2018_06
15
(Fri)18:00

キャシー・クリエの現代音楽 

ディティユーの《ピアノ・ソナタ》の録音を探していて、初めて聴いたピアニストのキャシー・クリエのディスコグラフィが面白い。現代音楽、それも演奏機会がそれほど多くはない曲が多いという選曲がとても個性的。

スカルラッティ、ハイドン、ショパン、ミュレンバッハ、ディティユー
Piano Music Piano Music
(2009/1/13)
Cathy Krier

試聴ファイル


ベルク、シェーンベルク、ツィンマーマン
Berg/Schonberg/ZimmermannBerg/Schonberg/Zimmermann
(2017/3/17)
Cathy Krier

試聴ファイル


この2枚以外にも、ドビュッシー&シマノフスキラモー&リゲティヤナーチェクと現代曲がかなり多い。
アルバン・ベルクとシェーンベルク(それにかなり聴きやすいヤナーチェク、リゲティ)を録音するピアニストは結構いるけれど、ディティユー、ミュレンバッハ、ベルント・アロイス・ツィンマーマンは珍しい。
特にミュレンバッハの《夜の音楽》(1987年)とツィンマーマンの《エンキリディオン》(1949年・1951年)は、クリエのアルバムで初めて聴いて、どちらも好きになれる曲だった。

クリエのピアノは、硬質でクリアな響き、明確なフレージングで、一音一音のタッチはそれほど研ぎ澄まされて精密だとは感じなかったけれど、シャープで切れが良く、あまり情感たっぷりには弾かない。現代的な乾いた感性の透明感としつこくない叙情感があって、現代曲には良く似合っていると思う。

ハイドンは明晰で後に引かない叙情感、ショパンは歯切れ良いタッチでさっぱりした情感。あえてクリエで聴きたいという気にはならなかった。
ドビュッシーはタッチがあまり精緻ではなく、縦の線とかリズムが揺れる(綺麗に揃わない)感じたするので、これも好きな演奏ではなかった。
ヤナーチェクも、アンスネスやフィルクスニーに比べると、打鍵や細部の情感の籠め方とかさほど繊細ではなく、速いテンポでサクサクと進んでいくので、淡泊な感じがする。(音質がデッドなのも影響していると思うけど)

対照的にクリエのピアニズムが似合っていると思ったのは、現代物。(曲自体が面白いと思ったせいもある)
ディティユーの《ピアノ・ソナタ》は、拍節感が少し曖昧で浮遊感や少しネットリとした情感を感じるのが面白い。

Cathy Krier Henri Dutilleux: Sonate pour piano



ミューレンバッハの《夜の音楽》は他に録音が見当たらず。
クリエの演奏で聴くと、夜のとばりにつつまれた幻想的な雰囲気が漂うような冒頭から(ベルクの《ピアノ・ソナタ》に少し似たところがある)、メシアン風の疾走感のある先鋭で厳めしい旋律に変わり(少しジャズ風な旋律もでてくる)、暗闇に潜む怖さみたいなものが噴出してきて、とても面白い曲。

B.A.ツィンマーマンはもともとピアノ作品が少ない上に録音も少ない。
《エンキリディオン》は、ヒンデミット、ショスタコーヴィチ、バルトークを連想するせいか、予想と違ってとても聴きやすい。
”エンキリディオン”とは「教本」という意味なので、邦題を《手引書》と訳している場合もある。
《エンキリディオン》はⅠ(8曲)、Ⅱ(5曲)、Ⅰの補遺(Anhang、1曲)、Ⅱの補遺(Anhang、2曲)の全16曲。
どちらかというと、Ⅰの方が、初期シェーンベルクやアルバン・ベルク(Ⅰ、Ⅱ)、ショスタコーヴィチ(Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ)やバルトーク(Ⅶ、Ⅷ)に近い感じがするので聴きやすい。Ⅱはメシアンに少し似ているところがあるかも。

Cathy Krier Piano - 20th Century -Teaser (english)


タグ:クリエ ディティユー B.A.ツィンマーマン

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