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ベートーヴェン/6つのバガテル Op.126
ポール・ルイスが4年に渡って王子ホールで行うリサイタル『ハイドン・ベートーヴェン・ブラームス プロジェクト(HBB project)』では、昨年11月のプログラムでベートーヴェン最後のピアノ作品となった《バガテルOp.126》を弾いていた。

レコ芸のインタビューで、ルイスはこのバガテル集についてこう言っている。
「これは驚くべき傑作です。異なる印象のコラージュで、最初と最後がシンメトリーになっていて、ベートーヴェンのクレイジネスと理解不能さが表れている。中間楽章には、作品111のような印象もあるし、ビーダーマイヤー風の舞曲の舞曲もあるし、どこか記憶のようでもある。最後のバガテルは、回想のようですし、彼の最後のピアノ作品でもあります。半ば意識的に、往年に過ぎ去ったことをみているのだと思いますし、その意味でなにか感動的なものがあります」


最初と最後がシンメトリーというのは、6曲の配置が曲想的にシンメトリーということ?。
「中間楽章には、作品111のような印象」というのは、第3曲(Andante Cantabile e Grazioso)のことで、「ビーダーマイヤー風の舞曲の舞曲」と言うのは、たぶん第4曲(Presto)を指していると思う。

「最後のバガテルが、回想のように、半ば意識的に、往年に過ぎ去ったことをみている」というのは、実感として全くその通り。
短い序奏から、過去を回想するようなノスタルジックな主題から甘美な旋律や幸福な過去の追憶に浸っているような旋律が次々と現れて、この曲もコラージュ風。
エンディングは、突然、冒頭の序奏と同じ旋律に立ち返って、もう回想はお終い!と言っているように聴こえる。終止符を打ったのは、この曲だけではなく、ピアノ曲の作曲も一緒だった。

初めてこのバガテルを聴いたのはブレンデルのバガテル集。まるで無駄なく凝縮された小宇宙みたいな曲だと思う。
いつも聴いているのはカッチェンの録音だけど、面白いのは第5曲のテンポ設定と解釈。
ベートーヴェンが指定した”Quasi Allegretto”にしては、ブレンデル(や他のピアニストの多く)は、ちょっと遅めのテンポ(モデラートかアンダンテくらいに感じる)で、穏やかでちょっと内省的。
カッチェンはかなり速いテンポで、ブレンデルが3分近いのに対して、2分足らずで弾いている。(私には”Quasi Allegretto”に相応しいテンポ設定だと思える)
ブレンデルは穏やかでしっとりと潤いがあってとても優美。カッチェンは軽やかな叙情感が爽やかで、この速めのテンポだと、中間部がとても軽快でリズミカル。

Alfred Brendel plays Beethoven: 6 Bagatelles, Op. 126



ついでに、有名な「エリーゼのために」は、元々作品番号がついていないバガテル(Bagatelle 'Für Elise' a-moll WoO.59)。
この曲で好きなのは、しなしなすることなくクールで軽やかで激しいデュシャーブルの録音。(こんなエリーゼを弾く人は珍しいと思う)

Francois Rene Duchable – Für Elise ♫ Best Instrumental Love Songs Of All Time


tag : ベートーヴェンブレンデルデュシャーブル

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クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;アリステア・マクリーン、エドモンド・ハミルトン、太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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