*All archives*



戦国時代の歴史小説
戦国時代の歴史小説で何度も読んだのは、山岡壮八の「徳川家康」と海音寺潮五郎の「天と地と」。
2つに共通しているのは、人物造詣の面白さだと思う。

山岡壮八の「徳川家康」は、苦労の多かった幼少期から、徳川幕府の大御所となってこの世を去るまでの一生を26巻かけて描いている。
「君は一代、家は末代」というお家の存続を至上命題とする時代と、それを愚直に守る家臣たち。
日本の組織中心社会のメンタリティの源流はここにあるのかもしれない。
しかし、下克上の時代だったので、寝返りも多いし、お家のために暴君を殺した家臣だってあるので、上に反抗できずに唯々諾々と従う日本の企業社会とは違うかな。
実質的には徳川政権以降の封建時代が日本の企業社会の原型なのかも。

山岡壮八が描く徳川家康は善人です。
司馬遼太郎の「覇王の家」や「城塞」の家康のような権謀術数に長けた陰険さは全くありません。
物語を楽しむなら山岡壮八、歴史を知りたいなら司馬遼太郎、というところだろうか。
ただ、山岡壮八の物語は壮大。
登場人物が膨大にいる上、全体的に冗長な描写が多いので、慣れるまでは読むのが大変。
それに慣れてしまえば、家康をめぐる家臣たちの物語が抜群に面白い。
好きな家臣を見つけて、そのサイドストーリーも楽しめます。
これは3回は全巻読んだが、中学生時代の読書パワーは我ながらすごかった。

徳川家康〈1 出生乱離の巻〉 徳川家康〈1 出生乱離の巻〉
山岡 荘八 (1987/10)
講談社

この商品の詳細を見る


海音寺潮五郎の「天と地と」は、天才的戦国武将で生涯独身を通した上杉謙信の幼少期から、川中島決戦の頃までを描いている。
謙信も幼少期に男親に嫌われて苦労はしているが、それを自覚しているさばさばした性格。
この小説は、山岡壮八のような日本的情緒感漂う人間模様はありません。
情緒性があるとしたら、謙信を慕う家臣たちの心情にあるのだろうが、それを描く海音寺潮五郎の筆致はかなりのドライさがある。
謙信が徐々に勢力を拡大していく様は痛快だが、それ以上に謙信を支える家臣たちが面白い。
後見役の宇佐美定行はインテリゆえに、幼少期から謙信の非凡さを見抜いて、わが子のように可愛がる。
良き教師と弟子という関係だが、随所に謙信の軍事的天才とそれを発見して喜ぶ定行の姿を読むのは、楽しい。
定行の娘・乃美と謙信の間にはロマンスが発展しそうで、そうにはならないじれったさがある。
やはり生涯不犯の人・謙信には、ロマンスは似合わないんだろう。

面白いのは、「鬼」小島弥太郎や乳母の怪力・松江など、謙信を幼少期から守る家臣たち。
戦国時代は結構人間が単純にできているらしく、謙信への愚直な忠誠心といい、我が子のように可愛がって守ってきた愛情といい、微笑ましいというべきか。

謙信自身は生涯結婚しなかったが、なぜか謙信の境遇は女難によって引き起こされているようだ。
「上謙夢想―上杉謙信と女性達」では、「天と地と」に登場する女性たちを紹介している。
これを読めば、もしかして、謙信は女性不信(?)で独身と通したのかも、なんて思ってしまう。

「天と地と」の新潮文庫版はかなり分厚い1巻本で、通好みの渋さがある筆致。
でも、謙信と家臣、敵対する無能な義理の兄、没落する公家など、戦国時代のいろんな話が凝縮されているので、その厚さを感じさせないくらい、面白い。
信玄が権謀術数の人なら、謙信は大義を重んじる人、というところだろうか。
ストイックな謙信像に魅かれてしまった小説だった。

天と地と 上 天と地と 上
海音寺潮五郎 (2004/03/12)
文藝春秋

この商品の詳細を見る

※今は新潮文庫版は絶版。文春文庫より3巻本で復刊されている。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。