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『Dino Ciani: A Tribute』 ~ ベートーヴェン/ディアベリ変奏曲
長大で退屈とか不評も少なくない《ディアベリ変奏曲》。《ゴルトベルク変奏曲》よりもはるかに好きなので、いろいろ聴いたけれど、チアーニがこの曲を録音していることは知らなかった。

『Dino Ciani: A Tribute』に収録されていたチアーニのディアベリは、さりげなく歌うようなニュアンス豊かな歌い回しと、繊細な響きに淡くしっとりとした情感が籠った多彩なな弱音が美しく、テーマも変奏もどれを聴いてもとても楽しいディアベリ。

ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲/ショパン:エチュード集/ウェーバー:ピアノ・ソナタ/バルトーク:ピアノ・ソナタ/他ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲/ショパン:エチュード集/ウェーバー:ピアノ・ソナタ/バルトーク:ピアノ・ソナタ/他(チアーニ)
(2012/4/1)
Dino Ciani

試聴ファイル(allmusic.com)


少しデッドでかなり近くから聴こえて、音の輪郭がしっかりして明瞭。リマスタリングによる金属的な響きがなく、柔らかさもあるので、とても聴きやすい。
少しミスタッチが残っているけど、ショパンのエチュードよりははるかに少ないので全く気にならない。

冒頭のテーマは、軽やかな歯切れ良いタッチでとてもリズミカル。フォルテ主体の変奏は、力強くも弾力のあるタッチで軽快。
特に魅かれるのは弱音主体の変奏。弱音の階層が多く、(弱音ペダルを踏んでいるのか)ちょっと籠った弱音と、普通の弱音と2種類あるように聴こえる。
ショパンのエチュードの消え入りそうな弱音よりは少し音量が大きいので、聴きづらさはかなり減っている。
声部ごとに音色が違って立体感があるのはショパンと同じ。声部が錯綜した部分や弱音主体の曲でその鮮やかさが際立ってくる。
自然に浮かび上がってくる低音部や内声部も語るような歌い回しなので、二重唱や三重唱を聴いているような気がする。

この曲を退屈させずに聴かせるには、強弱やテンポのコントラストを強調して表情を変える演奏が多い。
チアーニのディアベリは、山(フォルテ)が普通で谷(弱音)が深く、表情もニュアンスが豊かで細やか。アーティキュレーションがとりわけ凝っているというではなく、しなやかで滑らかな語り口から自然に歌が流れ出てくるような感じ。
表情も音楽の流れもとても自然に聴こえる。今まで聴いたディアベリの録音のなかでは、一番好きだと思う。

Beethoven - Dino Ciani (1965) Variations Diabelli op. 120



テーマと急速系の変奏は、速いテンポで歯切れ良いタッチで、軽やかでリズミカル。
同音連打や単純なトリルにもさりげない表情がある(第5変奏、第6変奏)。
第9変奏は、左手がくっきり明瞭で、立体感のある重層的な響き。
声部が速いテンポで絡み合っている曲(第19変奏、最終変奏のフーガなど)を聴くと、声部の立体感の鮮やかさがよくわかる。声部が綺麗に分離しているだけでなく、自然に歌うようなフレージング。

弱音ペダルを踏んでいるのか、ちょっと密やかで柔らかい音色が綺麗で優しい表情(第2変奏)。
第3変奏になると、抜けの良い弱音に変わって、優美。続く第4変奏は、歌うようなフレージングで、重なる和声の響きが綺麗。
第8変奏も、柔らかくて優しい音色と歌い回しで、リピートするときに強弱を変えている。
第11変奏や第18演奏は弱音で問いかけるような雰囲気。
終盤の第26変奏~第28変奏はとても美しく、弱く静かな弱音で抑制した表現でも、淡くも切々とした哀感が流れる。

チアーニのBOXセットを買って良かったと思うのは、ショパンのエチュード以上に、このディアベリを聴けたこと。

tag : ベートーヴェンチアーニ

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クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

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好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

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