小菅優 『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集』第2巻「愛」
2020-04-14(Tue)
小菅優『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集』の第2巻のテーマは「愛」。
<収録曲>
ベートーヴェン
Disc1
・ピアノ・ソナタ第9番ホ長調 作品14-1
・ピアノ・ソナタ第10番ト長調 作品14-2
・ピアノ・ソナタ第24番嬰へ長調 作品78『テレーゼ』
・ピアノ・ソナタ第27番ホ短調 作品90
Disc2
・ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 作品27-1
・ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2『月光』
・ピアノ・ソナタ第28番イ長調 作品101
DISC1でもともと好きな曲が第9番。全体的に浅めの打鍵とリズムでふんわり軽やか。この曲はもっと力強いイメージがあって第1巻「出発」の方に向いた曲だと思っていたけど、こういう軽やかで優しく触れるようなタッチならテーマの「愛」にぴったり。この曲がますます好きになる。
第10番は、主題旋律が優し気な第1楽章だけ好き。第2楽章と第3楽章は諧謔さのあるリズムが独特。
「テレーゼ」の第1楽章は、ダイナミックで力強いタッチのレーゼルとは違って、表現が細やかで情感しっとり。
第27番は第1楽章だけ好きで、速いテンポで力強くて「理性と感情の葛藤」の激しさを強く感じるレーゼルの演奏が好き。小菅優の演奏は、テンポが遅めでタッチがやや粘着的。強奏部と弱音部のコントラストが強めで、葛藤している「心」や「頭」の内面の動きを音で聴いているという感じ。
第2楽章だけは(誰の演奏で聴いても)途中で飽きてしまう。どうも相性が悪い楽章で、ブックレットの解説に引用されている小菅優のプログラムノートの言葉を聴いて納得。「出口の見つけられない迷路のようなところもありますが...なかなか解決しないところといい歌謡性といい、のちのシューベルトを思わせる」。(答えのない問いかけがぐるぐる循環している気がするシューベルトとは、元々相性が良くない)
DISC2に収録されている3曲は、「月光」、第13番、第28番。曲も演奏もどちらも好きなので、第4巻を除く全集8枚のなかで一番よく聴いているディスクの一つ。
第13番は初期~中期のソナタのなかではかなり好きな曲。曲想もテンポも旋律も楽章ごとに随分違って起承転結みたいな展開が面白い。
ちょっと密やかで優し気な第1楽章に、第2楽章は不安げな柔らかい響きがファンタスティック。スタッカート気味のフォルテの力強さが不安感を増幅している。ゆったりとした第3楽章の穏やかさで不安感が消え去って、軽快でリズミカルな第4楽章は力強くて明るく生き生きとして快活。左手と右手が頻繁に主題を交代していくところがフーガを聴いているみたい。最後に第3楽章冒頭の主題に戻っていくのが意外。さらにコーダが入って、はいおしまい!みたいなオチがお茶目。
小菅優の緩徐楽章の演奏は、ゆったり目のテンポでリズム感が消えて、音が沈んでいくように聴こえることが多い。
長調(「悲愴」の第2楽章など)でそういう弾き方をすると、暗くて淋し気に聴こえるので私は好きではない。
逆に、短調の時は内省的で抑えた情感がにじみ出るようでかなり好き。「月光」の第1楽章では、どこかしら不気味で不安感が漂っていて心理小説みたいな感じがする。この楽章はもともとあまり好きではないのに、何度も聴いてしまった。
第2楽章は軽やかなタッチで快活。第3楽章はちょっと前のまえり気味のかなり速いテンポで、力強くパワフル。でも、弱音のパッセージがちょこまかした感じがするせいか、全体的に追い立てられるような疾走感はあるけど、重厚感や白熱感が(私には)薄く感じる。
ピアノ・ソナタ第28番の第1楽章はしっとりした情感が美しく、甘美な思い出を回想しているような感じ。第2楽章は、付点のリズムがシャープで軽やかで、跳びはねているようにリズミカル。第3楽章の緩徐楽章は、ゆったりしたテンポとリズム感が消えて内省的で悲愴感がじわ~と流れてでてくる。第4楽章は力強くてダイナミックで重層感のある響きがシンフォニック。フーガの構築感と空へ広がっていくようなスケール感があり、晴れやかで壮快。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
![]() | ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集第2巻「愛」 (2013/2/27) 小菅 優 試聴ファイル |
<収録曲>
ベートーヴェン
Disc1
・ピアノ・ソナタ第9番ホ長調 作品14-1
・ピアノ・ソナタ第10番ト長調 作品14-2
・ピアノ・ソナタ第24番嬰へ長調 作品78『テレーゼ』
・ピアノ・ソナタ第27番ホ短調 作品90
Disc2
・ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 作品27-1
・ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2『月光』
・ピアノ・ソナタ第28番イ長調 作品101
DISC1でもともと好きな曲が第9番。全体的に浅めの打鍵とリズムでふんわり軽やか。この曲はもっと力強いイメージがあって第1巻「出発」の方に向いた曲だと思っていたけど、こういう軽やかで優しく触れるようなタッチならテーマの「愛」にぴったり。この曲がますます好きになる。
第10番は、主題旋律が優し気な第1楽章だけ好き。第2楽章と第3楽章は諧謔さのあるリズムが独特。
「テレーゼ」の第1楽章は、ダイナミックで力強いタッチのレーゼルとは違って、表現が細やかで情感しっとり。
第27番は第1楽章だけ好きで、速いテンポで力強くて「理性と感情の葛藤」の激しさを強く感じるレーゼルの演奏が好き。小菅優の演奏は、テンポが遅めでタッチがやや粘着的。強奏部と弱音部のコントラストが強めで、葛藤している「心」や「頭」の内面の動きを音で聴いているという感じ。
第2楽章だけは(誰の演奏で聴いても)途中で飽きてしまう。どうも相性が悪い楽章で、ブックレットの解説に引用されている小菅優のプログラムノートの言葉を聴いて納得。「出口の見つけられない迷路のようなところもありますが...なかなか解決しないところといい歌謡性といい、のちのシューベルトを思わせる」。(答えのない問いかけがぐるぐる循環している気がするシューベルトとは、元々相性が良くない)
DISC2に収録されている3曲は、「月光」、第13番、第28番。曲も演奏もどちらも好きなので、第4巻を除く全集8枚のなかで一番よく聴いているディスクの一つ。
第13番は初期~中期のソナタのなかではかなり好きな曲。曲想もテンポも旋律も楽章ごとに随分違って起承転結みたいな展開が面白い。
ちょっと密やかで優し気な第1楽章に、第2楽章は不安げな柔らかい響きがファンタスティック。スタッカート気味のフォルテの力強さが不安感を増幅している。ゆったりとした第3楽章の穏やかさで不安感が消え去って、軽快でリズミカルな第4楽章は力強くて明るく生き生きとして快活。左手と右手が頻繁に主題を交代していくところがフーガを聴いているみたい。最後に第3楽章冒頭の主題に戻っていくのが意外。さらにコーダが入って、はいおしまい!みたいなオチがお茶目。
小菅優の緩徐楽章の演奏は、ゆったり目のテンポでリズム感が消えて、音が沈んでいくように聴こえることが多い。
長調(「悲愴」の第2楽章など)でそういう弾き方をすると、暗くて淋し気に聴こえるので私は好きではない。
逆に、短調の時は内省的で抑えた情感がにじみ出るようでかなり好き。「月光」の第1楽章では、どこかしら不気味で不安感が漂っていて心理小説みたいな感じがする。この楽章はもともとあまり好きではないのに、何度も聴いてしまった。
第2楽章は軽やかなタッチで快活。第3楽章はちょっと前のまえり気味のかなり速いテンポで、力強くパワフル。でも、弱音のパッセージがちょこまかした感じがするせいか、全体的に追い立てられるような疾走感はあるけど、重厚感や白熱感が(私には)薄く感じる。
ピアノ・ソナタ第28番の第1楽章はしっとりした情感が美しく、甘美な思い出を回想しているような感じ。第2楽章は、付点のリズムがシャープで軽やかで、跳びはねているようにリズミカル。第3楽章の緩徐楽章は、ゆったりしたテンポとリズム感が消えて内省的で悲愴感がじわ~と流れてでてくる。第4楽章は力強くてダイナミックで重層感のある響きがシンフォニック。フーガの構築感と空へ広がっていくようなスケール感があり、晴れやかで壮快。
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