2018_06
06
(Wed)18:00

スティーヴン・ハフ ~ フンメル/ピアノ・ソナタ集 

スティーヴン・ハフのディスコグラフィで未購入CDを試聴していたら、古典派~ロマン派の初期の音楽が好きなせいか、フンメルのピアノ・ソナタが妙に気に入って、またCD買ってしまった...。

フンメルのピアノ・ソナタは全部で9曲。作品番号付きは第1番~第6番。
いつもとは違った顔のベートーヴェンみたいなところがあって、疾風怒濤の激しさはあまり顔を出さず、優美でロマンティックで可愛らしいベートーヴェンで、時々モーツァルトやハイドン、シューベルトにショパンにメンデルスゾーンが顔を出したりする。
1790年代と1800年代の曲は、モーツァルトとハイドンと初期ベートーヴェンが融合したような印象。第3番がとりわけロマンティック。第4番はモーツァルトを聴いている気分。

 ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 Op. 2, No. 3(1792)
 ピアノ・ソナタ第2番 変ホ長調 Op. 13(1805)
 ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 Op. 20(1807)
 ピアノ・ソナタ第4番 ハ長調 Op. 38(1808)
 ピアノ・ソナタ第5番 嬰ヘ短調 Op. 81(1819)
 ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調 Op. 106(1824)
 ピアノ・ソナタ第7番 ト長調(1795)
 ピアノ・ソナタ第8番 変イ長調(1821)
 ピアノ・ソナタ第9番 ハ長調(1792)

録音が多いのは「第5番Op.81」。1819年の作曲で、シューベルトの陰翳がかかったベートーヴェンみたい。フンメルのピアノ・ソナタのなかでも、最もロマン派に近付いた曲で、第6番の次に好きな曲。
第5番の第1楽章はドラマティックな幕開き。全体的にどこかで聴いたようなデジャヴなところがあって、少しベートーヴェン風。時々《ピアノ・ソナタ第22番》の第2楽章を連想する。
ロマン派風にロマンティックな第2楽章では、時々ショパンみたな旋律がでてくる。感傷的になり過ぎないのが良い。
軽快なテンポとリズムの第3楽章は、速いテンポで弾く細かいパッセージが華やか。(メンデルスゾーンにちょっと似た感じ)

Constance Keene plays Hummel Sonata No. 5 in F sharp minor Op. 81 (2/3)



私が一番好きなのは「第6番Op.106」。フンメルのピアノソナタ中、規模最大で唯一の4楽章構成で、シンフォニックで明るく伸びやか。
楽章ごとの曲想もそれぞれ違い、演奏時間は30分ほどと長いけれど、どの曲もとても楽しく聴ける。
第2曲はまるで(安定感のある)シューマン。力強くてダイナミックで躍動感溢れるところがとても好き。
さらに好きなのはとっても可愛らしい主題とフーガの絡みあいが楽しい第4楽章。何度聴いても思わず微笑んでしまう愛らしさ。フンメルのピアノ・ソナタ全曲のなかでも一番好きなくらい。

Constance Keene plays Hummel Sonata No.6 in D Major op.106


ハフが録音しているのは、第3番、第5番、第6番の3曲のみ。
全体的にテンポが速くてリズム感も良く、硬質でクリアで多彩な音色が綺麗で、輪郭も音の切れ味もシャープで精緻。
楽章ごとの性格付けと楽章間のコントラストが明瞭で、曲中のメリハリもしっかり。特に急速楽章のスピード感と躍動感が鮮やか。
思いがけなく私の波長にぴったり合ってしまったフンメルのピアノ・ソナタ。(全集録音あればさらに嬉しかったけど)

ハフはChandosにフンメルの《ピアノ協奏曲》のうち第2番と第3番も録音していて、憂いの少ないショパンとメンデルスゾーンが合わさった感じ。こちらもわりと好きだけど(特に第2番の方)、ピアノ・ソナタのようにはまることはなく、CD買うには至らず。

Johann Nepomuk Hummel : Piano SonatasJohann Nepomuk Hummel : Piano Sonatas
(2003/12/9)
Stephen Hough

試聴ファイル(hyperion)


Piano Concerti Johann Nepomuk Hummel : Piano Sonatas
(1992/10/27)
Stephen Hough

試聴ファイル(chandos.net)



ハフが録音していない《ピアノ・ソナタ第2番》は、モーツァルトとハイドンとベートーヴェンが入り混じったようなところが面白い。
ハワード・シェリーのスタジオ録音とディノ・チアーニのライブ録音がある。

Ciani Hummel Piano Sonata No.2 (first mov.)



フンメルの「ピアノソナタ全集」の録音は4種類あり、コンスタンス・キーン(Newport Classic)、A. ポンパ=バルディ(Centaurm)、Hae Won Chang/チャン・ハーウォン(Naxos)、イアン・ホブソン(Arabesque Recordings)。
NMLとamazonで試聴したところ、速いテンポで細かいパッセージになると、指回りがちょっと怪しくなる人が多い。(やはりハフのメカニックの精密さと切れ味の良さは抜群)
そのなかで、一番私の好みに合っていたのがキーン。柔らかく温もりがあり、落ち着いた煌きがある音色が綺麗。和らい音色でメリハリはやや弱く、メカニック的な精度とか音の切れ味もやや弱い感じはする。テンポ感は私の感覚と合っているし、優しい雰囲気が曲想によく似合う。全集(CD3枚)買うならキーンにするけど、3巻とも廃盤だった。

Piano Sonatas 1
(2000/2/15)
Constance Keene

試聴ファイル



<参考情報>
フンメル研究ノート~Review~[Hummel Note 作曲家J.N.フンメルの研究ノート]
フンメルの伝記が載っている。ベートーヴェンの才能の巨大さと独自性、芸術性を理解していたフンメル。ウィーンでは人気のあるヴィルトオーソ&人気作曲家として華やかな音楽活動をしていたのに、死後、フンメルの音楽はロマン主義の台頭とともに忘れられていった。
フンメルの音楽を聴いていると、ベートーヴェンとは違って、音型とか曲想が似通っている曲が多く、当時は人気があっても、今ではほとんど演奏されなくなったのもわかる気はする。

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