スーク・シュタルケル・ブッフビンダー『TRIO RECITAL 1973』(シュヴェツィンゲン音楽祭)
2020-01-10(Fri)
カッチェンが1969年に肺がんで急逝した後に、ピアノ・トリオを組んでいたスークとシュタルケルは、一時アラウをピアニストに迎えたことがあったけど、どうも相性が悪かったらしい。
そもそもアラウは室内楽の録音が少なく、有名なのはシゲティ、グリュミオーと録音したベートーヴェンのヴァイオリンソナタくらい(たぶん)。アラウの演奏には独特のテンポ感があるから、デュオやトリオで相手に合わせるというタイプではないような気がする。
結局、当時はまだ若かったブッフビンダーがトリオに加わったことは知っていたけど、録音があるのは知らなかった。
ブッフビンダーのディスコグラフィをチェックしていて偶然見つけたのは、1973年のシュヴェツィンゲン音楽祭で演奏したベートーヴェン《ピアノ三重奏曲第3番》とメンデルスゾーン《ピアノ三重奏曲第1番》のライブ録音。
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲のなかで一番好きなのは、第6番「幽霊」の第1楽章。でも、全楽章通しで聴くなら短調の第3番が一番好きな曲。メンデルスゾーンの第1番も、ピアノトリオのなかでは一番好きな曲のベスト3。トリオのメンバーも好きなこともあって、新年最初に買ったのがこのCD。
93724 Buchbinder, Starker, Suk: Trio Recital
ブックレットの解説によると、シュヴェツィンゲン音楽祭は世界最大の”radio festival”で、1952年に南西ドイツ放送主催で初めて開催されて以来、全ての演奏会が録音・放送されているという。
1973年のライブ録音にしては割とクリアな音質で雑音も入っておらず、残響は少なめで、低音が良く聴こえるけど、ピアノの音が籠っているのがちょっと残念。(アラウのシュヴェツィンゲン音楽祭ライブも似たような音質だった。)
ベートーヴェンのは短調の曲というと、《ピアノ・ソナタ第1番》や《創作主題による32の変奏曲》のように、暗雲垂れ込めて”風雲急を告げる”みたいな疾走感と緊迫感があってゾクゾクしてスリリング。この《ピアノ三重奏曲第3番》も両端楽章が特に好き。
ファン・ベーレ・トリオに比べると、音に張りと重みがあって、重心がやや低めで、ヴァイオリン、チェロ、ピアノそれぞれの存在感が強い感じがする。特にスークのヴァイオリンは太目で弾力のある音と、シャープなリズムとメリハリのある表現で力強くて情感も濃い。久しぶりにスークのヴァイオリンを聴いていると、カッチェンとのデュオを思い出してまた聴きたくなってくる。
ブッフビンダーは、ピアノが主旋律を弾く時はしっかり前面に出てくるし、指回りもタッチの切れ味も良く、弱音になると優美な音色で品の良い繊細さが美しく、やはり若い時のブッフビンダーのピアノは好き。(それに音質がもっと良ければ、ピアノの音色も響きもずっと綺麗に聴こえるはず)
音質がややデッドで骨っぽい感じがするせいか、線がしっかりして力強く、テンポが速くて疾走感と躍動感も豊かで、私の好きなベートーヴェンだった。
Piano Trio No. 3 in C Minor, Op. 1, No. 3: I. Allegro con brio
Piano Trio No. 3 in C Minor, Op. 1, No. 3: IV. Finale: Prestissimo
ベートーヴェンと同じく、メンデルスゾーンの演奏も好き。特に第3楽章のスケルツォのピアノが快活で可愛らしくて素敵。
アンサンブルになるとピアノが少し音量を抑え気味に聴こえるので(録音方法のせいかも?)、好みを言えばピアノがもう少し前面にでて欲しい気はする。
Piano Trio No. 1 in D Minor, Op. 49, MWV Q29: I. Molto allegro ed agitato
Piano Trio No. 1 in D Minor, Op. 49, MWV Q29: III. Scherzo: Leggiero e vivace
<参考記事>
ブッフビンダー、スーク、シュタルケルによるピアノトリオ2曲を聴く
ブッフビンダーって、日本でそんなに評価が分かれているとは知らなかった。そういえば、新盤(ライブ録音盤)のピアノ・ソナタ全集は、amazonのレビューで絶賛と酷評が入り混じっている。
2000年以降の録音なら、ベートーヴェンよりもブラームスの方が私の好みには合いそうな気がする。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
そもそもアラウは室内楽の録音が少なく、有名なのはシゲティ、グリュミオーと録音したベートーヴェンのヴァイオリンソナタくらい(たぶん)。アラウの演奏には独特のテンポ感があるから、デュオやトリオで相手に合わせるというタイプではないような気がする。
結局、当時はまだ若かったブッフビンダーがトリオに加わったことは知っていたけど、録音があるのは知らなかった。
ブッフビンダーのディスコグラフィをチェックしていて偶然見つけたのは、1973年のシュヴェツィンゲン音楽祭で演奏したベートーヴェン《ピアノ三重奏曲第3番》とメンデルスゾーン《ピアノ三重奏曲第1番》のライブ録音。
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲のなかで一番好きなのは、第6番「幽霊」の第1楽章。でも、全楽章通しで聴くなら短調の第3番が一番好きな曲。メンデルスゾーンの第1番も、ピアノトリオのなかでは一番好きな曲のベスト3。トリオのメンバーも好きなこともあって、新年最初に買ったのがこのCD。
![]() | TRIO RECITAL 1973 (2014/4/14) ヨゼフ・スーク、ヤーノシュ・シュタルケル、ルドルフ・ブッフビンダー 試聴ファイル |
93724 Buchbinder, Starker, Suk: Trio Recital
ブックレットの解説によると、シュヴェツィンゲン音楽祭は世界最大の”radio festival”で、1952年に南西ドイツ放送主催で初めて開催されて以来、全ての演奏会が録音・放送されているという。
1973年のライブ録音にしては割とクリアな音質で雑音も入っておらず、残響は少なめで、低音が良く聴こえるけど、ピアノの音が籠っているのがちょっと残念。(アラウのシュヴェツィンゲン音楽祭ライブも似たような音質だった。)
ベートーヴェンのは短調の曲というと、《ピアノ・ソナタ第1番》や《創作主題による32の変奏曲》のように、暗雲垂れ込めて”風雲急を告げる”みたいな疾走感と緊迫感があってゾクゾクしてスリリング。この《ピアノ三重奏曲第3番》も両端楽章が特に好き。
ファン・ベーレ・トリオに比べると、音に張りと重みがあって、重心がやや低めで、ヴァイオリン、チェロ、ピアノそれぞれの存在感が強い感じがする。特にスークのヴァイオリンは太目で弾力のある音と、シャープなリズムとメリハリのある表現で力強くて情感も濃い。久しぶりにスークのヴァイオリンを聴いていると、カッチェンとのデュオを思い出してまた聴きたくなってくる。
ブッフビンダーは、ピアノが主旋律を弾く時はしっかり前面に出てくるし、指回りもタッチの切れ味も良く、弱音になると優美な音色で品の良い繊細さが美しく、やはり若い時のブッフビンダーのピアノは好き。(それに音質がもっと良ければ、ピアノの音色も響きもずっと綺麗に聴こえるはず)
音質がややデッドで骨っぽい感じがするせいか、線がしっかりして力強く、テンポが速くて疾走感と躍動感も豊かで、私の好きなベートーヴェンだった。
Piano Trio No. 3 in C Minor, Op. 1, No. 3: I. Allegro con brio
Piano Trio No. 3 in C Minor, Op. 1, No. 3: IV. Finale: Prestissimo
ベートーヴェンと同じく、メンデルスゾーンの演奏も好き。特に第3楽章のスケルツォのピアノが快活で可愛らしくて素敵。
アンサンブルになるとピアノが少し音量を抑え気味に聴こえるので(録音方法のせいかも?)、好みを言えばピアノがもう少し前面にでて欲しい気はする。
Piano Trio No. 1 in D Minor, Op. 49, MWV Q29: I. Molto allegro ed agitato
Piano Trio No. 1 in D Minor, Op. 49, MWV Q29: III. Scherzo: Leggiero e vivace
<参考記事>

ブッフビンダーって、日本でそんなに評価が分かれているとは知らなかった。そういえば、新盤(ライブ録音盤)のピアノ・ソナタ全集は、amazonのレビューで絶賛と酷評が入り混じっている。
2000年以降の録音なら、ベートーヴェンよりもブラームスの方が私の好みには合いそうな気がする。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。