『Dino Ciani: A Tribute』 ~ ショパン/エチュード
2018-03-06(Tue)
ショパンのエチュード録音のCDレビュー「音楽図鑑CLASSIC」を読んでいて、聴いてみたいと思ったのがディノ・チアーニ。
チアーニについては、9年前に読んだ『クラシックは死なない!』(松本大輔)で紹介されていた。
その時に彼の録音を数曲試聴した記憶はある。弱音が異様なくらいに小さかったし、私の好みとは違うような気がしたので、それ以来聴いたことがない。
NMLで 『Dino Ciani: A Tribute』に収録されているショパンのエチュードを何曲か聴いてみたら、レビューの通りのポリフォニックで歌うようなショパン。
内声部の含めた声部の立体感と、声部それぞれが自然にさりげなく(しつこくはない)歌わせるフレージングが素晴らしい。
とりわけ特徴的なのは、弱音の弱さ。ピアニッシモよりもさらに弱くて、普通のボリュームだとあまり聴こえないので、ボリューム上げないといけないくらい。それほど微かな弱音でも、声部の音色が微妙に違って、どの旋律の流れもよくわかる。
逆にフォルテではシャープなタッチで切れが良いので、メリハリがしっかりついていて、全体的に甘く優しいという演奏ではない。
ヘッドフォンで聴いていると、速いテンポのパッセージを小さな弱音で弾いている時とかで、隣の鍵盤をひっかけてしまうようなミスタッチがかなり残っている。スタジオ録音なのにほとんど編集していないのではないかと思う。音量が小さいし、それ以外のところを聴くのに神経が集中しているので、私はそれほど気にならない。
ショパンのエチュードが収録されている『Dino Ciani: A Tribute』は6枚組BOXセット。
他にベートーヴェン《ディアベリ変奏曲》、ウェーバー《ピアノ・ソナタ》(第1番~第4番)、バルトーク数曲、バラキレフ《イスラメイ》など。
ライブ録音とスタジオ録音が混在していて、音質はかなりばらつきがある。スタジオ録音でもややデッドな音質なものが多い。ショパンは音自体は鮮明で、響きに煌きもあり、残響もほどほどにあるので、一番聴きやすい。
収録曲で聴いたことがないのは、ウェーバーのピアノ・ソナタくらい。
レパートリーにバラエティがあり、バルトークが4曲も入っていて、十八番らしい。チアーニはリスト=バルトークピアノコンクール(ブタペスト国際音楽コンクールのピアノ部門)の準優勝者だった。
半分くらい聴いたところ、とても好きなのはショパンとディアベリ、シューマン。シューマンの《ピアノ・ソナタ第1番》がこんなに面白い曲だとは思わなかった。久しぶりにバルトークの演奏を聴くのも楽しみ。
<収録曲>
ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲、エロイカ変奏曲(Live)
ウェーバー:ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 Op24、同第2番 変イ長調 Op39、同第3番 ニ短調 Op49、同第4番 ホ短調
ショパン:12の練習曲 Op10、12の練習曲 Op25、練習曲 Op10-19、夜想曲 Op62-1
リスト:夕べの調べ、雪あらし(Live)
バルトーク:ピアノ・ソナタ、ハンガリー農民の歌による即興曲、野外にて、組曲 Op.14
スクリャービン:5つの前奏曲 Op74、練習曲 Op8-11
ハイドン:ピアノ・ソナタ第52番 変ホ長調(Live)
モーツァルト:幻想曲 K475、ピアノ・ソナタ第14番 K457(Live)
シューマン:幻想曲 ハ長調 Op17、ピアノ・ソナタ 嬰ヘ長調 Op11(Live)
バラキレフ:イスラメイ(Live)
一番先に聴いたのは、ショパンのエチュード。どの曲も軽やかな弱音のパッセージが優雅が品があり、主旋律に限らず伴奏の高音/低音部も内声部も滑らかで自然に歌わせるので、重唱のようなハーモニーの立体感があり、とても詩情豊か。
脆いガラス細工みたいに繊細な弱音の響きが美しくため息が出そう。(もしデジタル録音で聴いたとしたら、ロルティ並みに美しいのかもしれない)
その繊細さのわりに、音が軽やかで自然な趣のある表情と情感なので、ベタっと情緒過剰なところは全くなくて、後味はさっぱりとして心地よい。それに対してフォルテは結構シャープで力強いので、繊細で優しいだけではない。歌い回しが上手いせいか、オスティナート的な単調なフレーズでも聴かせるものがある。
特に素晴らしく思ったのは、弱音主体のOp.10-11とOp.25-1(エオリアン・ハープ)。弱音主体でも声部の色彩感と立体感が明瞭で、響きの美しさとニュアンスの繊細さが際立っている。淡く軽やかでふわりと柔らかい叙情が爽やかで優しい。
それに、Op.10-7(黒鍵のエチュード)では、右手の細かなパッセージが蝶が舞うように軽やかで、レガートな響きがとても綺麗で何とも言えないニュアンスがある。
こういうショパンを聴くことができただけで、このBOXセットを買った甲斐がある。
Chopin - Dino Ciani (1965) 24 Etudes
<参考情報>
好きなピアニスト ディノ・チアーニ
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
チアーニについては、9年前に読んだ『クラシックは死なない!』(松本大輔)で紹介されていた。
その時に彼の録音を数曲試聴した記憶はある。弱音が異様なくらいに小さかったし、私の好みとは違うような気がしたので、それ以来聴いたことがない。
NMLで 『Dino Ciani: A Tribute』に収録されているショパンのエチュードを何曲か聴いてみたら、レビューの通りのポリフォニックで歌うようなショパン。
内声部の含めた声部の立体感と、声部それぞれが自然にさりげなく(しつこくはない)歌わせるフレージングが素晴らしい。
とりわけ特徴的なのは、弱音の弱さ。ピアニッシモよりもさらに弱くて、普通のボリュームだとあまり聴こえないので、ボリューム上げないといけないくらい。それほど微かな弱音でも、声部の音色が微妙に違って、どの旋律の流れもよくわかる。
逆にフォルテではシャープなタッチで切れが良いので、メリハリがしっかりついていて、全体的に甘く優しいという演奏ではない。
ヘッドフォンで聴いていると、速いテンポのパッセージを小さな弱音で弾いている時とかで、隣の鍵盤をひっかけてしまうようなミスタッチがかなり残っている。スタジオ録音なのにほとんど編集していないのではないかと思う。音量が小さいし、それ以外のところを聴くのに神経が集中しているので、私はそれほど気にならない。
ショパンのエチュードが収録されている『Dino Ciani: A Tribute』は6枚組BOXセット。
他にベートーヴェン《ディアベリ変奏曲》、ウェーバー《ピアノ・ソナタ》(第1番~第4番)、バルトーク数曲、バラキレフ《イスラメイ》など。
ライブ録音とスタジオ録音が混在していて、音質はかなりばらつきがある。スタジオ録音でもややデッドな音質なものが多い。ショパンは音自体は鮮明で、響きに煌きもあり、残響もほどほどにあるので、一番聴きやすい。
収録曲で聴いたことがないのは、ウェーバーのピアノ・ソナタくらい。
レパートリーにバラエティがあり、バルトークが4曲も入っていて、十八番らしい。チアーニはリスト=バルトークピアノコンクール(ブタペスト国際音楽コンクールのピアノ部門)の準優勝者だった。
半分くらい聴いたところ、とても好きなのはショパンとディアベリ、シューマン。シューマンの《ピアノ・ソナタ第1番》がこんなに面白い曲だとは思わなかった。久しぶりにバルトークの演奏を聴くのも楽しみ。
![]() | ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲/ショパン:エチュード集/ウェーバー:ピアノ・ソナタ/バルトーク:ピアノ・ソナタ/他(チアーニ) (2012/4/1) Dino Ciani 試聴ファイル(allmusic.com) |
<収録曲>
ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲、エロイカ変奏曲(Live)
ウェーバー:ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 Op24、同第2番 変イ長調 Op39、同第3番 ニ短調 Op49、同第4番 ホ短調
ショパン:12の練習曲 Op10、12の練習曲 Op25、練習曲 Op10-19、夜想曲 Op62-1
リスト:夕べの調べ、雪あらし(Live)
バルトーク:ピアノ・ソナタ、ハンガリー農民の歌による即興曲、野外にて、組曲 Op.14
スクリャービン:5つの前奏曲 Op74、練習曲 Op8-11
ハイドン:ピアノ・ソナタ第52番 変ホ長調(Live)
モーツァルト:幻想曲 K475、ピアノ・ソナタ第14番 K457(Live)
シューマン:幻想曲 ハ長調 Op17、ピアノ・ソナタ 嬰ヘ長調 Op11(Live)
バラキレフ:イスラメイ(Live)
一番先に聴いたのは、ショパンのエチュード。どの曲も軽やかな弱音のパッセージが優雅が品があり、主旋律に限らず伴奏の高音/低音部も内声部も滑らかで自然に歌わせるので、重唱のようなハーモニーの立体感があり、とても詩情豊か。
脆いガラス細工みたいに繊細な弱音の響きが美しくため息が出そう。(もしデジタル録音で聴いたとしたら、ロルティ並みに美しいのかもしれない)
その繊細さのわりに、音が軽やかで自然な趣のある表情と情感なので、ベタっと情緒過剰なところは全くなくて、後味はさっぱりとして心地よい。それに対してフォルテは結構シャープで力強いので、繊細で優しいだけではない。歌い回しが上手いせいか、オスティナート的な単調なフレーズでも聴かせるものがある。
特に素晴らしく思ったのは、弱音主体のOp.10-11とOp.25-1(エオリアン・ハープ)。弱音主体でも声部の色彩感と立体感が明瞭で、響きの美しさとニュアンスの繊細さが際立っている。淡く軽やかでふわりと柔らかい叙情が爽やかで優しい。
それに、Op.10-7(黒鍵のエチュード)では、右手の細かなパッセージが蝶が舞うように軽やかで、レガートな響きがとても綺麗で何とも言えないニュアンスがある。
こういうショパンを聴くことができただけで、このBOXセットを買った甲斐がある。
Chopin - Dino Ciani (1965) 24 Etudes
<参考情報>
好きなピアニスト ディノ・チアーニ
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。