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『Sergio Fiorentino ~ live in USA』
注文後わずか1週間で英国から届いたセルジオ・フィオレンティーノの新譜『Sergio Fiorentino ~ live in USA』。
音質が期待と違った曲があるとはいえ、好きな曲が多いし、何よりフィオレンティーノの演奏が素晴らしく、やはり買って良かった。

SERGIO FIORENTINO - live in USASERGIO FIORENTINO - live in USA
(2021/3/5)
Sergio Fiorentino

試聴ファイル(CD1)(jpc.de)
ブックレットに記載されているのは、CD別と作曲家別の収録曲リスト、フィオレンティーノのカラー写真が数枚、Dr. Mark P. Markovich ⅢとErnest A. Lumpe(フィオレンティーノのカムバックの貢献者)の解説、Newport Music Festival のポスター&演奏会のプログラム写真、批評家によるレビュー(7件)が載っていて、結構充実した内容。(曲目解説が無くても全然かまわない)
印象的なエピソードは、フィオレンティーノの演奏会用燕尾服(tails)は数十年間着ているものだったので、Newport Music Festivalから燕尾服を一揃いプレゼント。喜んだフィオレンティーノは新しい燕尾服を着て1998年の同音楽祭にベートーヴェンの《葬送ソナタ》を弾いた。同年急逝したため、《葬送ソナタ》がこの音楽祭で弾いた最後の曲となった。(《葬送ソナタ》の録音は収録されていない。)

<CD別収録曲リスト>(Rhine Classics)
CD1)The Breakers, Newport, RI | 8 July 1996
CD2)The Breakers, Newport, RI | 13 July 1996
CD2)Wakehurst Tent, Newport, RI | 12 July 1997
CD3)Ochre Court, Newport, RI | 10 July 1996
CD3)The Elms, Newport, RI | 16 July 1997
CD3)Marble House, Newport, RI | 16 July 1997
CD4)Ochre Court, Newport, RI | 13 July 1997
CD5)The Breakers, Newport, RI | 15 July 1997
CD5)The Breakers, Newport, RI | 10 July 1998
CD6)The Breakers, Newport, RI | 10 July 1998
CD7)Alice Tully Hall, New York | 6 April 1997
CD8)Alice Tully Hall, New York | 11 March 1998
CD9)WGBH Studio 1, Boston | 12 July 1996(live in studio)
CD9)Interview with Sergio Fiorentino
CD9)WGBH Studio 1, Boston | 14 April 1998(live in studio)


レーベルのウェブサイトには音源が”RADIO BROADCASTS | ORIGINAL MASTERS"と記載。放送用音源のマスターテープを使っているのかと思って、音質が良いはずだと期待していたのに、実際はその音源情報が不正確だったし、演奏場所の音響・録音環境の違いによる音質のばらつきがかなりある。

ブックレットに記載されている音源は以下の通り。
DAT master-tapes copies provided by Dr. Mark P. Markovich Ⅲ, owned by Sergio Fiorentino(CD1-6)
private in-hall DAT recordings made by Donald "Don" Hodgman(CD7&CD8)
Sergio Fiorentino's private Archive copies, courtesy of Ernest A. Lumpe(CD9)

CD1~CD6は、全てNewport Music Festivalのライブ録音で、音楽祭が作成したDATマスターテープのコピーが音源。
音楽祭の演奏会場はコンサートホールではなく、主に19世紀後半に建てられた城館・コテージ・教会・屋外テントなので、会場によって音質がかなり違う。
ピアノソロは、The Breakers(CD1,2,5,6)とOchre Court(CD3のチャイコフスキー、CD4のショパンリサイタル)とも、城館で録音したにしては音質がとても良い。リマスタリングのため、ヘッドフォンで聴くと微かに電気的な響きを感じるけど、気になるほどではない。

CD1のバッハ=ブゾーニ《前奏曲とフーガBVW532》は、この曲の既出CDのなかでは一番音が良い。同じく録音の多いシューマンの《幻想曲》は、旋律も和声も叙情も全て美しい第1楽章は好きだけど、第3楽章がどうも苦手。力強く躍動的な第2楽章の直後で聴衆が思わず拍手。
オペラパラフレーズのワルツが続く選曲はフィオレンティーノならでは。何度聴いても楽しいのはグノー=リストの《ファウストワルツ》。フィオレンティーノが編曲したチャイコフスキーの優美な《ワルツ》もとても素敵。

CD2の室内楽曲は、The Breakersのフランク《ピアノ五重奏曲》が弦楽が前面に出てきて賑やか、後方から聴こえるピアノは音量が小さく、細部も不明瞭。陰翳の濃い重厚な響きに濃密な情感が渦巻くフランクらしい曲。
一方、Wakehurst Tentのベートーヴェン《木管とピアノの五重奏曲》は、残響が少なく若干デッドな響きでも音がまろやか。楽器の音量バランスが良く、どのパートの音も明瞭で綺麗に聴こえる。この会場(屋外テント)にしてはかなり音が良い。初期ベートーベンらしいモーツァルトにちょっと似た軽やかで可愛らしい曲。2曲とも知らなかったので、聴けて良かった。

CD3の初めて聴いたチャイコフスキーの2曲は、あまり有名ではないらしいけど、どちらも気に入った曲。《主題と変奏》は、緩急のコントラストが激しく、変奏の曲想が色とりどり。第3変奏(Allegro scherzando)や最終変奏で右手とかけあうような左手の伴奏が面白いし、第4変奏の折り重なるアルペジオは《ピアノ協奏曲第1番》を連想する。
《ワルツ・カプリス》は軽妙なリズムと旋律の主題がパッショネイトに展開していくところが華麗。
フィオレンティーノのピアノが醸し出すロマンティシズムは、濃密なのに後味がさらっとして品が良く、ロシアものでも情念過剰な気がしない。

CD3のThe Elmsのブラームス《ワルツ集》は、16曲中8曲が好きな曲。残響は適度にあれど、ベールを一枚かぶったような籠った音質がちょっと残念(慣れればそんなには気にならないけど)。フィオレンティーノはいつも、第15番と第16番の順番を入れ替えて、一番有名な子守歌風の第15番を最後に弾いている。
Marble Houseのベートーヴェン《バガテル集》と《告別ソナタ》)は、音量が小さく、残響がほとんどないデッドな音質で、小さな部屋でアップライトピアノを間近で聴いているみたい音。1997年のライブ録音でこの音質はありえない。Marble Houseの写真を見ると、貴族の館の一室みたいな絢爛な部屋なので、録音環境(と録音方法)が酷かったに違いない。

CD4は過去にCD化されたショパンリサイタルで、今回は新リマスタリング。やはり一番好きなのはワルツと《エチュード第4番》。苦手な《華麗なる大円舞曲》や普段聴かないマズルカも、軽やか優美なフィオレンティーノのピアノなら好きになってしまう。《ノクターン第8番》は夜想曲というよりもバラードみたいで力強くてパッショネイト。《雨だれ前奏曲》は、左手がゴーンゴーンと厳めしく響き、オドロオドロしくてとっても面白い。

これは1995年ドイツの演奏会で弾いた《エチュード第4番》のライブ映像。
Chopin Etude op.10 n4 - Sergio Fiorentino - Live in Germany 1995


CD5で好きなのは、バッハ=ブゾーニの《前奏曲とフーガBWV 552 “St. Anne”》、シューベルト《楽曲の時第3番》と《ピアノ・ソナタ第13番》。《ピアノ・ソナタ第21番》(D960)だけがやっぱり好きにはなれなかった。
“St. Anne”は明るく伸びやかで広がりがあって、清々しく晴れやか。《楽曲の時第3番》は柔らかく音を少し短く軽やかに切るタッチがどこかしら洒落ていて、この弾き方はとても好き。《ピアノ・ソナタ第13番》だけ演奏会場が違うため残響が多く、(オルゴールみたいに)きらきら輝くピアノの音が綺麗で、モーツァルトみたいに甘くて愛らしくて思わずにっこり。

CD6は、リスト《3つの演奏会用練習曲》、シューベルト《即興曲 D899》、スクリャービン《ピアノ・ソナタ第2番「幻想ソナタ」》と、全然違うタイプの全くタイプの曲を収録。どの曲も演奏も好きだけど、シューベルトは音の輪郭が明瞭で力強く、カラフルで豊穣な響きのスクリャービンは蝶が舞い花が咲き乱れるような濃厚なロマンティシズムがとても魅惑的。(もともと響きが濁りやすいスクリャービンは、残響が多いので混濁感が増している。)

CD7とCD8は、聴衆が(たぶん)客席で録音した音源なので、海賊版CD-Rみたいな音質。(CD化のために著作権許諾は得ているだろうけど)
Youtube上の音源(SERGIO FIORENTINO Recital 6 April 1997 Alice Tully Hall NEW YORK)とほぼ同じ音質で、Marble Houseの音質よりはるかにマシとはいえ、海賊版を聴いているみたいでちょっと違和感が...。
CD8のベートーヴェン《ピアノ・ソナタ31番》は、フーガの途中で暗譜が飛んでしまったため、即興して乗り切っている(演奏時間は短くなってしまったけど)。この曲は台湾のライブ録音にも収録されていて、そちらは完璧。
Alice Tully Hallの演奏曲目は他のCDでも聴ける曲が多く、アンコール曲に初出録音が多い。好きな曲はアルベニス《セギディーリャス》とフィオレンティーノ編曲のラフマニノフ《ヴォカリーズ》。
CD7&CD8を聴くのが購入目的ではなかったので、この音源と音質なら、収録せずに価格を下げて欲しかったとは思う。

Vocalise op. 34 No. 14 (Live)(フースム音楽祭のライブ録音)


ついでに言うと、さらにロマンティックなのはフィオレンティーノ編曲のフォーレ《夢のあとに》。『Sergio Fiorentino Edition Vol.1 :The Berlin Recordings 1994-97』(Piano Classics)に収録。この曲をYoutubeかどこかで聴いたのがきっかけで、フィオレンティーノのCDコレクターになったのだった。
Fiorentino plays Fauré Après Un Rêve


CD9の収録曲のうち、1996年の放送用録音とYamaha Piano Salonのスタジオ録音は、狭い部屋で録音したらしく、残響が少ないデッドで明瞭な音。貴重なのはフィオレンティーノのインタビューが英語で聴けること。
1998年のショパン《バラード第4番》はポッドキャスト用録音。残響豊かでクリアな音が聴きやすいけど、人工的にエコーをかけているような感じがしないでもない。この曲には1990年代の正規録音が他に残っていない(はず)。

音楽祭のリサイタルを聴いた批評家レビューのコメントは、今や誰も生き残っていない(であろう)”Golden Age”のピアニストが蘇ったような、とか、ラフマニノフやゴドフスキーを彷彿させる、など。
フィオレンティーノのピアノは色彩感の美しい音色と折り重なる響きが華麗で、濃厚なロマンティシズムと繊細な品の良さとが共存し、独特の味わいがある。
ショパンやオペラパラフレーズの曲のなかでも、特にワルツが特に魅力的。語り口が洒落ているというか、軽やかなリズム感と巧みなルバートに品の良い情感が瀟洒で優美。こういうワルツを聴いていると、古き良き時代のロマンティシズムが薫り立ってくるような気がする。

<関連サイト>Sergio Fiorentino Memorial

<関連記事>
【新譜情報】『Sergio Fiorentino ~ live in USA』

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クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;アリステア・マクリーン、エドモンド・ハミルトン、太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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