【新譜情報】『マリア・ユージナの芸術』(26CD)
2018-09-19(Wed)
スターリンのお気に入りのピアニストとして有名なマリア・ユーディナの新譜は26枚組BOXセット『マリア・ユージナの芸術/The Art of Maria Yudina』(Scribendum盤)。9月下旬にリリース予定。ジャケットの絵がとても素敵。
HMVサイトの商品説明が異常に詳しくて、ユーディナのミニ伝記と詳細な年表が載っている。
既出のユーディナ録音集は、『Legacy of Maria Yudina』シリーズ(Vista Vera盤)や、Brilliant Classics盤の8枚組/3枚組のBOXセット、最近ではWatertower Mod盤の録音シリーズなど、複数のレーベルから出ている。
その他に、ユーディナに関するホームページに載っていたMP音源もダウンロードできるので(※今はダウンロードできない)、公表されている音源は結構持っているけど、音質の良くないものが多い。
ユーディナの録音はライブ録音が多いので、同じ曲目でも収録している演奏がレーベルによって違うことがあり、録音場所・録音年を確認しないといけない。
『マリア・ユージナの芸術』はCD26枚組で6000円前後。お得感はあるけれど、パブリックドメインになっている音質の悪いライブ録音が多いと思うので、買うかどうかは微妙。
それにユーディナ独特の演奏解釈なので、一般的な演奏とは違う事が多く、面白いけど、?という演奏もちらほら。それでも確信に満ちた演奏なので、好きというわけではなくとも、そういう解釈もありかなと思ってしまう。
私が持っているのは、↓のBrilliant盤の3枚組BOX.。曲目・演奏とも好きな録音が多く、音質も比較的良い。
『マリア・ユージナ名演集~バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、シューベルト、リスト』(3枚組)
私が一番好きなのは、バッハ=リスト編曲《前奏曲とフーガ BWV543》。ライブ録音とスタジオ録音(1952年。BOXセットに収録)があり、この曲は十八番だったのか、ライブ録音の音源が複数残っている。なかでも、1953年のライブ録音が有名。
スタジオ録音に比べて、1953年のライブ録音は、タッチに少々荒っぽく無骨なところはあれど、強い求心力と力強さで骨太な演奏。
目的に向かって突き進んでいくような緊迫感と白熱感に惹き込まれ、揺るぎ無い確信に満ちた演奏には何度聴いても深い感動がある。
Bach-Liszt: Prelude & Fugue in A minor, BWV 543 (Live recording, Moscow 1953)
ユージナのブラームスは、ルバートを多用し、強弱・緩急のコントラストを明瞭につけた起伏の大きいダイナミックな演奏。
情緒過剰なセンチメンタリズムとは無縁。きりっとして、意志の強さを感じさせる。(時々ちょっと騒々しいけど)
Brahms - Intermezzi op.117 - Yudina
Maria Yudina plays Brahms Rhapsody Op. 79 No. 2 in G minor
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番の第2楽章は、バックハウスと並ぶくらいに速いテンポと力強いタッチ。よく聴くベートーヴェンとは全く違うので、最初聴いた時はありえない...と思いつつも、そのうち違和感を感じなくなってしまった。
Maria Yudina plays Beethoven Sonata No. 32 , Op. 111 (2/3)
Maria Yudina plays Beethoven Sonata No. 32 , Op. 111 (3/3)
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【新譜情報】 マリア・ユージナ名演集 (The Russian Archives)
マリア・ユーディナのリスト録音 ~ 《前奏曲とフーガ BWV543》、《バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」による変奏曲》
『マリア・ユージナ名演集』 ~ ブラームス・シューベルトのピアノ作品
マリア・ユージナに関する文献
ソロモン・ヴォルコフ著 『ショスタコーヴィチの証言』
スターリンとユーディナにまつわるエピソードがいくつか載っている。一番面白いのは、モーツァルトのコンチェルトを徹夜で録音したという逸話。
ユーディナは、スターリンの大のお気に入りのピアニスト。彼女が弾くモーツァルトのピアノ協奏曲第23番をラジオで聴いたスターリンが、レコードがあるかとラジオ委員会に訊ねたところ、委員会の誰もが「(レコードは)ありません」とは怖くて答えられなかった。早速レコードを届けるようにスターリンに命じられたラジオ委員会は、すぐにユーディナと指揮者とオーケストラをかき集めて、徹夜で録音。たった1枚のレコードを製作して、翌日スターリンに届けたという。
徹夜録音の際、度胸の良いユーディナに比べて、最初に来た指揮者は恐怖で思考麻痺になり自宅へ送り帰され、2人目は震えて間違いばかり。結局3人目の指揮者を連れてきて、どうにか最後まで演奏できたという。
このレコードは、スターリンが別荘で亡くなったときに、プレーヤーに載っていたと言われる。
ユーディナは反体制的言動のために演奏活動は制限されたが、粛清されずに生き延びたのは、スターリンが大目に見ていたためらしい。
HMVサイトの商品説明が異常に詳しくて、ユーディナのミニ伝記と詳細な年表が載っている。
![]() | マリア・ユージナの芸術(26CD) (2018年09月25日 発売予定) Maria Yudina |
既出のユーディナ録音集は、『Legacy of Maria Yudina』シリーズ(Vista Vera盤)や、Brilliant Classics盤の8枚組/3枚組のBOXセット、最近ではWatertower Mod盤の録音シリーズなど、複数のレーベルから出ている。
その他に、ユーディナに関するホームページに載っていたMP音源もダウンロードできるので(※今はダウンロードできない)、公表されている音源は結構持っているけど、音質の良くないものが多い。
ユーディナの録音はライブ録音が多いので、同じ曲目でも収録している演奏がレーベルによって違うことがあり、録音場所・録音年を確認しないといけない。
『マリア・ユージナの芸術』はCD26枚組で6000円前後。お得感はあるけれど、パブリックドメインになっている音質の悪いライブ録音が多いと思うので、買うかどうかは微妙。
それにユーディナ独特の演奏解釈なので、一般的な演奏とは違う事が多く、面白いけど、?という演奏もちらほら。それでも確信に満ちた演奏なので、好きというわけではなくとも、そういう解釈もありかなと思ってしまう。
私が持っているのは、↓のBrilliant盤の3枚組BOX.。曲目・演奏とも好きな録音が多く、音質も比較的良い。
『マリア・ユージナ名演集~バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、シューベルト、リスト』(3枚組)
![]() | マリア・ユーディナ(pf)名演奏集 (2012/10/10) マリア・ユーディナ(pf) |
私が一番好きなのは、バッハ=リスト編曲《前奏曲とフーガ BWV543》。ライブ録音とスタジオ録音(1952年。BOXセットに収録)があり、この曲は十八番だったのか、ライブ録音の音源が複数残っている。なかでも、1953年のライブ録音が有名。
スタジオ録音に比べて、1953年のライブ録音は、タッチに少々荒っぽく無骨なところはあれど、強い求心力と力強さで骨太な演奏。
目的に向かって突き進んでいくような緊迫感と白熱感に惹き込まれ、揺るぎ無い確信に満ちた演奏には何度聴いても深い感動がある。
Bach-Liszt: Prelude & Fugue in A minor, BWV 543 (Live recording, Moscow 1953)
ユージナのブラームスは、ルバートを多用し、強弱・緩急のコントラストを明瞭につけた起伏の大きいダイナミックな演奏。
情緒過剰なセンチメンタリズムとは無縁。きりっとして、意志の強さを感じさせる。(時々ちょっと騒々しいけど)
Brahms - Intermezzi op.117 - Yudina
Maria Yudina plays Brahms Rhapsody Op. 79 No. 2 in G minor
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番の第2楽章は、バックハウスと並ぶくらいに速いテンポと力強いタッチ。よく聴くベートーヴェンとは全く違うので、最初聴いた時はありえない...と思いつつも、そのうち違和感を感じなくなってしまった。
Maria Yudina plays Beethoven Sonata No. 32 , Op. 111 (2/3)
Maria Yudina plays Beethoven Sonata No. 32 , Op. 111 (3/3)
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スターリンとユーディナにまつわるエピソードがいくつか載っている。一番面白いのは、モーツァルトのコンチェルトを徹夜で録音したという逸話。
ユーディナは、スターリンの大のお気に入りのピアニスト。彼女が弾くモーツァルトのピアノ協奏曲第23番をラジオで聴いたスターリンが、レコードがあるかとラジオ委員会に訊ねたところ、委員会の誰もが「(レコードは)ありません」とは怖くて答えられなかった。早速レコードを届けるようにスターリンに命じられたラジオ委員会は、すぐにユーディナと指揮者とオーケストラをかき集めて、徹夜で録音。たった1枚のレコードを製作して、翌日スターリンに届けたという。
徹夜録音の際、度胸の良いユーディナに比べて、最初に来た指揮者は恐怖で思考麻痺になり自宅へ送り帰され、2人目は震えて間違いばかり。結局3人目の指揮者を連れてきて、どうにか最後まで演奏できたという。
このレコードは、スターリンが別荘で亡くなったときに、プレーヤーに載っていたと言われる。
ユーディナは反体制的言動のために演奏活動は制限されたが、粛清されずに生き延びたのは、スターリンが大目に見ていたためらしい。
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