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【新譜情報】『Sergio Fiorentino 2 ~ live in Taiwan』
久しぶりに出たセルジオ・フィオレンティーノの新譜は『Live in Taiwan 1998』。
8月にリリースされていたのに、HMVにもタワーレコードにも新譜情報が載っていなかったので、今日になってamazonで見つけた。

1998年5月29日に台北・新舞台(Novel Hall)で行われたリサイタルのライブ音源。フィオレンティーノはこのリサイタルの3ヵ月後にナポリの自宅で心臓発作のため急逝した。

リマスタリングのせいで、音の輪郭がやや尖って電気的な響きがするのが気にはなるけど、ライブ録音特有の瑞々しい音が鮮明で近くから聴こえてくる。フィオレンティーノのライブ録音CDのなかでは、かなり音質が良い。
レーベルはRhine Classics。フィオレンティーノの録音シリーズを最近リリース中。Vol.1はラフマニノフのライブ録音集、Vol.2がこの『live in Taiwan』。
両盤とも音源はフィオレンティーノが所有していたマスターテープのコピー、ラフマニノフの一部はラジオ放送音源なので、これからも新しいライブ録音集がリリースされるかも。

収録曲は、メンデルスゾーン以外は、全てスタジオ録音かライブ録音で聴いている曲。
特に聴きたいのは、ベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第31番》。
『Sergio Fiorentino in Germany 1993』に収録されているけど音質が非常に悪いし、YoutubeにあるAlice Tully Hallのライブ音源は、音質がさほど良くない上に、最初のフーガの途中で暗譜が飛んでしまい、そこで止まらずに即興でフーガを終わらせていた。

何度も聴いているバッハ=ブゾーニ編曲(さらにフィオレンティーノが編曲)の《前奏曲とフーガ、BWV 532》も、スタジオ録音とは違ったライブ独特の響きと臨場感があって、試聴していたら全部聴きたくなってきた。(Newportのライブ音源はさらに音質が良いので、CD化された買いたいくらい)

ラフマニノフのピアノ・ソナタは、曲自体があまり好きではないので、スタジオ録音はまともに聴いていない。このライブ録音ならCD1枚にまとめて入っているので、バッハとベートーヴェンに続いて勢いで最後まで聴けるかもしれない。
台湾ライブのCDはNMLに登録されていなかったので、全曲聴くにはCD買うしかないと思ってすぐに注文したのだった。

Live in Taiwan 1998Live in Taiwan 1998
(2019/8/2)
Sergio Fiorentino

試聴ファイル(amazon.de)
試聴ファイル(rhineclassics.com)



フィオレンティーノのポートレートが素敵。モノクロ写真とイエローのタイトルという色彩も綺麗。

<収録曲>
Bach / Busoni / Fiorentino:Prelude and Fugue, BWV 532
Ludwig van Beethoven:Piano Sonata No.31, Op.110
Alexander Scriabin:Piano Sonata No.2, Op.19 “Sonata-Fantasy”
Sergei Rachmaninoff:Piano Sonata No.2, Op.36 (2nd v. 1931)
Frédéric Chopin:Waltz No.7, Op.64/2、Waltz No.6, Op.64/1 “Minute Waltz”
Moritz Moszkowski:Etude de Virtuosité, Op.72/6
Felix Mendelssohn:“Spinning Song” Op.67/4

[2019.11.1 追記]
CDで聴いても電気的な響きはするので、Newport音楽祭のライブ音源のようなアコースティック感はもう一つ。それでも、スタジオ録音やNewport音楽祭と比べて、音の分離が良くて鮮明で、特に高音が籠らずにクリアに聴こえる。これだけ明瞭な音質で響きも豊かなら、充分に満足。

フィオレンティーノが若い頃から弾き続けているバッハ=ブゾーニ《前奏曲とフーガ BWV532》(フィオレンティーノがさらに編曲)は、厚みのある響きが堂々としてゴージャス。スタジオ録音とNewport音楽祭よりもテンポが速く(特に前奏曲)、タッチも若干軽く感じるので、リズム感が良い。しっとりして温もりのある情感にフーガの愛らしさと楽しさも心地良くて、この曲の演奏ではこのライブ録音が一番気に入っている。

ベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第31番》も、ドイツやニューヨークのライブ音源よりもはるかに音が良い。
第1楽章は、繊細な情感が優しく触れるような柔らかい音色の弱音がとりわけ美しい。第2楽章は、程よい力感に張りと切れのあるタッチで、フレージングも滑らかですっきり。第3楽章の序奏と「嘆きの歌」は、情感深くはあっても重たくも悲痛感で弱々しくもなく、力強いくらい。フーガは声部の線がくっきりと絡み合り、特に旋律がよく歌っていて、このフーガは素敵。フィナーレは速いテンポで一気に盛り上がり、フォルテでも強打せずにタッチは軽やか。

スクリャービンはわりと好きな作曲家。《ピアノ・ソナタ第2番》は“幻想ソナタ”という名の如く、曲想・旋律・和声の響きともファンタスティック。第1楽章は煌くような多彩なソノリティと潤いのある音色が美しく、第2楽章は疾走感とダイナミズムで駆け抜けるようにドラマティック。
フィオレンティーノのスタジオ録音でこのソナタを聴いても全然ピンと来なかったけど、その理由はテンポが遅くて(といってもこれが普通)、響きが重く、色彩感の美しさと情感の濃密さがあまり感じられなかったのが原因だった。
このライブ録音を聴いてこの曲が良さがようやくわかった。テンポが速く(演奏時間が1分以上短い)、色彩感も残響も豊かで、残響が厚く重なりあってもさほど混濁感はせず、美しい響きとむせかえるような妖艶で濃密な情感に満ちている。スクリャービンのピアノ・ソナタのなかで一番好きかも。
もともと相性の悪いラフマニノフのピアノ・ソナタは曲自体が好きではないので、フィオレンティーノのピアノで聴いてもやっぱり私には合わなかった。

アンコール曲はショパンのワルツ2曲に、技巧的なモシュコフスキーとメンデルスゾーン。
フィオレンティーノが弾く小品はどれも独特のレトロな洒落た味わいがあって素敵。
一番面白いのは、ショパンの《ワルツ》(No.7, Op.64/2)の解釈。甘ったるさはなくて、テンポの緩急の落差が大きくパッショネイト。
モシュコフスキの《エチュード》は滑らかなレガートが綺麗で可愛らしく、上品でお洒落な曲。

これは別のライブ映像。
Sergio Fiorentino -- Chopin Waltz Op.64 No.2 in c sharp


Sergio Fiorentino - Mozkowski Etude Op.72 No.6


<ブックレット>
ブックレットに作品解説は載っていないけど、フィオレンティーノに関する貴重な情報~台湾滞在中のフィオレンティーノのスケジュールと写真(ポスター1点、演奏時1点、マスタークラス3点)、フィオレンティーノの短い伝記(2頁分)、1985年2月25年にナポリで行われたインタビュー、ポートレート(1980年代と1990年代、表・裏表紙も含めて6点)~がいっぱい。

このライブ録音は、1998年にTaipei Philharmonic Foundation For Culture And Education(TPF)が主催した” International Piano and Vocal Music Workshop"でのリサイタルを収録。CD発売元のRhine Classicsは台湾のレーベル。
フィオレンティーノのワークショップでのスケジュールは次の通り。
 5月26日・27日:コンクールの審査員
 5月29日:リサイタル
 5月30日・6月1日:マスタークラス

ナポリでのインタビューの時期は、フィオレンティーノが1993年に演奏会活動を本格的に再開する8年前くらい。
当時、英国での演奏活動を止めて、故郷のナポリに戻り、ナポリ音楽院(Conservatorio di musica San Pietro a Majella)で教えていた頃。コンサートピアニストとしての国際的な演奏活動はせず、ローカルな演奏会でたまに演奏するくらいで、音楽院での教授活動に専念していた。

インタビューの中心は、なぜ華々しい国際的なコンサートピアニストのキャリアから身を引いたのかという謎について。
どうも演奏会で弾く行為自体がショーであって、音楽そのものは、パーソナルな関係において共有するべきものだと考えていたらしい。
真の音楽家は、仕事として音楽を作り上げる者ではなく、その人自身とその魂のために孤独のなかで作曲し演奏する者であって、プロの音楽家としていつも内面の豊かさを売るようにせまられることが酷く悲しかった、など、フィオレンティーノの音楽観を語っている。
ロンドンでの演奏活動が成功していたとはいえ、自分が目指しているものではないと思っていたのがわかる。英国での録音プロジェクトで苦労したことも、ナポリへ帰る理由の一つになったように思う。

<関連記事>http://kimamalove.blog94.fc2.com/blog-entry-3191.html


そのフィオレンティーノの心境が変化したのは、ドイツ人の高校教師で、フィオレンティーノの録音コレクターだったエルンスト・ルンペ氏との文通がきっかけ。
ルンペ氏は1989年にフィオレンティーノにコンタクトして以来文通を重ね、ステージにカムバックするべきだと考え、フィオレンティーノもこれに応じて、まずドイツ国内で演奏活動を再開した。
こうやってフィオレンティーノの演奏をCDやライブ音源で聴くことができるのも、ルンペ氏のおかげ。感謝するしかない。

<関連記事>(フィオレンティーノ ~ バッハ/パルティータ第1番

tag : フィオレンティーノベートーヴェン

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;アリステア・マクリーン、エドモンド・ハミルトン、太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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