*All archives*



白神典子&ブレーメン弦楽ソロイスツ - Bremen String Soloists ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番&第2番(ピアノ&弦楽五重奏版)
NMLでたまたま見つけたのは、白神典子&ブレーメン弦楽ソロイスツによるピアノ&弦楽五重奏版『ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番&第2番』。編曲者は、白神典子の夫でプロデューサー・エンジニアのウリ・シュナイダー。(録音当時結婚していたかどうかは不明。)
白神典子の録音は、『ブルックナー/ピアノ作品集』をずっと昔にNMLで聴いたことがある。BISに編曲作品の録音がかなりあるけど、プロフィールを調べてみたら彼女は2017年に乳がんで49歳で他界していた。

白神典子のプロフィール[ファルスタッフのCD紹介]


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第1番 2番 (室内楽版)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第1番 2番 (室内楽版)
(2001/1/29)
Bremen String Soloist, Fumiko Shiraga
試聴ファイル(BISサイト)
※試聴ファイルは全曲試聴可能。但し、30秒ごとに再生が止まる。

このシュナイダー編曲版はとっても面白い。単にオーケストラパートを弦楽五重奏に置きかえたのではなく、トゥッティ(弦楽五重奏)にピアノが加わっている。オケパートを弦楽五重奏に編曲すると色彩感や音量などかなり物足りないので、ピアノの豊かな音量と多彩な音色と響きがそれをある程度補って、”ピアノ六重奏曲”になっている。
ピアノがほとんど休む間もなく聴こえてくるので、ラハナー編曲版よりも華やかでピアノを聴く楽しみも増えて、シュナイダーの編曲はとっても気に入ってしまった。

編曲だけでなく、ピアノの音も演奏も私の好きなタイプ。(ピアノはYamaha S6。CFシリーズよりも小さく、個人宅だけでなく、サロンや小ホールにも置いてあるので、室内楽には向いているらしい。)
やや硬質で粒立ち良く輪郭明瞭な音にはほどよい力感と量感があり、陰翳のある音色と抑揚豊かなフレージングに情感が籠って、響きには凛とした強さと美しさがある。快活さと優美がうまくバランスして、叙情麗しく品の良さがある。

第3楽章以外はあまり好きでない第2番でも、この室内楽バージョンで聴くとなぜか妙にしっくりくるのが不思議。
ピアノが全編に流れているのに加えて、曲想や旋律がモーツァルト風なので、小編成の室内楽演奏でも違和感ないからかも。ピアノの煌きのあ高音やニュアンスのこもった優しい弱音がこの曲に良く映えている。特に好きな第3楽章は、波がさざめくように軽やかで煌きのある高音がとても綺麗。

Piano Concerto No. 2 in B-Flat Major, Op. 19: II. Adagio


編曲・演奏とも気に入ったのですぐにCDを注文したけど、取り寄せなので2週間くらいかかりそう。届くのが待ち遠しい。


[追記]
注文後2週間でHMVに入荷。メーカー在庫切れだったのに、入荷されてよかった。早速聴いてみたら、試聴した時よりもはるかに素晴らしい。

ピアノの音を聴いているだけで嬉しくなるくらいに、音色や響きが綺麗。粒立ちよく切れ良いタッチで、芯のしっかりした輪郭の軽量な音、響きの丸みがあり、落ち着いた煌きとあかるさがあって、特に弱音の高音の響きがとても品が良い。
YAMAHA/S6の音色は、スタインウェイのコンサートグランドのような煌びやさではなく、ちょっとくすんだような奥ゆかしさとまろやかさがあって、やはり室内楽には向いているのだと思う。

トゥッティではピアノの音量をかなり抑えて、弦楽パートの一部のようにあまり前面に出ないし、ピアノソロでも少し音量が控えめ。協奏曲のようにソロが華やかに前面にでてくるというよりも、存在感はしっかりあるけど主張しすぎず、弦楽と”協奏”するという感じで、弦楽パートが伴奏役ではないピアノ六重奏曲になっている。
でも、カデンツァになると、音量豊かで響きも重層的でダイナミックで、力強く華やか。(特に第1番第1楽章)
たまたま見つけた録音だったけど、思い掛けないとても素敵なベートーヴェン。

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

白神典子のピアノソロで、チャイコフスキー《四季》の「秋の歌」、「舟歌」、「白夜」、シューマン《子供の情景》の「トロイメライ」と「暖炉のそばで」。
ベートーヴェン録音よりも約15年後の2014~15年の演奏。繊細な情感のこもった美しい弱音の響きに、リートを聴いているような抑揚豊かで呟くようなフレージング。深みのあるしっとりした叙情感がロマンティックで品が良くて、とても素敵な演奏。

Fumiko Shiraga - Peter Tschaikowski "Herbstlied"


Fumiko Shiraga - Peter Tschaikowski "Barkarole"


Fumiko Shiraga - Peter Tschaikowski "Weiße Nächte"


Fumiko Shiraga - Robert Schumanns "Am Kamin"


Fumiko Shiraga - Robert Schumanns "Träumerei"



こちらはシューマンのチェロとピアノのための《幻想曲集 Op.73》。
Robert Schumann: Fantasiestücke op.73 Nikolaus Trieb/Fumiko Shiraga.m4v


tag : ベートーヴェンチャイコフスキーシューマン白神典子

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

いつもブログ楽しみにしております。素敵な音楽をご紹介いただき、ありがとうございます。白神典子さん、素晴らしい演奏ですね。
 
K様、こんにちは。
いつも記事をご覧くださってありがとうございます。

偶然見つけた白神さんの音源ですが、本当に素敵な演奏ですね。
若い頃の室内楽も好きですが、数年前のピアノソロが素晴らしい思います。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番をラハナー版で演奏しました。チェロでの参加でしたが編曲はオケの弦を基にして、管楽器パートを弦に振り分けるだけの職人的なものでした。これが19世紀的な音楽会の在り方だったんでしょうね。シュナイダー編曲を聴いてみたいものです。
白神さんの録音は他にフンメル版のモーツァルトを聴いたことがあります。知っている曲だけに頭の中で音符を補いながら。
白神さんが他界されたのは知りませんでしたが、軸足を海外に求めた人に対しては日本の音楽界はジャーナリズムも含めとても冷たいですね。
 
kame様、こんにちは。

ラハナー版を演奏されたことがあるのですね!
Youtubeにラハナー版らしきライブ映像があるのですが、こちらも管楽器パートを弦楽器だけで演奏しています。

白神さんは幼少の頃からドイツで音楽を学び。演奏活動も欧州中心だったので、日本のジャーナリズムの対象外だったんでしょうね。
日本語のプロフィールでも、他界された旨記載しているものは少ないようです。
BISに何曲も録音しているので、実力のあるピアニストだったと思います。もう新しい演奏や録音が聴けないのが本当に残念です。
カレンダー
08 | 2023/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;アリステア・マクリーン、エドモンド・ハミルトン、太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。