2018_03
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(Sat)00:00

メルニコフ『Four pianos, Four Pieces』(4種のピアノを使った難曲集) 

メルニコフの新譜は『Four pianos, Four Pieces』。作曲者が使っていたピアノ、もしくはその時代のピリオド楽器を使って、難曲として有名な4曲を録音。
ピリオド楽器の録音というのは時々出ているけれど(メルニコフも最近ピリオド楽器をよく使っているし)、時代別に4種類もの違ったピアノでそれぞれ異なる曲を弾くというのは珍しい。

Various: Four PiecesVarious: Four Pieces
(2018/3/9)
Alexander Melnikov

試聴ファイル(amazon.de)


ちょっと興味があったので、NMLでショパンのエチュードを中心に聴いてみた。

シューベルト/さすらい人幻想曲(グラーフ・フォルテピアノ)
弾力のある鋼のような質感のある響きが歯切れ良い。残響が短くて、響きがシャープなので、フォルテになると音が尖ってきつく感じる。
当時はこういう響きに聴こえたんだというのはよく分かったけど、好みの問題として、フォルテピアノの音は濁りがあるのでもともとあまり好きではない。やはりスタインウェイの方が、音色が純化されて美しく、残響も長くて音響的に安定感がある。


ショパン/12の練習曲 Op.10 (ピアノ:エラール)
ピアノの鍵盤が軽く残響が短いエラールを弾いているせいか、指回りがすこぶる良くて、テンポは滅法速い。数ある録音のなかで最速ではないかと思うガヴリーロフに匹敵するかも。
最近は叙情性にウェートを置いた演奏が多いような気がするエチュードでも、メルニコフの演奏は”原点回帰”というか、メカニックの機能性・運動性が強く出ているように感じる。
でも、細かいパッセージを速いテンポで弾くと、鋼みたいな弾力のある短い響きのせいか、Op.10-4はちょこまかとネズミが動き回っているようなコミカルな雰囲気がして面白い。

エラールの響きは、フォルテピアノよりも現代ピアノにかなり近づいているので、シューベルトの演奏よりも聴きやすいし、スタインウェイとの違いが楽しめる。
ショパンが愛用していたのはプレイエル。でも、エラールを弾いていなかったわけではないらしい。

第5回 ショパンとプレイエルのピアノ[浜松市楽器博物館DVD/楽器の世界コレクション]
ショパンのピアノ技法から見たショパン・練習曲集⑴(松藤弘之,佐女短研究紀要 第43集:65―73,2009])
「ショパンは,体調が不調で,指が固く動きも鈍くて思うように鍵盤の上で動かず,鍵やハンマーの動きを操るほどの力がないときは,エラールのピアノを選ぶと言っている。その理由として,エラールの持つ音の響きの良さと透明感をあげている。いっぽう,気力が充実し,いくら指を動かしても疲れず,精神的に苛立つことがないときは,プレイエルを弾いた。プレイエルのほうが彼の想念や感情をしんみり伝えられ,個人的なものが直接的に表現でき,指に直結したハンマーが,彼の表現したい感覚や,出したい効果をそのまま正確に表現してくれる気がする,と告白する。」

念のためガヴリーロフの録音(EMI盤)と演奏時間を比べると、ほとんどの曲でガヴリーロフの方が速かった。実際聴いても、やっぱりガブリーロフは滅茶苦茶速い。(これだけ速いのに、メカニックが精密なのが凄い)
どちらもメカニックの冴えた切れ味が鋭く感じるけれど、喩えて言えば、パワフルなガヴリーロフは牛刀で、やや線の細いシャープなタッチのメルニコフは怜悧なナイフみたいな感じ。印象の違いは、タッチの違いに加えて、ピアノの違いがかなり影響している。
最初はメカニカルで意外な演奏に聴こえたメルニコフのエチュードでも、ガヴリーロフと聴き比べてしまうと、叙情美しく端正に聴こえてしまう。


リスト/ドン・ジョヴァンニの回想(ピアノ:ベーゼンドルファー)
この曲も「ドン・ジョヴァンニ」も今まで聴いたことがないし、モーツァルトとオペラという苦手が二乗されているのと、いかにも劇半音楽みたいな曲なので、やっぱり聴いてもあんまり楽しくなかった。
でも、ベーゼンドルファーのちょっとくぐもりのあるレトロな響きは独特の味わいがあってかなり好き。


ストラヴィンスキー/ペトルーシュカからの3楽章(ピアノ:スタインウェイ)
3種類の違うピアノの演奏を聴いた後でこの曲を聴くと、スタインウェイの豊かで重量感のある響きと、金管楽器風の華やかさと煌びやかさが良く似合う。

タグ:シューベルト ショパン フランツ・リスト ストラヴィンスキー メルニコフ

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