ベトナムに関する書籍(1) ベトナム戦争史
2007-03-15(Thu)
ベトナムの歴史に関する本は、学術論文は別として、日本語ではあまり多くはないと思う。
初めて読んだベトナムに関する本は、やはりベトナム戦争に関するもの。
若い人はベトナム旅行とか雑貨に関する本を読むことから入るのかもしれないが、歴史が好きならどうしてもベトナム戦争の本にあたってしまう。
今の大半のベトナム人にとっては、ベトナム戦争などすでに過去のものらしい。
もう30年以上も前の戦争だから、思い出す必要もないだろうが、中年以降の日本人はベトナム=ベトナム戦争という連想をしてしまいがち。
反対に、若い日本人なら、ベトナム=雑貨とベトナム料理という連想になっていたりする。
両極端というしかないが、日本語で入手できるベトナム情報が限られているし、中国と違って文学や語学の研究者もほとんどいない。
ベトナム研究の裾野はとても狭い。
ディヴィッド・ハルバースタム「ベスト・アンド・ブライテスト」
これが初めてベトナムに関して読んだ本。
最初にしては、とても歯ごたえがあったが、歴史が好きなので、こんなに面白いと思った本は久しぶりだった。
冒頭はケネディ大統領について結構なページ数を割いていて、やや冗長な感じ。
しかし、徐々にベトナム戦争に深入りしていくプロセス、的確な状況分析をしてベトナム戦争へ深入りしていく危険さを指摘する外交官、ベトナムの共産化が周囲に波及することを恐れるドミノ理論者の軍人や政治家が登場する。
あまりに登場人物が多くて、誰か誰か混乱していったが、当時のベトナム戦争を遂行していった政治家・軍人・官僚の行動や考え方などが、克明に描かれていてノンフィクションとして第一級の面白さというのは、こういう本のことを言うのだろうと思う。
一気に3巻本を読んだが、二度読むのはさすがに疲れるので、他のベトナム史関連本を探し始めた。
でも、ある程度ベトナムの歴史の知識が蓄積されてきたので、もう一度この本を読むともっと深い読み方ができるかもしれない。
ホー・チ・ミン伝 (上・下)(チャールズ・フェン / 岩波書店 (1974)
すでに絶版になっている。webの古本を探して見つけた。
ホーチミンの伝記としては、古典的名著らしい。
たしかに新書版の体裁はとっているが、内容が濃く、彼の前半生についての謎を解き明かしていくような面白さがある。
ホーチミンの青年時代からベトナム戦争時代の足跡をずっと辿っていたものだが、多くの偽名を使って香港やパリで反政府活動をしていた。
ホーチミン=ベトナム戦争の指導者というイメージが強いが、それ以前の青年期からの独立運動についても追っている貴重な資料。
彼はフランスでコミンテルンにも関わっていたが、彼は生粋の民族主義者であって、共産主義は祖国を独立させるための方便として使っていただけで、マルキシズム信奉者であった欧州のコミュニストとは同じではないと思う。
開高健「ベトナム戦記」
アメリカ軍の従軍記者としての戦場の記録。
ベトコンの不気味さや強さ、南ベトナム軍の頼りなさが書かれてあって、これでは南ベトナム軍が負けるのも無理なかろうかというところ。
巷にある日本人の従軍戦記は当然ながら南ベトナム軍・アメリカ人に従軍した記者やカメラマンのもの。
北ベトナム軍に従軍した記録はほとんどみかけない。探せばあるような気がする。
小倉 貞男「ドキュメントヴェトナム戦争全史」
これ一冊でベトナム戦争史のことは知ることができるコンパクトにまとまった歴史書。
たぶんこの本に書いていた話だと思うが、太平洋戦争終戦時にベトナムに進駐していた日本陸軍の軍人が、そのまま残留して、インドシナ独立戦争でベトナム側に味方して、フランス軍と戦ったという。
農民をにわか仕立てで兵士にしたベトナム軍を相手に、彼らが日本陸軍でたたきこまれた戦闘方式を教えたそう。
アジアで悪評高かった日本兵士が、罪滅ぼしのためか何のためかはわからないが、ベトナム人の独立戦争のために協力したというのは、なぜかほっとする話。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の「ベトナム」には、こう解説されている。
「戦後、フランスが再び進駐してくると、フランス植民地軍(モロッコ人など)、フランス現地人軍(ベト人、ヌン人など)からなる仏軍とベトミン支持者からなる越軍の間で戦争(第一次インドシナ戦争)が始まったが、仏越両軍に日本軍兵士が多数参加した。当時、ベトナムには766人の日本兵がとどまっており、1954年のジュネーブ協定成立までに47人が戦病死した。なかには、陸軍士官学校を創設して、約200人のベトミン士官を養成した者もおり、1986年には8人の元日本兵がベトナム政府から表彰を受けた。なお、ジュネーブ協定によって150人が日本へ帰国したが、その他はベトナムに留まり続けた模様である。」
この日本軍兵士のベトナム独立戦争参加について詳しい文献は、元朝日新聞プノンペン特派員の井川一久さん(今は大坂経済法科大学客員教授らしい)の報告書がある。日本財団から発行されている。
「日越関係発展の方途を探る研究ヴェトナム独立戦争参加日本人―その実態と日越両国にとっての歴史的意味― 」
「ベトナム独立戦争参加日本人の事跡に基づく日越のあり方に関する研究」
日本財団の報告書タイトルを見てみると、面白そうなタイトルが並んでいるが、どういう選考基準なんだろう。
「ベトナム戦争と文学―翻弄される小国」や「無視できない変貌するインドの実態に関する研究」「現代インドの実体研究」を早速ダウンロードした。
マクナマラ「マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓」
ケネディ、ジョンソン時代の国防長官とだったマクナマラが、戦争指揮者としてベトナム戦争に関する判断の誤りを認めているということで、とても話題になった回顧録。
これは買ったまま積読状態。早く読まなければ。
マクナマラ「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」
回顧録のDVD版と言えるインタビュー。
こういう地味なドキュメンタリーとしてDVDになるのは、マクナマラの知名度は当然のこととして、その語る内容の重さ所以。
米国の国防長官の中でも、ベトナム戦争とイラク戦争に直面した国防長官ほど難しい判断に迫られた人はいないような気がする。
初めて読んだベトナムに関する本は、やはりベトナム戦争に関するもの。
若い人はベトナム旅行とか雑貨に関する本を読むことから入るのかもしれないが、歴史が好きならどうしてもベトナム戦争の本にあたってしまう。
今の大半のベトナム人にとっては、ベトナム戦争などすでに過去のものらしい。
もう30年以上も前の戦争だから、思い出す必要もないだろうが、中年以降の日本人はベトナム=ベトナム戦争という連想をしてしまいがち。
反対に、若い日本人なら、ベトナム=雑貨とベトナム料理という連想になっていたりする。
両極端というしかないが、日本語で入手できるベトナム情報が限られているし、中国と違って文学や語学の研究者もほとんどいない。
ベトナム研究の裾野はとても狭い。
ディヴィッド・ハルバースタム「ベスト・アンド・ブライテスト」
これが初めてベトナムに関して読んだ本。
最初にしては、とても歯ごたえがあったが、歴史が好きなので、こんなに面白いと思った本は久しぶりだった。
冒頭はケネディ大統領について結構なページ数を割いていて、やや冗長な感じ。
しかし、徐々にベトナム戦争に深入りしていくプロセス、的確な状況分析をしてベトナム戦争へ深入りしていく危険さを指摘する外交官、ベトナムの共産化が周囲に波及することを恐れるドミノ理論者の軍人や政治家が登場する。
あまりに登場人物が多くて、誰か誰か混乱していったが、当時のベトナム戦争を遂行していった政治家・軍人・官僚の行動や考え方などが、克明に描かれていてノンフィクションとして第一級の面白さというのは、こういう本のことを言うのだろうと思う。
一気に3巻本を読んだが、二度読むのはさすがに疲れるので、他のベトナム史関連本を探し始めた。
でも、ある程度ベトナムの歴史の知識が蓄積されてきたので、もう一度この本を読むともっと深い読み方ができるかもしれない。
ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて デイヴィッド ハルバースタム (1999/06) 朝日新聞社 この商品の詳細を見る |
ベスト&ブライテスト〈中〉ベトナムに沈む星条旗 デイヴィッド ハルバースタム (1999/06) 朝日新聞社 この商品の詳細を見る |
ベスト&ブライテスト〈下〉アメリカが目覚めた日 デイヴィッド ハルバースタム (1999/06) 朝日新聞社 この商品の詳細を見る |
ホー・チ・ミン伝 (上・下)(チャールズ・フェン / 岩波書店 (1974)
すでに絶版になっている。webの古本を探して見つけた。
ホーチミンの伝記としては、古典的名著らしい。
たしかに新書版の体裁はとっているが、内容が濃く、彼の前半生についての謎を解き明かしていくような面白さがある。
ホーチミンの青年時代からベトナム戦争時代の足跡をずっと辿っていたものだが、多くの偽名を使って香港やパリで反政府活動をしていた。
ホーチミン=ベトナム戦争の指導者というイメージが強いが、それ以前の青年期からの独立運動についても追っている貴重な資料。
彼はフランスでコミンテルンにも関わっていたが、彼は生粋の民族主義者であって、共産主義は祖国を独立させるための方便として使っていただけで、マルキシズム信奉者であった欧州のコミュニストとは同じではないと思う。
開高健「ベトナム戦記」
アメリカ軍の従軍記者としての戦場の記録。
ベトコンの不気味さや強さ、南ベトナム軍の頼りなさが書かれてあって、これでは南ベトナム軍が負けるのも無理なかろうかというところ。
巷にある日本人の従軍戦記は当然ながら南ベトナム軍・アメリカ人に従軍した記者やカメラマンのもの。
北ベトナム軍に従軍した記録はほとんどみかけない。探せばあるような気がする。
ベトナム戦記 開高 健 (1990/10) 朝日新聞社 この商品の詳細を見る |
小倉 貞男「ドキュメントヴェトナム戦争全史」
これ一冊でベトナム戦争史のことは知ることができるコンパクトにまとまった歴史書。
たぶんこの本に書いていた話だと思うが、太平洋戦争終戦時にベトナムに進駐していた日本陸軍の軍人が、そのまま残留して、インドシナ独立戦争でベトナム側に味方して、フランス軍と戦ったという。
農民をにわか仕立てで兵士にしたベトナム軍を相手に、彼らが日本陸軍でたたきこまれた戦闘方式を教えたそう。
アジアで悪評高かった日本兵士が、罪滅ぼしのためか何のためかはわからないが、ベトナム人の独立戦争のために協力したというのは、なぜかほっとする話。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の「ベトナム」には、こう解説されている。
「戦後、フランスが再び進駐してくると、フランス植民地軍(モロッコ人など)、フランス現地人軍(ベト人、ヌン人など)からなる仏軍とベトミン支持者からなる越軍の間で戦争(第一次インドシナ戦争)が始まったが、仏越両軍に日本軍兵士が多数参加した。当時、ベトナムには766人の日本兵がとどまっており、1954年のジュネーブ協定成立までに47人が戦病死した。なかには、陸軍士官学校を創設して、約200人のベトミン士官を養成した者もおり、1986年には8人の元日本兵がベトナム政府から表彰を受けた。なお、ジュネーブ協定によって150人が日本へ帰国したが、その他はベトナムに留まり続けた模様である。」
この日本軍兵士のベトナム独立戦争参加について詳しい文献は、元朝日新聞プノンペン特派員の井川一久さん(今は大坂経済法科大学客員教授らしい)の報告書がある。日本財団から発行されている。
「日越関係発展の方途を探る研究ヴェトナム独立戦争参加日本人―その実態と日越両国にとっての歴史的意味― 」
「ベトナム独立戦争参加日本人の事跡に基づく日越のあり方に関する研究」
日本財団の報告書タイトルを見てみると、面白そうなタイトルが並んでいるが、どういう選考基準なんだろう。
「ベトナム戦争と文学―翻弄される小国」や「無視できない変貌するインドの実態に関する研究」「現代インドの実体研究」を早速ダウンロードした。
ドキュメントヴェトナム戦争全史 小倉 貞男 (2005/04) 岩波書店 この商品の詳細を見る |
マクナマラ「マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓」
ケネディ、ジョンソン時代の国防長官とだったマクナマラが、戦争指揮者としてベトナム戦争に関する判断の誤りを認めているということで、とても話題になった回顧録。
これは買ったまま積読状態。早く読まなければ。
マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓 ロバート・マクナマラ (1997/05) 株式会社共同通信社 この商品の詳細を見る |
マクナマラ「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」
回顧録のDVD版と言えるインタビュー。
こういう地味なドキュメンタリーとしてDVDになるのは、マクナマラの知名度は当然のこととして、その語る内容の重さ所以。
米国の国防長官の中でも、ベトナム戦争とイラク戦争に直面した国防長官ほど難しい判断に迫られた人はいないような気がする。
フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白 ドキュメンタリー映画 (2005/02/23) ソニー・ピクチャーズエンタテインメント この商品の詳細を見る |