タカの雛を育てるハクトウワシ

    最近ワシの巣の映像をカメラで撮影している”Eagle cam”の動画が面白くて、数か所の巣の様子をリアルタイムで毎日見ている。
    今話題になっている”Eagle cam”は、ハクトウワシ(Bald eagel)のつがいがアカオノスリ(Red-tailed Hawk)の雛を育てている様子をリアルタイムで配信している”GROWLS Eagle Cam”(ブリティッシュコロンビア州ガブリオラ島)。CNNニュースでも報道されている。
    ワシがタカの赤ちゃんを育てる、餌にしようと捕獲? カナダ[CNN.co.jp]

    ”GROWLS Eagle Cam”のライブ映像はGROWLSのホームページとリンク先のYoutubeで閲覧できる。

    事の起こりは今月6月4日、ハクトウワシ(たぶん雌)がアカオノスリの雛(Hawklet/ホークレット)を巣に連れて来たこと。たぶんハクトウワシの雛(Eaglet/イーグレット)のランチになる予定だった。

    ワシの巣に生きたホークレットが連れて来られた場合、親ワシが生きたまま引き裂いてイーグレットに食べさせるか、生きた獲物を自分で食べる方法を習得させるためにイーグレットが自分で食べるまで放置されるか、どちらか。イーグレットが自分で食べられなければ親ワシが結局食べさせる。すぐにワシに食べられなくても、飢え(と寒さ)でホークレットはやがて死んでしまう。[↓のリンク先映像。閲覧注意!]
    ❌🔞Bielik Online Bory Tucholskie 24.05.2022 15:11 😒※このオジロワシの巣では、1週間くらいの間に合計11羽のノスリの雛(うち3羽は生きた状態だった)が連れて来られ、全て雌と雄のオジロワシが引き裂いて2羽のイーグレットに食べさせていた。
    Viewer Discretion Advised | Young hawk eaten alive by eaglets ~ 5-18-2021

    ↓はホークレットが巣に連れて来られた日から3日目までの映像。
    餌として連れてきたタカの雛をワシが育てること自体が珍しい出来事で、今までの事例でもどうやってホークレットがワシの巣にいることになったのか、カメラが設置されていない巣だったのでわからなかった。おそらく餌として連れて来たのだろうと生物学者たちが推測していたが、この映像を見るとその推測が正しかった。

    GROWLS - Is it dinner or is it family?


    ”GROWLS Eagle”では、親ワシはホークレットを放置したが、イーグレット(名前は”ジュニア”)は生きているホークレットを食べる方法がわからなかったらしく、巣に散らばっている餌の残りをばかり食べている。時々ホークレットを突いたりしていたので、ホークレットは後ろの木の根っこの陰に隠れていることが多かった。
    結局親(雌)ワシがホークレットを殺してジュニアに与えるというパターンになるはずなのに、なぜか夜になって雌ワシがホークレットを抱えて眠ったり、翌日にはアヒルと思われる鳥をジュニアに食べさせてから、ホークレットに給餌し始めた。突然雌ワシが振り向いて近づきそうになったので、ホークレットは一瞬びっくりしてのけぞってから、餌をくれるつもりだとわかって慌てて近づいてパクパク食べ始めた。

    いったい雌ワシが何を考えてホークレットに餌を与える気になったのか謎。翌日には雌だけでなく雄のハクトウワシもホークレットに給餌しているので、両親ワシの間でも”合意”があったらしい。
    人間が考えるように、家畜みたいに太らせてから食べようとか、1か月くらい前に死んだイーグレット(ジュニアより数日遅れで生まれた雛が1羽いたが、体が小さく、やがて親が餌を与えなくなり、ジュニアに突かれたりして、結局死んだという)の代わりに育てたくなったとか、そういう発想はないと思う。でも、本当のところはハクトウワシに聞いてみないとわからない。
    ※学者の説明では、エサ不足の場合、後で孵化した雛には餌を与えず、最初に孵化した雛に優先的に餌を与えて確実に生き伸びさせることがあるという。


    ”Malala”(=Suvivor/生き残るもの)と名付けられたホークレットは推定生後約3週間。アカオノスリの雛はハクトウワシの雛よりも巣立ちが早く、通常42~46日齢で巣立つという。
    マララは、毎日ジュニアと一緒に親ワシから給餌されているので、すっかり成長して白かった羽毛が茶色に代わり成鳥のアカオノスリに徐々に似てきた。
    映像を見ているとジュニアの攻撃性の無さが面白い。複数羽のイーグレットがいる巣では、雛同士で餌の奪い合いがあり、生後数週間は大きい雛が小さい雛を嘴で突いて攻撃する習性があるが、成長するにつれてその習性は消滅する。
    ジュニアくらいに成長したホークレットなら、餌をマントル(翼を広げて多い隠す)して独占したり、別のホークレットから奪ったりすることが少なくない。餌が不足していないこともあり、ジュニアはマララが給餌されていても大人しく(ピーピー鳴きながら)待っているし、マララを突ついて餌から遠ざけることもない。逆に親ワシが運んできた餌をマララの方が真っ先に嘴や足で掴んでからマントルして食べ始めることが多い。ジュニアは温和な性格なのか、食い意地が張っていないのか、種は違っても仲の良い兄と妹のペアのように見えてくる。
    巣に連れて来られてしばらくの間は、親ワシの気が変わったり、エサが不足したりして、ホークレットが食べられてしまうかもしれないと思っていたけど、今では木の枝をあちこち飛び移っているから、もうすぐ巣立ちするだろう。

    6-9日目のダイジェスト映像。
    GROWLS - The continued story of the Hawklet living life as an eagle...getting fed by Eaglet too!


    10-17日目のダイジェスト映像。
    GROWLS-RedTailed Hawklet's days 10-17 in an Eagle's nest...gets a name!



    ※追記:現地時間6/25 06:17:32、雄ワシが大きなガチョウ?を巣に持ち帰ったとたん、びっくりしたのか、マララは突然巣から森の中へ飛び去って行った。巣立ちしたノスリが餌を食べに戻ってくることも多い。もしかしたら、実の親タカの巣へ戻って行ったのだろうか。その後、雄ワシはジュニアに給餌し、自分も食べ終わってから、あちこち見渡しながらじっと巣に留まっている。それから雌ワシが巣に到着。すると、マララのピーピーいう鳴き声と、巣の外をじっと見つめながら両親タカのキキ・ヒョヒョ?という鳴き声が聞こえてくるので、会話しているように見える。やがて雄ワシが(マララが消えた方向へ)飛び立っていき、残った雌ワシはマララを探しているのか、周囲を見渡しながら、時々ジュニアに給餌したり、自分で食べたりしている。雄ワシも雌ワシも巣にこんなに長く留まっているのは最近では珍しい。突然いなくなったマララが戻ってくるのを待っているように思える。
    ※追記2:現地時間6/25 。18:16:18  雌ワシがジュニアに給餌中、マララが巣の真下の茂みから現れて、巣の飛び上がって戻ってきた。17:16:49からマララの鳴き声が遠くから聴こえ、段々近づいていたので、茂みに飛び込んで出られなかったのかもしれない。ジュニアも親ワシもマララの声が聴こえるので、巣の周りを見渡したり、巣の下の方をのぞき込んでいた。巣に戻ったマララは凄く空腹のようで、大きな鳴き声で餌をねだり、巣に散らばっている餌の残りをもらって、ガツガツ食べていた。その後、19:00頃まで自己給餌で食べ続けた(鳥は代謝が高く、特に飛行はエネルギーをかなり消費する)。鳴き声が巣立ち前と全く変わり、声も大きくアカオノスリの成鳥みたいな鳴き声になっていた。マララがいなくなってから動きが少なくなり元気がなさそうに見えたジュニアも、今は羽ばたいたり巣を動き回ったりして、嬉しそう。

    GROWLS Eagles ~ Hawklet Malala RETURNS SCREAMING To Eagle Nest❗❗ Welcome Home! 💕 6.25.22


    18-22日目のダイジェスト映像。
    GROWLS - eagle cam...hawklet spook fledge off tree and climbs their way back up! Days 18-22


    くちばしで突きあうのを”BEAKING”といい、鳥の挨拶らしい。まだ子どものワシとタカがビーキングする姿が可愛い。
    GROWLS 💕 Adorable BEAKING & AFFECTION Between Red-tailed Hawklet Malala & Bald Eaglet Junior! 7.6.22


    巣立ちしたジュニアとマララは食事のために時々巣に戻ってくる。獲物を巣に運んできた母ワシはこどもたちに給餌したくて、5時間も彼らが戻ってくるのを待っていた。親ワシがこんなに長時間巣で待つのは珍しい。
    GROWLS 🐦 Mom Brings Prey & Waits 5 Hours Before Malala Arrives! Private Feeding For Hawklet😊 7.15.22



    この出来事をレポートした記事。ハクトウワシの専門家でハンコック野生生物財団(Hancock Wildlife Foundation)のデビッド・ハンコックが現地を訪れて解説した内容が載っている。
    Blended bird family: Bald eagles raise red-tailed hawk chick on Gabriola[vancouversun.com]
    ハンコック氏によると、ハクトウワシの足で掴まれたホークレットが怪我をしていなければ、「餌を求めて懇願する」ことで生き残ることができる。ホークレットはイーグレットよりもはるかに小さいが、数週間前に孵化したワシの雛に非常によく似ている。親ワシは餌を求める声に反応するため、ホークレットが自分の雛のように見える場合、両親は餌を与えるというのは、鳥に組み込まれた反応。捕食者の本能と育成の本能がある。
    ということは、通常ならハクトウワシやオジロワシが生きたホークレットを摑まえて食べてしまうので、今回は育成の本能が勝ったのだろうか。


    [追記] 巣立ちしたイーグレットのジュニアが、巣の近くを通っている電力線に触れて地面で死んでいるのが7/18にGrwolsのスタッフによって確認された。
    20日、巣に戻っていたマララが、ジュニアが餌を食べに帰ってくるのを10分間くらい待っていた。
    21日、親ワシが3度巣にやって来て、こどもたちのために獲物を届けたり、あたりを見回しながら彼らがやってくるのをしばらく待っていた。
    翌日、マララが巣に戻っていた時に母ワシが巣にやって来て、前日届けた獲物をマララに食べさせてやっていた。マララがいない時に母ワシが獲物の残りを食べている最中に、時々あたりを見回しているのは、ジュニアが戻ってこないだろうかと探しているのかもしれない。

    GROWLS 🐦 Malala Follows Mom Back To Nest! Eats & Perches Next To Her! 💕 7.22.22



    ジュニアのメモリアル動画。
    Love is in the Aerie 2022 ( bald eagle/red-tailed hawk family)


    GROWLS 🐦 Remembering Junior *Tribute* ~ 💕 Wind Beneath My Wings 💕 8.7.22




    <他の巣の事例>
    ハクトウワシがホークレット(アカオノスリの雛)を育てている姿は、Sidney Nest(2017)とRedding Nest(Calif、2019)の2つの巣でも確認されている。
    どちらの巣の映像でも、アカオノスリのヒナがなぜハクトウワシの巣にいることになったのかわからない。この2つの巣でも”GROWLS Eagle”と同じように、ハクトウワシが餌として巣に連れて来たと思われる。

    Celebrating - Red tailed hawk in Eagle Nest 2017 and 2019

    【動画】なぜかライバルのヒナを育てるワシ エサにするつもりが、食べ物をねだる姿に心変わり?[National Geographic]


    最近Dublinで撮影されたハクトウワシの巣にいるホークレットとアカオノスリの雛の写真。
    Nature: Visit to bald eagle nest reveals a different kind of 'family'[The Columbus Dispatch]
    記事の筆者ジム・マコーマックはハクトウワシの巣を何年も見て来たという。
    アカオノスリがなぜ空中を飛んでワシの巣にいることになったのか?という説明として、成鳥のワシがアカオノスリの雛を巣からつかみ取って餌として持ち帰ったという定番の理論ではなく、「アカオノスリのつがいがワシの巣を使って卵を産んだところに、元の所有者のワシが現れて巣を取り戻し、自分の卵と一緒にタカの卵も孵化させて育てた」。
    でも、アカオノスリが作る巣よりもはるかに大きいハクトウワシの巣をノスリが使うというのはあまりありそうにない。それも上にあげた4つの巣で全てそうだというのは、なおさらありえない。さらに、ワシは巣と縄張りを守るので、タカが卵を産むまでワシが全然巣にやって来ないというのも不自然で、その場合はワシが巣を放棄したとも考えられる。また、タカの産んだ卵をワシが排除する可能性もある。やはり、ワシが獲物としてタカの雛を連れて来たと考えた方が、仮定条件が少なく合理的な説明だと思う。


    これはVancouver Islandにあるイヌワシの巣で育てられたアカオノスリの映像(2018年)。真っ白い小さな雛の時にイヌワシに巣に連れて来られたらしい。親ワシの姿が見えないけど、ホークレットが無事巣立ちしたので、親ワシが給餌したはず。(ブログを読むと、イーグレットが食べた後の残り物(nestover?)を食べていたという)

    Golden Eagles Raise A Hawk



    Decorah Northでは、見知らぬ生きたホークレットが巣にいるのを見つけた雄のハクトウワシが、(本能のせいか?)雛を温めていた。「餌を食べさせて~」とピヨピヨ鳴いているイーグレットたちが、父ワシの行動をじ~っと見ている様子が可笑しい。
    しかし、ホークレットを連れてきた雌ワシにとってはホークレットは餌でしかなく、この後に巣に戻ってきてイーグレットに食べさせた。

    Decorah North ~ Touching Moments Of Mr North Brooding The Hawklet! Closeups On The Nest! 5.14.21


    Eagle Cam の設置場所が世界中で何カ所あるかわからないけど、2017年~2022年の約6シーズンで、ハクトウワシがタカの雛を育てているのが確認されたのは”Growls Eagle Cam”の1件のみ。ただし、(死んでいない)生きたホークレットを獲物として巣に連れて来た数は獲物の総数のうちわずかだろうし、Eagle Camが設置されていない巣では映像か写真で4カ所が確認されている。
    ホークレットを生きたまま巣に連れて来た場合に限って言えば、ワシがタカの雛を育てることは、意外とありそうなことなのかもしれない。

    [追記 2023.7.2]
    カリフォルニアのRedding Nestで、ハクトウワシがアカオノスリの雛を2羽も育てている。イーグレットは1羽。
    Nesting bald eagle feeding with two baby red tail hawks


    Pair of red-tailed hawks adopted by California bald eagles, raised as their young[Usatoday]
    5月に最初のアカオノスリの雛が巣に連れて来られ、さらに2羽も。両方とも食べずにハクトウワシの親が育てているので、元々食べるつもりではなく、育てたかったのだろうか?
    小さいホークレットは6月初めに死亡、残りの1羽はすでに巣立ちした。名前はイーグレットはLola、ホークレットはTuffy 2。

    [追記]7月初旬、突然親ワシがホークレットを4度攻撃し巣から放りだした。ホークレットは巣へ戻ったが、数日後地面で死んでいるのが発見された。親ワシがずっと育ててきたホークレットを突然巣から排除した理由はわからない。
    今までの事例では、親ワシはホークレットを最後まで育てている。GROWLSでは、イーグレットが感電死して巣に戻らなくなっても、親ワシは巣に戻って来るホークレットに餌を与えている。
    Beloved Baby Hawk ‘Tuffy’ Found Dead After Eagle ‘Adoption’ Goes Violently Wrong

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    Author:Yoshimi
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    クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

    好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

    好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

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