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スティールバート ~  エネスク/ピアノ独奏曲全集
ボラックの前に買ったスティルバートの《エネスク/ピアノ独奏曲全集》。
全集盤で曲数が多いのは良いけど、試聴した時よりも響きの混濁感が強く、音の粒立ちも悪い。スティルバートは音質が重くて量感があるので、響きがゴージャスに聴こえる一方で、音色が暗くて色彩感と立体感が乏しいので、残響が多い。この音質に加えて、(ボラックに比べると)ペダルを多用して深く長く踏んでいるせいで、響きが重たくて濁りがち。弱音になると音の芯と輪郭が少しぼやけた感じがする。特に重音の連打や複数の旋律が錯綜すると、響きが重層化して混濁感が増す。込み入ったパッセージやフーガで声部の分離が悪くて立体的に聴こえなかったり、《組曲第1番》の”prelude”の急速スケールでは打鍵が浅く音の芯がぼやけて上滑りしているような感じがする。

それにCDごとに録音音質が違う気がする。明らかに違うのは、Gramola原盤音源を使ったCD2(トラックNo.9&10)。ヘンスラーで録音した曲に比べると、残響が短く音の輪郭が明瞭。響きが柔らかく、音色も明るく色彩感も若干カラフルで声部の立体感もある。(それでもペダルの使い方は変わらないので残響は多い)


Enescu: Complete Works for Piano SoloEnescu: Complete Works for Piano Solo
(2015/10/02)
Raluca Stirbat

試聴ファイル
<収録曲>
1. 組曲第1番ト短調『古いスタイルで』 Op.3
2. 前奏曲とスケルツォ
3. 舟歌
4. 糸を紡ぐ女 ニ長調※
5. 即興曲 変イ長調
6. 悔悟 変ト長調※
7. 即興曲 ハ長調※
8. 前奏曲とフーガ
9. 組曲第2番ニ長調 Op.10
10. 夜想曲 変ニ長調
11. 組曲第3番『即興的小品集』Op.18
12. ソナタ断章 嬰ヘ短調-モデラート※
13. フォーレの名による小品
14. ピアノ・ソナタ第1番嬰ヘ短調 Op.24-1
15. ピアノ・ソナタ第3番ニ長調 Op.24-3
※:世界初録音
※「ソナタ断章 嬰ヘ短調-モデラート」(1912)は《ピアノ・ソナタ第1番》の初稿。楽譜が未出版で1993年に自筆譜が発見された。
※《ピアノ・ソナタ》の第2番が入っていないのは、エネスクは「曲はもう出来上がっていて頭の中にあるんだ」と言い続けていたが、譜面が見つかっていないらしい。

REVIEW:George ENESCU (1881-1955) Complete works for piano solo/Raluca Stirbat (piano)

演奏は別として、曲としてあまり好きになれないのは《夜想曲》くらい。作曲年順に録音しているので、民謡調に加えて古典派風・ロマン派風・印象主義に後期ロマン派風など作風の移り変わりや交じり合っていくのがよくわかる。

ボラックが未録音の曲7曲-CD1のピアノ小品6曲にCD3の《ピアノ・ソナタ第1番》の初稿版-が聴けるのが良い。ショパン風の旋律が美しく、残響もペダルも多いのが曲に良く似合って、混濁感をほとんど感じない。ショパンほど濃密ではない叙情感はメンデルスゾーンの無言歌に近く感じる。

《舟歌》は量感たっぷりでゴージャスな響きが雄大でとても魅力的。ショパンの《ピアノ・ソナタ第3番》のフィナーレに似た旋律が出てくる。
Barcarolle in B-Flat Major


《田園ソナタ》みたいに楽しそうな《糸を紡ぐ女》。
La Fileuse in D Major


夢見るような憧れと爽やかさが素敵な《即興曲変イ長調》。
Impromptu in A-Flat Major


《悔悟/Regret》は曲名ほどに苦い後悔ではなく、ほろ苦くてちょっと甘い回想みたいな曲。
Regrets in G-Flat Major


Impromptu in C Major


Prélude & Scherzo in F-Sharp Minor: Prelude


どこかブラームスを思い出させる《スケルツォ》は、ボラックよりも暗く重たい音で響きも重厚なせいか、ゾクゾクっとした急迫感でスリリング。
Prélude & Scherzo in F-Sharp Minor: Scherzo


この《前奏曲》はボラックは眠たくなるくらいテンポが遅い(演奏時間が8分以上)。スティルバートの速いテンポだと、リズミカルで開放感があってとても楽しい曲。でも、ペダル踏みっぱなしかと思うくらい残響が多くて混濁感がかなりある。やはり遅いテンポで弾いた方がよいのかもしれない。
Prélude & Fugue in C Major: Prelude


《組曲第3番》”III. Mazurk mélancolique”は、ねっとりしたタッチで密やかなムードのボラックとは違い、ややテンポが速めでリズムも明瞭で軽やか。
Piano Suite No. 3, Op. 18 "Pièces impromptues": III. Mazurk melancolique: Moderato un poco...



《組曲第7番》”Carillon nocturne”は、スティルバートの硬くてキンキンカラカラした金属っぽい響きが、立体的に折り重なって聴こえてくるので、ボラックよりもカリヨンの音に近い感じ。ボラックは響きが少しまろやかで柔らかい。
Piano Suite No. 3, Op. 18 "Pièces impromptues": VII. Carillon nocturne: L'istesso tempo...


本物のカリヨンの響き。
伊丹 カリヨン Prelude No5 (Excerpt) プレリュード 第5番 伊丹市「フランドルの鐘」

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;アリステア・マクリーン、エドモンド・ハミルトン、太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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