ブッフビンダー ~ ベートーヴェン/ピアノ作品全集(ピアノ・ソナタ全集)[TELDEC]
2019-10-12(Sat)
ブッフビンダーが33歳頃の1976年~1982年にTELDECで録音したベートーヴェンのピアノ作品全集。
20 年に分売盤をまとめたBOXセットが発売され、CD15枚CDが実売価格で4000円くらい。15枚中8枚がピアノ・ソナタ全集、1枚がバガテル集、5枚が変奏曲集(フルートとのデュオあり)、最後の1枚が残りの独奏曲で、作品番号がないWoO付きの曲も多数あり、資料的価値は高いと思う。
新盤のライブ録音盤のピアノ・ソナタ全集とは、別人が弾いている気がするほどかなり違う。
古い録音の上に、3年に渡って数回に分けて録音しているので、録音音質(残響の多さや音の近さとか)にかなりばらつきがある。
昔から指回りは良く、旧盤はシャープなタッチが怜悧なナイフみたい切れ味鋭い。全体的に速いテンポで叙情感はさらっとしているけど、タッチは精密で表現も丁寧。テンポも精密で不自然に揺らすことが無くて、安定感がある。
線が細く量感が少ないので音質はやや軽く感じるけど、フォルテは力強くてと強靭、弱音は優美で繊細。強音ではかなり強打しても、納得できるメリハリのつけ方なので、煩い感じはしない。
音が軽めで色彩感も綺麗なので、強打するフォルテが多い激しい演奏が続いても、全然聴き疲れしない。
荒々しくも青白い炎のようなクールな情熱と繊細な情感を併せ持った若々しく颯爽としている。後期ソナタは1度聴いただけでは、重みや叙情感の深さがあまり感じられなくて、私の気に入った曲は初期や中期のピアノ・ソナタで特に急速系の曲が多かった。
気に入っているのは、第1番や第8番の初期のピアノ・ソナタ。第1番は程よい力感で荒々しさはなくて優美。特に第2楽章の優しく繊細な弱音と情感がとても素敵。(第1番は音質がちょっとデッドなので、第8番並みに残響があれば、印象が少し変わるかも)
第8番「悲愴」も第1楽章(の序奏後)と第3楽章の軽快なタッチの疾走感が気持ち良い。
Piano Sonata No.1 in F minor Op.2, No.1 : II Adagio
Piano Sonata No.8 in C minor Op.13, 'Pathétique' : III Rondo - Allegro
凄みがあるのは、第14番「月光ソナタ」と第23番「熱情ソナタ」の第3楽章。速いテンポとシャープで力強いタッチ、強靭なフォルテで一気呵成に駆け抜ける。まるで豹かピューマみたいに、筋肉質で引き締まり、刀がギラっと光るような凄みと緊迫感があってゾクゾクする。
.これだけテンポが速くタッチも強いのに、連打する音が全て粒立ちよく分離して明瞭に聴こえるし、テンポもほぼインテンポで淀みなく疾走感抜群。
第1番、第8番も続けて聴いていると、”快刀乱麻”と言う言葉が浮かんでくるくらい。
全楽章通してとても面白く聴けたのは、「月光」。第1楽章から速いテンポで音量も大きめで力強い。幻想性や静寂くは薄く、抑えた感情が激しく昂っているようなイメージ。第2楽章も力強くて勢いがあり、怒涛の第3楽章の緊迫感と疾走感が素晴らしい。
Piano Sonata No. 14 in C-Sharp Minor, Op. 27 No. 2, 'Moonlight': III. Presto agitato
Piano Sonata No.23 in F minor Op.57, 'Appassionata" : III Allegro, ma non troppo
最初はどうも好きにはなれなかった「テンペスト」の第3楽章。テンポがかなり速いので、左手のアルペジオが忙しなくて、展開部で”分散して”美しく響いてこないのがどうも合わなかった。
でも、聴き直していたら、ソノリティの多彩な変化や、音型とリズムの躍動感がくっきり浮き上がってきて、とっても面白く聴けた。
Piano Sonata No. 17 in D Minor, Op. 31 No. 2, "The Tempest": III. Allegretto
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
20 年に分売盤をまとめたBOXセットが発売され、CD15枚CDが実売価格で4000円くらい。15枚中8枚がピアノ・ソナタ全集、1枚がバガテル集、5枚が変奏曲集(フルートとのデュオあり)、最後の1枚が残りの独奏曲で、作品番号がないWoO付きの曲も多数あり、資料的価値は高いと思う。
新盤のライブ録音盤のピアノ・ソナタ全集とは、別人が弾いている気がするほどかなり違う。
古い録音の上に、3年に渡って数回に分けて録音しているので、録音音質(残響の多さや音の近さとか)にかなりばらつきがある。
昔から指回りは良く、旧盤はシャープなタッチが怜悧なナイフみたい切れ味鋭い。全体的に速いテンポで叙情感はさらっとしているけど、タッチは精密で表現も丁寧。テンポも精密で不自然に揺らすことが無くて、安定感がある。
線が細く量感が少ないので音質はやや軽く感じるけど、フォルテは力強くてと強靭、弱音は優美で繊細。強音ではかなり強打しても、納得できるメリハリのつけ方なので、煩い感じはしない。
音が軽めで色彩感も綺麗なので、強打するフォルテが多い激しい演奏が続いても、全然聴き疲れしない。
荒々しくも青白い炎のようなクールな情熱と繊細な情感を併せ持った若々しく颯爽としている。後期ソナタは1度聴いただけでは、重みや叙情感の深さがあまり感じられなくて、私の気に入った曲は初期や中期のピアノ・ソナタで特に急速系の曲が多かった。
![]() | Rudolf Buchbinder - Beethoven Complete Works for Solo Piano [Box Set] (2012/6/26) 試聴ファイル |
気に入っているのは、第1番や第8番の初期のピアノ・ソナタ。第1番は程よい力感で荒々しさはなくて優美。特に第2楽章の優しく繊細な弱音と情感がとても素敵。(第1番は音質がちょっとデッドなので、第8番並みに残響があれば、印象が少し変わるかも)
第8番「悲愴」も第1楽章(の序奏後)と第3楽章の軽快なタッチの疾走感が気持ち良い。
Piano Sonata No.1 in F minor Op.2, No.1 : II Adagio
Piano Sonata No.8 in C minor Op.13, 'Pathétique' : III Rondo - Allegro
凄みがあるのは、第14番「月光ソナタ」と第23番「熱情ソナタ」の第3楽章。速いテンポとシャープで力強いタッチ、強靭なフォルテで一気呵成に駆け抜ける。まるで豹かピューマみたいに、筋肉質で引き締まり、刀がギラっと光るような凄みと緊迫感があってゾクゾクする。
.これだけテンポが速くタッチも強いのに、連打する音が全て粒立ちよく分離して明瞭に聴こえるし、テンポもほぼインテンポで淀みなく疾走感抜群。
第1番、第8番も続けて聴いていると、”快刀乱麻”と言う言葉が浮かんでくるくらい。
全楽章通してとても面白く聴けたのは、「月光」。第1楽章から速いテンポで音量も大きめで力強い。幻想性や静寂くは薄く、抑えた感情が激しく昂っているようなイメージ。第2楽章も力強くて勢いがあり、怒涛の第3楽章の緊迫感と疾走感が素晴らしい。
Piano Sonata No. 14 in C-Sharp Minor, Op. 27 No. 2, 'Moonlight': III. Presto agitato
Piano Sonata No.23 in F minor Op.57, 'Appassionata" : III Allegro, ma non troppo
最初はどうも好きにはなれなかった「テンペスト」の第3楽章。テンポがかなり速いので、左手のアルペジオが忙しなくて、展開部で”分散して”美しく響いてこないのがどうも合わなかった。
でも、聴き直していたら、ソノリティの多彩な変化や、音型とリズムの躍動感がくっきり浮き上がってきて、とっても面白く聴けた。
Piano Sonata No. 17 in D Minor, Op. 31 No. 2, "The Tempest": III. Allegretto
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。