トランス脂肪酸(1) 

2007, 04. 28 (Sat) 21:27

ケーキに使うバターやマーガリンを探していたら、たまたまトランスファットフリーのマーガリンというのを見つけた。
あまり聞かないタイプのマーガリンだが、「トランス型脂肪酸」の含有量が少ないマーガリンのことだという。

マーガリンは化学的に合成して作っているので健康に良くないとかいう話をちらほら聞くが、健康に悪いので「買ってはいけない」類の製品の話しは山ほどあるので、それほど気にも留めなかった。

自分でお菓子を作ったり、料理にマーガリンを使うことが多くなったせいか、コレステロールが低くてバターよりも健康によいと言われるマーガリンが、別の観点からは健康には良くない成分を多量に含んでいるというのであれば、面白い話に思えてきたので、いろいろと調べてみた。

インターネットで、トランス脂肪酸を検索すると、山ほどヒットする。
健康マニアや自然食品派の世界では、結構有名な話なのかもしれない。
といっても、多くの人はあまり知らないと思う。
トランス脂肪酸を含む食品の代表的なものは、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなど。食用油にも含まれている。
バターにも含まれているが、天然由来だし、マーガリンとかよりははるかに含有量が少ないので、海外でもバターはそれほど問題にされていないようだ。

試しに、いくつかのスーパーの店頭で、トランス脂肪酸の含有量表示やトランスファットフリーのマーガリンがあるか調べてみた。
まず普通のマーガリンには、トランス脂肪酸の含有量の表示がない。
これは国が表示義務を課していないので、わざわざ批判の対象になるような成分表示はしないから。
その上、トランスファットフリー(含有量が1%以下のもの)のマーガリン、ファットスプレッドは、ほとんど手に入らない。
たまたま寄ったイオンショッピングセンターでは、健康に良いマーガリンとかいう商品があって、トランス脂肪酸が2%以下と明記されていた。但し、国内の有名メーカーの製品ではない。
もしかしたら、トランス脂肪酸の問題は、日本の油脂業界の中では、踏んづけたら怖いヘビみたいなものなんだろうか?

ネットのデータだけでも、国、業界、自然食品擁護派、業界中の反対派、アレルギー専門の医師とか、いろんな立場から情報発信がされていて、結構面白いものがある。
食の安全性というテーマでは、問題なし派と問題あり派では、データ集めや解釈のフィルターのかけ方が違っていて、いつも両極端な情報が流れている。

内閣府に付属する食品安全委員会のファクトシートには、トランス脂肪酸の説明、国内外の規制、業界の見解等がコンパクトにまとまっている。
但し、トランス脂肪酸反対派団体のデータは載っていない。

「日本マーガリン工業会」という業界団体も、「分析と見解」というホームページのコーナーで、「トランス脂肪酸について」という公式見解文を公表している。
マーガリン工業会はあっても、バター工業会という団体はない。
バターは雪印製品がメジャーで、後はPB製品が多い。なので団体を作る必要もないのだろうし。
マーガリンの場合は、バターとは違っていくつも加工の工程があるから、たしかに”工業製品”なのかもしれない。

業界団体としての結論は、当然のことながら、問題なし。
彼らも、トランス脂肪酸自体の健康への影響は認めている。
これはWHOも認めているので否定したくても、できない。
しかし、トランス酸の摂取量が摂取した総エネルギーに占める割合で2%以下であればほとんど影響しない、WHO/FAOの報告書ではその割合を1%未満と提唱している、従って、日本人は0.7%だから健康への影響は小さいので、別にかまわないじゃないか、ということ。

彼らは平均摂取量が少ないという点を健康上問題ないという見解の大きな理由としている。
国や業界が使っている日本人の平均摂取量のデータは、どこかの学者の論文を引っ張ってきているようだし、その論文は2002年以前ものなので、データとしては古い。
この種のデータは、自分に都合の良いデータを探してきて使うことはいくらでもできるので、あまりアテにはならない。

この平均摂取量が実際にもっと多ければ、トランス脂肪酸を多量に含む食品というのは、健康への悪影響が大きくなるということになる。
1人1日あたりのトランス脂肪酸摂取量とエネルギー比をみると
米国:5.8g(2.6%)
西欧の14カ国(男性):1.2~6.7g(0.5~2.1%)
日本:1.56g(0.7%)

EUのデータは、平均値ではなく、レンジで公表しているので、個人差(地域差のせいかもしれないが)がかなりあるのがわかる。
日本もレンジデータで公表すればいいところを、平均値としているのはおおざっぱだ。
そもそも平均摂取量はあくまで平均であって、老人と若者の摂取量はかなり差があるだろう。
特に、油脂類がたっぷり使われているお菓子やスナック、フライなどを多量に食べていると、トランス脂肪酸を含む油脂類の摂取量は人によってかなり違ってくる。
平均値があるのであれば、当然それ以上に摂取している人もいるはず。
摂取量のレンジ上部がどれくらいの値になっているのかがわからないが、天井近くに張り付いている人は、このトランス脂肪酸の摂取量にはかなり注意した方が良い。

健康マニアではないので、マーガリン絶対反対などという気はないが、コレステロール低減には熱心なマーガリン業界が、トランス脂肪酸のこととなるとあえて触れたくない、というような雰囲気がする。
日本でトランス脂肪酸を低減していると標榜したマーガリンは数種類しかなく、それも普通のスーパーではほとんど売られていない。
値段がバター並に高くなるので、あまり売れないからだろう。

マーガリンが健康に悪そうかどうかは個々人で判断すればよい。
バターよりもマーガリンの方がコレステロールが低いので、マーガリンが良いという人もいるだろうし、たとえ値段が高くなっても、トランスファットフリーのマーガリンやファットスプレッドが良いという人もいる。
代替製品の選択肢がほとんどない、あったとしても普通のお店にはおいていなくて、自然食品関係のネット通販や自然食品店くらいでしか手に入らないという状態は、早く改善してもらいたいものだ。

少なくとも、含有するトランス脂肪酸量を表示してもらえば、価格とのバランスを考えて、含有量の少ない製品を買うことができる。
輸入製品の締め出しのための成分表示義務には熱心でも、国内メーカーがほぼ独占している製品の成分表示には、全く興味がなさそうな国と業界の体質だけは変えてもらいたいものである。

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