イヌワシ・ハクトウワシ関連情報/ハクトウワシの繁殖(3)孵化しない卵

    <卵が孵化しない原因>
    HANOVER BALD EAGLE BLOG #12 THIS YEAR’S SOLO EAGLET-WHY ONLY ONE? [HANOVER EAGLES BLOG 2023]
    a)雛が卵の殻を破って出られなかった:雛が弱すぎる、孵化時に下を向いていた、大きすぎて小さな隙間から出られなかった、のいずれか。湿度が高いと卵内の水分が失われる速度が速くなり、小さくて弱い個体が生まれる。
    b)不完全受精:交尾のタイミングが悪い、精子の数が少ない、精子の質が悪い。そのため、雌の卵子がオスの精子と適切なタイミングで受精しなかった。
    c)胚の死滅:原因は卵の内部と外部のガス交換と水分交換が不十分、母体の栄養不足、卵の回転が不十分、抱卵不足で胚の成長率が低い、など。

    Is the last egg going to hatch?[Raptor Resource Project Blog]
    "non-viable egg"(生育不能卵):胚がうまく発育せず死滅した卵。抱卵開始後最初の3日間または孵化直前の3日間に最も起こりやすい。
    胚死滅の原因:
    a)抱卵が不十分。卵は適切な温度と湿度に保たれ、定期的に向きを変えなければならない。胚の発育が始まると99~104℉に維持しなければならない。
    b)殻の破損。胚が完全に発育する前に卵の殻に穴が開いたり割れたりすると胚が死滅。
    c)栄養不足。産卵前の雌が栄養不足に陥ると、卵は発育中の胚に必要な栄養を与えられない。
    d)細菌や化学物質による汚染。胚の成長を妨げたり、死滅させる。

    WHEN BALD EAGLE EGGS DON’T HATCH[elfruler]
    a)卵の回転(胚の正常な発達に必要)が不十分。抱卵期間の前半は、20分から1時間おきに卵を回すのが一般的。最も重要な時期は、期間の最初の3分の1、抱卵後1~12日目。
    b)産卵前の成鳥の餌量の不足。
    c)低体温症または高体温症。正常な胚の成長と発達に最適な内部温度は、約32°~38°C(89.6°F~100.4°F)。(親が交代で抱卵し、卵が曝露される時間を制御)
    d)新しくつがいとなった繁殖ペアは、両者のホルモン分泌が同期していない可能性がある。

    ※壊れたり孵化しなかった卵は、親ワシが巣に埋める、ネストボールの外に出す、放置するなどしてそのうち巣材の一つとなる。

    一般的に卵が孵化しない理由についてAEFのスピーカーが解説。
    Raptor Radio Episode 2 "Let's Explore Bald Eagle Nesting Behaviors"



    <孵化成功率が低い巣の事例>
    (1)Sauces Canyon nest
    カリフォルニアのSanta Cruz Islandに立地。

    1)A-28(M)&A-27(Meemaw)
    2010年:3/11産卵、4/18孵化、足環6/15

    2)A-40 (Jak) &A-27(Meemaw)
    2011年:3/3・3/15産卵、4/9孵化(1羽)、6/2足環、6/28巣立ち
    2012年:3/2・3/6産卵、4/8・4/10孵化、6/8足環、6/21・7/2巣立ち
    2013年:2/24・2/27産卵、3/4Meemaw侵入者とバトル後行方不明、3/7Jak不在時にカラスが卵を奪う、3/15新しい雌A-48 (Audacity)をテリトリー内で確認

    3)A-40 (Jak、2005生) &A-48 (Audacity、2006生)
    2014年:2/15産卵(2/22破卵)、3/16第2クラッチ産卵(踏まれて破卵)
    2015年:2/7産卵、3/15繁殖失敗確認
    2016年:2/1産卵(破卵2/4)、2/4・2/7産卵、3/12・3/14孵化、4/30足環、5/30巣立ち(2羽)
    2017年:産卵1/31, 2/3, 2/6, 2/9, 2/12, 3/3, 3/9, 3/12(全て破卵)
    2018年:2/2・ 2/5・2/8産卵、孵化3/13・ 3/14・3/16、足環5/1、5/30・5/31・6/9巣立ち
    2019年:2/5・2/8産卵(2個破卵)、3/19産卵、3/19孵化、4/29足環、6/9巣立ち
    2020年:産卵2/21, 2/29, 3/4, 3/7 (全て破卵)
    2021年:2/1産卵、2/10webcam復帰(卵3個あり)、2/12破卵2個、3/15孵化、5/4足環、6/4巣立ち
    2022年:2/17抱卵確認、孵化せず。
    2023年:産卵2/3, 2/6, 2/9, 2/12, 2/15, 2/23, 2/27, 3/2(8個目は未孵化、それ以外は全て破卵)
    2024年:(第1クラッチ)2/2産卵、2/6webcam復帰(卵1個あり)、孵化予定日(3/10-3/22)、3/16破卵; (第2クラッチ)4/11産卵(1個)、4/12破卵

    4)考察
    ・雄ワシA-28(M)またはA-40 (Jak)と雌ワシA-27(Meemaw)が繁殖ペアの時は繁殖成功。
    ・雌ワシA-27(Audacity)に代わってから、多産・破卵が頻繁に起こり、特に8個産卵するとほぼ全ての卵が産卵まもなく(数時間か1日後くらい)割れる。
    ・2014年~2024年累計では、産卵個数は少なくとも37個(Webcamがオフライン時に産卵している可能性あり)、うち孵化・巣立ち数は4シーズン7羽。繁殖成功率は40%。産卵数が3個以下だと破卵する確率が低く、1羽~3羽が巣立ちする確率が高くなり、産卵数4個以上だとほとんどが破卵する傾向。(産卵数が多いほど卵の殻が薄くなる?)
    ・他の雌ワシの場合や、チャネル諸島内のカタリナ島にあるTwo HarborsとWest End、Sauces Canyon nestと同じ島内になるFraser Point Nest でも、8個の多産と頻繁な破卵は起こっていないので、環境要因(残留農薬・鉛汚染など)よりも、Meemaw固有の問題の可能性が高い。
    ・Audacityは産卵時に8~18歳。8歳から破卵と多産を繰り返しているので年齢が原因ではない。それに8個の多産はかなり稀なので(飼育下では7個産卵例があるらしい)、元々繁殖機能に何らかの異常があるのではないだろうか?Dr. Sharpe(Institute for Wildlife Studies)はホルモンや代謝の異常が原因ではないかと言っていたとのこと。

    Sauces Bald Eagles | A Story of Persistence

    動画のキャプションで、”なぜ卵が割れやすいのか研究者も理由がわからない、しかし、年齢が要因の一つの可能性はある”と書かれている。しかし、Audacityは8歳で産卵して以降ずっと破卵が続いているので、年齢が要因とは考えられない。


    (2)Big Bear nest
    Big Bear Valleyはもともとハクトウワシの繁殖地ではなく、繁殖地の湖が凍結する冬にBig Bear Valleyに飛来して餌を探していた。2009年頃にカタリナ諸島の足環を付けた幼鳥が夏を過ごし、その後ワシのペアが湖の北側に営巣。初めて雛が孵化したのは2012年。
    Jeffrey Pine(高さ155ft)にある巣の高さは約145ft(44m)。Big Bear Valleyは標高2067 mの高地にあり、米国で最も高い標高のハクトウワシの巣の1つ。時速40マイル超(64km、秒速約18m)の持続的な風や、時速80マイル超(128km、秒速約36m)の突風が巣に吹くこともある。

    1)Mr & Mrs BB
    2018年:1/3・1/6産卵、2/11:2/12孵化(Stormy、Baby Big Bear/BBB)、3/23BBB死亡(暴風雨とその後の氷点下の低温、生後6週間半で防水羽毛も不完全)、4/26Stormy巣立ち

    2)Shadow & Mrs BB (Jackie、2013生?)
    2019年:3/6・3/9産卵、4/14・4/15孵化(Simba, Cookie)、5/27Cookie死亡(生後6週間、雨・吹雪・氷点下の低温のため)、7/23Simba巣立ち、8/18独立。
    2020年:1/8・1/11産卵、孵化失敗(抱卵日数60日以上)
    2021年:(第1クラッチ)1/6産卵(1/7カラスが壊す)、1/9産卵(1/14カラスが食べる)、1/13産卵中に破卵。(第2クラッチ)2/8・2/11産卵、3/18第1卵孵化開始後孵化せず、第2卵孵化不能(抱卵日数51日)、4/17カラスが卵を割る(雛は成長不全)
    2022年:1/22・1/25産卵、3/3第2卵孵化(Spirit)、5/31巣立ち、6/24独立
    2023年:1/11・1/14産卵、孵化不能(抱卵日数50日前後)、3/7カラスが卵を壊す(未授精または早期に発育停止)
    2024年:1/25・1/28・1/31産卵、2024/3/12時点で全卵孵化不能。

    Big Bearの2019年~2024年の7シーズン中、繁殖に成功(少なくとも1羽が巣立ち)したのは2019年と2022年の2シーズンなので、Jackie&Shadowペアの繁殖成功率は28.6%。

    FOBBV🦅Firmness Of Purpose💔Shadow & His Sticks🥢Jackie Chimes In From Lookout Snag💔2024-03-12


    孵化日数が70日~76日になった孵化不能卵。卵を放置する時間がかなり増え、Jackieは抱卵しなくなったが、Shadowは抱卵を続けている。Jackieは巣に枝を頻繁に巣に運び、Shadowは巣で抱卵する時間が長い。一般的に、孵化可能期間をを過ぎても、雌よりも雄の方が長く抱卵し続ける。
    FOBBV Eagles 🦅 Jackie urges Shadow to leave eggs overnight 🌙 He's just not ready ☯️ 2024 Apr 10



    Big Bear Eagle Nest Cam運営者の非営利団体”Friends of Big Bear Valley”のFacebook投稿(2024/3/12)
    「なぜ卵が孵化しないのか、私たちには知る術がありません。温度、湿度、高地での酸素レベルなど、環境的なものである可能性があります。卵が作られた時に何かがずれていただけの生物学的なものかもしれません。Jackieと Shadowは2019年と2022年に雛が生まれていたので、どちらかが不妊である可能性は非常に低いです。」

    ​​Dr. Sharpe(Institute for Wildlife Studies)によれば、標高と天候が原因の可能性もあるとのこと。


    <考察>
    ・Big Bearの巣は標高が高く、抱卵中に巣が雪で埋もれたり、気温が氷点下と低かったりすることがあるので、気候条件が繁殖成功率の低さに影響している可能性はある。
    ・研究データによれば、アラスカの繁殖成功率は、本土の温暖な地域(フロリダ州、ジョージア州、バージニア州など)よりも低い傾向(平均50%~60%程度)がある。ただし、アラスカの繁殖成功率の調査データは2000年以前の古いものが多いので、最近の傾向はわからない。
    ・アラスカの繁殖状況の研究の一つでは、繁殖成功したケースでは気温と相関はなく、繁殖失敗したケースの大半は抱卵中に起こり気温と相関がある。したがって、繁殖失敗の主要因は産卵前または抱卵中の餌が不足していたのではないかという仮説を立てていた。

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