ハンネス・ミンナール ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番(ピアノ&弦楽五重奏版)
2020-07-08(Wed)
ハンネス・ミンナールとアムステルダム・デュドック弦楽四重奏団&シモーネ・ファン・デル・ギーセンが演奏しているのは、とても珍しい弦楽五重奏で伴奏するベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第4番》。このライブ映像は、アムステルダム・コンセルトヘボウでの無観客コンサート。
この曲は数あるピアノ協奏曲の中でも一番好きなコンチェルトの一つ。弦楽五重奏の伴奏はオケとは全然違った響きなので、曲の印象がかなり変わる。響きに厚みがなく、特に管楽器が入っていないので低音がほとんど聴こえず、響きが軽くて薄い。ピアノ協奏曲(さらに室内楽曲)というよりも、弦楽五重奏伴奏つきピアノ独奏曲。
編曲者は、たぶんヴィンツェンツ・ラハナーかハンス=ヴェルナー・キューテンのどちらか。NMLで2つの編曲版を所々聴いた限りでは、ミンナールたち演奏しているのは、ラハナー版だと思う。ピアノパートはラハナー版の方が原曲に近く、キューテン版は時々かなり装飾しているので、馴染みのない旋律が出てくる。
[追記]キューテン版は、ベートーヴェン自身が加筆訂正・編曲した楽譜(総譜・パート譜の筆写譜)を元にキューテンが補筆復元したもの。
ミンナールのピアノは、オケ伴奏のスタジオ録音に比べると、ずっと力強いタッチでピアノが完全に前面に出て演奏を引っ張っている。明るい煌きと色彩感のあるソノリティが美しく、立体感のあるところもミンナールらしい。
弦楽五重奏だと音の線が細く響きに厚みもないのに対して、ピアノの線が太くて音量も大きいので、ピアノパートが伴奏にかき消されることなく細部まで明瞭に聞える。オケ版では気付かなかった音と響きが聴こえてくるので、コンチェルトを聴くのとはまた違った楽しさがある。それにピアノの存在感が圧倒的に大きくて、ほとんどピアノソロ編曲版を聴いている気分。
特に2つのカデンツァが素晴らしい。スタジオ録音では、第1楽章でベートーヴェンの短い(有名ではない方)カデンツァを弾いていた。このライブ映像のカデンツァはクララ・シューマン作。第3楽章のカデンツァはベートーヴェンのよりもずっと長くて華やか。
2つのカデンツァとも華やかなロマン派風だったので、ブゾーニかゴドフスキーかリストあたりのカデンツァかと思ったけど、IMSLPで楽譜を探して確認したらクララのだった。モチーフを弾く弱音の響きが可憐で叙情美しく、和音と鍵盤を幅広く使ったアルペジオを多用しているので、華やかでダイナミックでとても弾き映えするカデンツァ。
静寂でしとやかで清楚な響きと演奏のオケ伴奏版のピアノに比べて、音の線も太くて、かなり賑やかで元気。ピアノ協奏曲としては聴くならスタジオ録音の方が好きだけど、こっちの方がミンナールのピアノで自由伸び伸びしているし、ピアノ独奏曲のように聴けるので弦楽五重奏伴奏版も好き。このバージョンもスタジオ録音のCDで聴きたいくらい。
Hannes Minnaar & Dudok Quartet Amsterdam - Empty Concertgebouw Sessions
カデンツァの楽譜:Cadenzas (1st, 3rd movements) (Clara Schumann)[IMSLP]
↓はベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第7番》第4楽章のライブ映像。
歯切れ良いタッチで輪郭明瞭で芯のしっかりした響きに張りがあり、手指の動きも少なく安定していて形も綺麗。立体感と強弱のメリハリあって好きなタイプのベートーヴェン。
クーレンと録音したベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全集のピアノ伴奏も好きなので、いつかピアノ・ソナタ全集も録音してくれたら嬉しい。
Beethoven: Sonate voor piano nr. 7, op. 10, deel IV - Hannes Minnaar - AVROTROS Klassiek HD
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
この曲は数あるピアノ協奏曲の中でも一番好きなコンチェルトの一つ。弦楽五重奏の伴奏はオケとは全然違った響きなので、曲の印象がかなり変わる。響きに厚みがなく、特に管楽器が入っていないので低音がほとんど聴こえず、響きが軽くて薄い。ピアノ協奏曲(さらに室内楽曲)というよりも、弦楽五重奏伴奏つきピアノ独奏曲。
編曲者は、たぶんヴィンツェンツ・ラハナーかハンス=ヴェルナー・キューテンのどちらか。NMLで2つの編曲版を所々聴いた限りでは、ミンナールたち演奏しているのは、ラハナー版だと思う。ピアノパートはラハナー版の方が原曲に近く、キューテン版は時々かなり装飾しているので、馴染みのない旋律が出てくる。
[追記]キューテン版は、ベートーヴェン自身が加筆訂正・編曲した楽譜(総譜・パート譜の筆写譜)を元にキューテンが補筆復元したもの。
ミンナールのピアノは、オケ伴奏のスタジオ録音に比べると、ずっと力強いタッチでピアノが完全に前面に出て演奏を引っ張っている。明るい煌きと色彩感のあるソノリティが美しく、立体感のあるところもミンナールらしい。
弦楽五重奏だと音の線が細く響きに厚みもないのに対して、ピアノの線が太くて音量も大きいので、ピアノパートが伴奏にかき消されることなく細部まで明瞭に聞える。オケ版では気付かなかった音と響きが聴こえてくるので、コンチェルトを聴くのとはまた違った楽しさがある。それにピアノの存在感が圧倒的に大きくて、ほとんどピアノソロ編曲版を聴いている気分。
特に2つのカデンツァが素晴らしい。スタジオ録音では、第1楽章でベートーヴェンの短い(有名ではない方)カデンツァを弾いていた。このライブ映像のカデンツァはクララ・シューマン作。第3楽章のカデンツァはベートーヴェンのよりもずっと長くて華やか。
2つのカデンツァとも華やかなロマン派風だったので、ブゾーニかゴドフスキーかリストあたりのカデンツァかと思ったけど、IMSLPで楽譜を探して確認したらクララのだった。モチーフを弾く弱音の響きが可憐で叙情美しく、和音と鍵盤を幅広く使ったアルペジオを多用しているので、華やかでダイナミックでとても弾き映えするカデンツァ。
静寂でしとやかで清楚な響きと演奏のオケ伴奏版のピアノに比べて、音の線も太くて、かなり賑やかで元気。ピアノ協奏曲としては聴くならスタジオ録音の方が好きだけど、こっちの方がミンナールのピアノで自由伸び伸びしているし、ピアノ独奏曲のように聴けるので弦楽五重奏伴奏版も好き。このバージョンもスタジオ録音のCDで聴きたいくらい。
Hannes Minnaar & Dudok Quartet Amsterdam - Empty Concertgebouw Sessions

↓はベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第7番》第4楽章のライブ映像。
歯切れ良いタッチで輪郭明瞭で芯のしっかりした響きに張りがあり、手指の動きも少なく安定していて形も綺麗。立体感と強弱のメリハリあって好きなタイプのベートーヴェン。
クーレンと録音したベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全集のピアノ伴奏も好きなので、いつかピアノ・ソナタ全集も録音してくれたら嬉しい。
Beethoven: Sonate voor piano nr. 7, op. 10, deel IV - Hannes Minnaar - AVROTROS Klassiek HD
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