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遂に小麦が30%値上げ
小麦ショック
 政府は、輸入小麦のメーカーへの売渡価格を2008年4月から30%値上げすると発表。
 その日のトップニュースになるほどの「小麦ショック」。
 この小麦値上げによる産業界への影響は、道路特定財源の暫定税率維持どころではない。
製造・卸売・小売から末端の消費者に至るまで、日本中にあまねく深刻な影響を与えるはずだ。

自給率の低さが問題?
 この小麦値上げに関するニュース解説やらブログで、「小麦の90%を輸入に頼っている自給率の低さが問題だ」などというコメントが散見されるが、それはちょっと違うだろう。
 その理由を挙げてみると...

第一に、自給率を高くすれば小麦が「安価」で安定供給される、ということはありえない。

 日本の国産小麦には莫大な補助金が投入されている。そのおかげで、市場では外国産小麦より数割高い程度の値段で買えるようになっている。
 その補助金の財源は、政府が一括買い付けした小麦を民間へ売り渡す価格から、調達価格を引いた「差益」で賄っている。
 つまり、国産小麦を大量に生産すればするほど補助金が膨らみ、その分「差益」を増やさざるをえず、その結果売渡価格が跳ね上がっていく仕組みになっている。

 国内麦作の生産性が革命的に向上することが可能かどうかは、米作を見れば答えは明らか。規模要件+国内規制から考えても、絶望的。
 遺伝子組み換えによって数倍の収量と品質向上ができれば可能性が全くないとは言えないだろうが、日本人は遺伝子組み換え反対派が多いので、これも多分可能性は極めて低い。

 今のところ、売渡価格は調達価格の1.5倍くらい。
 そもそも、補助金をなくしてしまえば、ずっと安く輸入小麦が民間へ売り渡されることになる。
 それとも、補助金を「差益」で賄わずに、農林水産省の予算から補助金を支給すれば良い。結局それも税金が財源だが、食品価格には影響しないので、国内麦作を保護し続けるのなら、その方がまだしも産業界と家計への影響は少ないはず。その財源を捻出できれば、という前提条件はあるが。

 結局、お米と同様で、国内農業を保護するために、安いはずの外国産小麦を高値で民間企業は買わされていることになる。
 極論すると、国内小麦の生産を止めてしまえば、補助金も減って小麦価格はかなり下がるだろう。10%しか自給できていない国内小麦なので、生産をやめても大勢に影響はないような気はするが。
 しかし、国際的な小麦相場がこのまま上がり続ければ、この価格低下も一時的なものに終わる。
 おそらく10月以降も小麦は継続的に値上げせざるを得ないだろうから、どのみち「安い」外国産小麦を前提にした産業構造と食生活を変えていかざるをえない。

 1ドル80円時代の円高時には、数多くの製造業者が倒産した。
 今回の小麦ショックでは、小麦を原料とした製品のメーカーと卸売業者の業績悪化、それに加えて、パン・うどん・お好み焼き・たこ焼き・ケーキ屋さんといった巷の零細事業者や個人経営のお店が倒産や廃業が増えるだろう。

第二に、小麦の自給率を上げられるはずという思い込み。
 薄力粉や中力粉は、日本でも昔からうどん、お好み焼き、たこ焼きなどに使われてきたので、品質的には、国内産小麦でも輸入小麦の代替になるのだろう(ただし、値段は外国小麦に比べてべらぼうに高いが)。
 
 問題は強力粉。
 日本でも強力粉は細々と生産されているし、一部のベーカリーショップでも天然酵母+国産小麦の、これまた高価格のパンが売られている。個人のパン作り愛好者でも国産小麦愛用者はいる。
 しかし、品質からいえば、国内産小麦のたんぱく質の含有率は、外国産小麦に比べて1~3%くらい低いという特性(欠点ともいえる)がある。
 一般的に食されている食パン・山パンなどのふわふわ~としたボリュームのあるパンを焼くのに、向いているとは言えない。
 少なくとも、イギリス食パンやホテル食パンとかは外国産の最強力粉、菓子パンには強力粉が使われていることが多い。
 そもそもパンは、米国産小麦を消費させるためにかどうかは知らないが、戦後、米国がパン食文化を日本に導入したために普及した代物。
 パンというものは、日本の風土に適した種類の国産小麦から作られる食べ物ではない。
 いくら頑張ったところで、強力粉の大半は外国産小麦に依存せざるをえないだろう。

米食回帰への道?
 個人的に思うに、そもそも主食たるものを輸入原料に頼る構造が間違っている。
 マリー・アントワネットの「パンがなければお菓子を食べたらいいじゃない」というセリフを思い出した。
 本来、日本の風土に合った主食である米があり、現状では米が余っている。
 小麦が高くて困るのであれば、米を食べればいいじゃないかと思うので、個々の消費者の家庭レベルに限って言えば大した問題ではない。(産業的には、それはそれは深刻な問題になるのは不可避)

 といっても、私は1日2食で朝・昼兼用食はパン、夜はお米(たまに麺類)。
 パンはホームベーカリーで主に国産小麦のパンを焼いている。
 外国産小麦より国産小麦のパンの方が、もっちりしていて好きなので、国産小麦の生産が続いているのは、個人的には歓迎するが。
 まあ、たとえ小麦がなくなっても、米粉をつかって米粉パンを作れば良いので、米価が暴騰しない限りは、パン食生活は続けていけるだろう。
 (あれだけ大量の補助金を投入して米価が暴騰したら、それこそ暴動騒ぎもいいところになるだろうから、その心配は今のところはそれほどしていない。)

 ただし、米粉は国産小麦よりも数割高い。
 最近は、元から高い国産小麦も、生産原価がアップしたせいか、輸入小麦の価格上昇にひきづられたためかはわからないが、かなり値上がりしている。
 おかげで、家で手作りする分には、米粉パンもコスト的には国産小麦パンとそう変わらなくなってきた。米粉の生産が増えれば価格が下がることもあるかもしれないし。

 この小麦高騰は、もしかしたら日本の米作農業の救世主になるかも。
 世界的な需給状況を見ても、小麦の高騰が止まることは当分なさそうだ。
 パン食生活のコストアップに耐え切れず、パン食の一部を米食に変える人でてくれば、低迷し続ける米食費量も多少は上向きになると期待できないこともない。
 それに、最近の米は大分安くなっているようで、ディスカウントショップなどでいわゆずクズ米といわれる安い米を買う人も増えているようだ。
 消費者も二極化して、有機野菜とかの高価格志向者が増える一方、極端な低価志向者も増えているようなので、極めて安い中国やカリフォルニアの輸入米が市場に出回れば、かなりの驚異になるだろう。
 中国産品は、今は健康被害騒動でちょっと旗色が悪いが、背に腹は変えられない人もいるし、全ての中国産が安全でないということはないので、これもほとぼりが冷めれば、可処分所得が増えないご時世では、食の中国産依存がぶり返すだろう。

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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