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小麦価格の決まり方
内外麦コストプール方式
日本で流通する小麦が政府が一括で外国(米国、カナダ、オーストラリア)から買い付けて、港湾諸経費とマークアップと言われる売買差益を上乗せして、民間へ売り渡している。
これは「内外麦コストプール方式」と言われ、外国産麦から得た輸入差益を国内産麦の生産振興にあてる財政手法である。

小麦価格が低くて安定し、なおかつ、国内麦の生産コストが現状維持もしくは下落している間は輸入差益が期待できる。
しかし、実際には政府売渡価格が固定価格だったため、小麦の国際相場の高騰と国内麦生産コストの増大により、平成8年度から毎年数百億円にのぼる赤字が発生しており、完全に逆ザヤ状態。

fig06.gif


<参考資料>農水省の「輸入麦の売渡制度について」(H18.11)

固定価格制から変動価格制へ
コストプール方式が逆ザヤになっているせいか、政府売渡価格は、従来は「標準売渡価格」という固定価格制度だったが、食管法廃止により、平成19年4月以降は、価格変動制に移行した。

この価格変動制は読んで字の如く、毎年度売渡価格が変動していく。
「過去の一定期間における買入価格の平均値に年間固定のマークアップ(政府管理経費及び品目横断的経営安定対策の経費に充当)を上乗せした価格により売り渡す」のである。
この結果、国際穀物相場や為替の動向に連動して売渡価格が変動し、今回の小麦連続値上げ騒ぎという事態になった。

輸入小麦の売渡価格

平成20年4月からの政府売渡価格を計算すると
 買付価格       50,150円/トン(売渡価格から固定費を控除した計算上の価格)
 港湾諸経費(固定)  2,102円/トン
 マークアップ(固定) 16,868円/トン
 売渡価格       69,120円/トン

<資料>「平成20年4月期における輸入麦の政府売渡価格の決定について」

農水省によると、この売渡価格では、買付価格が完全には転嫁できていないらしい。
本来、売渡価格は38%上昇しなければならないが、影響の大きさを考慮して30%のアップに押さえたとのこと。
ということは、さらに8%上乗せすると、買付価格が4,250円程上乗せされて54,400円、売渡価格は73,370円くらいになる計算になる。

タダでなくとも高騰している小麦に、従来どおりマークアップを上乗せしているので、価格が一層上がっていくという悪循環になっていると思う。
10月にはさらに売渡価格が上がるとも言われている。
そのうち、産業界からマークアップをなくせと言われるんじゃないだろうか。

国産小麦の買入制度の廃止
国産小麦は平成19年4月から、政府による買入制度が廃止され、民間流通麦になった。
これにより、生産者と製造業者との入札か相対取引で価格が決められていく。
といっても、国産小麦の生産コストをこのまま価格に転嫁すれば、輸入小麦の数倍になり、品質面で輸入小麦に劣る国産小麦を誰も買わないだろう。

実際には、莫大な農水省補助金と、輸入差益から捻出される「品目横断的経営安定対策費」(これも補助金)が国内生産者に支払われている。
これらの補助金によって、生産費用が補填され、市場に流通できる取引価格にまで引き下げられている。

ちなみに、以前の政府買入価格(平成18年、1等60キログラム、裸価格)は7,146円。
これを1トンあたりの価格に換算すると119,100円。
当時の輸入小麦の買付価格の数倍になる。
生産段階では補助金も出ているので、国産小麦を買うために支払う政府のコストはもっと多かったはず。

国産小麦の生産コスト
60kg当たり国産小麦生産費は 8,560円。
1トンあたり換算で、142,667円。
このコストは前年度比3.7%増とコストが下がっている気配はない。
生産コストに利益が上乗せされて取引されるが、いくら輸入小麦が高いといっても、国産小麦の数分の1なので、そのままだと誰も国産小麦など買わない。
そこで、膨大な補助金を投入して、国産小麦の生産コストと取引価格の差額を補填することによって、かろうじて取引が可能な状態を作り出している。(お米と同じ)

「農業経営統計調査 平成18年産小麦生産費」http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/seisanhi-komugi2006/seisanhi-komugi2006.htm

ちなみに、マークアップによる国内小麦への補助金を単純に計算すると
 
 国内小麦生産高  86万トン
 小麦輸入量    555万トン
 マークアップのうち品目横断的経営安定対策費
           (16,868円/トン-4000円/トン)×555万トン=714億円
 品目横断的経営安定対策費(国産小麦1トンあたり)
            714億円/86万トン=83,023円/トン

 マークアップには、政府管理経費(H16年あたりで4,139円/トン)が含まれているので、実際の補助金である品目横断的経営安定対策費は12,868円/トンと概算した。

自給率をあげると小麦は安くなる?
いくら外国小麦が高騰しているとはいえ、補助金なしでは国内小麦は太刀打ちできない。
国産小麦の生産効率を上げるといったところで、すぐに2倍や3倍に上がるというのは不可能。
できればすぐにやっているだろう。遺伝子組み換えで収量を上げる品種を開発するという手はあると思う。
が、日本人はGMOアレルギーなので、小麦が市場からなくなる事態にでもならなければ、GMOは難しいような気がする。

日本で農作物の自給率を上げていくためには、膨大な補助金を投入し続けないといけない。
今は輸入小麦の値上がりが直接サイフに響くので巷では大騒ぎしているが、国産小麦の増産によって自給率を上げたところで、小麦価格の本当の価格が下がらないのは目に見えている。

高騰しつづける輸入小麦の政府売渡価格を下げるには、マークアップを上乗せするのをやめるしかないが、そのかわり国庫=税金から新たに捻出しなければならない。
それも、自給率が上がると、スケールメリットにより多少は国産小麦の生産コスト単価も下がるかもしれないが、生産量自体が増えるので、結果的に必要となるマークアップ相当額の補助金も増大するはず。

農業に補助金を投入するのは日本に限ったことではないが、問題は生産性が低ければ多くの補助金が必要になること。
いくら輸入小麦が高いといったところで、生産コストからみれば国産小麦はその数倍の価格はする。
小麦の自給率を上げるということは、国際価格の数倍の国産小麦を補助金を投入して安定供給させるということであって、本当に「安い」小麦が自給できることではない。
それに、国産小麦と輸入小麦は品質がかなり違っているため、国産小麦でどの程度代替可能なのかも考えないといけない。
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

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