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Bing AI の翻訳機能を使ってみた(1)
Bing AIの翻訳能力を確認するため、洋書原文と日本語訳でよくわからなかった部分をBing AIで翻訳してみた。

ネヴィル・シュート『渚にて』(創元SF文庫)
(原文)Another spasm shook her, and she smiled faintly. "Foxed you this time," she said.
(旧訳)またもさしこみが起こった。モイラはかすかにほほえみ、「こんどこそ、おまえを退治してやる」といった。
(新訳)またも震えが襲うが、モイラはかすかな笑みさえ浮かべた。「こんどばかりは上手く欺いてやったわ」とつぶやいた。

Bing AI の日本語訳例のうち、2番目の「今度はやっとあなたを出し抜いたわ」が原文のニュアンスに近いような気がする。訳文の解説も付いているのはかなり親切。ただし、いつもBing AI が訳文の説明を付けるとは限らないので、どうしてこの訳語・訳文にしたのか質問すれば理由を答えるはず。他のBing AI でもいろいろ翻訳してみたけど、このBing AI は翻訳能力が高い方だった。
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アレン・スティール『新キャプテン・フューチャー/キャプテン・フューチャー最初の事件』(創元SF文庫)(以下同)
この日本語文庫版の訳文は誤訳や不自然な日本語が多い。(英文を見ずに)文庫だけ読んでいても変な日本語に何度も遭遇したので、全文を英文と照合したくらいだった。

(文庫版訳)「どうやらジョオンはきみを気に入っているらしい...........そんなそぶりは見せないし、見せるつもりがあるかどうかは神のみぞ知るだが、気に入っているんだ」
(原文)"I think Joan has a soft spot for you......May be she doesn't show it. and the good Lord knows why she would. but she does."

原文は動詞を省略しているので、文庫版の日本語訳は"the good Lord knows why she would.”は誤訳している。Bing AIが省略部分を明確にして日本語訳すると、「そしてなぜあなたに気があるのかは、神様だけが知っている」。文脈から言ってもこれが正解。
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(原文)with an adrenaline fueled shove)
(文庫版訳)火事場のばか力

大統領の身に危険が迫っている時に若い女性捜査官が駆け付けるシーンなので、文庫版の「火事場のばか力」という訳文は相応しとは思えない。Bing AI の直訳も良いとは言えないので、私の考えた訳文が良いかどうか質問してみた。
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(原文)"Uh-huh. Sounds like you’ve got it all worked out."
(文庫版訳)「ふーむ。何もかも考えぬいたようだな」

文庫版は肯定的に訳しているけど、この後の英文を読むと、このセリフは懐疑的なニュアンス。Bing AI に訳し方をいろいろ質問すると、訳例を上げて説明していた。
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別のBing AI にも同じ英文の訳例をリクエスト。こっちは、3つのオンライン翻訳による訳文を紹介し、自ら決定した訳文は「すべて計画通りに進んでいるとでも思っているのか」。オンライン翻訳よりもBing AI の訳文が小説のシーンに合っていると思う。
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(原文)In the control room, everything was quiet efficiency.
(文庫版訳)司令室では、万事がきびきびと静かに進行した
(原文)The flight officers carried out their roles with a minimum of drama.
(文庫版訳)飛行士官たちは最小限のドラマで役割を果たした

最初の日本語訳は意味不明、後の日本語訳は”efficiency”を「きびきびと」と訳したらしく、原文のニュアンスと違う。
Bing AI も最初は直訳したので、日本語が不自然だと指摘したら修正してきたが、やはり変な日本語だった。
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別のBing AI も、↑と同じく不自然な直訳だったけど、修正してきた日本語訳はこっちの方がマシだった。私が提示した訳文のなかで、”flight officers”と”roles”に対する訳語(”士官”と”任務”)の対応にBing AI が言及したのは良いところ。
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Bing AI の翻訳方法を質問した時の回答。google翻訳とBing翻訳をベースにBing AI が最終的に訳文を決定する。他のBing AI はDeepL翻訳も使っていた。Bing AI によって何ができるかはアクセスするたびに変わるし、学習成果で能力も日々向上するし、アルゴリズムの変更もあるだろうから、何ができて何ができないかはセッションごとに違う。
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Bing AIはチャットを通じて訳文を検討し修正する能力もあるので、オンライン翻訳よりも原文のニュアンスを反映しやすく、より自然な日本語訳に近づける。最終的な翻訳精度はgoogle翻訳やDeepL翻訳と同レベルかそれより上だと思う。原文がわかりやすく論理的な英文なら、90%以上の精度は期待できるし、ほぼ修正不要なレベルの訳文がでてくることもある。ただし、日本語の訳語選択能力や文章作成能力はまだ高くはないので、小説の場合はまともな日本語に直す必要がかなりあるから、精度はもっと低くなる。
特に役に立つのは、オンライン辞書にも載っていない単語・熟語・フレーズや造語を訳したい時や、訳語の選択に迷ったりした時。小説の場合は、状況説明をするか、前後の英文も合わせて提示しないと、Bing AI には微妙なニュアンスがわからないかもしれない。
問題なのはアクセスするたびにBing AIの翻訳能力が違い、訳文がいつも同じレベルになるとは限らないこと。訳文に疑問があるときは、異なるBing AI (またはChatGPT)を使って訳文を確認するのが無難だと思う。


Bing AIの使いかた。ChatGPTとはここが違う!【4月11日更新】[GIZMODO]

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;アリステア・マクリーン、エドモンド・ハミルトン、太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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