小菅優 『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集』第1巻「出発」
2020-03-27(Fri)
以前から気になっていた小菅優の『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集』。選曲的に「ハンマークラヴィーア」が収録されている第4巻を買うつもりはなかったので、全集盤は購入せず。
年末に買った第5巻「極限」がとても気に入って、さらに第1巻~第3巻も次々に買い増した。結局、全集盤を買った方が良かった気がする...。
演奏以前に小菅優のピアノの音自体がとても好きなので、選曲が気に入った『Four Elements Vol.2:Fire』(Orchid Classics)も年末に買っておいた。
この全集は水戸芸術館でのDSD録音。SONYから数枚出ている他のCD(メンデルスゾーンとかリストなど)や、録音時期が近いレーゼル・児玉麻里の全集録音よりも音質が良くてとても聴きやすい。
<収録曲>
ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調 Op.2-1
ピアノ・ソナタ第2番イ長調 Op.2-2
ピアノ・ソナタ第3番ハ長調 Op.2-3
ピアノ・ソナタ第16番ト長調 Op.31-1
ピアノ・ソナタ第17番ニ短調 Op.31-2『テンペスト』
ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調 Op.31-3
ブックレットの作品解説には、リサイタルのプログラムに記載していた小菅優のコメントが引用されているので、彼女にとっての曲の位置づけや意味合い、演奏解釈の一端がわかる。
演奏以前にピアノの音自体がとても私好み。タッチと音に少し粘りがあり、線が太めで芯もしっかりして輪郭明瞭。量感・力感も豊かで伸びやかで、フォルテがパワフルで力強い(かなり力を込めて打鍵している感じはする)。ベートーヴェンにはとても似合っている。
アーティキュレーションが細部まで緻密で練り上げられて、起伏も大小取り混ぜて多く、細やかにコロコロと変化する表情がとても豊か。
強弱・硬軟・軽重・長短を変えたタッチでソノリティも多彩。丸みのある豊潤な響きに振幅の大きい細やかな表現が加わって、初期や中期の作品でもスケール感があり、これだけ表現意欲旺盛なのに情感や音楽の流れが自然に感じられる。
急速楽章のテンポはわりと速めでリズム感も良くて、私のテンポ感にぴったり。唯一私の感覚と合わないのは、(曲にもよるけど)緩徐楽章と緩徐部分はテンポが遅くてリズムが平板に聴こえるし、音が沈むせいか長調でもなぜか淋し気に感じること。
第1巻の収録曲でもともと好きな曲が第1番、第17番「テンペスト」(第3楽章)、第18番「狩り」。特に好きな演奏は第1番第4楽章。速いテンポで勢いよくて起伏が大きくダイナミック。「狩り」もリズミカルで躍動感いっぱいで、第2楽章はしっとり潤いのある情感がとても綺麗。
時々聴いている第2番と第3番、めったに聴かない第16番も、表情豊かで楽章の性格や曲想がよくわかって聴くのが楽しい。この3曲のなかでは、ほとんど聴かなかった第16番の第3楽章がとても好き。
買っていない第4巻を除いて全部聴いたけど、音質が良くて表現意欲の強いベートーヴェンを聴きたいならとてもお勧めな全集。 ※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
年末に買った第5巻「極限」がとても気に入って、さらに第1巻~第3巻も次々に買い増した。結局、全集盤を買った方が良かった気がする...。
演奏以前に小菅優のピアノの音自体がとても好きなので、選曲が気に入った『Four Elements Vol.2:Fire』(Orchid Classics)も年末に買っておいた。
この全集は水戸芸術館でのDSD録音。SONYから数枚出ている他のCD(メンデルスゾーンとかリストなど)や、録音時期が近いレーゼル・児玉麻里の全集録音よりも音質が良くてとても聴きやすい。
![]() | ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集第1巻「出発」 (2012/2/1) 小菅 優 試聴ファイル |
ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調 Op.2-1
ピアノ・ソナタ第2番イ長調 Op.2-2
ピアノ・ソナタ第3番ハ長調 Op.2-3
ピアノ・ソナタ第16番ト長調 Op.31-1
ピアノ・ソナタ第17番ニ短調 Op.31-2『テンペスト』
ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調 Op.31-3
ブックレットの作品解説には、リサイタルのプログラムに記載していた小菅優のコメントが引用されているので、彼女にとっての曲の位置づけや意味合い、演奏解釈の一端がわかる。
演奏以前にピアノの音自体がとても私好み。タッチと音に少し粘りがあり、線が太めで芯もしっかりして輪郭明瞭。量感・力感も豊かで伸びやかで、フォルテがパワフルで力強い(かなり力を込めて打鍵している感じはする)。ベートーヴェンにはとても似合っている。
アーティキュレーションが細部まで緻密で練り上げられて、起伏も大小取り混ぜて多く、細やかにコロコロと変化する表情がとても豊か。
強弱・硬軟・軽重・長短を変えたタッチでソノリティも多彩。丸みのある豊潤な響きに振幅の大きい細やかな表現が加わって、初期や中期の作品でもスケール感があり、これだけ表現意欲旺盛なのに情感や音楽の流れが自然に感じられる。
急速楽章のテンポはわりと速めでリズム感も良くて、私のテンポ感にぴったり。唯一私の感覚と合わないのは、(曲にもよるけど)緩徐楽章と緩徐部分はテンポが遅くてリズムが平板に聴こえるし、音が沈むせいか長調でもなぜか淋し気に感じること。
第1巻の収録曲でもともと好きな曲が第1番、第17番「テンペスト」(第3楽章)、第18番「狩り」。特に好きな演奏は第1番第4楽章。速いテンポで勢いよくて起伏が大きくダイナミック。「狩り」もリズミカルで躍動感いっぱいで、第2楽章はしっとり潤いのある情感がとても綺麗。
時々聴いている第2番と第3番、めったに聴かない第16番も、表情豊かで楽章の性格や曲想がよくわかって聴くのが楽しい。この3曲のなかでは、ほとんど聴かなかった第16番の第3楽章がとても好き。
買っていない第4巻を除いて全部聴いたけど、音質が良くて表現意欲の強いベートーヴェンを聴きたいならとてもお勧めな全集。 ※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。