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「我が国における国際協力NGO等によるファンド・レイジング方法に係る調査報告書」を読んで
NGOのファンドレイジングに関する方法論を探しているが、日本国内で内容がしっかりしている文献は限られている。
米国ではファンドレイジングの専門書はいくつもある。
但し、欧米のNGOは基本的にDM主体で資金調達をしている。
問題はDM作成発送にはかなりのコストがかかること。
さらに、日本のように個人情報に敏感な社会では、DM先の名簿入手が難しいこと。
現段階の日本のNGOの資金調達方法としては、あまり参考にならない。
日本国内でDM費用にかなりの資金を投入できる団体はいくつかあるが、それなりの知名度と信用度の高さというバックボーンを持っている。
DMによる資金調達は、知名度のない小規模な国際NGOが行うと、費用対効果が著しく悪くなる。真似るべき方法ではない。

財団法人国際開発センターの「我が国における国際協力NGO等によるファンド・レイジング方法に係る調査」という報告書を見つけたので、ざっと読んでみた。

なぜか巻頭に、「なお、本報告書は当センターの責任において取りまとめたものであり、日本政府あるいは外務省の考え方を述べたものではないことを付記する。」とわざわざ書いている。
省庁が外郭法人の名前で報告書を出させることは多い。そうでなくても、外務省の意向と正反対のことを書くとは思えないが。

内容的には大したことはない。
日本財団の「日本のNPO/NGOにおけるファンドレイズ機能とその発展ストラテジー」の方が分析力がはるかに高い。
この日本財団の調査を一部使っているが、残りは国際協力NGOへヒアリングした内容にプラス説教めいた意見を書いただけ。

ヒアリング内容については、自分でホームページから国際協力NGOをベンチマーキングしている人なら、知っていることも多いし、推察できるもの。
ただ、全ての国際協力NGOが他団体の動向まで詳しく把握しているとはいえないだろうし、スタッフも他団体との競争意識が強い人ばかりがいるとは思えない。
そういう点では、自分で労せずして、他団体の動向がわかるレポートとは言える。
でも、この程度のことはホームページを見ていればわかるので、NGO自身でちゃんとベンチマークすべきもの。

報告書では、提言めいたものを付け加えているが、いつも言われている課題をまた書いているだけに過ぎないし、視点の新規性もない。
そもそも内容のある提言ほど書くのに難しいことはないので、そういう部分は全く期待していない。
しかし、同業者ながら、分析力・調査内容のクオリティの低さに愕然としてしまった。

この報告書で気になった点は以下の通り。

1.現在の資金難はNGOの資金調達の自助努力が足らないせい。
そもそもこの報告書は、NGOの自立がテーマだが、補助金減らしのための自助努力をさせることが目的かのように思える。
NGOの補助金依存体質を改善すべきなのは当然。
しかし、まず、NGOの日本社会での現状の位置づけと日本人の国際協力に対する意識分析など、社会的背景の分析が甘い。
単にNGOの資金調達活動努力が足らない、やればできる、かのような論調が強い。
これは、卵が先か、にわとりが先か、というようなもの。
NGOが資金と人が豊富なら調達活動もいろいろできるが、資金と人が欠乏しているのでファンドレイジングに手が回らないという悪循環。

本来、NGOの自立(=補助金依存比率の引下げ)を目指すなら
◇まずファンドレイジング活動に対する国の補助事業を起こして、そこに資金を集中投下する。
特に、民間の広報・PR・マーケティングのプロをレンタルできる資金を補助するのが効果的だと思う。
所詮、NGOは資金調達では素人の集まりに過ぎず、プロを雇用するだけの資金的余力と労働条件を提供できる状況ではない。
彼らなりには、工夫してイベントや募金方法を考え出してはいる。
しかし、さらに効果的なファンドレイジングの効果的な戦略と手法を考え出すのは難しいだろう。

◇国とNGOの共同キャンペーンを張る。特に、マスメディアを通じたイメージ戦略を練り上げ、実行する。
オールドメディアとはいえ、新聞とマスメディアの威力は相変わらず絶大なものがある。
広告塔を仕立ててイメージづくりをする、広告塔でなくてもNGOスタッフの活動の姿をブラウン管や紙面を通して伝えるなど、知名度とイメージを上げる方法はいくらでもあると思う。
日本人は知らない組織にはうさんくささを感じるが、テレビや新聞で見る頻度が高くなると、知名度が上がると同時になぜか信頼感ができてくるようだ。
ただ、継続性が大事。一回限りの打ち上げ花火だと、すぐに忘れ去られてしまう。
鈴木宗男のNGO事件の時、一躍マスコミにひっぱりだこになったピース・ウインズ・ジャパンの名をまだ覚えている人が、どれだけいるだろうか。
ホワイトバンドブームのように、日本人は熱しやすく冷めやすい。

NGOの自己資金調達能力を強くしたければ、初めはかなりの公的資金を投入して本気で取り組まないと、単に”ジャパンプラットフォーム”という寄付金受け皿団体を作った程度では、個人レベルでの民間寄付が集まる仕組みや土壌の醸成にはつながらない。
この報告書では、国の具体的なファンドレイジング支援策には触れず、NGOの自前の努力を強調するのみ。

2.ユニセフ協会はNGO?
事例としてユニセフ協会を取り上げて、「この日本ユニセフ協会の事例は、日本のNGOでも外的制約を克服して、大規模な資金調達が可能であることを示している。」と賞賛している。
しかし、そもそもユニセフ協会は国際協力NGOとは言えないと思う。
ユニセフ協会は財団法人なので確かに非政府組織ではあるが、ユニセフ協会はユニセフ(国連児童基金)の名前を使った集金組織でしかない。
彼らは現地での支援活動など一切していない。
集めた寄付金の85%をユニセフ本部に送金するだけの組織。
しかし、寄付する人は、国連児童基金とユニセフ協会の関係がわからないので、ユニセフの日本組織の一部としか思えない。
ユニセフ協会から送るDMにはユニセフの名前・写真を大々的に利用しているので、寄付者個々人にとっては国連組織であるユニセフに寄付しているのと同じこと。
国連が大好きな日本人にとって、ユニセフの威光の強さは甚大。
国際NGOとユニセフ協会を同列に論じてはいけない。
取り上げるなら、その違いを把握した上で、日本のNGOのファンドレイジングにとって、何が有効なのかを明確に分析すること。

3.NGOは技術ベンチャー?
いろいろ問題点が多い報告書だが、なによりも一番笑えたのは以下のフレーズ。

「この企業や企業財団のCSR活動との連携は、NGOにとって法人から個人寄付者へと更に拡大するネットワークの可能性もある。資金が集めにくければ、眠っている特許や物品寄付の譲り受けを事業化し、そこから収入を得ることも可能であろう。」

「眠っている特許や物品寄付の譲り受けを事業化」??
まず、物品寄付は、多分、製品を安く仕入れて、利益を載せて転売することを言っているのだろう。
企業の製品を転売するのは、同じ商品がいくらでもディスカウントで買えるご時世なので、あまり賢いやり方とは思えない。
よほどの人気商品を大量に寄付してもらって、市場価格より安く売れば利益はでるが、NGOは小売業ではないのだから、同じものを売るなら、フェアトレード商品を仕入れて売ったほうがいいのでは?と個人的には思う。
それとも、企業の人気商品にNGOへの寄付金付き商品を出してもらって、消費者に買ってもらう方法だっていい。寄付金つきのお年玉年賀の方式。
知名度向上+資金調達+寄付行動の実践という点で効果があると思うが。

「眠っている特許を譲り受けて事業化」は、初めは冗談かと思った。
誰かに入れ知恵されたんだろう。思いつきレベルのアイデアだし、休眠特許や事業化とは何かもわかっていない素人が書いた文章。
休眠特許は、そもそも企業側でライセンスすることができない特許(つまり利用価値のない特許)が大半。
この休眠特許を他社にライセンスして事業化させるために、経済産業省がずっと昔に専門組織を作っている。企業側もいろいろとライセンシング活動を行っている。
しかし、はかばかしい成果を上げてはいない。
その休眠特許を、技術ベンチャーでもなく、技術力のない国際協力NGOが、事業化できるわけがないだろう。
事業化までの必要資金と時間は膨大なもの。
そんな余裕があったら、NGOの本来の事業活動やファンドレイジングに使えば良い。
それに事業化しても利益が上がるかどうかは別問題。
一体、この文章を書いた人間は何を考えているんだろうか。

あまり他人のレポートを批評する主義ではないが、”NGOの自立”というコンセプトで作ったわりには底の浅い分析、思いつきにしか過ぎないバカバカしいアイディア、そして、報告書のクオリティの低さには、かなり感動してしまった。
巷にある文献を寄せ集め、ちょっとインタビュを載せれば、それなりに報告書の体裁が整うもの。
国際協力NGOの現場を知らない人間が書いたんじゃないかと思えてくる。

外務省のサイトには、国際協力NGO関係の調査レポートが他にも出ている。
その中で、「主要援助国および主要国際援助機関におけるNGO支援策の比較調査」は、国別の支援制度の比較調査なので参考になる。
そもそも、単なる調査だけなら事実を正確に調べて記載すれば良いわけで、海外調査に慣れているまともな調査機関なら調査に失敗する確率は極めて低い。

tag : NGO

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アップルの赤いiPodnano
iPodnanoの赤色は、寄付金付きになってます。
アメリカのパソコン系ポッドキャストで、赤いiPodのプレステージは凄い、というようなことを雑談していて、意味がわからなくて引っかかっていたのですが、ちょっとだけ納得できました。ありがとうございます。
iPod nano RED Special Edition
というバージョンが、寄付金付きですね。このことは私は知らなかったので、教えてくれてありがとう。
寄付金付きの製品にどんなものがあるか、調べてみたいので、まとまったら記事にしようと思います。
second life での募金活動
Second Lifeのニュースを探していたら、
英国のRed Nose Day とかいうのに
セカンドライフで約1ポンドのTシャツを
買って、現実世界で寄付しよう、という
記事をみつけました。
http://gamesnews.virgin.net/Virgin/Lifestyle/Games/virginGamesNewsDetail/0,13470,1985039_playbetandwin,00.html

ちなみに、
セカンドライフでTシャツを作って売るために
必要なお金は、わたしなら自分で作れるので
現実世界でのパソコンの電気料とか労賃を
いれなければ、ファイルを転送する料金の
3円ぐらいで作れます。
ただし、もちろんというか、買ってもらうための
しかけづくりは難しいです。
さすが寄付先進国の英国ですね!
バーチャルな世界で仮想のお金とTシャツを活用して、現実世界に寄付できるなんて、全然思いつかなかったです。
調べてみると、Comic Releifへの今年のRed Nose Day 寄付は現時点で4000万ポンド(らしい)。日本のNGO・NPOで、それだけの寄付を集められる団体はどこにもないはずです。(日本赤十字やユニセフ協会はもちろん除いて)
全国規模で大々的にやっている赤い羽根共同募金でさえ年間160億円前後です。日本とイギリスの人口差を考えると、Comic Releif1団体への寄付額はとても多いように思えてきます。

リアルの世界でTシャツを作って売るよりも、コストや設備が少なくて済むように見えますが、買ってもらうのは、リアル同様、バーチャルの世界でも大変そう。Tシャツを売る人は、自分のShopで売るんでしょうか?それとも人気shop(というのがあれば)に卸すとか?
3月16日なのでもう終わったので…
イベントが終わったので、わかりませんでした。なさけない。今、わたしにわかるのは、red nose day for comic relife というグループが作られていることです。

なんせバーチャルな世界なので、賛同したお店の店先に、Tシャツを1つ置いとけば、それだけで欲しい人は何人でも何枚でも買えます。社会性の高い活動だったら、お店のほうからオファーがあることも考えられます。セカンドライフの人口はまだまだ少ないので、現実世界のような大きな反響は難しと思いますが、元手がほとんどタダでできるので、有益に使える可能性があるといいなあと思います。
いえいえ、この情報はとても貴重でした
Second Lifeの世界は、バーチャルな閉鎖空間ではなく、リアルな世界といつでもシンクロできるというのが、とても面白い発見でした。
元手・設備・ロジスティックスの問題がほとんどクリアできるし、世界中から人が入って来れるし、これは現実世界ではそう簡単にはできませんよね。人口が増えれば、こういう新しいアイディアも比例して増えていくんじゃないでしょうか。
今、国内外の募金活動の話をまとめようとしていたので、そのうちRed Nose DayとSecond Lifeのことも書きたいな~と思ってます。
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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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