バッカウアー『サル・プレイエル・リサイタル 1963年』(ライブ録音)
2022-09-30(Fri)
バッカウアーの新譜BOXセット《マーキュリー・マスターズ》が気に入ったので、Meloclassicから5月にリリースされた1963年のサル・プレイエル(パリ)リサイタルのライブ録音も購入。
<収録曲>
ハイドン/ピアノ・ソナタ第34番 ホ短調 Hob.XVI-34(ランドン版第53番)
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53
ラヴェル/夜のガスパール
バルトーク/組曲 Op.14 Sz62
ブラームス/パガニーニの主題による変奏曲 Op.35 第1巻(⇒間違い。正しくは、第2巻)
ラモー/メヌエット
ムソルグスキー/「展覧会の絵」~キエフの大門
モンポー/庭園の若い娘たち
ハイドン(特に好きなソナタのうちの1曲)、ベートーヴェン、ブラームス、バルトーク、ムソルグスキーは、どれも好きな曲なので、聴きたくなってくるようなプログラム。ラモーとモンポウの2曲は聴いたことがない。
このライブ録音の収録曲のうちスタジオ録音があるのは、マーキュリー盤の《夜のガスパール》と《パガニーニ変奏曲(第2巻)》、HMV盤の《展覧会の絵》(全曲)は『忘れじの女性ピアニストたち』シリーズ(山野楽器企画/東芝EMI)とグッディーズ・ダイレクト・トランスファー CD-Rに収録されている。
プログラム構成を時代・様式別に見てみると、バロック(ラモー)、古典派(ハイドン、ベートーヴェン)、ロマン派(ブラームス)、ロマン派/国民学派(ムソルグスキー)、近代/印象主義(ラヴェル、モンポウ)、近代/新古典主義(バルトーク)。古典派から近代にいたる異なる様式の作品を並べているので、様式・作風の違いも楽しめる。年代・作風では、バルトークが一番現代に近く、他の曲とは異質な作風。
地域も、ドイツ、フランス、ハンガリー、ロシア、スペインと、欧州の東西南北に渡り、音楽の持つ地域性も豊か。
CDの音質はモコモコした木質感のある若干籠った音で、ペダルを使った時に音の分離が悪く混濁する。テンポ設定、強弱、アーティキュレーションはわかるけど、音色やソノリティの微妙な違いや美しさがクリアに聴き取れない。(1963年のリサイタル録音なので、相応の音質)
それに、打鍵のアタック感がかなり耳に響くので、録音マイクの位置が近すぎたような気はする。バッカウアーの他の録音(スタジオ、ライブ)では、アタック感がこんなに耳に突き刺さるようなことはなかった。
演奏自体は、速めのテンポとライブ特有のテンション高さを感じさせる勢いの良さと力強さがあり、スタジオ録音とは違った面白さがあるし、選曲もバラエティ豊かなので、やはり買って良かったと思えるCDだった。
ハイドン/ピアノ・ソナタ第34番 ホ短調 Hob.XVI-34
第1楽章の特にフォルテが力感強くて尖ったように鋭く、テンポも速くて嵐が吹き荒れるような演奏。ベートーヴェンの短調のソナタを聴いているように錯覚してしまった。そういえばバックハウスもこの曲をスタジオ録音しているけど、弾き方や雰囲気がかなり似ている。
緩徐楽章も打鍵が強めで音量もわりと大きく、結構賑やか。第3楽章は、第1楽章よりも力感をやや抑えた軽快なタッチ。
全体的に強弱のコントラストを強調しているせいか、特にフォルテの打鍵が強すぎて耳に突き刺さって痛い。音質がもっと良ければ、フォルテと対照的に、高音のガラスのような硬質さと透明感、弱音の響きの柔らかさや美しさとか、ソノリティの変化とか、いろいろ聴き取れて楽しめたところはあったと思う。
↓のバックハウスのスタジオ録音は、ベートーヴェンを聴いているみたいで好きな演奏。音質も良いので、バックハウスの響きの美しさも聴き取りやすい。バッカウアーと比べて、タッチが尖らず落ち着きがある。(バッカウアーはライブ特有の気合が入った演奏だったと思う)
2人の演奏の共通点といえば、急速楽章では、速いテンポ、線が太い音と力強いフォルテ、粘りやタメのないフレージング、そのわりに弱音や和声の響きの美しさ、繊細な感情表現に凝ることない歌い回しで決然とした雰囲気。緩徐楽章も、弱音の繊細さに耽溺せず、情感はあっさり。やや音量も大き目でそこそこ力強さもあるタッチなので、結構賑やか。
もともと演奏スタイル自体に似ているところがあるのは、バックグラウンドの大きな違いとバッカウアーが女流ピアニストということを考えると、ちょっと面白く思えてくる。
[Wilhelm Backhaus] Haydn: Piano Sonata in e, No.53, Hob.XVI/34
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53
力感・量感豊かなバッカウアーのタッチはハイドンよりもベートーヴェンに向いている。
「ワルトシュタイン」の両端楽章は、弱音部も静けさは控えめで(でも響きは綺麗)、粒立ち良く力強いタッチと速めのテンポで駆け抜けるような勢い。第3楽章は冒頭から低音がボーンと太く響き、歯切れよく力強いタッチでダイナミックなフレージング、ペダルを踏んだアルペジオが華やか。
63歳(66歳という説もある)のバッカウアー最後のリサイタル(1976年7月31日、Caramoor Center for the Arts)の音源でも、「ワルトシュタイン」を弾いていた。(その後も演奏会を予定していたバッカウアーは8月22日に心臓発作で急逝した)
13年前のMelo盤と比べると、テンポがやや遅くなり、フォルテの打鍵が若干弱めで力感がほどよくなって、全体的に円熟さを感じさせる落ち着いた安定感がある。音質が良いので、バッカウアーの粒立ち良い音やソノリティの変化なども聴き取れる。
Gina Bachauer plays Beethoven Piano Sonata op. 53 "Waldstein" (II & III Mvt) - live
ブラームス/パガニーニの主題による変奏曲 Op.35(第1巻ではなく、第2巻)
「第1巻」の演奏が聴けると楽しみにしていたブラームスの《パガニーニ変奏曲》。でも、マーキュリー盤のスタジオ録音は第2巻だけで、このリサイタルで第1巻を弾いているというのは、妙な気がした。もしかしたら誤表記で、実は「第2巻」なのでは?とイヤな予感がした通り、やっぱり第2巻だった。第1巻の最終変奏が聴けなくてとってもがっかり。
その上、第9変奏の演奏が省略されていた。マーキュリー盤では第9変奏も弾いているから、(編集で意図的にカットしていない限り)ライブなので暗譜が飛んでしまったらしい。
スタジオ録音に比べて、テンポが速く切れのあるタッチでテンション高くて勢いある。マーキュリー盤は、テンポが遅めで音質も良いので、打鍵が丁寧。その分勢いがやや落ちるが、一音一音明瞭で細かなアルペジオでも音が潰れて聞こえず(フレーズによる)、和声の響きの細かなニュアンスや美しさがよくわかる。聴きやすいのはマーキュリー盤だけど、melo盤のライブ特有の気合が入った演奏も好き。
バルトーク/組曲 Op.14 Sz62
Allegrettoは、初期ドビュッシーの曲を聴いているみたいなリズムと旋律。以降のScherzoと Allegro moltoのやや不協和な和声と打楽器的な旋律と、Sostenutoのミステリアスな和声がまさにバルトークの音楽という感じ。
バルトークの音楽自体は好きなので、この演奏が聴けて良かった。バッカウアーの線の太い音と力感・量感豊かな低音にゴツゴツと骨っぽさがあって、打楽器的な響きのバルトークの音楽に良く似合う。特に不穏なものが迫りくるようなオドロオドロしさが増すのもいい。さらに、音が籠っているけど、緩徐部のピアノの響きは妖艶でミステリアス。ドビュッシーの影響を受けたバルトークは和声の響きがファンタスティック。
↓のバルトークのライブ音源は1963年のRadio Broadcastのリスナーが録音したものらしい。Melo盤と同じリサイタルのラジオ放送かもしれない。CDよりも少し音が遠く、籠り感はやや薄いので多少音がクリアに聴こえるけど、音の輪郭はmelo盤が明瞭。(どちらも一長一短ある)
(Gina Bachauer | 1963 | Live) Bartok: Suite for Piano, Sz.62 (Op.14)
ラモー/メヌエット
ラモーの「メヌエット」というと何曲もあるので調べると、ピアノで弾くラモーの「メヌエット」でポピュラーなのはピアノ練習や課題曲で使われるハ長調。他に《クラヴサン曲集組曲》にも「Menuet I/II」がある。
でも、バッカウアーが弾いているのは、ラモーの歌劇「プラテー」(Act II)中の「メヌエット」をピアノ編曲したもの。ギターやフルート編曲版の演奏が多い。ピアノ版は珍しいかも。柔らかいタッチなので、響きも優しくて可愛らしいメヌエット。
ムソルグスキー/「展覧会の絵」~キエフの大門
ムソルグスキー《展覧会の絵》の「キエフの大門」は、バッカウアーの力強いフォルテと弱音の落差が大きくて面白い。特に左手低音は《英雄ポロネーズ》と同じように、地響きみたいに重たく唸っている。
バッカウアーは1956年にHMVで《展覧会の絵》を全曲録音している。SXLP 30233(モノラル期音源の復刻盤/ステレオ)を元にした↓の音源を聴くと、1956年のモノラル録音にしては、復刻盤にしても驚異的な音質でCDで聴きたいくらい。
<Gina Bachauer plays Mussorgsky Pictures at an Exhibition
HMVのモノラル原盤DLP1154を元に製作したグッディーズ・ダイレクト・トランスファーCD-Rの音質は、試聴ファイルで聴くといかにもモノラルという音質。原盤の音質の違いでこれだけ差があるのだろうか。
モンポウ/庭園の若い娘たち
ドビュッシーの《デルフィの舞姫》みたいにちょっと気だるい雰囲気。こういうまったりした優美な印象主義の曲は、バッカウアーのソノリティの美しさと品の良さが映える。
ついでに珍しいライブ映像。ミヨー《スカラムーシュ》の「ブラジレイラ」を弾く61歳のバッカウアーと10歳年下のアリシア・デ・ラローチャ。第1ピアノがバッカウアー。スパンコール?がキラキラ煌くドレス姿のバッカウアーは貫禄があって華やか。(1974年12月9日、Royal Festival Hallで行われたInternational Piano Libraryのガラ・コンサート)
Bachauer and Larrocha play Milhaud - Brazilera from "Scaramouche"
![]() | ジーナ・バッカウアー - サル・プレイエルでのリサイタル 1963年 (2022年05月27日) ジーナ・バッカウアー 試聴ファイルなし |
ハイドン/ピアノ・ソナタ第34番 ホ短調 Hob.XVI-34(ランドン版第53番)
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53
ラヴェル/夜のガスパール
バルトーク/組曲 Op.14 Sz62
ブラームス/パガニーニの主題による変奏曲 Op.35 第1巻(⇒間違い。正しくは、第2巻)
ラモー/メヌエット
ムソルグスキー/「展覧会の絵」~キエフの大門
モンポー/庭園の若い娘たち
ハイドン(特に好きなソナタのうちの1曲)、ベートーヴェン、ブラームス、バルトーク、ムソルグスキーは、どれも好きな曲なので、聴きたくなってくるようなプログラム。ラモーとモンポウの2曲は聴いたことがない。
このライブ録音の収録曲のうちスタジオ録音があるのは、マーキュリー盤の《夜のガスパール》と《パガニーニ変奏曲(第2巻)》、HMV盤の《展覧会の絵》(全曲)は『忘れじの女性ピアニストたち』シリーズ(山野楽器企画/東芝EMI)とグッディーズ・ダイレクト・トランスファー CD-Rに収録されている。
プログラム構成を時代・様式別に見てみると、バロック(ラモー)、古典派(ハイドン、ベートーヴェン)、ロマン派(ブラームス)、ロマン派/国民学派(ムソルグスキー)、近代/印象主義(ラヴェル、モンポウ)、近代/新古典主義(バルトーク)。古典派から近代にいたる異なる様式の作品を並べているので、様式・作風の違いも楽しめる。年代・作風では、バルトークが一番現代に近く、他の曲とは異質な作風。
地域も、ドイツ、フランス、ハンガリー、ロシア、スペインと、欧州の東西南北に渡り、音楽の持つ地域性も豊か。
CDの音質はモコモコした木質感のある若干籠った音で、ペダルを使った時に音の分離が悪く混濁する。テンポ設定、強弱、アーティキュレーションはわかるけど、音色やソノリティの微妙な違いや美しさがクリアに聴き取れない。(1963年のリサイタル録音なので、相応の音質)
それに、打鍵のアタック感がかなり耳に響くので、録音マイクの位置が近すぎたような気はする。バッカウアーの他の録音(スタジオ、ライブ)では、アタック感がこんなに耳に突き刺さるようなことはなかった。
演奏自体は、速めのテンポとライブ特有のテンション高さを感じさせる勢いの良さと力強さがあり、スタジオ録音とは違った面白さがあるし、選曲もバラエティ豊かなので、やはり買って良かったと思えるCDだった。
ハイドン/ピアノ・ソナタ第34番 ホ短調 Hob.XVI-34
第1楽章の特にフォルテが力感強くて尖ったように鋭く、テンポも速くて嵐が吹き荒れるような演奏。ベートーヴェンの短調のソナタを聴いているように錯覚してしまった。そういえばバックハウスもこの曲をスタジオ録音しているけど、弾き方や雰囲気がかなり似ている。
緩徐楽章も打鍵が強めで音量もわりと大きく、結構賑やか。第3楽章は、第1楽章よりも力感をやや抑えた軽快なタッチ。
全体的に強弱のコントラストを強調しているせいか、特にフォルテの打鍵が強すぎて耳に突き刺さって痛い。音質がもっと良ければ、フォルテと対照的に、高音のガラスのような硬質さと透明感、弱音の響きの柔らかさや美しさとか、ソノリティの変化とか、いろいろ聴き取れて楽しめたところはあったと思う。
↓のバックハウスのスタジオ録音は、ベートーヴェンを聴いているみたいで好きな演奏。音質も良いので、バックハウスの響きの美しさも聴き取りやすい。バッカウアーと比べて、タッチが尖らず落ち着きがある。(バッカウアーはライブ特有の気合が入った演奏だったと思う)
2人の演奏の共通点といえば、急速楽章では、速いテンポ、線が太い音と力強いフォルテ、粘りやタメのないフレージング、そのわりに弱音や和声の響きの美しさ、繊細な感情表現に凝ることない歌い回しで決然とした雰囲気。緩徐楽章も、弱音の繊細さに耽溺せず、情感はあっさり。やや音量も大き目でそこそこ力強さもあるタッチなので、結構賑やか。
もともと演奏スタイル自体に似ているところがあるのは、バックグラウンドの大きな違いとバッカウアーが女流ピアニストということを考えると、ちょっと面白く思えてくる。
[Wilhelm Backhaus] Haydn: Piano Sonata in e, No.53, Hob.XVI/34
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53
力感・量感豊かなバッカウアーのタッチはハイドンよりもベートーヴェンに向いている。
「ワルトシュタイン」の両端楽章は、弱音部も静けさは控えめで(でも響きは綺麗)、粒立ち良く力強いタッチと速めのテンポで駆け抜けるような勢い。第3楽章は冒頭から低音がボーンと太く響き、歯切れよく力強いタッチでダイナミックなフレージング、ペダルを踏んだアルペジオが華やか。
63歳(66歳という説もある)のバッカウアー最後のリサイタル(1976年7月31日、Caramoor Center for the Arts)の音源でも、「ワルトシュタイン」を弾いていた。(その後も演奏会を予定していたバッカウアーは8月22日に心臓発作で急逝した)
13年前のMelo盤と比べると、テンポがやや遅くなり、フォルテの打鍵が若干弱めで力感がほどよくなって、全体的に円熟さを感じさせる落ち着いた安定感がある。音質が良いので、バッカウアーの粒立ち良い音やソノリティの変化なども聴き取れる。

ブラームス/パガニーニの主題による変奏曲 Op.35(第1巻ではなく、第2巻)
「第1巻」の演奏が聴けると楽しみにしていたブラームスの《パガニーニ変奏曲》。でも、マーキュリー盤のスタジオ録音は第2巻だけで、このリサイタルで第1巻を弾いているというのは、妙な気がした。もしかしたら誤表記で、実は「第2巻」なのでは?とイヤな予感がした通り、やっぱり第2巻だった。第1巻の最終変奏が聴けなくてとってもがっかり。
その上、第9変奏の演奏が省略されていた。マーキュリー盤では第9変奏も弾いているから、(編集で意図的にカットしていない限り)ライブなので暗譜が飛んでしまったらしい。
スタジオ録音に比べて、テンポが速く切れのあるタッチでテンション高くて勢いある。マーキュリー盤は、テンポが遅めで音質も良いので、打鍵が丁寧。その分勢いがやや落ちるが、一音一音明瞭で細かなアルペジオでも音が潰れて聞こえず(フレーズによる)、和声の響きの細かなニュアンスや美しさがよくわかる。聴きやすいのはマーキュリー盤だけど、melo盤のライブ特有の気合が入った演奏も好き。
バルトーク/組曲 Op.14 Sz62
Allegrettoは、初期ドビュッシーの曲を聴いているみたいなリズムと旋律。以降のScherzoと Allegro moltoのやや不協和な和声と打楽器的な旋律と、Sostenutoのミステリアスな和声がまさにバルトークの音楽という感じ。
バルトークの音楽自体は好きなので、この演奏が聴けて良かった。バッカウアーの線の太い音と力感・量感豊かな低音にゴツゴツと骨っぽさがあって、打楽器的な響きのバルトークの音楽に良く似合う。特に不穏なものが迫りくるようなオドロオドロしさが増すのもいい。さらに、音が籠っているけど、緩徐部のピアノの響きは妖艶でミステリアス。ドビュッシーの影響を受けたバルトークは和声の響きがファンタスティック。
↓のバルトークのライブ音源は1963年のRadio Broadcastのリスナーが録音したものらしい。Melo盤と同じリサイタルのラジオ放送かもしれない。CDよりも少し音が遠く、籠り感はやや薄いので多少音がクリアに聴こえるけど、音の輪郭はmelo盤が明瞭。(どちらも一長一短ある)
(Gina Bachauer | 1963 | Live) Bartok: Suite for Piano, Sz.62 (Op.14)
ラモー/メヌエット
ラモーの「メヌエット」というと何曲もあるので調べると、ピアノで弾くラモーの「メヌエット」でポピュラーなのはピアノ練習や課題曲で使われるハ長調。他に《クラヴサン曲集組曲》にも「Menuet I/II」がある。
でも、バッカウアーが弾いているのは、ラモーの歌劇「プラテー」(Act II)中の「メヌエット」をピアノ編曲したもの。ギターやフルート編曲版の演奏が多い。ピアノ版は珍しいかも。柔らかいタッチなので、響きも優しくて可愛らしいメヌエット。
ムソルグスキー/「展覧会の絵」~キエフの大門
ムソルグスキー《展覧会の絵》の「キエフの大門」は、バッカウアーの力強いフォルテと弱音の落差が大きくて面白い。特に左手低音は《英雄ポロネーズ》と同じように、地響きみたいに重たく唸っている。
バッカウアーは1956年にHMVで《展覧会の絵》を全曲録音している。SXLP 30233(モノラル期音源の復刻盤/ステレオ)を元にした↓の音源を聴くと、1956年のモノラル録音にしては、復刻盤にしても驚異的な音質でCDで聴きたいくらい。

HMVのモノラル原盤DLP1154を元に製作したグッディーズ・ダイレクト・トランスファーCD-Rの音質は、試聴ファイルで聴くといかにもモノラルという音質。原盤の音質の違いでこれだけ差があるのだろうか。
モンポウ/庭園の若い娘たち
ドビュッシーの《デルフィの舞姫》みたいにちょっと気だるい雰囲気。こういうまったりした優美な印象主義の曲は、バッカウアーのソノリティの美しさと品の良さが映える。
ついでに珍しいライブ映像。ミヨー《スカラムーシュ》の「ブラジレイラ」を弾く61歳のバッカウアーと10歳年下のアリシア・デ・ラローチャ。第1ピアノがバッカウアー。スパンコール?がキラキラ煌くドレス姿のバッカウアーは貫禄があって華やか。(1974年12月9日、Royal Festival Hallで行われたInternational Piano Libraryのガラ・コンサート)
Bachauer and Larrocha play Milhaud - Brazilera from "Scaramouche"