串岡慶子『箸置きの世界 食卓の小さな遊び』
2023-03-14(Tue)
「四季の風物、動物、植物、文様、縁起物まで、多種多様な「箸置き」の世界。著者の貴重なコレクションを通して楽しむ、小さくて可愛い、日本人の掌の美をめでる一冊」という紹介文がぴったりな『箸置きの世界 食卓の小さな遊び』(串岡慶子著、平凡社)。
箸置きの写真だけでなく、箸置きにまつわる話がいろいろ載っていて、箸置き好きには見ても読んでもとても楽しい本。
箸置きの世界 食卓の小さな遊び[平凡社ウェブサイト] (サンプル頁の掲載あり)
※帯に「世界初!箸置き専門書」と書いていたので、箸置きだけを取り上げた他の研究書がないか探したけどやっぱり見つからなかった。
<目次>
第1章 四季の食卓と箸置き(新春/春/夏/秋/冬)
第2章 箸置きと私(箸置きとの出会い/箸置き蒐集家になる/箸置き探偵誕生/箸置き普及委員となる/昭和の箸置き、そして箸立て・箸入れ)
第3章 箸置きの歴史をたどる(古代/中世/近世/近代/現代)
第4章 箸置き歳時記
【日本の自然】四季の花/椿/梅/春野/桔梗耳皿/菊/もみじ/花の箸立て/花の箸入れ/海の魚/フグ/イカ/いろいろな貝/淡水に棲む魚
【食の恵み】四季の野菜/なす/かぶ/さやえんどう/栗・落花生/きのこ/柿
【縁起物】縁起物大集合/瓢/松/結び文/干支/扇
【日本の暮らし】身近な鳥/犬/猫/昭和の暮らし/家庭用箸立て/外国向け箸立て/昭和のおもちゃ/和楽器/舟と筏
【その他】緑と青/各地の素材
コラム:置物や古い道具を見立てて使う/箸の置き方・箸置きの向き/箸置きから始まるいいこと七か条/箸を離れた遊び方もいろいろ
エッセイ「箸置き」 高峰秀子
箸置き・箸入れ掲載リスト
あとがき
参考文献
『箸置きの世界 食卓の小さな遊び』串岡慶子著(平凡社)[読売新聞/レビュー]
マツコの知らない世界で紹介~箸置きの世界~購入可能なネットショップ情報もあり![ネット通販情報局「ドラマニアローズ」]
子供の頃から箸置きが食卓に置いてあった。長方形に竹や笹の和風柄という大して凝った箸置きではなかったし、特に何も思わずに使っていた。自炊するようになってから、食卓をセットするときに箸の置き場に困るのがわかって、色や形が気に入った箸置きを時々買っていたら、20個くらい集まっていた。その中で使うのは季節ごとに変えているけど、全然使わない箸置きと頻繁に使う箸置きにきれいに分かれている。
著者が所有している箸置きは2000個近く。明治以降のもので、大半は昭和時代、それも戦後のもの。著者が調べた箸置きの歴史をたどると、そもそも箸置きが登場したのが明治時代から。その中で窯元や陶芸家の印があるものは約2割で、そのうち判読可能なのは半分くらい。
箸置きのコレクションの紹介(図と文章)以外の話-著者の箸置き(と箸入れ、箸立て)蒐集のきっかけと蒐集方法、箸置きの効用、箸置きの歴史-も面白い。
著者の箸置き探しの場所は、主に北野天満宮の「天神さん」、東寺の「弘法さん」と「ガラクタ市」などの陶器市や骨董店。京都には箸置き専門の窯元(「京豊」、「京泉」、「松香」、「芳、「吉兆」など)があるという。(久しぶりに京都へ行って、箸置き探しをしたくなってきた)
箸置きの歴史も、古代から現代に渡って文献(故実書、絵図、写真、絵巻物、雑誌など)を調査し、箸のおき方、箸台、箸置きが図示されている絵図・写真・記事などが記載されている。その当時、お箸がどういう風に置かれていたのか、眼で見てもよくわかる。箸置きの始まりから変遷を簡潔に書くと....
古代(飛鳥・奈良・平安時代):最初は箸台、耳皿などの土器、やがて中国文化の影響により宮中の宴では、大きな台盤に料理を並べ、足付きの馬頭盤(箸台の一種。銀製、朱塗りの木製)に箸とさじが置かれていた。貴族は耳皿に箸を置き、庶民はご飯に箸を突き立てる。9世紀以降、食事が大きな台盤から、銘々に配膳するため高坏へと変わる。
中世(鎌倉・室町時代):本膳料理では耳皿、茶会での食事・懐石ではお膳の縁に箸を掛ける。
近世(安土・桃山・江戸時代):浮世絵や武士の日記に箸立てが登場。手元に置かれた小皿に箸を置く。
近代(明治~昭和20年頃):箸置きの登場。その背景として、銘々皿からちゃぶ台が普及し、一つの食卓を多人数で囲むようになり、食卓の汚れを箸に付けないために箸置きが考案され普及。箸入れは明治に使われていた模様。雑誌にも箸置きを置いたお膳の写真などが掲載されていた。
現代(昭和20年~平成へ):戦後の混乱期を経て景気が回復し、高度経済成長を遂げ、生活の余裕が生まれると、箸置きが雑誌に再登場、箸置きの景品化、子供用箸置きが作られたりした。凝った箸置きから平成へ入ると季節を問わず使えるシンプルな箸置きが増加。ナイフやフォークも置ける大きなもの、豆皿と共用できるもの、伝統工芸と現代が融合した新感覚の箸置きなど多彩になった。
本書には色・形・絵柄・素材がバラエティ豊かな箸置きの写真が多数載っていて、見ているだけで楽しい。その中でこれは使いたいと思った箸置きが2つ。一つは真っ赤に熟した柿の実が2つ連なっている箸置き。形が面白いし、色合いも品良く華やか。調べてみると、酒井田柿右衛門作「双柿箸置」で5個セットで44,000円もする。食器というよりは美術工芸品みたい。
もう一つは白山陶器の「とり」。これは波佐見焼。翼の間にネームカードやメッセージカードを差し込める。
10年位前に買った白い鳥の箸置き(お正月用)とどちらにするか迷ったのを覚えている。
イオンモールの「Grin Store」に置いているのを思い出して早速購入(1個660円)。以前見た時は真っ白だと思ったけど、よく見たらほのかに青みがかった白で背中の部分は少し青みが強くなっていた。持っている白い鳥の箸置き(目がグレーで顔が可愛い)よりも細身で背中のくぼみが深いのでお箸が載せやすく、買ってから毎日使っている。

※左の箸置きが10年前に買った白い鳥。使うのはお正月だけ。底面に製造元の印が彫られているけど、判読できない。右が今回買った白山陶器の「とり」。
持っている箸置きのなかで、本書に載っているものは3つくらい。赤かぶ(全く同じもの)、桜の花びら(たぶん同じ)、枝付梅(デザイン一緒で色使いが微妙に違う)。
本書には載っていないけど、「うさぎのお月見」を描いた箸置き(↓)は、色使いと柄が絵みたいに綺麗で冬に良く使っている。他には赤かぶ、(羽子板用の)羽根。春は、桜の花びら、枝付梅、小かぶ(桃色かぶと黄緑の葉っぱ)、夏には緑の葉っぱ、涼し気なガラス製の花、秋は柿・栗・どんぐり・もみじ饅頭と、季節(と気分)によって選ぶのが楽しい。

箸置きの写真だけでなく、箸置きにまつわる話がいろいろ載っていて、箸置き好きには見ても読んでもとても楽しい本。
![]() | 箸置きの世界 食卓の小さな遊び(コロナ・ブックス) (2022/9/28) 串岡慶子 |

※帯に「世界初!箸置き専門書」と書いていたので、箸置きだけを取り上げた他の研究書がないか探したけどやっぱり見つからなかった。
<目次>
第1章 四季の食卓と箸置き(新春/春/夏/秋/冬)
第2章 箸置きと私(箸置きとの出会い/箸置き蒐集家になる/箸置き探偵誕生/箸置き普及委員となる/昭和の箸置き、そして箸立て・箸入れ)
第3章 箸置きの歴史をたどる(古代/中世/近世/近代/現代)
第4章 箸置き歳時記
【日本の自然】四季の花/椿/梅/春野/桔梗耳皿/菊/もみじ/花の箸立て/花の箸入れ/海の魚/フグ/イカ/いろいろな貝/淡水に棲む魚
【食の恵み】四季の野菜/なす/かぶ/さやえんどう/栗・落花生/きのこ/柿
【縁起物】縁起物大集合/瓢/松/結び文/干支/扇
【日本の暮らし】身近な鳥/犬/猫/昭和の暮らし/家庭用箸立て/外国向け箸立て/昭和のおもちゃ/和楽器/舟と筏
【その他】緑と青/各地の素材
コラム:置物や古い道具を見立てて使う/箸の置き方・箸置きの向き/箸置きから始まるいいこと七か条/箸を離れた遊び方もいろいろ
エッセイ「箸置き」 高峰秀子
箸置き・箸入れ掲載リスト
あとがき
参考文献


子供の頃から箸置きが食卓に置いてあった。長方形に竹や笹の和風柄という大して凝った箸置きではなかったし、特に何も思わずに使っていた。自炊するようになってから、食卓をセットするときに箸の置き場に困るのがわかって、色や形が気に入った箸置きを時々買っていたら、20個くらい集まっていた。その中で使うのは季節ごとに変えているけど、全然使わない箸置きと頻繁に使う箸置きにきれいに分かれている。
著者が所有している箸置きは2000個近く。明治以降のもので、大半は昭和時代、それも戦後のもの。著者が調べた箸置きの歴史をたどると、そもそも箸置きが登場したのが明治時代から。その中で窯元や陶芸家の印があるものは約2割で、そのうち判読可能なのは半分くらい。
箸置きのコレクションの紹介(図と文章)以外の話-著者の箸置き(と箸入れ、箸立て)蒐集のきっかけと蒐集方法、箸置きの効用、箸置きの歴史-も面白い。
著者の箸置き探しの場所は、主に北野天満宮の「天神さん」、東寺の「弘法さん」と「ガラクタ市」などの陶器市や骨董店。京都には箸置き専門の窯元(「京豊」、「京泉」、「松香」、「芳、「吉兆」など)があるという。(久しぶりに京都へ行って、箸置き探しをしたくなってきた)
箸置きの歴史も、古代から現代に渡って文献(故実書、絵図、写真、絵巻物、雑誌など)を調査し、箸のおき方、箸台、箸置きが図示されている絵図・写真・記事などが記載されている。その当時、お箸がどういう風に置かれていたのか、眼で見てもよくわかる。箸置きの始まりから変遷を簡潔に書くと....
古代(飛鳥・奈良・平安時代):最初は箸台、耳皿などの土器、やがて中国文化の影響により宮中の宴では、大きな台盤に料理を並べ、足付きの馬頭盤(箸台の一種。銀製、朱塗りの木製)に箸とさじが置かれていた。貴族は耳皿に箸を置き、庶民はご飯に箸を突き立てる。9世紀以降、食事が大きな台盤から、銘々に配膳するため高坏へと変わる。
中世(鎌倉・室町時代):本膳料理では耳皿、茶会での食事・懐石ではお膳の縁に箸を掛ける。
近世(安土・桃山・江戸時代):浮世絵や武士の日記に箸立てが登場。手元に置かれた小皿に箸を置く。
近代(明治~昭和20年頃):箸置きの登場。その背景として、銘々皿からちゃぶ台が普及し、一つの食卓を多人数で囲むようになり、食卓の汚れを箸に付けないために箸置きが考案され普及。箸入れは明治に使われていた模様。雑誌にも箸置きを置いたお膳の写真などが掲載されていた。
現代(昭和20年~平成へ):戦後の混乱期を経て景気が回復し、高度経済成長を遂げ、生活の余裕が生まれると、箸置きが雑誌に再登場、箸置きの景品化、子供用箸置きが作られたりした。凝った箸置きから平成へ入ると季節を問わず使えるシンプルな箸置きが増加。ナイフやフォークも置ける大きなもの、豆皿と共用できるもの、伝統工芸と現代が融合した新感覚の箸置きなど多彩になった。
本書には色・形・絵柄・素材がバラエティ豊かな箸置きの写真が多数載っていて、見ているだけで楽しい。その中でこれは使いたいと思った箸置きが2つ。一つは真っ赤に熟した柿の実が2つ連なっている箸置き。形が面白いし、色合いも品良く華やか。調べてみると、酒井田柿右衛門作「双柿箸置」で5個セットで44,000円もする。食器というよりは美術工芸品みたい。
もう一つは白山陶器の「とり」。これは波佐見焼。翼の間にネームカードやメッセージカードを差し込める。
10年位前に買った白い鳥の箸置き(お正月用)とどちらにするか迷ったのを覚えている。
イオンモールの「Grin Store」に置いているのを思い出して早速購入(1個660円)。以前見た時は真っ白だと思ったけど、よく見たらほのかに青みがかった白で背中の部分は少し青みが強くなっていた。持っている白い鳥の箸置き(目がグレーで顔が可愛い)よりも細身で背中のくぼみが深いのでお箸が載せやすく、買ってから毎日使っている。

※左の箸置きが10年前に買った白い鳥。使うのはお正月だけ。底面に製造元の印が彫られているけど、判読できない。右が今回買った白山陶器の「とり」。
持っている箸置きのなかで、本書に載っているものは3つくらい。赤かぶ(全く同じもの)、桜の花びら(たぶん同じ)、枝付梅(デザイン一緒で色使いが微妙に違う)。
本書には載っていないけど、「うさぎのお月見」を描いた箸置き(↓)は、色使いと柄が絵みたいに綺麗で冬に良く使っている。他には赤かぶ、(羽子板用の)羽根。春は、桜の花びら、枝付梅、小かぶ(桃色かぶと黄緑の葉っぱ)、夏には緑の葉っぱ、涼し気なガラス製の花、秋は柿・栗・どんぐり・もみじ饅頭と、季節(と気分)によって選ぶのが楽しい。
