アン=マリー・マクダーモット ~ ハイドン/ピアノソナタ集(Vol.2)
2022-08-28(Sun)
アン=マリー・マクダーモットのハイドンは、ソラウンとは全然違うタッチで軽やかで愛らしい。
マクダーモットのピアノ・ソナタ集はVol.1とVol.2がリリースされていて、第2巻は<ハイドン音盤倉庫>でも紹介されていた。
【新着】アン=マリー・マクダーモットのピアノソナタ集第2巻(ハイドン)
この記事を読んで興味をもったのでNMLで聴いてみたところ、記事に書かれている通り、Vol.1とVol.2ではタッチや急速楽章の弾き方(特にフォルテの部分)がかなり違う。
Vol.2の方がタッチが洗練されて、打鍵のアタック感が柔らかくなり、音の輪郭にもやや丸みが出て響きも柔らかい。モーツァルトのソナタを弾いているみたいに、鍵盤上を音の粒がコロコロと転がるようにフレージングが滑らか。ほぼインテンポで表情のつけ方も粘りがなくて細やか、タッチが軽やかで歯切れよくリズミカル、フォルテは力感・音量をやや抑え気味で(特に急速楽章を聴き比べるとよくわかる)、とても品良く聴こえる。
いつもはあまり聴かない緩徐楽章まで全部聴いてしまったほど気に入ったので、タワーレコードでCD(Vol.2)を注文。取り寄せになるので届くまでしばらくかかりそう。
<収録曲>
ピアノ・ソナタ第58番 ハ長調 Hob.XVI:48
ピアノ・ソナタ第52番 ト長調 Hob.XVI:39
ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Hob.XVI:46
ピアノ・ソナタ第50番 ニ長調 Hob.XVI:37
マクダーモットの演奏で好きなところは、丁寧で軽やかなタッチ(特に柔らかで控え目なフォルテ)、細やかな起伏がついた豊かな表情、楽しそうで愛らしく優しさを感じるところ。タッチの丁寧さを特に感じるのは、速いテンポのフレージングでも、フレーズ末尾の音をパシっと切らずに、少し力を抜いたような弱めのタッチで丁寧に押さえている(ことが多い。フレーズによる)ので、落ち着きのある柔らかさがあって、ここがとっても好き。
フォルテの弾き方も楽章によって変えているところが面白い。
Hob. XVI:46の第3楽章では、柔らかいタッチでフォルテの力強さと音量を抑え、軽快ながらも落ち着きがあって愛らしい。(フォルテを強く演奏も多い)
対照的に、XVI:37第2楽章ラルゴの冒頭では、やや重たく音量も大きめのフォルテで厳粛で荘重な雰囲気。(楽譜上はフォルテでも、もっと柔らかく抑えたタッチで静かに入っていく弾き方もあり、ブレンデル、オルベルツ、アンスネス、サイなどはそういう風に弾いている)
Vol.2で一番好きな演奏は、Hob. XVI:46の第3楽章。
ソラウンはかなり速いテンポと力強いフォルテで勢いよく弾いているので、喩えて言えば、大人が慌ただしく走り回っているようなイメージ。
マクダーモットの柔らかいタッチと抑えた力感と音量で弾くと、バタバタした感じは全くせず、子供が軽やかな足取りで駆けっこしているような楽しくて可愛らしい曲に聴こえる。
Keyboard Sonata in A-Flat Major, Hob. XVI:46: III. Finale. Presto
Hob. XVI:37は、子供の頃にピアノのレッスンで練習した曲。(この曲に限らないけど)やはり自分の下手なピアノで聴いてはいけない。第1楽章は軽やかなタッチで快活、しなやかで優美さもあって、やっぱりいい曲だった。
Keyboard Sonata in D Major, Op. 30 No. 3, Hob. XVI:37: I. Allegro con brio
第2楽章冒頭では、(他の曲とは随分違った)やや重たく音も大きめのフォルテで厳粛で荘重な雰囲気。バロックを聴いているような気になる。
Keyboard Sonata in D Major, Op. 30 No. 3, Hob. XVI:37: II. Largo e sostenuto
Vol.1を録音した頃にハイドンを弾いているスタジオ映像。CD(Vol.1)と同じように、フォルテをかなり強いタッチで弾いている。
この映像を見ていたら、椅子の上で白い物がモゴモゴ動いていた。椅子のあたりは注意して見ていなかったので、クッションが動いている?と思ってよく見ると、白い犬(たぶんマルチーズ)だった。映像の説明を読むと、その犬はマクダーモットの愛犬サマンサ。子連れ演奏は見たことあるけど、犬連れ演奏は初めて見た。サマンサは演奏中ずっと椅子の上で大人しくしていたから、自宅でも同じように演奏中は一緒に椅子に座っているに違いない。
[追記]
レーベル取り寄せだったので、注文後3週間して到着。ステレオでCDを聴くと、(当然のことながら)試聴時よりも音がさらに綺麗で、タッチの微妙な力加減が細部までよく聴き取れる。全曲通しで聴くと、最後のHob.XVI:37が曲としては一番好き。低音の和音が力強く快活な第一楽章、厳粛で荘重な第2楽章、暗雲が消え去ったように晴れやかで淡い憂いが漂う第3楽章と、曲想のコントラストが明快で、元々好きな曲だったけど、さらに好きになってしまった。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
マクダーモットのピアノ・ソナタ集はVol.1とVol.2がリリースされていて、第2巻は<ハイドン音盤倉庫>でも紹介されていた。

この記事を読んで興味をもったのでNMLで聴いてみたところ、記事に書かれている通り、Vol.1とVol.2ではタッチや急速楽章の弾き方(特にフォルテの部分)がかなり違う。
Vol.2の方がタッチが洗練されて、打鍵のアタック感が柔らかくなり、音の輪郭にもやや丸みが出て響きも柔らかい。モーツァルトのソナタを弾いているみたいに、鍵盤上を音の粒がコロコロと転がるようにフレージングが滑らか。ほぼインテンポで表情のつけ方も粘りがなくて細やか、タッチが軽やかで歯切れよくリズミカル、フォルテは力感・音量をやや抑え気味で(特に急速楽章を聴き比べるとよくわかる)、とても品良く聴こえる。
いつもはあまり聴かない緩徐楽章まで全部聴いてしまったほど気に入ったので、タワーレコードでCD(Vol.2)を注文。取り寄せになるので届くまでしばらくかかりそう。
![]() | Haydn: Sonatas Vol 2 (2018/3/16) Anne-Marie McDermott |
ピアノ・ソナタ第58番 ハ長調 Hob.XVI:48
ピアノ・ソナタ第52番 ト長調 Hob.XVI:39
ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Hob.XVI:46
ピアノ・ソナタ第50番 ニ長調 Hob.XVI:37
マクダーモットの演奏で好きなところは、丁寧で軽やかなタッチ(特に柔らかで控え目なフォルテ)、細やかな起伏がついた豊かな表情、楽しそうで愛らしく優しさを感じるところ。タッチの丁寧さを特に感じるのは、速いテンポのフレージングでも、フレーズ末尾の音をパシっと切らずに、少し力を抜いたような弱めのタッチで丁寧に押さえている(ことが多い。フレーズによる)ので、落ち着きのある柔らかさがあって、ここがとっても好き。
フォルテの弾き方も楽章によって変えているところが面白い。
Hob. XVI:46の第3楽章では、柔らかいタッチでフォルテの力強さと音量を抑え、軽快ながらも落ち着きがあって愛らしい。(フォルテを強く演奏も多い)
対照的に、XVI:37第2楽章ラルゴの冒頭では、やや重たく音量も大きめのフォルテで厳粛で荘重な雰囲気。(楽譜上はフォルテでも、もっと柔らかく抑えたタッチで静かに入っていく弾き方もあり、ブレンデル、オルベルツ、アンスネス、サイなどはそういう風に弾いている)
Vol.2で一番好きな演奏は、Hob. XVI:46の第3楽章。
ソラウンはかなり速いテンポと力強いフォルテで勢いよく弾いているので、喩えて言えば、大人が慌ただしく走り回っているようなイメージ。
マクダーモットの柔らかいタッチと抑えた力感と音量で弾くと、バタバタした感じは全くせず、子供が軽やかな足取りで駆けっこしているような楽しくて可愛らしい曲に聴こえる。
Keyboard Sonata in A-Flat Major, Hob. XVI:46: III. Finale. Presto
Hob. XVI:37は、子供の頃にピアノのレッスンで練習した曲。(この曲に限らないけど)やはり自分の下手なピアノで聴いてはいけない。第1楽章は軽やかなタッチで快活、しなやかで優美さもあって、やっぱりいい曲だった。
Keyboard Sonata in D Major, Op. 30 No. 3, Hob. XVI:37: I. Allegro con brio
第2楽章冒頭では、(他の曲とは随分違った)やや重たく音も大きめのフォルテで厳粛で荘重な雰囲気。バロックを聴いているような気になる。
Keyboard Sonata in D Major, Op. 30 No. 3, Hob. XVI:37: II. Largo e sostenuto
Vol.1を録音した頃にハイドンを弾いているスタジオ映像。CD(Vol.1)と同じように、フォルテをかなり強いタッチで弾いている。
この映像を見ていたら、椅子の上で白い物がモゴモゴ動いていた。椅子のあたりは注意して見ていなかったので、クッションが動いている?と思ってよく見ると、白い犬(たぶんマルチーズ)だった。映像の説明を読むと、その犬はマクダーモットの愛犬サマンサ。子連れ演奏は見たことあるけど、犬連れ演奏は初めて見た。サマンサは演奏中ずっと椅子の上で大人しくしていたから、自宅でも同じように演奏中は一緒に椅子に座っているに違いない。
[追記]
レーベル取り寄せだったので、注文後3週間して到着。ステレオでCDを聴くと、(当然のことながら)試聴時よりも音がさらに綺麗で、タッチの微妙な力加減が細部までよく聴き取れる。全曲通しで聴くと、最後のHob.XVI:37が曲としては一番好き。低音の和音が力強く快活な第一楽章、厳粛で荘重な第2楽章、暗雲が消え去ったように晴れやかで淡い憂いが漂う第3楽章と、曲想のコントラストが明快で、元々好きな曲だったけど、さらに好きになってしまった。
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