期待している。

タグ:ドビュッシー スティーヴン・ハフ

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3 Comments

atsukoak  

このピアニストもいいですよ。

初めてメール致します。ドビュッシーの事についてのブログがありましたので拝見致しました。マルティーノティリモという名が日本では知られていないピア二ストもお勧めします。

ちょうど来月2月16日にスタンウェイ&サンズでドビュッシーコンサートをやります。私も行きます。お知らせまで。

2018/01/24 (Wed) 11:58 | REPLY |   

yoshimi  

ご紹介ありがとうございます

atsukoak様、こんにちは。

NMLでドビュッシーとヤナーチェクを聴いてみましたが、強弱の落差が大きく明晰な演奏のように思いました。
もう少し幻想的なドビュッシーが好きなので、あいにく私の好みとは違うようでした。

2018/01/24 (Wed) 13:40 | EDIT | REPLY |   

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2018/09/17 (Mon) 16:42 | REPLY |   

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